夏魔つり
ミワリー活動は一環性のあるシリーズの連続はしない。
参加者が飽きないように仕組んでいるようにも見えるが
実は私がただ単に「飽き性」だからである。
この夏、妖怪シーズン中のミワリークラブは
形式の異なるガイド・ツアー・講演会を全てやってのけ
その間行われた伝統行事にも積極的に参加した。
今回はスペシャルハードな夏ツアーと
奇妙な出来事をご紹介する「小ネタ集」である。



5/17(土)第二回臼杵ミワリーナイトツアー


この日は参加者15名という大人数を引き連れ、
第一回の有料ツアー同様、旧城下の妖怪話をして歩いた。
中でも熊本から参加してくれた「黒翁チーム」には驚いたし嬉しかった。
この黒翁チームのようにある程度妖怪の基礎知識のある人のほかにも
市内から参加の親子づれや
怖いもの見たさの若者達もいるわけで
ホラー路線とかほのぼの路線とか、路線をしぼると
逆にやり辛くなってしまうので、
人を変え、手法を変え、テンポよくやるのがコツである。
本尊はひとつひとつの妖怪と
現れた時代背景や出現ポイントの史跡について詳しく熱弁してくれるのだが
単なる説教くさいわが町自慢というような印象を与えてはいないだろうか?
一話の最後は必ず
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・でした。   もしこしぱちりん」
と締めくくる。
これは民話や昔話のひとつに区切りをつけるお約束のような風習で
大分県内にも「もーしこしぱちりん 米ん団子みっつ」とか
さまざまな言い方があるらしく、活動初期からこの習わしを見習っている。

だが、今日の本尊は元気が無かった。
実はこの数週間前まで彼は寝込んでいたのだ。
ゲテモノ喰いをしばらくやっていないためにウイルスに対する抵抗力が衰えたのか、
または、身の程知らずの美人好きに神が天罰を与えたのか、
今まで健康そのものだった本尊にしてはかなり重傷だったようだ。
したがって、
その病み上がりのこんにゃく芋のような肉体では
いつもの若い女性参加者への熱烈光線は若干控え目だろうと思いきや
半ば夢見ごこちの顔の火照りで
視線だけはゴルゴ13のごとくしっかりとターゲットを狙い
まさに♪冷めた仕草で熱く見ろ♪状態になっており
「俺に触れたらヤケドするぜ」と言わんばかりのエキゾチック・ビームを放射している。


コースの半ば、一同はミニモンスターをクリアしながら
常時設営型の巨大ボス妖怪パビリオン「臼杵城」の前に来た。
まずはこの城そのものを示す「巨亀城」の説明である。
おそらくメンバー用の資料を丸暗記してきた鹿天狗は
おふざけ以外では緊張する習性を持っており
普段鍛えている肉体なのに目が泳いでいるという不思議な仕草が
まるで男子体操選手に無理矢理落語をさせているかのような
見ている方も気まずい語り口調ではあるが
二度目の参加であるおばちゃん軍団は
そのゴツイかわいさらしさに母性本能をくすぐられたのか
運動会で演技する孫を見るような目に入れても痛くないえびす顔・・
我々は今、
何か本当の意味での社会貢献活動というか
福祉活動をやっている手ごたえを感じた。
鹿天狗は「巨亀城」の説明を終えたが

「・・・・・・・・・・・・・」

しばらく何か考えた様子で最後のお約束合言葉を言う
「え〜〜と・・・・・・・もしもしぱちりん・・・・・・」

多分、「もしこしぱちりん」という言葉と
真剣に話を覚えてきた大亀=「もしもし亀よ」の連想から
言葉がドッキングしてしまったのだろう。
今まで我々に気を使って小声で話していたおばちゃん軍団も
一斉に鳥かごから森に放たれたかのごとく、
目の前で恥かしがっている「さわやかお馬鹿さん」に爆笑するのであった。



私の担当は臼杵城畳櫓に出現したという「赤壁」の話だった。

「切り殺された武士の霊が壁に残り、
夕日に照らされると赤い人の形が浮かびあがっていたんです・・・・
そしてなんと!今もここにある鐘は誰もいないのにゴ〜ンと鳴るんです・・・」


