地方都市と情報化 『建築雑誌』6月号 1996.6.20 

 地方は東京に対抗して特色を持った地域策が求められている反面、インターネットの発
展は東京をも電子世界の一地方にしてしまった。その中で電子地方都市はどう未来をみつ
めるか?
 さらに、現実のその都市が未来に何を生業として生きていくか?その地域の生計は未来
に向かってどのように組み立てられようとしているのか?あげればきりがない地域毎の業
態をいわばユーズウェアと認識して都市のハードウェアは組立られねばならないだろう。
 そして情報化はそれら都市のユーズウェアをよりよい形で機能させるために運営体制や
利用指針を含み考えた社会インフラとして整備するスタンスが必要だ。

 私の住む大分では大分経済同友会が21世紀の大分の新しい産業構造ビジョンづくりを
目指して平成5年3月に提言したが、結果的に道路インフラと同様に情報通信インフラを
どのように整備するかが鍵になってきた。何しろどのような産業も企業もプロジェクトも
強い情報通信を持たねば競争にならないしリストラもリエンジニアリングもあり得ない。
 その流れを受けて市民並びに産官学あげてNIIならぬRII(Regonal Information I
nfrustracture)をNTTや通産省、郵政省などの力を借りて大分に創ることになった。

 コンセプトは、「地域に情報コンセントを」である。

 SFの世界であった情報コンセントを今や情報通信の基盤技術であるインターネット技
術をベースに家庭や職場に自由に配置できるよう工夫してみよう。その情報コンセントを
使えば世界中へ電子メールが出せ、世界中のデータベースが簡単に利用できる。勿論、在
宅勤務だってできるように。それらは今の電話線のように“情報サービス公社”に申し込
めば、「はい、わかりました」とばかりハードとしてのワイアにインターネット接続に不
可欠のアドレス番号を電話番号と同様に付けて持ってきてくれる。それに今やパソコンに
はとても安く標準的に装着できるイーサーネット装置のモジュラージャックを差し込めば
、その時から24時間365日使いっぱなしにできる情報コンセント。勿論、利用料金も
それに相応しく安くなければならないが。
 このコンセプトを元に実験システムとして様々なスピードの情報コンセントが実現しつ
つあるが、なかでもNTTマルチメディア実験の一貫として「光ファイバー情報コンセン
ト」が地域に20カ所準備されつつある。光ファイバーは勿論スピードが早いのでうまく
やればビデオメールが使えるだろう。今流行のインターネットのホームページに小さいな
がらも映像情報が流せるということにもなる。
 この20カ所は、それぞれ地域、地区のユーズウェアを考えた引き込みが考えられつつ
ある。

 例えば、観光都市である別府市は昨年完成したばかりの大型コンベンションホール“ビ
ーコン・プラザ”を観光シンボルにしているが、そこに光ファイバーを持ち込み、各旅館
やホテルはそこをハブとして情報コンセントを引き込む。つまり、別府のイベントや会議
観光がビーコンプラザを中心に行われるのであるからこそ、観光客もそれを受け入れる観
光関係者もそこに物理的にも情報通信的にも繋がるのが望ましくなる。別府市は積極的に
ビーコンプラザのインターネットホームページを作っている。

 さらには、夜の街だってそれを見込んでインターネットに“料飲組合”として100店
がホームページを開設してきた。それぞれにセット料金、カラオケの有り無し、バーやク
ラブといった形態別、収容人員数などで検索できるようにして。
 勿論、もっと大がかりに新改造築中のホテルの中には各部屋に情報コンセントを引き込
み、ロビーにインターネット接続コーナーを設置検討する処も出てきた。
 温泉都市別府市は、“マルチメディア観光都市”に生まれ変わりつつある。

 さらに、大分市セントポルタ中央町商店街では長さ300メートルのアーケードが96
年3月に新装オープンしたが、そのアーケードに添って光ファイバーがループ状に設置さ
れた。つまり、各商店は望めば自店に簡単に情報コンセントが引き込めることになる。か
つその中心広場に大型の9面マルチスクリーンが用意され各種ビデオが流される他、その
側に置いてある街頭公衆端末でインターネットを楽しみつつその画面を大型マルチスクリ
ーンに表示することもできる。

 これらを使いこなせばバーチャルショップとリアルショップが融合した新しいコンセプ
トの街づくりになるのであって関係者は“マルチメディア商店街”として大いに売り出そ
うとしている。
 情報産業が集積するソフトパーク地区はもっと準備が行いやすい。
 県有地内であるので各ビル間の通信ケーブルは構内線として設置され、県が企画したイ
ンテリジェントビル2棟は完全に情報コンセント対応ビルであって、入居と同時にインタ
ーネットに接続できる。これならマルチメディア産業立地・誘致も行いやすい。

 このような情報コンセントをNTTは来年1月にOCNという名の下に商品化すると発
表している。
 各都市は自分のユーズウェアをしっかり見据えてどう効率的に情報コンセントを配置す
るか、それらをリードする地域推進機構をどのように作るかなど、とても重要であるが、
未来を夢見る楽しい時期が今こそ来ているようだ。

   尾野徹 tooru@fat.coara.or.jp