納涼プレゼント伝説


メガ鼠
役場狸
書庫麿


この3人は市役所職員でありながら
私に無理矢理ミワリークラブへと引きずり込まれた面々である。
まさに”ミワリークラブ被害者の会”と言っても過言ではなかろう。

ではなぜ、公務員でありながらこんな悪趣味で変なクラブに顔を出し、協力するのだろうか。
答えは簡単である。
臼杵市役所そのものが薄気味悪いからだ。

特にメガ鼠の所属である観光課
ちょっぴり事務的になったミワリークラブと言ってよかろう。


カツオの声を出すお天気キャスターみたいなメガ鼠
グラムロックにはまった北京原人のようなM君
ミワリー会員でもないのに「ヒゲエクボ」という妖怪名を後輩達から付けられたT君・・

そしてその中央奥の机には
彼らを率いる司令塔的役割のリーダー
実体化した「ムンクの叫び」のような顔つきで座っている。



私にしては手ぬるい表現になったが
これ以上は彼らの出世に影響があるのでこれぐらいにしておこう。

まさに臼杵のイメージづくりと活性化を表向けにアピールするべき
市役所の顔なるこの課は、
公営人間博物館というか
ミックスベジタブルなプロジェクトチームである。



今回はこの中でも
私の中学時代の同級生であるT君が珍道中のキーパーソンなのである。



本人の希望のため実名はひかえさせていただくが、
このT君=ト○ム君の発案で
7月3日、イベント「サーラ・デ・うすきミワリーナイト」を行った。


ミワリー活動としては久々に市役所との連携をとり、
参加者約40名という大好評のツアーとなった。



で、
何故ミワリーでもないト○ム君にスポットを当てるのかと言うと
このツアーの企画・準備・運営において
彼の奮闘&天然ぶり・不可思議な言動・行動が
夏の暑さを吹き飛ばすかのようにエネルギッシュだったからだ。





ある日、ト○ム君から電話がかかった。

携帯電話を耳にあてた瞬間、


「あの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」と、





津軽民謡の発声練習のような声が聞こえ









「えーーーーと、
サーラ・・・で    あのミワリーの〜
七夕が
えーと 夜市が あ  いや

平井家・・・・でな 
ツアーを・・・ 

何人来るかわからんけどしてもらおうと思いよって・・・・」




という





「はぁ?」




まるでオカマが瀬川瑛子のモノマネでもやっているかのような口調、
極めてとんちんかんなる単語ばかりの連続攻撃
私は「一体何の連想ゲームなんだこれは・・」と思った。


これは彼特有の
”言うべき事がありすぎてパニック症状”なのである。

しかし、長年の付き合いから、
すでにこの暗号の解読方法を身につけている私は
彼の断片的キーワードテトリスのごとく組み合わせ
瞬時に訳す事に成功した。


ようするに
サーラ・デ・うすきを中心に
夜市で盛り上がっている商店街や
七夕の節句祭りをしている旧平井家の屋敷などを通る
妖怪ツアーをやってほしい・・という事なのだ。








ト○ム君「じゃあ 打ち合わせしてぇけん 今から行っていいかなー」





「いやいや いいよ 大体の内容はわかったけん!」



別に私は今から来るのを拒んでいるのではなく
混乱にまごつく同級生への気配りのつもりだった。






すると


ト○ム君
「内容 わかったかなぁ? ははは よかった〜。」


と言う・・・・・・・
















わかるかーーーーーーー!

相手が俺だから分かったんやぞ!










さらに これで終わりと思いきや


「あ ちょっとまって  ちょっとまって 
えーーーーーーーーと  
それでですねー」








ええい!うろたえるな!!









「あの えーーーーーーーーーーとその
実は  えー あ そうそうそうそう

8月・・・・あ  いや 
7月3日なんやけど、大丈夫かな〜?

















