讀賣新聞 10月5日版より

地域活性化文化(下)

第13回国民文化祭を前に

大分県知事 平松 守彦


アジアと顔の見える交流を

 インターネットなどマルチメディアの発達で世界はボーダレス化が進む。すでにヨーロッパ諸国はEU(欧州連合)へ移行しつつあり、マルク、ポンド、フランも一つの通貨に統一されることになる。国境というカーテンが取り払われると地域が残る。
プレ国民祭、総合フェスティバル
(1997年10月19日、別府市ビーコンプラザで)

★地域間外交のススメ

 これからはインターナショナル(国家間)外交とならんで、インターリージョナル (地域間)外交が大きな役割を持つ。私の提唱した「一村一品」、「一村一文化」運 動を自国の地域活性化につなげようと、世界各国から交流の申し出があいついでいる。
 韓国のセマウル(新しい村)運動リーダーと大分地域づくりリーダーの交流が済州 島と別府で交互に開催され、フィリピンではラモス前大統領の依頼で、マニラ周辺の カラバルソン地域と特産品開発、林業技術の交流が始まったところだ。
 中国では上海市の「一街一品」、武漢市「一村一宝」運動、江蘇省「郷鎮産業によ る地域づくり」との交流につづいて国家専家局、湖北省と大分県共催の地域活性化シ ンポが昨年は武漢市、来年は大分で開催され、地域活性化のノウハウを学びあう。
 来県したマレーシア・マハティール首相の要請で、首相のふるさとケダ州には「ケ ダ・大分人材育成センター」が三カ所設置された。南仏ラングドッグ・ルシヨン地域 との間では、水産業やカザルス音楽祭など、観光の分野でも相互に交流が進みつつある。
 大臣、官僚による国家間外交は組織交流で人も変わるし、永続的な友好関係を築く ことには不適だ。むしろ地域農家、中小企業者、文化団体などの「草の根交流」は、 顔の見える交流で永続性があり、二国間の「相互理解」と「相互利益」に一番役にたつ。


「竹」をテーマに多彩な催し

★九州は”扇の要”の位置

 日本中心の地図だと、九州は日本半島の南端だが、東南アジア中心の地図を作って 見ると、九州がアジア経済圏の扇の要の位置にあることがはっきり認識できる。
 アジア各国は通貨危機に見舞われているが、長期的には経済成長率、人口増加率か ら見て世界の成長センターであることに変わりはない。アジア各地域と九州で九州ア ジア経済圏を構築し、経済・文化・観光の交流、各地域の活性化につなげていこうー その思いでこれまで「アジア九州地域交流サミット」を別府、マニラ、福岡、ランカ ウイ(マレーシア)、沖縄で開いている。各自治体八カ国二十一地域の首長が集まっ て交流する。来年は江蘇省南京市での開催が決まった。
 一口にアジアといってもヨーロッパと異なり、宗教も仏教、儒教、キリスト教、イ スラム教、民族も言語も多様だ。相手の国を理解するには文化交流が一番だ。今度の 「国民文化祭」では、アジア各地域に群生する竹をテーマに「竹のクラフト展」、各 国の「竹楽器演奏」、アジアの彫刻家の登竜門と言われる「アジア彫刻展」、「アジ ア映像フェスティバル」、「アジア若者文化」にはアジア屋台、アジアポップ、ロッ クフェスティバルなどの行事が盛り込まれている。
 日本人はインド更紗についてもミラノコレクションやパリコレクションショーで有 名になって、初めてその評価の高さに気付く。もっとダイレクトにアジア文化、芸術 を自分の眼、ハートで鑑賞し、理解する努力がこれからの「アジアとの共生に」一番 大事なことではないか。

★文化立県を宣言

 経済が地域活性化の牽引力となっていく時代は過ぎた。これから高齢、小子、成熟 社会に移行すると、文化が地域にすむ人々の活力の源泉となろう。
 文化には「文化する」、「文化を鑑賞する」二つの側面がある。
 これからは「一人一文化」時代、一人ひとりが魂を癒し、充実感を味わう文化活動 を行う時代が来る。また、文化の風のあふれる街づくりに参加することも文化活動だ 。一方、「ローカルにしてグローバルな文化」を鑑賞し、自らの人生の質を高めるこ とも必要だ。国民文化祭を一過性のイベントにしないためにも最終日は、地域文化創 造に向け、「文化立県宣言」を制定発表することになっている。


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