『時事評論』 2002年2月10日 2002・2月号  より

W杯、その後に続くもの
大分県知事 平松守彦


 アメリカの同時多発テロ、史上最悪の失業率、ゼネコンの倒産、超緊縮予算、BSE(狂牛病)…。21世紀最初の年は、かつてない暗い年の瀬となった。
 年が明けて、今年の明るいニュースといえば、何といっても6月の日韓共催FIFAワールドカップだろう。大分では日本の対戦相手となるベルギー対チュニジア戦、優勝候補の強豪イタリア対メキシコ戦と、予選リーグ屈指の好ゲームが組まれ、サッカーファンの注目を集めている。また決勝トーナメント1試合の対戦力ードは、アルゼンチンまたはイングランドとフランスという強豪同士の対戦になる可能性もあり、事実上の決勝戦として世界中の目が大分にくぎ付けになるだろう。
 キャンプ地誘致も、県西部にあるわずか1400人の中津江村にアフリカ最強の黒豹(ひょう)カメルーンがキャンプを張り、県南の佐伯市にはチュニジアがやってくる。地元は歓迎ムード一色だ。ボランティアの皆さんも「ベルギー村をつくろう」「イタリアのピザ料理店やメキシコのテキーラ酒場を開こう」と、世界からやってくる人のためにもてなしの準備を進め、フランス語やイタリア語の本を買い求めてにわか勉強に励む人もいる。デフレ不況の中、W杯が日本の不況の暗やみに差し込む大きな一条の光であることは間違いない。
 問題はW杯後だ。21世紀はアジアの時代である。アジアの平和と繁栄のためには日本、韓国、中国の友好が礎になる。大分の総合競技場(ビッグアイ)を視察した韓国ワールドカップサッカー会長の鄭夢準(チョン・モンジユン)氏は、私の手をしっかり握り、ここで日韓中三国のアジアカップをやろうと言われたことを覚えている。
 いまアジアの若者が一番熱狂するスポーツは野球ではなく、サッカーだ。経済成長著しい中国では8000万人のサッカーファンがいるといわれており、W杯初出場をかけた予選が行われた瀋陽のサッカー場は若者であふれ、1万円(約640元)の入場券が飛ぶように売れたと聞いている。ポスト・W杯はまず、日韓中三国の定期戦を手始めに東南アジアの国々を含めた「新アジアW杯」をビッグアイで開きたい。正月の初夢と笑うなかれ。これが正夢になるように世論の盛り上がりを期待したい。