『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月12日号<11>

地域の自立戦略【11】
「ローカル外交」

〜相互理解で衝突回避〜

前大分県知事 平松守彦


 ローカル外交の相手はアジアだけではないんだ。一村一品運動は、日本貿
易振興会によって欧米にも紹介されていたようだ。1983年、外務省からフラ
ンスでの経済協力開発機構のワークショップで講演してほしい、と頼まれた
のがヨーロッパとの交流が始まるきっかけになった。

 フランスも「人」「モノ」がパリに一極集中し、南フランスなど地方は発
展が遅れていた。向こうの国会議員から頼まれて講演をし、モンペリエ市と
は文化交流を中心に友好交流宣言をした。プロバンス州のグラース市は香水
発祥の地、日本にも香道という伝統文化がある。だから「香り」をテーマに、
野津原町に大分香りの森博物館をつくって交流を進めた。

 フランスの次がイギリス。サッチャー政権のハウ外相が88年に来日した。
「地方を見たい」と東京を素通りして大分にやってきた。湯布院に3日間滞在
したのだが、農家に泊まり、住民と膝を付き合わせて一村一品運動について
耳を傾けていたのが、今でも印象に残っているよ。ハウさんはラグビーの強
いウェールズ出身。地元の強豪・大分舞鶴高が向こうのニース高校と大分で
交流試合をしたが、歯が立たなかった。今では企業研修のビジネスマン交流
もやっている。

 各国の一村一品運動を取り上げたら本当に切りがない。87年以降、アメリ
カでもテキサス、ルイジアナ両州、ロサンゼルス市などと交流が始まった。
ルイジアナのローマー知事は「一区一品」を打ち出した。ロサンゼルスでは、
「豊の国中津落ちこぼれ塾」が日米対抗大綱引き大会(90年)を開いて、民間
外交をなし遂げた。

 ローカル外交の原則は「相互理解」「相互利益」だ。単なる友好親善でな
く、お互いにプラスにならないと長続きしない。例えば、大分は農村婦人を
カリフォルニアに派遣しているが、向こうの農業を取り入れるわけではない。
向こうの女性の心意気、経営マインドなどの勉強が大切なのだ。各国それぞ
れに伝統と歴史、文化を持ち、考え方が違って当然。お互いの相違点を理解
し合うのが大事なのだ。

 私は国家間で摩擦が生じても、地域住民同士が交流(ローカル外交)を続け
ていれば、衝突を回避し平和を守っていけると思う。


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