修楽旅行・八日市の旅
〜中編〜


次の日の朝

私は目覚めるなり、歌を作った。
この朝の絶望と不快感について多くを語るよりも
この歌詞を見て理解していただきたい。
そして
中島みゆきが歌っているようなイメージで是非心の中で歌っていただきたい。

「地上の星」のメロディで

「頭上の牛」







目をこする書庫マロ〜 

床に寝たミリタリー


みんな早く起きた〜 

熟睡することもなく



 二段ベッドの下 

眠れぬ猫侍

しかたなく目覚めた 

安眠することもなく





本尊のイビキを 誰も止めようとしない

ヤツは夢ばかり見てる



つらいよ 朝っぱらから

落としてよ 頭上のウシを

怖いよ 現地の宿の

部屋割りは モメるだろう




波香る美しき神戸の朝、
本尊にたたき起こされた我々は
到着時間を逆算したドタバタスケジュールに追われながら電車を乗り継いで行く。



乗りなれない電車内・・・
事例報告の緊張が徐々に私を脅かしてくると
「大丈夫だ、いつもどおりやればいいから。
お前ならやれる」
と猫侍。
心奥底を分かり合えた友情じみたセリフに聞こえるが
私のことを「おだてれば伸びるタイプ」だと知っていて
持ち上げているだけなのである。


近江八幡駅につくと、
朝飯を食い忘れた手塚治虫のような人が我々に声をかけてきた。
ミワリーHP常連で一度臼杵にも来てくれた松柏さんだった。(松柏さんごめんなさい・・・!!)
久々の対面でおまけに目的地も予想どおり八日市。
「奇遇ですねぇ」などとわざとらしい挨拶の我々。

駅前には八日市YEGの方が出迎えてくれており
我々を八日市まで連れて行ってくれた。
なんという心遣い・・・・我々のような者に対して。



会場には出展者のテントが並び
全国の妖怪好きや
夜の百鬼夜行パレードに備え、早くもコスプレしている地元の方々などでにぎわっている。
ちなみに本尊もここぞとばかりに自分の妖怪張子の店を出している。

楽屋に通されイベント開始までの間、いろいろな人と出合った。
地元八日市の方、青梅市の方、三次の方、境港の方、
いずれも我々と同じく妖怪まちおこしサミットの発表者であるが
スーパー小心者の私とは違って余裕の表情。
考えてみれば我々臼杵以外は
すでに一般の人でもある程度現状認識ありの都市であり
全国へ幅広く発信している立派な方々ばかり・・・
「私は前フリだけしますんで、あとは会長よろしく・・・モグモグ」
私とともに壇上に立つ本尊さえ緊迫感のないランチタイム・・・・
いつもの事だが彼の食した栄養分はにしか直通してない気がする。
ああ、それにしても昨日は旅行気分で呑みまくったし、
朝は朝で寝不足で、全くといっていいほど事例報告の練習などしていない・・
何を話せばいいんだ!!
落ち着かずに会場や廊下、トイレを行ったたり来たりする・・

しばらくすると廊下の係員さんたちが慌しくうごめきはじめた
数人に囲まれるような感じで和服姿の人が颯爽と通り過ぎる・・・

「@!!京極さん!!」

今までテレビでしかお目にかかった事のない大気圏より上の存在が目の前を歩いていく・・
私の中ではちょっと怖い人というイメージだったのだが
実際見てみると何故か「カッコイイ」の一言だった・・
そうか、私は今日この人たちと同じ舞台に上がるのだ・・
妖怪という絞られたジャンルではあるが「世界〜」と名を冠したイベントにて
たかが3万人の臼杵市代表としてわが町をアピールしなければならぬ。
そしてこれこそが過去やってきた事の一つのおさらいであり、記念であり、成果である。
そう考えるとまた小便と言う名の意地悪さんが膀胱を刺激し
緊張という名の悪魔が胸を激しく小刻みにノックするのである。

ああまた・・さっきから考えているくせに全然思いつかない・・・
私は何を発表すればよいのだ!
何を自慢すればよいのだろうか?

