ホタルの殖やし方
次へ(飼育法)

 これをご覧になった方から、「ホタルの幼虫は、どうして手にいれたらよいですか」といった質問メールをいただくことがありますので、私の実行していることを紹介します。これを参考にされれば幼虫が孵化します。あなたも取り組んでみませんか。

種ホタル→産卵→幼虫孵化について

種ホタルの採集方法

 大分県内では、5月下旬〜6月中旬のホタルの飛ぶ時期の夜の8時〜10時ごろに、現地に出かけて蛍を採集します。少し遅い時期になるとメスが多く採れる様です。時期が下がると、産卵を済ませたメスが増えます。
準備する道具は、捕虫網・懐中電灯・ホタルの収容容器などです。

 メスの探し方の要領ですが、飛び回っているホタルは殆どがオスです。 メスは草や木の葉などにじっと止まっているものが多いのです。草地などを棒でゆすると光を出しますから、それを見つけて採集します。メスは羽根の付け根をつまんだ時に硬く感じますが、オスは柔らかい感じです。夜9時を過ぎると、交尾中のものが多くなります。オスはメスの2〜3倍を交尾用に入れて、あとのオスは放してやりましょう。

ほたるの産卵・孵化のために準備する用具

産卵用ケースとミズゴケ、それにエアーポンプがあればよいので、それ以外に難しい道具もいらず、簡単に実行できます。

種ほたるを収容し、産卵させる容器
 私はプラスチック製のケース(40×30×25cmほどの大きさ)を使用しています。ホタルは、少しでも隙間があると、それを探して這い出てしまう習性がありますから、密閉できる構造のものが適しています。(写真の容器には密閉できるふたがあります。)
私の経験では容器を密閉した状態でも、酸素不足によってホタルが弱ることはありませんでした。成虫は水を飲むだけで生きていきますから、えさを与える必要はありません。

産卵させるための容器
私の方法では、市販の園芸用ミズゴケをほぐして、これを適度に湿らせて入れるのがコツです、これを厚さ3〜5cmほど入れたものに産卵させます。霧吹きなどでまんべんなく湿らせるか、またはミズゴケを水に浸けた後、水分が出なくなる程度に絞ってやると、ホタルがもぐれる程度の水分を含むようになって好都合です。
この例のように、生きた苔を使わなくても産卵には差し支えないようです。その他にも人によって色々な方法がとられます。スポンジに産卵させる場合は、孵化した時に幼虫がスポンジの内部に向かって入り込んでしまうので、もし使うとすればできるだけ薄いものを入手すると良いでしょう。
ホタルは乾燥に弱いので、密閉容器を用いることで、内部が乾燥するのを防げます。


このケースに入れる種ホタルの頭数ですが、数十頭ほどです。
種ホタルの採取時期が数回にずれる場合は、別のケースに分けて入れると、孵化時期のずれに対応できて、だんだんに孵化していきます。
乾燥を防ぐために、ケースの中は時々適度な湿度も保たれるように霧吹きをしてやります。後は放っておけば産卵します。ミズゴケの代わりに、西洋タオルを湿らせて、これに卵を産ませるのも良い方法です。タオルの繊維が小さいループ(わっか)をたくさんつくっており、水分を保つはたらきがあるので、そこに卵を産み付けています。

1頭のメスが産卵する数はそれまで300〜500個ほどと推定していましたが、正確に詳しく調べる方法を工夫して数えました。1頭で500個から多いメスで1000個以内を産むことが分かりました。ミズゴケの場合は、どのあたりに卵が産み付けているかは見つけにくいです。

孵化が近づいてくると、卵がだんだん黒く見えるようになります。産卵後、18日〜23日くらいで孵化が始まり、殆どの卵が孵化してきます。孵化した幼虫は2mmほどで大変小さいので、大きめのスポイドでゆっくりと水と共に吸い上げてを扱うのが良いようです。また、目の細かい布または金属製の網でこし分けるなどの工夫をしています。

孵化したら、ミズゴケの水分を増やしてじっとりと湿らせて、その中で生活出来る様にする方法もあり、この方法は楽で、飼育を長期間継続せずに放流する場合に適しています。

まだ孵化していない卵が黒くなり、孵化を始める時期に、卵が水につかった状態を作って比較した結果では、卵が空気に触れている状態の卵に比べて、孵化する時期が2〜3日ほど延びるが、殆どの卵が孵化することが確認できました。

 孵化の時期を迎えると、孵化した幼虫が容器の内側を這い上がりはじめます。 そうなったら、水苔が水につからないようにしたほうが孵化しやすいので、ミズゴケを網の上にのせて、ケースの底に水を張って、孵化して這い出した幼虫が水の中に入っていけるようにしています。
孵化した幼虫をこの方法で集めた場合は、放流するまではエアーを送り込んだ別容器に深さ5cmほど水を貯めた中に移しています。

 幼虫は暗い場所に隠れようとする習性があるので、不透明な容器を用いて、中に小石やミズゴケなどを入れて、隠れ場所を作ってやります。適当な隠れ場所がない場合は、たくさんの幼虫が一カ所に集まってだんご状になる習性があり、酸素不足を起こして弱ったり死なせることがあります。

幼虫の放流時期について。

 ホタルを殖やす活動に取り組むとき、あまり手間がかからずに実行可能なことから着手するのが良いと思います。
 それには、孵化した幼虫を2〜3週間以内に時期を見て、あらかじめ見つけて生育環境を整えておいた川や水辺にミズゴケも一緒に放流します。この間は幼虫にカワニナを全く与えなくても、幼虫は飢えに強く、ほとんど弱ることはありません。

