第27話
竹の共通性
−アジア各国の協力テーマに−



 北九州博覧祭(7月4日〜11月4日)に「竹の風車」がお目見えした。高さ1.2メートルの竹製風車に発電装置を取り付け、1基当たり風速4メートルで0.3ワット、豆電球3個が点灯出来るという。自然エネルギーと竹の組み合わせが注目をひく――。

〈竹のキノコ〉

 「新しい世界の創造−人間・自然・技術」をテーマにドイツ・ハノーバー市で開かれた「EXPO2000」に「ゼロ・エミッション研究構想財団」(本部・スイス)が出品したパビリオン「竹のキノコ」は高さ14メートル、直径40メートル。コロンビア産の竹を用い、屋根材には日本のセメント会社がインドネシアで生産した竹繊維セメント板が使用された。
 設計者はサイモン・ベレス氏。自然素材による建築設計者として欧米でも評価が高い。99年来日、別府市にある産業工芸試験所を視察。高い評価をいただいた。
 竹は建材として耐震性に優れ、廃棄物処理でもセメント、鉄筋建材に比し問題はない。竹が環境問題に一役買える一例だ。
 また、竹産地であるインドネシア・バリ島にインテリアデザイナー、L・ガーランド氏により「環境竹財団」(EBF)が設立され、95年、世界の専門家による国際竹会議がここで開かれ、当地政府による「タケ開発戦略」の策定がスタートした。

コロンビアの竹で建設されたパビリオン「竹のキノコ」=写真はZERI財団提供


〈アジアの共通文化〉

 一口に竹といっても「笹」から「バンブー」まで多種類だ。分布も赤道を中心に、北・南緯40度の区域に生育し、その80%はアジア地域に集中している。
 EU(ヨーロッパ連合)と並んでAU(アジア共同体)、特に「環東アジア海域経済圏」構築を考える際、各地域が言語、宗教、文化に共通性が少なく、そのアイデンティティーをどこに求めるか問題だが(本稿第6話参照)、各地域とも竹の生育地であることは共通している。
 例えば生活道具としての竹ザル、竹カゴなどは海、山を越えて各地域で見かける。楽器としても尺八・笛・打楽器、インテリアとして家具・バッグ・帽子といったものもある。
 98年、大分で開催した「国民文化祭」では、主題に「竹」を掲げ、「アジア竹文化の祭典」が企画され、アジア11地域と日本15産地の竹製品を収集展示、竹工芸家フォーラムが開催された。また、「竹の宝庫−アジア・生活の道具」展が7月9日から来年2月まで大分県産業科学技術センターで開催され、竹材の成形接着部材で構成した障害者のための竹製車いす、アジア各国や別府にある竹工芸センターのインテリアなどが展示公開されている。前回「竹文化の祭典」では、ベトナムの「籃(かご)舟」や台湾桂竹で作られた「母子椅」、ミャンマーの竹で編んだ「帽子」などが好評だったが、今回は一段と興味深い竹製品が展示されている。
 これからEBFや大分県竹工芸・訓練支援センターをはじめ、アジア各国の試験、研究機関が連携し竹産業の新製品や環境にやさしい竹建材の開発をすすめ、アジアの竹文化振興に各国協同で取り組むことがアジアの一体感を醸成する上で大きな役割を果たすのではないか。


〈竹林の荒廃を防げ〉

 7月初め、梅雨まだ明けぬ早朝、私は別府湾を望む大分市白木にある人間国宝、故・生野祥雲斎(しょうのしょううんさい)(1904-1974)の工房「此君亭(しくんてい)」を訪れ、令息生野徳三氏(59)と面談した。祥雲斎は子供のころ、別府土産として売られていた竹細工を見て感銘、「芸術の域まで高め、竹で天下を取る」と誓い、竹工家に入門。1943年、文展特選以来竹工芸の第一人者となり、67年人間国宝となる。

人間国宝・生野祥雲斎作「時代竹編盛籃 心華賦」
(1943年)=大分県立芸術会館蔵

 「此君」は竹の異名である。現在、日展会友として活躍されている生野徳三氏から年頭にいただく「翠竹箸(すいちくばし)」は青々とした光沢が正月の祝膳に映え、多くの人々に喜ばれている。
 会談の中で、氏が心配されていたのは竹林の荒廃であった。大分県のマダケは面積、生産量とも全国一のシェア(約42%)を占めている。プラスチック材料の普及で竹竿・竹具需要が減退し、竹林面積も戦前も3分の2に減少、また手入れも十分でなく、竹薮ではあっても竹林ではなくなりつつあるという。
 竹林は60年〜120年の周期で寿命を終える。成長力の強い植物で常時伐採、手入れすれば竹林は再生し保全されるが、放置しておけば竹に花が咲き、地上部は枯死するといわれる。
 今、竹林の手入れをしておかぬと、荒廃し大きな損害を招く。竹林は地下茎と根で数10センチの深さの土がしまり、地上の多数の竹に連なって強い協同力を発揮し、土砂崩れ、堤防決壊を防いだ例は多い。国土保全上、森林と並んで竹林の保全が急務で、そのためには竹林需要の拡大が大きな課題だ。
 建築現場の足場にはインドネシアのように竹を使う。環境にやさしい建材として竹繊維を使う。竹炭など新製品を開発する。こういった竹需要喚起が竹林保全の前提である。アジア的規模で改めて竹産業をおこし、竹需要を拡大することこそ日本の竹林保全、環境保全にもなる。グローバルに考えローカルに行動することだ。

(大分県知事 平松守彦)


読売新聞7月27日号より





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