怨味(うらみ)〜前編〜


私は今年で33歳になる。


子供も三人いる。


大好きなゲームボーイアドバンスもそろそろ卒業しなければならない年頃である。

そして
髪の毛を全部茶色黄色にすれば若返るというバカな勘違いをしている同級生たちに
注意をしてあげなくてはならない年頃でもある。

だが、
自分で言うのもナンだが、
この歳になっても私はやんちゃ盛りなのである

付き合いの深い友達に対して
ささやかなイタズラをしてしまうのだ。



2003年最後のミワリーツアー・亀城の作戦の夜の事。

打ち上げ反省会を終えた後も
「腹が減ったー」と言っている過食症副会長大喰らい役場狸を引き連れ
カレーのうまいおっさんの店へ向かった。

しかし、この日に限って閉まっていたのだ。


かわいそうな食いしん坊コンビに私は
「じゃあうちでラーメンでも食べるか?」というと
「え? どうせインスタントやろ?」「ははは」
と、
せっかくの私の好意を踏みにじるような言い草である。

ここで私(会長)の心の中の
イタズラ好きな「怪長」が目を覚ますのである。


「こいつらにすんげぇまずいラーメン食わせようぜ」


するともう一人の気の弱い「快長」の方も目覚めて


「だめだよ〜  友達なんだから やめようよ」という


怪長「うるさい!腰抜け!黙ってろ!
こいつらは俺様の
セバスチャンとジョリーのような友情をけなしやがったんだぞ」

快長「やめようよー、かわいそうじゃないかー」


こんな心の葛藤を顔に出さぬまま
現実世界で目の前にいるハラペコ二人には
「俺はラーメンには自信がある!」と大嘘をついて
真冬の隙間風吹き荒れる路地をくぐり抜け
我が家に到着。


冷蔵庫には非常食のインスタントラーメンがある。
他にあるのはタマゴと干からびている野菜と各種調味料ぐらいだ。
「インスタントと言えど本格的に作ればうまいのができるはず
それに冷蔵庫の残り物のわずかな食材でいい仕事をするのが料理人だ」
と、料理人でもないくせに
酒の勢いで「料理の達人きどり」の暗示にかけられている私は
持ったこともない包丁を持ち、ネギを切っていく。

この時点ではまだ好青年の快長の方が秩序を保っており
「タマゴも入れてあげよう」などとちっぽけなやさしさがどこかにあった。

しかし、居間のほうで「寒ぃなー、この部屋は」と
自分の家のようにくつろいでいる副会長・役場狸を見た瞬間、
怪長がまた悪巧みを始めるのである。











怪長「おぉ おぉ かわいそうに・・・・
寒かったろうに・・・・
今、暖かいスープを作ってるからねぇ〜・・・・
ヒッヒッヒッ・・・・」










まるで
腹いっぱいに食わせてからこいつらを食おうとする鬼婆のごとく
その醜い企みを隠す含み笑い。

そしてありったけの材料を使いメルヘンチックな三分クッキングが始まった


そのレシピは・・





インスタントのとんこつ味ラーメン二人分


ネギ


タマゴ


にんにく


塩コショウ少々


砂糖も少々


バジリコも少々


ゴマ油適量


ポン酢適量


粉末パセリと青海苔






コクを出すために「焼肉のタレ」一杯
「しゃぶしゃぶ用ゴマだれ」一杯
和風ドレッシング二杯





風味にしょうゆ&バニラエッセンス




辛味を増すために七味唐辛子





まろやかさを出すためのマヨネーズ

















普段あまり使わないので大量にあった「きな粉」大さじ5杯







隠し味に
ヨーグルト一杯






この際
ヤクルトも一個分













そしてみなさんご存知
「牛乳」














偶然手元にあったので
ピーナッツ・バター







とどめにミルク・ココア











トッピングはもちろん
「アバレンジャーふりかけ」











これで完成か?
ちょっとまてよ・・
何か足りない・・・・・・















「季語」である。

















11月といえばやはり「枯葉」である。












まわりを見ると
枯れてしまって仏壇から下げられた菊の葉が目に付いた。


これを粉々に砕いて投入することによって
グツグツと煮えたぎる血の池地獄のような鍋に
小さなを演出した。



気がつくとラーメンは伸びきってしまい
ラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜メンへと進化しており
煮れば煮るほどきな粉とアバレンジャーふりかけがヒタヒタになり
水分が蒸発してトロミを増してゆくので火を止めた。


出来た!






「別府じゃないのに地獄めぐりラーメン
山賊風リゾット」
の出来上がりである。





この世のものとは思えぬ辛ずっぱい香り
恐怖を描いた絵画のような色合い
明らかに舌が嫌がっているのだが、
勇気を振り絞って一口だけ味見してみると








う〜ん
深い味わい・・・









そして
おそらく何度うがいしても
しみ付きそうなバッド・テイスト!












程よく酔っ払って気分のいい二人に
「あいよ!おまちどうさま!」と威勢のいい店員のごとく差し出すと
いつもならゲテモノでも昆虫でも出されたものは何でも食べる副会長が
「うわッ!何じゃこりゃ!」みたいな反応で、しかたなく食べ始め
今まで私に見せたこともないような非常にムズカシイ表情を浮べ
その湯気と香辛料に時折むせかえりながら
そして私の方を疑いの目で見ながら食す。

それとは逆に
役場狸は「ウン、うまい!けっこういける」と言いつつも
寒さと飢えに麻痺した味覚が徐徐に回復するうち
「何入れたんっすか?」とようやく私の陰謀に気付く始末であった。









さて、こんな儚きイタズラ欲求を満たす私にも
思わぬところで逆襲を喰らうことがあるのだ。


つまり、昔年寄りからよく言われた
「何か悪さをすれば、必ず自分の身に帰って来る」
身をもって実感してしまうのである。




後編に続く