この方法ですと、カワニナを確保が出来ない場合でも、放流場所さえ確保できていれば幼虫の放流が出来ます。  この期間が延びると、飼育には最初の時期にカワニナの稚貝を与えることが必要になります。理想的には、台風が来なくなる時期まで飼育して幼虫を放流すると、水に流される危険を避けて蛍を多く飛ばすことが出来ます。

幼虫を大きくなるまで飼育を続けるには、ホタル幼虫の飼育法をご覧ください。

タルの育つ川や水辺の生育環境を整えよう。  

ホタルが生育するのに適した環境かどうかは、極言すると、ホタルが一番よく知っています。
どんなところでホタルが多くとんでいるかを調べることで、私たちに色々なことを教えてくれています。
ホタルが多く見られる所を観察した結果などから、以下のような条件をあげてみました。

ホタルを殖やす活動を成功させるためには、ホタルの育つ川や水辺を持つことが大事です。ホタルの飛ぶ数が増えれば、成功感も味わえて活動も長続きします。

 それには、先ずホタルが飛ぶ可能性のある川かどうかを知ることです。  普段の川を眺めただけでは、年間を通じて色々な条件がからむためになかなかつかめません。ホタルは飛ぶ時期と時間帯が限られているため、その地域に住んでいる詳しい人に聞いて、情報を集めるのがよいかと思います。その情報をもとに、ホタルの飛ぶ時期にその時間帯に合わせて現地に出かけて確かめられます。

どこらあたりでホタルが飛ぶか、昔はどうだったか、近年の様子はどうかなど、以前に比べて飛ばなくなったとすると、何が原因なのかを考えるためのヒントも得られると思います。

@ 川を汚さない。良質な水が年間通じて安定して得られる環境が望ましい。

  生き物が育つ条件として基本的なことは、えさが豊富であることです。 幼虫のえさとして、カワニナが育つ栄養をバランスよく含んだ良質の水が、冬場も枯れずに年間を通じて安定的に流れていること。

 あまりきれい過ぎる水ではカワニナが育ちません。人が住む地域では、台所から食物のかすなどが流れ込み、それを餌としてカワニナが殖えて、ホタルが多く飛ぶようになります。

また、台風時等の出水によって流されるので、水害を被りにくい地形的条件を備えていることが望まれます。

合成洗剤の使用による水生生物の死滅について。

合成洗剤は界面活性作用が強いことで、洗濯物の汚れ落ちが良いことで、各家庭でもよく使われています。その反面、生物の細胞に浸透して破壊する力も強く、水辺に生えている植物もしばらくすると枯れてしまいます。また、合成洗剤の強い作用で食物連鎖の基本となる植物や、微生物が死滅するために、それらを餌として育つはずの生き物が減って、生態系が壊され、川の生き物はほとんど育たなくなります。これによりカワニナやホタルだけでなく、魚などもすっかり姿を消してしまいます。最近、川の中で調べてみると、流れの中の石にも、青味をもった苔などが見られない川が増えています。

皆さんの近くを流れる川そのものが、昔見られたような姿に元気を取り戻すためには、ここらでじっくり考えてみる必要があるのではないでしょうか。

川の水質に関しては、最近は合成洗剤の使用量が多く、生活排水が川を汚します。これに代えて植物性洗剤の使用が望ましく、地域住民の協力が欠かせません。合成洗剤の使用量に比べて川の水量が多い場合は、希釈されてその影響は少なくなります。

A ホタルが飛ぶための水辺には暗い場所が必要です。ホタルは暗い場所で光を出して交尾相手を探すので、住宅が増え、道路が整備されて、車のライトや街灯、防犯灯が増えると、ホタルが逃げてしまいます。この条件からみると、ホタル観賞しやすい条件を備えた都市部の近くで、ホタルが飛ぶ川を探すのは難しくなっているようです。 ホタルが飛ぶ時期だけ、街灯を消したり、覆いをかぶせたり、黒いシートで光を遮断して、光による影響が無いように配慮している地区もみられます。

B 幼虫が上陸してもぐれる土手や土砂があることが必要です。
幼虫は土まゆをつくりますから、水害防止を目的としたコンクリート3面張りの川で、上陸しても土に潜れないようだと、ホタルは育ちません。川の中に堆積した土砂をそのまま残したところに草が生い茂り、そこで土繭をつくらせる方法で、ホタルがたくさん飛んでいる川の例もあります。

Cホタルが世代交代をするには、産卵場所があることが大切です。
川などの産卵場所で、昼間でも直射日光が遮られ、産卵に適したこけが生えていて、孵化した幼虫がすぐ水に入っていけるような条件が必要です。
U字溝や用水路に苔が生えていて、絶えず水しぶきが掛かる場所でメスが産卵していました。このような条件が整うと、放流しなくても毎年ホタルが飛ぶようになります。

 D ホタルがよく育つ川では、昔ながらの自然の状態が見られます。川岸や水辺に草や木が生い茂っていると、直射日光の影響を受けにくいので、乾燥しにくく、地面の温度上昇も抑えられるなどの効果が考えられます。 川の中に石や砂、泥の堆積で中州が出来て、瀬があったり、淵があったりで、水草も生えて流れが割と緩やかなところは、水生生物にとっては生きていきやすい環境となります。

水害防止等の目的で、川岸が3面張りとなり、道路も舗装された地域が広がることで、降った雨を一時的に蓄える働きが乏しくなってくると、川の水量が急増しやすく、川の生き物が隠れる場所も少なくなり、水と一緒に流されてしまいます。

 また、水田に水を導くのに、昔のように土を掘って出来た溝に水が流れている場所では、今でもホタルが順調に育っていますが、最近では水漏れを防ぐため、樹脂製パイプを埋めたり、U字溝を使用した水路がふえており、そこでは生きものが水に流されやすく、育ちにくい環境となっています。


戻る(かわにな) 目次へ 次へ(飼育法)