なまはげ襲来・中編
本尊対おばちゃん
9月26日
夕方、サーラ・デ・うすきの中庭には臼杵小学校の生徒が集まっていた。
自分達の手で番組を作るというどこかの放送局の企画で
妖怪について話を聞きたいと言う。
本尊だけでなく近所のお年寄りも話し手としてご協力願い
「聞き取り調査をしたい」と言っていたなまはげも同行した。
ミワリーメンバーは本尊・私・猫侍・ミリタリーそれになまはげを含めた
頼りないゴレンジャー元気のないドリフターズのような5人。
この後、大定霊会と称し宴を開催するのだが
仕事の者や遅れる者は直接独笑小僧の店に集まることになっている。

私は今日の語り手である近所のおばちゃんを呼び行った。
臼杵に昔からある呉服屋のおばちゃんでおしゃべり好きな上、昔の事をよく覚えている。
それにいつも和服を着ていて、妖怪の話し手には打って付けの人材である。
「おばちゃん もうすぐ出番で〜」と戸を開けた。
「あーはいはい」と言いながらおばちゃんが出てきた。
その姿は私の期待を真っ正面から裏切った
おばちゃんは何を勘違いしたのか
よそいきのわりと派手な洋服を身に着け、お化粧をバッチリきめて妙に姿勢を正し、
これからのど自慢にでも出るかのような緊張した面持ちで登場したのだ。
「何を話せばいいんかなあ」と心配するおばちゃんに
再度、風習やら怪談やら歴史事実として書物に残ってない庶民の生活など
言わば失われた空白を取り戻す立派な郷土学習なのだと口すっぱく言い聞かせた。
それがかえって重圧な使命感となり、子供達に話をするおばちゃんは
ナイアガラの如く汗をかいていた。
さらにあっけらかんな子供の気を力ずくでひきつけようと
妙にリアルな妖怪話になっていく。
「三角男ちゅうのは・・・・・昔そういえば三角マスクをつけたおっさんがおったなあ」
我々の過去4年間の探求をビル爆破解体の如くぶち壊すおばちゃん。
それを本尊は近くにいながら遠くを見つめるような細目でまるで睨みつけているような視線。
おばちゃんが大正ロマン風フォーマルな装いで演説する姿と
本尊の煮えたぎっているが何とか押さえようとしている怒りのオーラのぶつかり合いによって
「安っぽい帝都物語」を見ているようなシーンであった。

大定霊会
何ともやるせない気持ちで講演会が終わり、子供達やおばちゃんは解散した。
そしてとっておきの得意技を反則技でねじ伏せられた負傷兵=本尊の心中をなだめるため
大定霊会会場である独笑の実家(居酒屋)へ向かった。

独笑の店の二階へ上がる。
なまはげにとってはギロチン台へと向かうような心境だったに違いない。
「せっかくなまはげちゃんが遠くから来てくれたんだから全員集合させなきゃダメですよ会長」と
丁寧語のわりに途方もなく人任せな本尊のご意見にできるだけ答えようとしたのだが
わがままで気まぐれなミワリー会員を全員集めるなどという事は
広い広い世界中に散らばったドラゴンボールを全部集めるよりも難しい。
ぞろぞろと疎らに集結してくる会員達。
さきほどの「元気のないドリフ」にさらに5人が加わり
いつのまにか「勇気のないスターウォーズ」になっていた。

ここで今日のスターティングメンバーをご紹介する。

「とっくり伯爵」という肩書きを与えたくなっちゃうような本尊
どうみても一昔前の強盗のようなミリタリー
若かりし日の堺マチャーキが豆鉄砲を食らったような金数え
大きな指人形に無愛想な桂文珍の顔を当てはめたかのような猫侍
イソノカツオの声を出すトッポジージョ」メガ鼠
自称ミワリーのディカプリオ。と言うよりはディカプリオんちの出来の悪い弟を5、6発ブン殴ったような副会長
ギリシャの彫刻金剛力士像を足して2で割り、肌色に塗ったような鹿天狗
パーティグッズによくある「鼻つきのメガネ」をかけたままのようなカッチャン大王
そして「ちょっと髪を切りすぎた林家ペー」=おだまき=こぶすま

最早ユニークなどと言う甘っちょろい言葉を通り越している彼らの頭上に
私は想像上の大弾幕をプレゼントしてやった。
「渡る世間はバカばっかり、地獄型人間動物園へようこそ!」である。

「定霊会が楽しみですぅ」と言ってたなまはげが期待する妖怪談義などするはずもなく
今日の議題といえば「おだまきこぶすまに新しい称号を与える」というくだらないもので
つまり「大王」や「本尊」に匹敵する役職をつけてやってもよい年頃なので
それをみんなで考える幼稚な討議事項である。
その「おだまき・こぶすま」という人物を分析すれば
やたらとダメな詩人みたいに名言を吐きたがる「暑苦しいほどに死ぬまで青春野郎」
ギターをかき鳴らしながら古きよきフォークソングメドレーを歌い
初代仮面ライダーをこよなく愛するかと思えば
祇園祭りの時期になると「江戸でもないのに江戸っ子症候群」になる熱血兄貴である。
みんなで悩んだ挙句決った称号は百二十歩ゆずって「殿下」になった。

そしてめんどくさい例会を終え、
15分も経たないうちに「愚か者の酒場」と化した。

町内のお花見気分で酒を飲んでいるおだまき殿下と大王が
大昔の妖怪映画に出ていた女優やら、キャラクターを「いやちがう!あれは○○じゃろ!」
「あーそうやったかな〜いやいや間違いねぇ」などと売れない漫才みたいに口論を始めると
猫侍とめが鼠は比較的まともな「町づくり」について話しているが
あまりにもお互いよく似ているので
ちょっとした意見の食い違いがまるで自分のように腹が立ってきて
仲良くけんかするミワリー版「トム&ジェリー」になる。
ナウなヤングにお酌をしてもらい、照れ隠しに「笑い」に持って行こうとしてしまい
シベリアのように寒いギャグを連発する副会長と鹿天狗の冷し系コンビは
今日をきっかけに後に大事件に発展するギャグ合戦をおっぱじめる。(この事件は次の珍道中で)

そんなあちこちでの紛争を「へーそうなんですか」と金かぞえがうなずきながら聞き
平和的におだやかに解決に向けようとするがむしろ火を点けてしまうので
会長である私はまるで国連軍のようにミワリーと言う世界の各国へ鎮圧に行くが
いつも本尊・ミリタリー・独笑の「バミューダ三角地帯」の上空を飛行中に消息を絶つのだ。
今日は独笑がいないのが救いである。
電話してみると仕事で県外にいるので帰りは遅くなるらしい。
それでも「あー帰りたいんだけどなぁ〜俺も会いたいんだよなぁ〜ヒャヒャ」と言いながら
「女子大生が水着を着てやって来るから絶対来いよ」といった私の軽い冗談を信じている彼は
いても立ってもいられないイライラぶりが伝わってくる。
こいつが帰ってきたらすぐに逮捕だ。
「何か楽しそうだねぇ〜」と言う独笑に
もしかしたら「おじいさんの遺影」を通じて我々を監視しているかもしれない恐怖を抱きつつ
この「ひねくれた町おこしシンポジューム第一部」は終了した。