時間は残酷にも私に考えるヒマさえ与えず、世界妖怪会議開始・・・・




ステージを見下ろす観客席は、ほぼ満員。
我々発表者はその最前列の方に座った。
無数の視線に強張る頬・・威圧感・・

境港水木ロードの方々と物の怪プロジェクト三次の方々による発表中も
すでにプレッシャーに押しつぶされそうだった。
両前者の見事な活動報告立派なプレゼンテーション
それに比べると
我々がいつもやっている事は、なんてミクロな活動ろう・・
格が違うし規模も違う・・
ただ単に近所の子供をとっ捕まえて
無理矢理話をしている押し売り語りべである。
一歩間違えればそんじょそこらの説教くさいオヤジなのだ。

こんな活動・・発表できるかぁぁぁ


こういう時、私の頭上には自分をダメダメ人間へと落としこむ病魔とともに
一瞬だけ緊迫した状況を忘れて無関係で不謹慎なこじ付け回路が作動する。

今回の発表者は5団体
我々はちょうどそのど真ん中の3番手
ゴレンジャーで言えばキレンジャーに位置する。

そうだ、キレンジャーになろう・・

リーダー格アカレンジャーや、ワイルドなアオレンジャーでもなく
食いしん坊のオッチョコチョイ
そしてチームのムードメーカー
元祖ヒーロー戦隊の一員でありながら唯一のズッコケ役
カレー大好き、方言丸出しキレンジャー

他の真面目な発表にビビらず
普段、ツアー客を相手にやっているように無理矢理オチャラケに持ち込めばよいのだ。
この5組のバリエーションから言ってもアホを買って出るような団体は我々しかいまい。
それに見ている方々にとっても、シートに長時間拘束され
ひたすらわが町自慢ばかりを聞かされることは不甲斐ない。
間違いなく、いや本当に間違いなく余計なお世話だが
ちょうどここらで無責任に飽きさせない工夫が必要だ。
このタイミングで肩に力の入らぬ馬鹿な田舎もんが登場する事で
全体の流れにもほどよい波が出きるに違いない。
たしかに今日の観客から見れば我々は九州の田舎もんかもしれないが
それでもよいのだ!
なぜなら、キレンジャーはコテコテの熊本弁を発し
今思えばちょっぴり笑えないジョークなぞなぞを繰り出す事によって
コミカルでローカル色丸出しのキャラを作り出し、
あのアカレンジャーでさえ
どんなシリアスな場面であろうとも
あんな劇画チックな厳しい顔「大ちゃん」
ちゃん付けで呼んでしまうほど
憎めない信頼性と仲間愛を植え付けているではないか!


それに
他の4団体が全国的にも「メジャー妖怪名所」であるのに対し
臼杵は小粒で貧乏臭い妖怪ばかりである事もさっきまでは恥じていたのだが
もうそんな嫉妬じみた恥かしさは捨てよう。
キレンジャーを見よ!
一人だけ武器無し素手で闘っているではないか!



あっという間に
前者、三次の方による地域活性意欲の満ち溢れる発表が終了した。


いよいよ次は
私の、
いや・・おいどんの出番たい・・


「続きまして、大分県臼杵市、臼杵ミワリークラブさん、お願いします!」


まかせんしゃ〜い!!




ステージに立つと、さっきまでの威圧感は半減した。
眩いライトを照らしつけられているこちら側からは
客席がうっすら見える程度だったのだ。
以前にもここ八日市でサミットに参加した経験のある本尊は
前フリといいつつもハキハキとしっかりとした口調で
慣れた感じのご挨拶。

「では会長。」とふられた私は、もう
緊張すら微塵も残っておらず、乗っけからいつものミワリーツアー口調で喋っていた。
今考えても冒頭の一片は何を喋ったかちっとも思い出せない。
ただひたすら
自分の家庭や一同馬鹿ばっかりの親戚話などを近所のおばさんたち
面白おかしく喋っている自分と何ら変わりなかった。
ミワリーよ、人前で話すなんてことは
何年か前まで苦手中の苦手だった私をよくぞここまで成長させてくれた。
たとえ内容がくだらない事や背中を押されてやっていることとはいえ
「緊張」とはお金では買えない、いい経験であると気付いた。
その間の心境としては
肩身の狭そうな自信なき発表するよりも
全国から集まっている妖怪愛好家に向けてこの際思いっきり目立ってやろうという感じだった。

加えて、これから地域発信型の妖怪町おこしを行おうとしている人々
やりたいけど恥かしいとか、仲間がいないとか、何からやっていいかわからない人
「なあーんだ こんな馬鹿でもできるんだ」
と励みにして欲しいと願い、
あまり力まず、安心させるために失敗談やマヌケ話も織り交ぜながらしゃべった。
活動を発表しながら頭の中でまとめようとするが
余計に混乱する己に腹が立つ・・・・
言い訳のようにはなるが
実は言いたい事はエベレストのごとくあった・・
簡単に言えば
「できる範囲でやれる事をやっている、
批判もあれば不満もあるし失敗だってたくさんある・・・
だから何だ!面白いんだからいいじゃあないか!
君も立ち上がれーーーーー!」