いかにもリアルに、自分もおびえているかのように喋りながら
オチに持っていくための導火線を密かに伸ばしていた。
ところが、第一回ツアーで例のネバーウンチング・ストーリーを長々しく喋った
特別ゲストの元先生おばちゃんが口を開いた時、
私がじわじわと暖めたオチまでの演出は一瞬にして崩れ去った。
「ああ コンピューターで鳴りよるんやろ!」
私「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
タイマー式の無人鐘つき機が設置されているというオチなのだ。
「何でそれを言うんなーーーー!!」
オチを持っていかれ悔しがる私に
「あんた知らんかったの?」みたいな自信満々な元先生おばちゃん・・
このおせっかいな錯覚によって、
今まで控えめであったおしゃべりの扉が開かれ
少し曲がった背筋が可変式ロボのごとくピーーンと直立になり
わずかに伸びた身長のおかげでようやく参加者の視界にひょっこり顔を出した。
そして「あんたたちは知らんじゃろうが・・・」
歴史景観が見直される前に失われていった数々の旧家の話などを息継ぎする間もないぐらいに話し出した。
さらに歩きながらの我々に小声で「また汚い話して悪いんじゃけど」といいながら
「この前言うたせんちんばあさんなんじゃけど・・」となり、
「昔はうんこだって立派な資源やったんで〜」
またしてもネバー・ウンチング・ストーリーへの果てしない旅が始まりそうになったので
これぞまさにウン故知新などとアホな名言を吐きながら
さりげなく大友宗麟の話にすり変えた。









6/28(土)元気塾
市の生涯学習課から別の課になった役場狸は
その後、担当が変わっても指令を出してくる。
今年も「うすき元気っこクラブ」改め「元気塾」の子供たちに話をすることになった。

このような昼間のガイドで、おまけに相手が子供ということであれば
実際に見れる「法音寺の毘沙門様」や「三重塔の天邪鬼」など妖怪っぽいポイントを重点的に回る。

二日酔いの私と、第二回ミワリーツアーでデビューした新入会員説教パンダの二人は
じめじめと蒸し暑い夏のうす曇りの空の下、
「元気」とは何かを教えるための塾「元気塾」と言うよりは
元気が有り余っているとしか思えない小学生たちを引き連れて歩いていく。

臼杵川を二つに裂く島、松島の中にある住吉神社に立ち寄るのも
日中ガイドらしい順路である。
本尊がいないので、話のほとんどは私の知ったかぶり講座であったが、
臼杵川に伝わる河童伝承については説教パンダが担当。
二回目ではあるが彼女の子供慣れした口調にはみんなが食い入るようにのめり込む。

そこで私もくやしいので、子供に興味を持たせようと
「河童はポケモンみたいに進化するんぞ〜」
と、妖怪とポケモンにも共通の変化過程を教えてやろうとした。
「臼杵の河童は秋彼岸になると山に上がり”せこ”に変わる
もっと山奥では”ひょうすべ”と呼ばれる」ってな感じで喋ると
不思議に子供たちも「へぇ〜」と感心し出した。
かと思えば、
水の属性の河童に何の属性を足せば”せこ”に進化するん?」
とか
「じゃあ火の属性を与えれば”火の玉男”になるはずや!」
などとゲームモードになってしまい
「どうやってゲットするん?」とか
返答に困ってしまう質問をシャワーのごとく浴びせてくるが
臼杵市民のほとんどが見ているケーブルテレビのカメラと言う軍事衛星が監視しているため
「うーーーん、おもしろい質問だねぇ〜」と
心の脂汗を必死でこらえる私であった。

龍源寺の三重の塔に到着し、「天邪鬼」の説明をしているとき
子供たちがケンカをし出した。
一人はむなぐらを掴み、もう一人のコブシは相手の頬に「ブニョリー」と突っ張りあって
まるで「あしたのジョー」のスローモーションのような状況に
ケーブルテレビのカメラマンも耐えかねて
「こら!やめんか!」と止めに入った。
それを「また お前らか」と二人を摘み上げて叱っているのは
ジュニア・リーダーと呼ばれる高校生のお兄さんである。
このジュニア・リーダーのおかげでガイドもけっこうスムーズに行えるのだが
中には私よりも巨大な高校生もいて
巨大なだけでなく、ちょっとだけヒゲが生えており
見た目は30代にしか見えないおっさん度80%のヤツがいて
坊主頭リュックサックという山下清そのもののスタイル
「会長、こいつらは俺におまかせください」という。
そして、その後ろをトボトボとチビッコ達が連なっていく姿と
「あんたら しっちょんなあ〜」と
わりに汚い臼杵方言で話し掛ける説教パンダとの場面はまるで
日本風ムーミン谷のようなのどかな風景であった。







