モニター心電図の見方

 

 

 

 

1998.7.1

第2版

 

 

 

 

 

 

 

 

大分岡病院循環器科

 

 

立川洋一

I 心電図の基礎

A. 心電図の成り立ち

1. 刺激伝導系

2. 自動性興奮頻度

3. 心電図の基本波形

PQ (PR)間隔 0.12-0.20秒 (房室伝導時間)

QRS 0.06-0.10秒

B. モニター心電図の基礎

1.モニター心電図で何がわかるか

1.不整脈(心拍の異常)

2.ST部分の偏位

ST低下 心筋虚血, 心肥大

ST上昇 心筋梗塞

2.モニター監視の必要性

脈拍のリズム異常を認める時

虚血性心疾患の存在が疑われる時

失神発作,動悸などの症状がある時

バイタルサインに著しい異常のある時

不整脈を誘発する危険性のある検査時

3.モニター心電図判読のポイント

(1) QRS波をチェックする,P波をチェックする

P波に続くQRS波があるか,QRS波に先行する(対応する)P波があるか

(2) P波,QRS波の欠損はないか

(3) P波,QRS波のリズムはどうか,変動はないか,予測された時間より早期に 出現していないか

(4) 頻脈か,徐脈か

(5) QRS波形は単一か,多形性か(異常QRS波の有無),対応するP波がある か

(6) 基線の揺れはないか,f波,F波はないか

(7) PQ時間は正常か, QRS幅は正常か

(8) P波,QRS波,T波の形は正常か,T波の増高,平低化はないか

(9) STの上昇,下降はないか

(10) ペースメーカー波形など人工的な波形はないか

 

4. 心拍数の見方

(1) 実際のRR間隔が何秒になるか計算し、60/RR(秒)を求める.

(2) 6秒間にQRSの周期がいくつあるか数え、10倍する.

モニター心電図では1秒毎にマーカーが入る.

マーカーがなければ太い目盛りで5目盛りが1秒.

(3) RR間隔の目盛り数で心拍数がいくらになるかを覚える.

太線1目盛りで300/分, 2目盛りで150/分.

3目盛りで100/分, 順に75, 60, 50.

次のQRSまで何目盛りあるか見る.

C. 不整脈

不整脈とは

心拍数と心拍リズムの異常

不整脈の分類

A. 脈拍数による分類

(1)徐脈性

(2)頻脈性

B. 発生機序による分類

(1)興奮発生異常

洞調律の異常

洞徐脈

洞頻脈

洞不整脈

洞停止

洞不全症候群

期外収縮

上室性期外収縮

心室性期外収縮

粗動、細動

心房粗動

心房細動

心室細動

頻拍

発作性上室性頻拍

心室頻拍

補充収縮・補充調律

房室接合部性

心室性(心室固有性)

(2)興奮伝導異常

洞房ブロック

房室ブロック

脚ブロック(右脚ブロック、左脚ブロック)

心室内伝導障害

早期興奮症候群(副伝導路)

WPW syndrome, LGL syndrom, その他

(3)興奮発生異常と興奮伝導異常の併存

心房細動と完全房室ブロックの合併

その他

C. 発生部位による分類

洞結節性

心房性

房室接合部性

早期興奮症候群

心室性

ブロック

II モニター心電図の実際

A. 正常洞調律(NSR: normal sinus ryhthm, OSR: ordinary sinus rhythm)

洞調律とは

心臓の調律が洞結節によって支配され,正常の刺激伝導系を介して伝達されている状態.

正常洞調律とは

この洞調律の心拍数が50/分以上-100/分未満であるとき.

B. 洞調律異常

1. 洞頻脈(sinus tachycardia)

洞調律の心拍数が100/分以上である場合

2. 洞徐脈(sinus bradycardia)

洞調律の心拍数が50/分未満である場合

RR間隔の不整をともなう場合が多い

3. 洞不整脈(sinus arrhythmia)

通常洞調律のRR間隔はほぼ一定しているが,全く規則正しいわけではない.

洞不整脈(洞性不整脈)とは

一般にこのRR間隔の変動幅(最長と最短の差)が0.12-0.16秒以上ある場合をいう.

一般に吸気によりRRは短縮し,呼気とともに延長するものを呼吸性不整脈と呼ぶ.

小児や若年者に多く,生理的なものであることが多い.