お前が大丈夫かぁぁぁぁ



















とりあえず
同級生として見捨てるわけにもいかないし
織姫&彦星の切ない伝説である”七夕”
臼杵の「負の遺産」ミワリークラブを
力ずくで融合させるという東洋一ユニークな発想
ウイリアム・テルのごとく心臓を射ぬいた。


面白そうなのでやってみるか・・・・・・




だがこの電話はト○ム君の

空前のスットコドッコイへの”のろし”でしかなかったのだ。







しばらくして、ト○ム君から、またしても相談を持ちかけられた。


このツアーの参加者のみなさんに、参加賞として何かおみやげを配布したい・・というのだ。



「なんかこう・・・・・・・手軽に持って帰れるモノで・・・
それでいて夏らしいモノで
妖怪らしいモノで・・・
なんかねぇかなぁ
ちょっとしたモノでいいんやけど」



というが、
大した予算も立ててないであろうイベントのため、
私は
「おみやげ?   そんなもん・・別に配らんでもいいやろ 
予算も無ぇやろうし」

と言った。


すると彼は

「あ  じゃあ俺が自腹を切ってもいいけん!
参加した人が”思い出”になるような事をしたい」


と言い切ったのだ。



今まで
頼りなさげで、自身の主張の薄いヤツとばかり思っていただけに
その一言が私には
ピョンヤン放送のアナウンサーのように力強く聞こえた。


自腹を切ってまでプレゼントをしたいというこだわり・・・・

それに何よりも
オズの魔法使いに出るブリキのヤツのようなキャラクターというか
ムーミン谷のならず者のような容姿からは想像もつかぬ
「思い出」というエレガントな言葉が
彼の口から発せられたのは驚きだった。




なんだ・・・・・・・この町おこし正義感
自分の財布を犠牲にしてまで
参加者に思い出を与えたい・・・・・とは








自己犠牲&正義感











何パンマンだ!お前は










どこか力の入れ方を間違ったような熱血ぶりだが
どこか放ってはおけないヤツ・・・・・・


そこまで言うなら何か考えてやろうじゃないか。








「で いくらなら出せるん?」と聞いた。









すると








「えーーーーーーーーーーーと
一人
100円分ぐらい・・・かな」

















セコい



セコいぞ!ト○ム君!




今時 100円じゃあ 

住民票だって取れんぞ!







しょうがない・・・・じゃあ100円なら


まず100円ショップに行って紙の部分に絵柄のない風鈴を買って来なさい、


その短冊の部分に私が妖怪の絵を描こう、

そうすれば夏らしい妖怪チックなおみやげが安い予算で出来る
すなわち、
モノは安いが世界に二つとない妖怪風鈴が完成するじゃあないか


・・・・とアドバイスした。



それを聞いた彼は












「ぬほっ んん あっーーーーーーー!! 


そ それいいなあーー!!」









まるで名探偵コナンの単純な推理に感動する小学生のように驚き
長い長い便秘から解放されたような爽快な感じで
尚且つ私に対して
天才発明家にでも接するかのような態度に変わった。
そして
最初の「ぬほっ んん」なる見事な宇宙語が一体何を意味するのか未だに解読不能だが
とにかく「これでいこう!」という事になった。

これでト○ム君も
自分の希望どおりの企画に一歩近づき
お互いに納得できる演出になりそうだ。



「じゃあ忙しいやろうけど・・絵の方はお願いします!」

「わかった!」




が   しかし・・・・・これが
後に私を意外な面で震撼させる悪魔の契約であり、
さらなるト○ムワールドへのパスポートであることなど
気付きもしなかった。




数日後、
配達中の私に、またしてもト○ム君から電話があった。

「うっほんっ!」という自身満々な咳ばらいの後

「今日、風鈴を買ってきたけん!」という。
その声は
一人100分の商品を購入したくせに
不老不死の秘薬でも手に入れたかのような勝ち誇った様子だった。


「 えーーーーと それでーーー
さっき店に風鈴をーーーー届けちょるけん・・・
それに・・・・
絵を描いてくれたら取りに行きます」



「了解〜・・・」



店に戻ると数十個の小箱が詰め込まれたビニール袋が届けられいる。



この中に入っている風鈴の紙全て妖怪を描かなければならないと思うと少々辛い。






とは言え
何の変哲も無い「素」の風鈴
ミワリーらしく変身させるのは私の役目であり、腕の見せ所である。

よぉぉぉぉし!
子供たちがゾクッとするような

クソ暑い夏の夜をヒンヤリさせるような
おどろおどろしい妖怪風鈴を作ってやるぞ!








