本尊の謎
まずは基礎知識:ミワリークラブを語る上で、この生命体なくしては語れまい。
本会の最もディープな、そして謎多きシンボル、斉藤本尊。
推定年齢40代前半、人間の年で言えばちょうど250歳と思われる。
その正体は
恐ろしいほど記憶力をもつ超能力異星人「PSY・2」(サイトゥー)
ゲテモノを主食とするどんぐり村の若頭説などがある。
見た目はというと
臼杵石仏の大日如来が離れていた仏頭を復元する際、
間違えて、やや小型の仏の体に接着してしまったような体形、
キュートなその頭身のバランスに、「のっぺり、ずんぐり」なエッセンスをふりかけた
コケシの失敗作のようなフォルムがとても魅力的で、子供に大人気である。
そして仏のありがたい顔を受け継いだため、
はちきれんばかりの笑みが眼鏡のフレームから溢れ出し、
目と耳の間のフレームが皮膚に食い込んでしまって、
眼鏡をかけてない状態でも目の横に二本の線が残る。
私たちが目と耳の間の事を「HONG ZONE」(本ゾーン)と呼ぶのもこれが原因である。
最近の研究で、眼鏡をかけるために生まれもった純正のラインらしいという説も浮上している。

活動中の本尊:本尊の感心すべき長所であり、ちょっと困ってしまう能力は、その異常な記憶力である。
郷土史、地理、民話、植物、小動物、民芸品などについてとても詳しい。
本人が言うには、それら全てが臼杵に関わる事から始まり、調べているうちに覚えてしまったらしい。
それはいいのだが、「臼杵妖怪ツアー」のガイド中であっても、
「サーラ・デ・うすき」に展示している屏風1枚について5・6分話してしまうのだ。
ミワリー活動初期の頃、ある武家代代のお墓を紹介すると言ってお寺に行き、説明しているうちに、
それだけでも充分妖怪から脱線していることも忘れ、
墓に自生している5センチくらいのコケについて話し出してしまったのだ。
私がツアーの時間を気にして「できるだけ要点をかいつまんで」と言うと、
決って本尊は「まだまだ大丈夫ですよ、時間もたっぷりあるし」という。
そしてツアーの終盤あたりから、いよいよ時間が無くなったと念を押すと、
本人も少し慌てて急ぎ足になるが、さっき「大丈夫」と言ってしまったので、
できるだけ冷静な様子を見せようと、
新入りの競歩部のようにぎこちないスキップ歩きを披露することになる。
時々私はこの現象を見たくなり、わざと慌てさせる小細工をしている事を本尊は知らない。


ある日の俵屋
私は新作の妖怪画ができると本尊へ見せに行く。
本尊の実家は郷土玩具や民芸品、みやげなどを扱う店「俵屋」。
普段は本尊パパ&本尊ママが店番をしているが、土日・祝日には本業が休みの本尊が店主である。

その日、本尊は俵屋オリジナル商品「妖怪人形」の、たしか「火の玉男」を製作中だった。
真剣なまなざしで犬のウンチのような粘土のかたまりをひたすら「こね回す」本尊に圧倒されつつ、
笑いをまぎらわすように「また、新しいグッズが増えてますねー」と声をかけた。
すると本尊は数ある民芸品の中から「金太郎のよだれかけ」取り出し、
「これ、いいでしょ」と誇らしげに笑ったまでは良かったが、
よせばいいのに自分の体に当てて見せたのだ。
私が心の中で「やめてくれーーー!」と思っていた状態がまさにそれだったので、
おもわずそのあつらえたように顔にぴったりの似合いすぎに爆笑してしまった。
一体、何の恨みがあって、こんなに私の笑いの急所を連続攻撃するのだろう。

そこへ本尊ママがお茶を出してくれた。本尊ママは笑顔の絶えない小柄のかわいらしいおばちゃんである。
本尊もこの母上には逆らえないようであるし、いつもやさしく労わっているのを感じる。
それとは対照的に本尊パパの素っ頓狂な行動に対しては容赦なく怒る!
この日も何か怒っているようなので事情を聞けば、
数日前、安い商品の値札を手に取り確認したパパは、何倍もする高価な商品に取りつけてしまい、
そのまま売ってしまえば大赤字になるところだったと言う。
まあ悪気も無いのだし、売ってしまわなかったのが幸いだったと思いきや、
そんな話をしている私達の目の前で、また同じような行動をしているではないか!
「なんべん言うたらわかるんな!」と激怒する本尊、
なだめるように笑う本尊ママ、
しばらくしてママに何やらブツブツ言っている本尊パパ、
またそれを怒る本尊。
この食物連鎖に良く似た無料家族漫才が見れるだけでも俵屋に行く価値はある。

私の新作を見せに来たはずが、いつのまにか俵屋新作コレクション発表会になってしまい、
お家騒動も激化しないうちに帰ろうとした時、本尊パパが私に
「うちのボウズはあげなもん(妖怪)が好きじのう」と話しかけてきた。
そういえば本尊から妖怪話を聞くことはあっても、本尊パパから聞いた事はない。
「おっちゃん、妖怪の話いっぱい知っちょんのやろ」と聞くと
「あー、そうやなあ」と妖怪について話し出したのだ。
無口とばかり思っていた本尊パパが口火を切ると、解き放たれたかのように喋り始めたのだ。
そして、なんだかんだ言っても、そんな趣味を持つ息子をちょっと自慢であるかのような口ぶりだった。
ところが突然「これ、あんた知っちょるな?」と、持っていた溶岩みたいなものを指し、
今度は自分の趣味である石について講義をはじめたのだ!妖怪とは全く関係の無い話を。
ここで私は気付いた。本尊の話の脱線傾向と、
ある意味強制的な本人でしか価値のわからない話をするクセは、この本尊パパに似たのだろう。



何とか話が終わり、帰ろうとする私に本尊パパは
「あんた、この石もって帰る?」と言う。
少し名残惜しそうに、
そして「あんたがそこまでこの石を気に入ったのならあげる」
と言わんばかりの根拠のない自信満々な顔で。
向うでは本尊がさっきの犬のウンチをこねこねしながらも、パパの行動に対してまた怒りまくっている。
本尊パパは躊躇している私を安心させるかのように
石についたホコリを何度も何度もふきながら、
「遠慮すんな、遠慮すんな」とテレパシーを送ってくるので、
私は遠慮なく、遠慮した