生理痛と感染症|福岡市中央区の婦人科 イリスMORIウイメンズ 女性のプライマリーケアの専門医を目指して
過去の掲示板から、代表的なQ&Aを抜粋、再編集しました。 悩んでいる女性の方も、ご専門の先生も、ご意見をお待ちしています。
この記述はちょっと専門的になるので医師およびその関係者も対象としています。 もちろん一般の人が読まれてもわかりやすく書いているつもりです。
女性は子宮で物を考えるといいますが、他の臓器に比べて子宮には外敵の侵入を防ぐ組織が非常に発達しています。解剖学的にみても、(下図1)(下図2)の如く血管や神経、リンパ系の分布が著しく多いのです。従って生殖器にちょっとした異常があると直ちに、痛みや違和感、頭痛、倦怠感等が起こり、本体に注意信号を送っているのです。生理痛もそのひとつです。
ちょっと専門的になりますが生理痛は子宮やその周囲に炎症、癒着がおこっているからです。なぜ子宮周囲に炎症がおこるかといえば主に2つの要素があります。
まず疲れやストレスで体力が落ちて免疫的に低下した場合、次に細菌(*1)の勢いやその数が多く感染力が強い場合です。
初めての子宮感染は初潮を迎えた頃の比較的若年期に起こるといわれます。
膣や子宮頚管の炎症がおこると殆ど今までおとなしく常在していた細菌が急にその勢いを増し子宮頚管の関門を破って子宮腔へ上昇します(下図3)。細菌等の抗原が上昇すると子宮やその周囲組織では一般にマクロファージが抗原提示し好中球等の白血球、リンパ球(Th2)、各種サイトカイン(*2)が動因されそこでバトルが起こります。
この際主にCOX系のプロスタグランジン(PG)や血小板活性化物質(PAF)等が動因され炎症が起こりますが、最後は宿主が勝ち好中球等の白血球、リンパ球(Th1、B細胞)、K細胞、NK細胞や消炎系サイトカイン(*3)により炎症はおさえられます。この際細菌やリンパ球の残骸とともに子宮内膜も卵管から子宮周囲へ逆流しそこに活着するのです。
これは子宮内膜症の成因である月経のときに起こる月経血の逆流と同じです。逆行した子宮内膜組織は白血球リンパ球や細菌の死骸とともに子宮周囲の炎症癒着を起こして炎症は治まるのです。その際接着因子(*4)が働くといわれています。
また、炎症を起こした組織は周囲と癒着しなくても消炎後は短縮・硬化し、そこからPG等を分泌するので痛みの原因となります。
この機序が内膜症のはじまりと考えられます。したがって、子宮周囲の癒着はすべて内膜症と考えられます。癒着の始まりが内膜症のR-ASRM分類でredにあたります。
しかし、我々臨床家は狭義のblackを内膜症と診断したほうが妥当のような気がする。なぜなれば初期のredはなかなか目にすることはないし癒着が完成したwhiteは厳密な意味では殆どすべての女性にみられるから。
図1、2 Frank H.Netter The CIBA Collection of medical illustrations vol.2 より
図3 Nolak,E.R 著書より転載
この頃はまたCa125等の腫瘍マーカーが上昇する時期に相当する。内膜症の患者さんの腹水に見られるIL6や8の炎症系サイトカインの増加は癒着部分に炎症がある証左でしょう。
子宮内膜細胞は月経時に子宮の収縮を強く促すプロスタグランジン成分を出しますが、これは異所性の内膜細胞でも同じでそこに痛みや炎症をおこすのです。
なぜ痛いときと痛くないときがあるのかは、おそらくその癒着をおこしている子宮周囲や卵巣の循環状態ホルモン動態やその活動状態(いわゆる細胞のオートクリン、パラクリンの状態)が時期によって違うからではないかと思います。
また膣に細菌等が増加すると膣や子宮頚管のマクロファージが感知し白血球は活性化され子宮は緊張状態になりアラキドン酸カスケードが刺激されPGやロイコトリエンが分泌され痛みを増幅するといわれます。