『毎日新聞』 2003年6月18日号より連載・全27回
2003年8月2日号<23>

地域の自立戦略【23】
「地方分権」

〜権限と財源の確立を〜

前大分県知事 平松守彦


 大分県に帰り、79年に知事になってみると、国と地方の関係は江戸時代の幕藩体
制そのままだった。私の分権論は、そんな体験からスタートしている。

 知事は東京に行くことが多い。「地方の時代」なんて言われていたが、とんでも
ない。権限も情報も人も、東京に集中していた。道路、港の建設や企業誘致の陳情、
年末の予算獲得など仕事をすればするほど東京に行かなければならない。2期目
(83年〜87年)になると月に3回上京している。1回が1泊2日だから年間2ヵ月
半も東京にいる勘定になる。私だけじゃない。地方の知事はみな同じ。まるで江戸
時代の参勤交代だ。

 それにもう一つ、高速道の整備をとってみる。財政再建の建前から効率化、投資
効果が重要視され、後進地域への配分は遅れていく。大都市の高速道は整備され、
地方は国民合意が得られにくくなっている。すると人口、産業はますます大都市に
集中し、日本全体の政治、経済が活性化しない。地方に住んでみての私の実感だ。

 なぜ、こうなるのか。それは地方に権限と財源がないからだ。地方が財源を持ち、
地方のことは地方で決めるという制度を作らないと、いつまでも参勤交代は続き、
地方の浮揚はないと思った。だから「国は通貨、国防、外交をやれ、後は地方に任
せろ」と分権論、権限移譲を本に書いたり、公演や対談で主張してきた。

 アメリカを見てもらいたい。初めに州があり、それがいくつか集まって連邦国家
が成立した。極端に言えば各州とも行政の内容はバラバラ。だから死刑制度があれ
ば、ない州もある。消費税にしてもそうだ。各州が権限を持っている。

 日本は明治維新で中央政府が先に誕生し、廃藩置県で後から県が出来た。だから
中央政府に権限が集中し、地方は中央の出先という姿をいまだ引きずっている。

 日本も連邦制が導入され、地方が自主財源を使って身の回りの公共事業や教育、
福祉、衛生などをやれば当然、東京への一極集中は解消される。東京もあんな巨大
都市でいる必要がなくなる。アメリカの首都ワシントンは人口53万人だ。道州制、
連邦制移行には、まず地方分権の実現が先決ということになる。


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