ドストエフスキーの小説の特徴

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<ドストエフスキーの小説の特徴>

※、  〕はその投稿者。


・三人称形式の小説(『罪と罰』『白痴』)は、「冒頭の出だし」の描写が素晴らしい。それに対して、「わたし」なる語り手が存在する小説(『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』等)では、出だしが説明的で味気ないものが多い。

・各小説の末部には、たいてい、「後日談」の章が添えられている。

・主人公たちは、しばしば、いちかばちかの「冒険的な行動」に出る。

・場面の小道具として、「手紙」「ピストル」が、しばしば使われる。

・「青年」を主人公にした小説が多い。「子供」もよく登場する。

・各小説は、「金銭問題や遺産問題」が筋にからんでいる。

・各小説には、たいてい、「殺人」「自殺」という事件が起こっている。

・各小説には、たいてい、「夢」の記述がみられる。

・後期の小説には、「父と子」というテーマが出てきている。

( 追加ぶんは、のちに追加掲載します。)
〔以上、記:Seigo


○登場人物類型
・殆(ほとん)ど全ての主要登場人物が、変人と言ってよいくらい極端な人間ばかりである。あるいは、平凡な人であっても、大体重要な場面で一回くらい極端な行動を取る。

・主人公は、大体2233歳くらいの男性である。

・主人公を巡って対立するか、ないしは対照的な二人の若い女性が登場する。

・非常に自尊心が高く、そのために不合理とも言えるような行動をとる美女がしばしば登場する。

・嫉妬から身を滅ぼす人物が多い。

・狂気に至った女性、それも大抵、宗教的な女性がしばしば登場する。

・神懸(かみが)かり的な人物と、その崇拝者達もときどき出てくる。

・社会の底辺にいるような、大酒飲みで、経済的に殆(ほとん)ど破綻(はたん)した、しかし人間観察力や人間的な魅力のある人物がしばしば登場する。

・知性は豊かだが、嫉妬深く、他人のプライバシーとその暴露に異常に興味を持つ、現代日本で言えば「ワイドショーの芸能レポーター」的な人物がしばしば登場する。

・卑屈な太鼓持ちのような人物がしばしば登場する。

・他人の思想を鵜呑(うの)みにし、生噛(なまかじ)りのままで滑稽な行動を取る人物がしばしば登場する。

・頭痛や幻覚に悩まされる人物が多い。

○その他
・非常に長い台詞(せりふ)が多い。

・一日ないし(=あるいは)数日の間に、非常に多くの事件が起き、数百ページ読んでも時間があまり経過していないことが多い。

・一人の人物が、他の多くの人物の間を、一日かけて走りまわるようなパターンが多い。

・何人かの人物がいるところへ、まるで芝居の舞台に出てくるように他の人物がやってきて、それをきっかけにストーリーが新展開するような場面が多い。

・女性がヒステリーを起こし、それで一つの場面が終わるケースがよくある。

・聖書、特に、福音書からの引用が、各作品の心臓部に近い所に現われる。

・大地に接吻する、という動作が、しばしば重要な意味を持つ。

・十字を切る、という動作が、しばしば滑稽な描写として現われる。

・ピストル、手紙ほどではないが、聖書、聖像、灯明、首にかけた十字架が小道具に使われる場面が散見される。

・トランプもしばしば登場する。( これは作者がギャンブラーなので当然でしょうが。)

・若い登場人物が、出版関係の仕事を手がけようとする場面が散見される。

・登場人物が、別の人間のアパートや別荘の一角を、間借りしていて、それがストーリーに関係しているケースが多い。

・ペテルブルグの描写は多いが、モスクワは、そこに行く人物が多い割に描写が少ない。

・プーシキン、ゴーゴリに対する賞賛と、他の多くのロシアの文学者、知識人等に対する非難がしばしば出てくる。

・ドイツ人など特定の外国人に対する見解が、ストーリー上の必然性はさほどないにも拘(かか)わらず、表明されることがある。

・ロシア社会についての見解が、ストーリー上の必然性はさほどないにも拘(かか)わらず、表明されることがある。

各小説にはたいてい「殺人」「自殺」という事件が起こっているということについては、その犯人や、(無神論者である)自殺者が、他の場面では、人助けなど、打算のない献身的行為を働くことがしばしばある。

〔以上、記:有容赦


<ドストエフスキーの小説の典拠>
ドストエフスキーの小説の、登場人物のモデル、内容の典拠、どういう背景や影響のもとに創作されているか
について、次のACに分けて整理。

〔記:Seigo

A.
〔各小説の登場人物の造型
には、次の場合がある。〕

a.
当時の社会に実在した人物をモデルにしている場合
そのモデルとしては、
a-1
ドストエフスキーの身辺の人物(家族、親族、親しくした友人知人)
a-2.
ドストエフスキーの生涯のある時期においてドストエフスキーと交渉のあった人物(愛人、師、知人、仲間)
a-3
.
ドストエフスキーとはあまり交渉はなかったものの、当時のロシアで知られた人物、
などが指摘されている。
b.
ドストエフスキー自身が投影されている(ドストエフスキーの分身である)場合
b-1.
ほとんどドストエフスキー自身である場合。
b-2.
ドストエフスキー自身の一面が投影されている場合。
c.
ロシアまたは外国の小説の登場人物をモデルにしている場合。
d.
聖書に出てくる人物をモデルにしている場合。
e.
ロシアで古来民間信仰として伝えられている、伝説的人物や国民的英雄をモデルにしている場合。
f.
その前に書かれた自分の小説の登場人物の形を変えた何らかの継続(継承)として書かれている場合。 
g.
ドストエフスキーの長年の
人間観察から生まれた典型的な人物として描かれている場合。


B.
〔各小説のストーリーや内容の造型
には、次の場合がある。〕
         
a.
 
ドストエフスキー自身の身に過去に起こった体験や出来事や人間関係を描いている場合。      
b.
当時や過去に
ロシア社会で起こった事件や流行(はやり)に取材して描いている場合。
c.
ドストエフスキーが
知人や仲間から聞いた話を借りて描いている場合。
e.
ロシアまたは外国の
小説のストーリーや箇所を借りて描いている場合。
f.
聖書に出てくる人物関係や出来事を借りていたり、暗に重ねている場合。
g.
その前に書かれた自分の小説の続き(形を変えた何らかの継続)として書かれている場合。
h.
ドストエフスキー自身が、インスピレーションにより、あるいは、意識的に、
新たに作り出している場合。
       
C.
〔その他、重要と思われる要素
として、次など。〕

a.
同時代のロシア社会を舞台とした小説であり、当時の欧化を受けて変動する帝政ロシアの社会状況を背景にしているという点。

b.

多くが、ペテルブルグという独自の都会を舞台にしているという点。 
c.
ドストエフスキーの独自の創作過程(創作ノートの活用、後半生の妻の協力による口述筆記という形態など)。 
d.
掲載する出版社や雑誌社からの催促や検閲、知人や当時の有力者からの働きかけ。
e.
当時の作家の大作(トルストイの『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』など)に対するライバル意識。   


      



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