2003.3.14

 

ボスの威厳
〜脱角・生きる戦い〜

<担当>角 健吾
 以前、シカの袋角のエピソードをご紹介しました。

 シカの角は最初とても柔らかく、産毛が生えており、次第に血液がカルシウムなど角に必要な栄養素を運びながら徐々に成長し、秋には固い角を作り上げます。その成長過程が袋角です。固い角は、メスをかけた争奪戦を繰り広げる大きな目的があります。

 当園に生活するシカの仲間の内、大鹿のエルクは巨大な角を持っています。その立派な角が先日、根元から落ちました。これが脱角です。

 脱角の時期は「春が来たよ」と言うサインです。前日までの大きな角が、一日のうちになくなっていました。頭には大きな「切り株」のような跡が残っています。

 シカのオスはメスの争奪戦の時、角の大きさが重要になります。

 秋、発情期のオスは、年齢に関係なく気性が荒くなり、恋の季節を迎えます。メスに近づこうとする若く元気のいいオスにも、ボスは大きな角を振りかざし、メスから離します。何度も角を突き合わせながら、自分がボスである威厳のある態度を見せます。ボスの周りは全てメスです。これが『ハーレム』といわれるものです。

 発情が終われば、角は必要ないかもしれませんが、自然界の冬では肉食動物のエサが著しく減ります。この時期から角の役割は、群れを守る武器へと変わるのです。
春がくると、季節も暖かくなり冬ごもりしていた小動物が活動を再開、肉食動物たちも安定した季節になります。この時期に、役目を終えた角が自然と抜け落ちるのです。

 発情の時期は過ぎ、他の種から身を守る時期も少しは緩和された時に先日、ボスの角が根元から落ちました。
 脱角の順番は、力の強いものからと決まっています。栄養をたくさん取らなければ、脱角は遅くなります。早く脱角し、新しい角の成長を促さなければ、秋のメスとの争奪戦のとき、また身を守るときに不利になります。そのため若いオスは、少しでも多くの栄養を取らなければなりません。角のないボスをボスと見なかったのか、近くにボスがいることも忘れ、より多くのエサを食べようとしたのです。

 しかし、ボスは見逃しません。角を立派に成長させようとするのは、脱角したボスも同じです。
若いオスに向かって、横腹を思いっきり噛んだのです。若いオスは、たまりません。攻撃に驚き逃げていきました。
 
 現在オスたちの『メスの争奪戦』は、しばしお休みです。
 けれども、『角を大きく立派に生やすための戦い』はすでに始まっています。

 

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