7/24沖縄の子供たち
臼杵出身で沖縄在住の山本さんは毎年、夏休みに沖縄の子供達を連れて帰ってくる。
地区の公民館を借りて三日ほど滞在し、その間臼杵の町や祭りを体験させる。
その初日、我々ミワリーに講座をやってほしいと依頼があった。
今回は「元気塾」の時とは違って、夜の神社が舞台なので「肝試し」を追加する。

本尊、私、副会長、猫侍、ミリタリー、説教パンダ、
各々得意分野の妖怪話を発表していく我々。
臼杵の子供よりはほんの少しテンションの高い沖縄の子供達は
身を乗り出して話に聞き入っている。


猫侍が臼杵と沖縄に共通する魔よけ「石敢当」の話をすると
「ああ 知ってる知ってる」「うちの近くにもあるよ」と反応し、
文化の流れ道が我々と彼らの日常に
無意識のうちに結ばれている気がして嬉しくなった。

静かに張り詰めた夜の真っ暗な境内、
はしゃぐ子供と大人気ない大人=我々
それをものの見事に象徴しやがったのは
我等の迷惑ヒーロー、ミリタリーである。

「ガイドは恥かしがらずにやる」がポリシーのミリタリーは
昔のポットン便所に住み着いていた「せんちんばあさん」
より詳しく説明しようと「せんちんばあさんポーズ」でアピール。
上から落ちてくるものをキャッチする状態で両手を頭に乗せ、
足はジャッキのごとくほぼ真横にガニマタを構えて見せて
「こーーんな感じでうんこを受け止めるんで〜」と
ゾンビの屈伸運動のようにカッコン・カッコンとやって見せ
そのくせ間抜けな体勢とは正反対のかがやきスマイルを放っている。
その全体像に対して
「今、マイケルが使っているのは新型のストレッチ・マシーンで・・・・」
アメリカのテレビショッピング風にご紹介したくなるような気分、
当の本人も子供の大袈裟な反応にまんざらでもなく
「いやあ ロバート、自宅でこんな運動ができるとは驚きだよ〜」と言ってしまいそうな
ツヤの良い固まり笑顔
そのサンダーバードの隠し子みたいな表情を見ていると
私は少し気分が悪くなった。

本尊が長ったらしい話をしているスキに我々5人は、
坂になっている参道でマスクをつけ潜んでいた。
我々が蒸し暑くゴムくさいマスクでじっとしていることも知らず
本尊が「えーそれから」と調子に乗って数々の妖怪話を追加していくのに耐えかねて
鳥居のところでは「まだぁ?」「まだ来んの〜?」と魔女&化物が叫んでいる。
ミリタリー&説教パンダの二人も
こうしてみるとなかなかの美女ではないか。


ようやく子供達が出発し、三角男や地蔵マスクの我々におどろきながら
副会長の待つ一番下へ向かい、妖怪マップを手に入れる。
肝試しも滞りなく終わり、境内にもどると
2日後に行われる「住吉祭り」のPRを含めて
副会長が挨拶をはじめた。
この沖縄の子供達は毎年「住吉祭り」のゲーム大会に参加し
持ち前のハイテンションな盛り上がりで祭を飾ってくれるのだ。
実行委員長でもある副会長は
「あさっては絶対来てくれ!」というと
「ぜったい賞品をもらうぞ!」「楽しみにしてます」と言ってくれた。
およそ三ヵ月間祭の準備に忙しかった副会長は
復元されたアウストラ ロピテクスのような顔でありながら
その子供達の元気な応援に感動していた。







8/20海辺児童クラブ
海洋科学高校の近くにログハウス風の児童クラブがある。
この日はガイドでも散策でもなく、教室での講演会みたいなパターンである。

本尊・ミリタリー・私。
この時点で嫌な予感・・・・
今までのメンバーパターンの統計から、すでに私の心の危険信号警告を発しているのだ。

教室は窓に黒い布をかぶせ、おばけの絵を飾っており
本尊・ミリタリーの異次元生物コンビ
「いいねぇ」「いいですねぇ」アバンギャルドなセリフを吐きながら
子供達に気食の悪い笑顔をニヤニヤ振りまいている。
でかくなった三才児のような本尊
手ぬるい平和授業への反発みたいなファッションのミリタリー
この移動式テーマパークのマスコットたちは
いつもながら入った瞬間から子供の興味を串刺しにする。

紙芝居とトークを交互に混ぜ、
子供達が眠ってしまわぬように時々おどかし系を入れる。
それでいて笑える話やミリタリーの下品なせんちんばあさんポーズを加えることで
ひとつひとつの妖怪話を印象深く焼き付ける。
ふと気がつけば我々は何度もこれをやっているおかげで
ベテランといっていいほどの役割分担話術&パフォーマンスを身に着けている。
馬鹿だ変人だと自ら言い続けてきた我々も、実は着実に成果を上げているのだ。
いいぞ!いいぞ!ミワリークラブ!