C. 頻脈性不整脈

1. 上室性期外収縮(SVPC: supraventricular premature contraction)

心房から異所性に出現する期外収縮(心房性期外収縮)と,

房室接合部から生じる期外収縮(房室接合部性期外収縮)とをあわせて

上室期外収縮という.

臨床的意義にはあまり差がないので上室期外収縮と総称する.

両者の鑑別は難しいこともある.

心電図の特徴

_洞調律時のP波形とは異なるP波が,

_洞調律周期よりも早期に出現する.

_期外収縮が心室に伝導したときのQRS波形は,

通常は洞調律時と同一であるか近似している.

*非伝導性上室性期外収縮

2. 心房細動(af, Af: atrial fibrillation)

心電図所見

_P波の消失,

_f波の出現,

_不規則なRR間隔,が特徴的である.

心房の興奮波であるf波は350〜600/分の頻度で出現する.

f波は振幅および間隔の不揃いな波形として記録され,

特に_,_,aVF,V1などの誘導で認識しやすい.

RR間隔はまったく不規則となり,QRSは絶対性不整を呈する.

発作性心房細動と慢性心房細動、頻脈性心房細動と徐脈性心房細動

発作性心房細動では心電図は非発作時には洞調律を示す.

洞調律と心房細動との相互間の移行が記録されることがある.

心房細動中の心電図所見は発作性心房細動と慢性心房細動との間に相違はない.

発作性心房細動の発症初期には心室心拍数が増加していること

(rapid ventricular response)が多く(頻脈性心房細動),

時間が経過すると心拍数が初期よりも滅少して心室心拍数が中等度,

または徐脈傾向となる(徐脈性心房細動).

3. 心房粗動(AF: atrial flutter)

心電図所見

1.鋸歯状の波動(F波)の出現

2.F波の頻皮は220〜350/分

3.基線は水平な部分を欠く

4.心室への伝導比は偶数比が多い(2:1, 4:1, 6:1伝導など)

4. 発作性上室性頻拍 (PSVT: paroxysmal supraventricular tachycardia)

(PAT: paroxysmal atrial tachycardia)

洞調律時と同様の幅の狭いQRS.

RR間隔は一定(多くは0.3〜0.4秒).

QRS波に対応するP波はあるが,多くは逆行性であり,

認められない場合も少なくない(QRSと重なる).

5. 心室性期外収縮(VPC: ventricular premature contraction)

心電図所見

l)心室期外収縮は正常洞調律の次に予定される心拍より早期に発現し,

QRS波は0.12秒以上と広く,形も大きく変形する.

2)先行P波を伴わない.

3)代償性心室期外収縮と間入性心室期外収縮がある.

代償性心室期外収縮では心室期外収縮の後に長い体止期があり,

心室期外収縮を挟む前後の2つの洞性心拍のRR間隔は

2つの基本洞性心拍間隔のちょうど2倍となる.

間入性心室期外収縮では

心室期外収縮が基本洞性心拍のRR間隔の間に生じる.

4)多源性心室期外収縮

同一誘導で波形の異なった2種以上の心室期外収縮がみられる場合,

発生源が複数と考えられることから多源性心室期外収縮という.

5)二段脈・三段脈

基本洞性心拍に対し,心室期外収縮が交互に出現した場合を

心室性二段脈,第3拍ごとに出現した場合を三段脈という.

6)2連発・3連発・ short run型心室期外収縮・心室頻拍

心室期外収縮が2個連続するものを2連発(ventricular couplet),

3個連続するものを3連発 (ventricular triplet)という.

心室期外収縮が3個以上連続するものを心室頻拍という.

心室期外収縮が2個以上数発以内連続したものを

short run型心室期外収縮ともいう.

7) Ron T現象

心室期外収縮が先行T波の頂上付近に出現する場合を

Ron T心室期外収縮といい,その現象をRon T現象という.

この心室期外収縮は器質的心疾患患者,特に急性心筋梗塞や不安定狭心症患者 では心室細動などの致死性不整脈に至りやすく,突然死の誘因となる.

8)心室期外収縮の心房への逆伝導も時にみられる.

この際の心室期外収縮に続く逆伝導p波は房室結節を逆行性に伝導し,

通常RP間隔は0.12秒以上である.

重症度の評価には一般にはLown分類が用いられる.

