『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月23日号<16>

地域の自立戦略【16】
「豊の国づくり塾」

〜まず先進地から学ぶ〜

前大分県知事 平松守彦


 知事の大事な仕事のひとつに人材育成、いわゆる「人づくり」がある。

 1期目の1970年から始まった一村一品運動で湯布院町、大山町、
姫島村などのように、うまくいった地域には優れたリーダーがいた。県民
がリーダーから地域づくりのノウハウを学び、自分たちの地域で実践して
もらおうと、85年に「豊の国づくり塾」をスタートさせた。

 「豊の国」とは大分県の古称で、昔は豊前、豊後の国といわれ、古事記に
も出てくる。

 一村一品運動の県内行脚で「自分たちの誇りになるものを作りなさい」
「やらんところは、やらなくて結構。やる気があれば県がバックアップし、
私がセールスマンにななって東京でもどこでも売り込んでやる」と説いて
回った。

 私の意気込みを知った当時の県の広報課長が「地域ごとに、地域作りを
学ぶ塾をつくったらどうでしょうか」と提案してきた。

 塾とはいい言葉だ。寺小屋方式で、昼働いて、夜勉強する。何の勉強か
というと、自分たちの地域をどうやってよくするか。面白い、と早速とり
かかった。

 最初に開塾したのは久住町だった。集まったのは農協職員、主婦、学校
の先生、農業者といろいろな人が31人。塾長には私がなったが、地域づ
くりには教科書もなければ先生もいない。そこでまず先進地域の話を聞く
ことから始めた。湯布院町のまちおこしリーダーの溝口薫平さんや中谷健
太郎さん、クルマエビで有名になった姫島村の藤本熊雄村長らを講師に呼
んで実践談を聞き、夜はみんなで車座になって焼酎を飲んで、侃侃諤諤の
意見を交わした。

 塾は1期2年。最初の1年は学習課程で、成功例や失敗例を学び、その
中から地域づくりのヒントを学ぶ。2年目は実践課程。イベントでも産業
おこしでも何でもいい。人と人のネットワークをつくり、自分たちの課題
解決の具体策を見つけてもらう。

 県内には12の地方振興局があるが、4年間で全部の振興局に塾を作っ
た。どの塾も100人くらいは入塾するが、働きながら学ぶのは容易では
なく、卒時には30人程度に減る。だから塾是には「実践、啓発」とともに
「継続」を掲げた。卒業生は02年度末で778人になる。


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