話もすべてが終わり、代表の子供二人が
「ありがとうございました」とザ・ピーナッツのごとく声をそろえてお礼の挨拶。
今日は無事に終わった・・・
はじめのイヤ〜な予感も私の取り越し苦労だったにちがいない。

子供達は今日話した妖怪でとくに気に入ったものを絵に描きはじめ
我々が帰る用意をしていると先生が
「ちょっとまってください。昼食を用意してますので・・」
我々は顔を見合わせ、思わぬ心遣いに顔をほころばせた。
すると部屋の前に出前の人らしきがやって来た。
昼食を受け取った先生がテーブルの上にドドーーーーンと並べてくれた。
我々に用意させた昼食とは、なんとうな重だったのだ!!!!

「マジでぇ〜? やったー!」
本尊「おおぉぉ〜」
ミリタリー のど「ゴックン!」

「お吸い物はポットに入ってます。ごゆっくり」
先生は当たり前のような素振りで向うへ行くが
我々は滅多に無いVIP待遇に驚きを隠せなかった。

その室内の様子を動物園の熊を見るように
ガラスにへばり付いて見ている子供らが先生にやさしく注意され
やっとおちついて豪華な昼を堪能できると思ったら
今度はミリタリーが
仏壇でじいさんを偲ぶばあさんのごとく
両手を合わせ「ありがてぇ ありがてぇ」うな重お祈りをはじめた。


まるで宝石箱でも開けるかのようにお重の中をのぞく我々三人。
これはきっと、ハードだった夏の活動のご褒美だろう。
それにしても、涼しいログハウスでの昼食ではあるが
同席しているのがこの
メガネオオサンショウウオ女バルタン星人でなかったらどんなに素敵だっただろう。
「うなぎを目の前にして、そんな贅沢を言うもんじゃない!」と気持ちを切り替え
スタミナ抜群のうなぎをかっ食らったのだが、
前に座っている女バルタンの方が
パクパクパクッ 「ああ うめぇ」 
パクッ「うんめぇ」
小鳥のさえずりのごとくささやき、
横にいるオオサンショウウオの方は
パクパクパクッ「う〜ん」
パクパクパクッ「う〜ん」
パクパクパクパクパクパクッ「う〜〜ん」
と、ドスのきいたハミングを奏でている。

一息ついた女バルタンが
「まあ うちはタレだけで十分食えるけどなあ」などと余計なことを言っているとき
私は脂ののったプリンプリンのうなぎを口一杯に詰め込もうとしていた。




まさしくその時である。
そして、またしてもミリタリーである。





「あのなあ  ほら、 食べた時のこと 覚えちょる?」

「ほぇっ ぶふっ!」

「おととしテレビの撮影のとき マムシ食ったやろ〜」


「・・・・・・・・・・・・・・・・ううううっ」

頭の中で蘇った恐ろしい蛇の思い出
目の前にあるうなぎが同化して、
口の中のモノが飲み込めずにいる私。
頭を押さえつけられておぼれ死ぬような気分

「ありゃ 臭かったよなあ〜〜」

まるでジャングルの奥で奇怪な民族にキングコブラを丸呑みさせられているような苦しみ。
そして口の中でニョロっと弾力の良いうなぎ・・
これはどこの村の勇気を試す成人の儀式なのだろうか・・
それにこんな苦痛は本当の勇気であってはならない・・

耐えられず「ちょっと その話題やめようえ・・・」というが
「我が辞書にデリカシーは無し」みたいな顔で蛇ネタをしゃべるミリタリー。
予ねてよりゲテモノ食いの本尊は
「そんなの気にしてたら人間生きていけませんよ」と軽々しく言う。
 うるせぇ!まだあんたらを人間とは認めてねぇよ!


そして血の気も引いてしまっている私の事なんぞお構いなしに
メガネオオサンショウウオは
エサを求める錦鯉のような口にお重の角をフィットさせ
カツッカツッカツッカツッ
女バルタンは
吸い物を「一滴たりとも残すものか」と言わんばかりに
ポットのボタンを何度も何度も
ジュロロロロロロロロロロッ
ジュロッジュロッ
 ジュロロロロロロロロロロッ


本気でこの二匹を麻酔銃で撃って眠らせようと思った。




善男善女の諸君
ミワリーツアー参加の際には
あの二人の無神経という病を治す医者を連れて来て欲しい。
そして、絶対にエサを与えないで下さい。