Lown分類

Grade 特徴

0 期外収縮なし

1 散発性(30/時間未満)

2 多発性(30/時間以上)

3 多形性・多源性

4a 2連発

4b 3連発以上

5 R on T

(1) 間入型

(2) 代償型

(3) 二段脈

 

(4) 多源性

(5) 2連発

(6) short run

(7) R on T

(8) 多源性→R on T→VT

6. 心室頻拍(VT: ventricular tachycardia)

幅広いQRS(0.12秒以上)が連続して3心拍以上出現する頻拍(100/分以上).

QRSの前に対応したP波を認めない(房室解離).

持続時間により持続性,非持続性に分けられる.

持続性:30秒以上持続

非持続性:30秒以内に自然停止する.

QRS波形により単形性,多形性に分けられる.

単形性:頻拍中のQRS波形が一定している.

多形性:QRS波形が一定でなく頻拍中に刻々と変化する.

7. 心室細動(VF: ventricular fibrillation)

QRSは幅広く,その形や大きさは全く不定.

RR間隔も全く不規則.

基線はなく心房興奮は同定し得ない.

D. 徐脈性不整脈

1. 洞停止(sinus arrest)

心房興奮(P波)が長時間認められないもの.

洞不全症候群で認められる.

心停止:心房,心室とも興奮が認められないもの.

(P波もQRS波もない)

心室停止:心室興奮(QRS波)が突然長時間脱落するもの.

完全房室ブロックで認められる.

2. 洞房ブロック(SA block: sinoatrial block)

突然PP間隔が延長する.

延長したPP間隔は先行するPP間隔の整数倍.

3. I度房室ブロック(I゜AV block: atrioventricular block )

PQ間隔が0.21秒以上.

P波とQRS波は1対1の関係(1対1房室伝導).

4. Wenchebach型 II度房室ブロック(II゜AV block, Wenckbach type)

房室伝導時間が徐々に延長した後,房室伝導が途絶する.

(PQ間隔が漸次延長した後, QRSが脱落する)

Wenckebach周期

機能的刺激伝導障害の場合が多い.

5. Mobitz II型 II度房室ブロック(II゜AV block, Mobitz type II)

房室伝導時間が一定のまま突然房室伝導が途絶する.

(PQ間隔が一定のまま突然QRSが脱落する)

ほとんどの場合器質的心疾患を伴う.

6. III度房室ブロック・完全房室ブロック(III゜AV block, ccomplete AV block)

P波とQRS波は全く無関係に出現.

QRS波の頻度のほうがP波の頻度より少ない.

QRSの幅は正常な場合も広い場合もある.

E. ST変化

1. ST上昇

急性心筋梗塞,異型狭心症の発作で認められる.

2. ST低下

狭心症発作,左室肥大などで認められる.

 

F. 危険な不整脈

1. 致死的な不整脈

(1) 心停止

(2) 心室細動

(3) 心拍数20/分以下の極端な徐脈

2. 突然死の危険がある不整脈

(1) 徐脈性〔心停止、まれに心室細動の危険性)

a. 洞停止

b. 洞機能不全症候群

c. 洞房ブロック

d. 房室ブロック

i. 第2度房室ブロック(Mobitz II型、高度房室ブロック)

ii. 第3度房室ブロック(完全房室ブロック)

(2) 頻脈性(心室細動の危険性)

a. 心室性期外収縮

i. 頻発性

ii. 連発性

iii. 多形性〔多源性)

iv. R on T 型

b. 心室頻拍

c. WPW症候群における頻脈性心房細動(特に幅広いQRSを伴う場合)

3. 血行動態を悪化させる不整脈(心不全を惹起する不整脈)

(1) 徐脈性

a. 洞機能不全症候群(慢性洞徐脈型)

b. 慢性高度房室ブロック

(2) 頻脈性

a. 頻発する上室性、心室性期外収縮

b. 発作性心房細動、心房粗動

c. 発作性上室性頻拍

d. 心室頻拍

4. 塞栓症を合併する危険性のある不整脈

1. 心房細動

2. 洞機能不全症候群

5. その他

ペースメーカー失調による不整脈など

参考図書

1. 心電図のABC 日本医師会雑誌生涯教育シリーズ19

2. 心電図モニター ヘルス出版 谷村仲一著

3. 新版看護学全書 成人看護学3 循環器疾患患者の看護

4. 図解心電図テキスト 文光堂 宮下英夫訳

5. 不整脈実地診療マニュアル メディカルレビュー社 橋場邦武監修