亡年会

散策
2002年は臼杵にとってすばらしい年だった。
この年に公開された大林宣彦監督作品・映画「なごり雪」は臼杵が舞台となっており
その効果で観光客も急増した。
観光地としての意識が市民にも膨らみ、昔ながらの古い店作りが増えていった。
ローマの町にも似た地形、辻の大海から二王座・八町の小川へと注ぎ込まれる道には
石畳がレンガ状に敷き詰められ巨大アミダくじを作り出している。
その歴史の刻まれた夜の町を歩く三人がいた。
私と本尊、それに鳥天(敬称略)である。

今日は臼杵ミワリークラブ忘年会。
波乱万丈・奇奇怪怪であった2002年を振り返りながら、
オフ会を兼ねた忘年会である。
これに参加してくれた鳥天に臼杵を案内している。
彼女は主婦でありながらマニアックな話題を得意とし
殿下と同級生ということもあり、昔なつかしいヒーローものに詳しい。
我がクラブに磁石のように引き寄せられたのもわかるような気がする。
でもよく考えたら臼杵出身の彼女に臼杵を案内している愚かな我々。
しかも本尊のような地球人でもない者が地球を案内しているのだから
余計なお世話というしかない。




カッチャン大王の悲劇

観光案内もほどほどに忘年会会場の独笑の店についた。
今日は年の締めくくりを象徴するかのようなメンバーが揃った
現存する日本最古のメガネ地蔵=本尊
それを守護しているというには全く役に立ちそうもない我々だが
ミリタリー&独笑の魔よけコンビだけはしっかりと本尊の鬼門・裏鬼門で役目を果たしている。
これといって余興やゲームをする訳でもなく、ひたすら飲むか喋るかのパーティーとなった。
そんな中、ミリタリーは鳥天と女性同士で積もる話でもしているのかと
一見微笑ましくも見える。
いや、ちがう!
多分、臼杵の人でも知らないような、知ってても言わないような下町バカ話や武勇伝をしているか
あるいはどんな貧乏野郎でも思いつかないような日常節約術を自慢しているに決っている。
それはきっと節約ではなくて一般人が「絶対にしたくもない」という一線を越えた
グロテスクな裏技に違いないのでよい子のみんなは絶対に真似しないで欲しい
ミワリー活動のあり方について猫侍とメガ鼠を筆頭に企画部門の者は
もう来年の事業内容で盛り上がっているが
副会長でありながら常に実働部隊の臆病河童は
その存在意義を自ら疑うあまり、思いっきりバカに徹している。
そして本尊以上にご隠居的存在のカッチャン大王は
今日もどこか寝ぼけている
そういえば消防団に所属している彼は真夏のある日、火事のサイレンが鳴り
大急ぎで消防車庫へすっ飛んで行ったが
誰一人他の団員達が集まらずに一人で出動しようとした。
しかし火事のサイレンと思っていたのは終戦記念日のサイレンであった。
それくらい昼間から寝とぼけている。
彼には二人の息子がいるが
お互いのチンチンに泣きながら噛み付き合うほどのオキテ破りな兄弟げんかをするという。
言いかえればムスコのムスコとムスコのムスコの戦いに悩む父親である。
したがってこういったバイオレンスな生活を忘れられ
夢見心地を邪魔されないミワリークラブは
彼にとっては憩いの場なのだ。





不思議なおみやげ
彼らがいつものように「鬼太郎がどうしたこうした」「マジンガーZがどうのこうの」と
とても大人とは思えない会話に飽きてくると本尊は違う話題を提供する。
「みんなで妖怪博物館作りましょうよ。資料も集めればたくさんあるし・・」
ミワリーの会合では必ず一度出てくる本尊の長年の野望である。
常にチャレンジ精神旺盛な本尊ではあるが
チンパンジーたちに向かって「金閣寺を建設しようぜ」と言っているようなものだ。
「ちゃんとした本部を設けて・・
そうだミリタリーに事務局をやってもらって・・・」
この時点でだれも聞く耳を持たない。
だってミリタリーに事務局を任せたらどんな軍事要塞が出来上がるかわかったもんじゃない。

こんなドロドロとした会話と誰一人まとめようとしない話題の中に
風穴をブチ開けたのは鳥天であった。
「あ!そうだ、おみやげ持ってきたんやけど」
鳥天は袋から何やらゴソゴソと取り出しテーブルの上に置いた。
そのおみやげとはなんと「地雷」だった!
「え?」
一瞬、無造作に置かれたそれを見て非難しそうになったが、よく見るとそれは
アーミーグリーンに塗装された缶詰だったのだ。
これは日本の自衛隊の非常食らしく、
普通のおみやげでは喜ばないミワリークラブへ精一杯の心使いであろう。
そしてミリタリーが言うには、その缶詰の中身が「たくわん」だというのだ!