という熱い熱い内容なのに
あの場所にいた方はご存知かも知れないが
その内容の半分も言えなかったのだ。
情けない・・・
が、しかし
自動的にあのインチキ臭く、物凄く貧乏くさく、手作りか手抜きかわからぬ活動
かえってけっこうマッチしてしまい、それなりの笑いは収穫できた。
そしてそれを助けるべく、
ネタあわせなどやっていないのにノッてくる本尊
こうなると自分でも止める事は不可能になってしまい、
よせばいいのに主催側の八日市の方々目掛けて
「”臼杵ミワリー”は”薄気味悪い”から来てますが
”八日市は妖怪地”とどっこいどっこいですねー」
などと
怖いもの知らずな発言をしてしまった。
やばい・・・口がすべった・・・


ところがこの調子に乗りすぎな田舎もんに対して
客席からはなんと笑い声と拍手・・・・・
笑い=コミュニケーションと言わんばかりの
ステージの盛り上げ方だ・・
ありがとう・・・みなさん
語り手と聞き手のかけ引きをわきまえていらっしゃる・・
そしてその拍手は「もういいよー充分わかったから、そろそろ締めなさい」という
どん詰まり者へのやさしさも含まれており、
私への葬送の戯曲のように聞こえたので発表を終えた。


そこそこのアピールができたし、活動内容も滑稽ではあるが伝えることができた。
まさにいつもどおりのトークをやった。

猫侍の言っていたことは本当だったのだ。


飾ることなく、背伸びせずに普段のまま喋れというアドバイスは
臆病者の私に的確で無理ないピッタリな指導だったのだ。
ステージを降り、席に戻ろうとすると
発表中、プロジェクターの操作係をやってくれた猫侍がすでに戻っていた。
いつも毒舌無愛想の彼に今回ばかりは感謝せねばなるまい・・・・
疑ってすまなかった・・・君の一言で私は救われたような気がする・・
そう思っていると猫侍の方から耳元でささやいてきた。

「馬鹿だな・・・お前は・・・」

「なにぃ!!!」
ムカー−−−!


そりゃねぇだろ猫侍・・・
腹立つなぁこいつ・・・・・と思ったが

「でも よかった。よくがんばった・・・」と付け加える。

なーーーーんだ。素直にそう言えばいいじゃあねぇか猫侍・・




もっと腹が立ったのは、
後者、青梅の方や八日市の事例発表を聞きながら
自分は大して喋ってないくせに疲れきった表情で
コックリコックリと眠りかかっている本尊だった。



真剣に見入っている客席にイビキが聞こえてはならないと思い、
ひじで本尊をやさしく起そうとする。




すると
なんと、そのひじを
眠ったままのめんどくさそうな態度ではね返し、
「チェッ・・・・・」
舌打ちしやがったのである!





おんどりゃ〜おっさん!
何様だ!
何の夢見てるんだー!



そういえば朝の移動中の電車内でも熟睡してたよなぁ!


私だって少なくとも
あんたよりは寝不足で、
朝から眠りたかったけどあまりの
緊張のため眠れなかった
今もこうしてなんとか目をこじ開けて
睡魔と戦っているのに
なんだそのあしらい方は!!
何が「チェッ」だぁ!
何回寝りゃ気がすむんだーーーー!
寝坊助が!!


それによーーーく考えてみるとぉぉぉっぉ


そもそも
私が寝不足なのはーーーーっ


朝方のあんたの爆撃機のようなイビキのせいだろうがぁぁぁ〜!!

じゃあ何かい?


「他人は寝ちゃいけませんよ、でも自分は寝ますよ」か?


いいかげんにしやがれ!
この薄らとんかちがぁぁぁぁ!!!


燃えたぎる怒りを押さえながら、それでいてあたりを気にしつつ、
いつかまたこの珍獣が眠っているスキに
顔中洗濯バサミにしてやる・・・と固く心に誓った・・・・
が・・・・・
その巨大な顔面には「かなりの量が必要」と思いあきらめた・・



八日市の発表が終わり、「妖怪町おこしサミット」は幕を閉じた。
その後、ミニコンサートが行われ、
本編である「世界妖怪会議」が始まった。

京極さん荒俣さんらの登場に会場も割れんばかりの拍手と歓声。
とくに水木先生の登場には感動だった。

出るなり「クソ」の話を始め、観客を釘付けにしたかと思えば
すこぶる感覚的な妖怪論へと展開。
それは荒俣さんがツッコミ役に見えてしまうほどで
他の出演者との会話とは全く脈を成さぬ無関係な話を前置きもなく始める水木先生。
その天然ぶりに客席がどよめくと
忘れた頃にまた「クソ」の話・・・・・

本当に面白かったし、楽しかった。




何だ、そうか・・・・・・先生方も「妖怪」を用いて
ただ単に怖がらせたりするのではなくて
「妖怪」を楽しんでるのか・・・

じゃあ我々が普段やっているツアーもそれほど間違ってはいないな・・
もちろん、全然スケールは違うけど・・・・