箱を開けて糸をつまみ上げ、ぶら下げて見た・・














ゆっくりと箱から登場する風鈴とともに






何故か
ジョーズのテーマが聞こえてきた・・・・・









そして・・
ここで私はようやく
イヤな予感がした・・・・・






想像の中で
シンプルなイメージを膨らませていた私の目には




世にも恐ろしい物体が飛び込んできたのだ・・・

















なんと風鈴のガラス部分には・・・・・






サマービーチ楽しそうに横歩きする
キュートカニさんが描かれていたのだ

















「チリリ〜〜ン♪」






「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?!!」








ビックリだ! ドッキリだ!



それに
ガッカリだ!









サンタクロースに「ゲームが欲しい」と手紙を書いたら
「ミニ将棋セット」が送られてきたぐらいガッカリだ!









た  たしかに短冊の部分には何も描かれてはいない
鈴の所、つまりガラス部分にこんなファンシーなイラストがプリントされていては

短冊に何を描こう
ちっとも恐ろしくないに決ってる・・・・


すぐに電話すると
「何も描いてねぇのが半分しかなかったんで・・・・それにしたんやけど・・いいかなあ??」という



お前は絶対に
こだわる所を間違っとるぞ!


それに

お前は
何でそんなに

あるもので我慢するんじゃーーーーー!!










母親に「
ガムばっかり食べたらいけません」と言われ
「じゃあ
で我慢する」と言う
うちのガキといい勝負だ・・・














ト○ム君!・・・・・・いや夏泥棒!


すぐに返品してこーーーーーーーーーーーい!






7/3 当日・・・・・・・

我々ミワリーメンバーはこの夏のメインイベントとして気合いを入れたおかげで
スムーズにツアーを遂行した。

M君=ムカイ君のご協力で妖怪紙芝居が
なんとガラスに映し出されるといったハイテク効果も登場し
参加者の方にも楽しんでいただき、大成功に終わろうとしていた。

ト○ム君はというと
義経の八艘跳びのごとく現場を走り回り
ゴール地点のサーラに着いた頃には
産卵後のウミガメのように疲れ果てた感じだった。

ツアー最後の締めくくりに
「それではみなさん・・・素敵なプレゼントがありますので集まってください」
と言っているト○ム君。
返品して買い直し、妖怪を描いた風鈴を
「ぶら下げるものがない」というので
私がクリーニング屋のハンガーを貸したところ
その針金状のハンガーを何の飾り付けもなし
数十個の風鈴をぶら下げているため
クラゲ専門の漁師か、はたまた下着泥棒にしか見えない状態で登場した・・・・

その陰陽道のまじないのようなポーズに
全てのオチを持っていかれたようで腹が立った。
というよりは
本人に悪気がないのが余計に腹が立った。



「町おこし」とは町にあるものを掘り起こす事である。

どこかわざとらしい避暑地的な情緒というか
輸入された臼杵らしさに媚びへつらう観光に圧迫感を感ずる今日この頃、
己のやれる範囲で精一杯
予算のかぎり目いっぱい、
ヘヴィ級にマイペースに
「あるもので満足できる」T君に
町おこしの真髄を見た。



ああ よかった 
臼杵の未来は君のホッペの輝きぐらい明るい。



頑張れ・・・・・
異次元公務員ト○ム君。

彼は今日も
「ひたすら単語ばっかりの連想ゲームのヒントを与えてくれる」という
新しい行政サービスをたった一人で行っている。