『サンデー毎日』4月4日号より
自治体の挑戦
細川珠生
環境の改善
フィルムのパッケージに書かれた「100」とか「400」という数字。感度を表すも
のだということは知っていたが、まさかこれがISOだとは・・・。
「ISO14001」の取得が自治体ではやっている。
「ISO」とはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)
のことで、電気・電子以外のあらゆる分野の商品やサービスについて、世界共通の国
際規格を制定する機関。貿易障壁をなくす目的で、1947年に作られた。
「ISO1」はネジ、冒頭の「ISO100」や「400」は感度など、世界どこへ行っても、
自国と同じ規格の物が使えるということだ。旅先でカメラのフィルムが足りなくなっ
ても現地調達でOKというのは、これがあるから。
自治体がこぞって取得を目指そうとしているのが、ISO14001の「環境マネジメン
トシステム」の規格だ。
ISOは製造業が関係してくることが多いが、最近では企業経営の健全性やサービス
の充実度について与えられるISO9000と同じように、「環境への負担軽減をどれだ
け行っているか」を示すこのISO14001が、取得ブームとなっているのだ。
環境という視点に立って行政を経営・運営していくための、Plan(計画)--Do
(実施)--Check(評価)--Act(見直し)のサイクルによるマネジメントシステム
を構築することになる。
環境の視点抜きに行政を行うことができない時代となったこともあり、千葉県白井
町が昨年1月、全国の自治体で初めてISO14001を取得した。そして今年2月末現在
で、9県市町に。
今年1月18日、都道府県レベルで初めて取得した大分県は、平松守彦知事が昨年
5月、「取得を目指す」と宣言。本庁の知事部局が行うすべての事務事業3500件を
対象とした。
各課が所管の事業について、「大気汚染物質を出しているか」「悪臭を発生させて
いるか」などの有無を調査(環境負荷調査)。そのうち、最終的に環境負荷を軽減で
きるもの、環境改善効果の高いもの93項目について、具体的な目標を設定した。
「産業と共生していくことが大事」
中でも、公共事業に配慮する、というのが大分県の目玉だ。具体的には、「建設廃
材の再利用率を2001年までに50%にする」「小規模な公共事業についても、率先し
て環境配慮を行うための指針を策定する」という目標を掲げている。
大分県は、このISO14001の取得に当たって事務事業をすべて洗い出すことから、
無駄なものは省こうという事務事業の効率化やコスト削減の効果を見込んでいる。
大分県内では、すでに21の民間事業所がISOを取得しているが、今後も県内の企業
や市町村に環境意識を持ってもらうために、県が自ら取得しなくては、という狙いも
大きかったようだ。
「県庁での心掛けが習慣づいて、家に帰ってからも例えば不要な電気を消すとか、細
胞分裂のように広がっていくんです」(挾間健・生活環境課長)
職員のそんな意識改革も、意味が大きいかもしれない。
一村一品運動で知られる平松知事は、
「美しい自然が残せれば観光客が来る----これからの県政にはとても大事だと思いま
した。しかし、100年前にタイムスリップする環境ではなく、産業と共生していくこ
とが大事だと思います」
と語る。
一方、東京都板橋区は、
「まずは行政が」という考えで取得した。
板橋区は環境分野に関して「都内で一番」といわれる施策が多い。例えば、87年か
ら低公害車を導入していたり、92年にはリサイクル条例を制定したりなど、積極的に
取り組んできた。
ISOの取得も「いまさら」という思いがなきにしもあらずというくらい、独自の政
策をかなり進めていたが、石塚輝雄区長の強い思い入れの下、取得を目指して昨年か
ら準備を進め、今年2月17日、都内の自治体で初めて取得が認められた。事務局長
を務めた森由子・環境保全課長は、これから取得を目指す自治体に対して
「私たちはすべて自分たちでやったけれど、認証取得のための手数料として300万円
ぐらいかかりました。自治体の中では一番安いけれど、お金はかかるし組織の内部調
整も必要です。首長の方針があって職員の意識も高まっていないと、ただ流行だから
取るというのでは、職員が苦労すると思います。」
とアドバイスする。
ISOを取得したからといって、それで環境問題がすべてクリアされるわけではない
けれど、3年ごとの更新時には、今回立てた目標に対する評価を必ずしなければなら
ないので、いい加減なことはできない。国会周辺の各施設も、ISOの対象にしてみた
らどうだろう。
ほそかわ・たまお 政治ジャーナリスト 1968年東京生まれ 聖心女子大卒後 米ペパーダイン大留学
95年日本文芸大賞女流文学新人賞
ラジオ・新聞・雑誌で若者と政治のパイプ役を務める 政治評論家・細川隆一郎氏の長女