さあ ここで2002年最後のミワリー流お馬鹿な推察が始まるのである。

「これは戦場で敵に発見されてもむやみに開けられないように
いかにも地雷か爆薬みたいに
カモフラージュされているのだろう」

「逆に言えば敵に向かって 俺は新型の爆弾持ってるぞ と脅すこともできる」

「いや!これを投げつけることで
これ自体が武器にもなる!」

そんな兵士見たことないし、見たくもない・・
それじゃあ世の中のすべての缶詰は武器か?!

「もしも食糧が無くなっても日本人はたくわん一個あればご飯何杯も食えるからなー」

ちょっとまて、それ以前にご飯はどうするんだ!ご飯は

「もしも敵に捕まって食料を奪われても
漬物を食う習慣のない外国人部隊は食えないからだ」

「なるほど!そりゃすげぇ!」「だからたくわんか、よく考えたなー」

まるで小学生がベイブレードの回る単純なしくみを知ってしまったかのようなちっぽけな感動。

「おそらく戦場でのわずかな休息に酒を飲むとき、これだけをツマミに飲むんだろう・・・」
これにはドキッとした。
なぜなら、今こうして我々は缶詰を開けることなく
缶詰の話題で一杯やっている
ではないか。
いや、そんなことよりも
缶詰を開ける前から中身が「たくわん」であることを知っていて
「早く開けろ」と言わんばかりに のどを
ゴックンゴックン言わせているミリタリーの方が
私にはよっぽど深刻である。






変身
やっとの思いでミワリー話術の蜘蛛の巣から脱出した我々はたくわんをいただいた。
しかし、終戦記念日のサイレン以来、反戦を誓っている大王はあまり食べなかった。

しばらくしてこの現代版地獄絵図のような空間に
「おー ごめんごめん 遅くなったー」といいながら
一体の小動物が何食わぬ顔で入ってきた。
ミクロな青春野郎=殿下である。
「遅いっすよー」と言うと
そのコンパクトなボディとは裏腹な「負けず嫌い」口調で反論、
仕事の飲み会を終えて駆けつけたので少々ほろ酔い加減である。
それにしても来るのが遅すぎたのは
酒を飲んだために愛車の「チョロQ」に乗れず、歩いてきたからだ。
彼にとっては「ミワリーをたずねて三千里」といったところだろう。

そして大王・本尊・独笑・ミリタリーに殿下のカードが加わり
貧乏くさいロイヤルストレートフラッシュが揃ったと
変な豪華さに満足した瞬間、

「ちょっとー!殿下ー!あんた遅かったなー」


「え?」
その大声の主はさっきまで穏やかにビールを飲んでいた今日のゲスト=鳥天だった!
そうか、たしか二人は同級生だった。
「まっちょったんでー!!!!何しよったんなー」


まるでツーアウト満塁一打逆転の場面で三振しやがったのび太に激怒するジャイアンのごとく
何十年ぶりかに再会したわりには心身ともに全く成長してない殿下に向かって
スケバン刑事の決めセリフのように怒りを爆発させている。

メンバーはあっけにとられていた。
無理もない。
一時間前、遠慮がちに「はじめまして よろしく」とおしとやかに自己紹介し、
多少マニアではあるが故郷を懐かしがる楽しい主婦だとばかり思っていた鳥天が
突然、大噴火したのだから。
彼女にとって酒とはジキルとハイドの魔法の薬だったのか。
我々メンバーが濃いのは百も承知だが
ミワリークラブに引き寄せられるゲストたちまでも何故こんなに濃ーいのだろうか。
それとも悪性のミワリーウィルスはホームページを見るだけで感染してしまうのか?


反省
夜もふけ、宴は盛り上がる。
私は2002年の活動を思い返していた。
今年もさまざまな企画をし、いろんな人と知り合えた。
青年団の人、なまはげ、鳥天。
反省もある。
他の人とはちょっぴり熱の入るタイミングが違う独笑も暖かく見守ってやらねば。
「化け宵」ではあんな心情になったものの、やっぱり大人気ない行動だったかもしれない。
それに人の事を考えずにゲリラ販売し、誰かを不快にさせてしまったことも。

そこでわかった事がある。
妖怪でも歴史でも野球でも釣りでもパチンコでも
何か一つのテーマにのめり込むあまり
その一部分しか見えなくなってしまう事はよくある話だが
私の場合そのだ。妖怪のおかげでいろんなものまで見えてきた
頑固がポリシーの私が素直に物事を見れるようになった気がする。

また、この際だから言っておくが
臼杵ミワリークラブは妖怪についてはあまり詳しくないし
本当にこれが臼杵の発展に繋がるかは知らない。
しかし臼杵の楽しみ方だけは誰よりも知っている。
それだけなのだ。

そして2002年もこんなに狭い臼杵市から一歩も出ることなく
摩訶不思議な大冒険
をさせてくれたメンバーたちに礼を言う。

「本当に楽しかったぞ!・・・・違う意味でね