オンパク(=­別府八湯温泉泊覧会)について

 

 

オンパクは別府の地域活性化を目的として平成13年秋の第1回からこれまでに延べ11回開催されてきた。 キーコンセプトは「ゲンキ」「キレイ」であり、健康や美容など温泉にまつわる地域資源を活かした様々なサービスを一定期間中に集中開催するものである。 近年の別府オンパクは24日間に100種類のプログラムを開催し参加者は3,000名、集客率は90%という規模になっている。参加者は地元(別府・大分)から80%、その他から20%の構成となっており、大部分は4,000名の会員組織「オンパクファン倶楽部」からの参加となっている。

 

顧客から見たオンパクの価値は、知らなかった地域の魅力に触れる、様々なサービスを「お試し価格」で試すことができることに尽きる。その結果、気に入ったお店やサービスには常連客となりオンパク終了後も継続して顧客となっていく。

 

 オンパクにおける多彩なプログラムはオンパク・パートナーと呼ばれる中小企業、個人事業者、まちづくり団体などの別府および周辺地域をベースとして活動している事業者らにより提供される。 パートナーのオンパクへの参加は費用負担をすれば原則自由である。 パートナーのメリットはオンパクに参加することにより容易に集客ができること、自社サービスの告知をすることができること、オンパクブランドによる信頼感を得ることができること、運営スタッフからの企画アドバイスなどを受けることができること、交流会などを通じてパートナーのコラボレーションなどが容易にできること、成功・失敗が数値により明確に分かることなどである。 そして、オンパクの最大の特徴であるが、これらの機能によりオンパクは地域における人材・サービスの育成を担うインキュベーション装置となっていく。 これは一般的に開催されるイベントとは大きく異なったオンパクの特質である。また、高いパブリシティ効果を伴う地域ブランド価値の向上効果も期待できる。 

 

更に、オンパクを繰り返し開催することにより地域内には業種横断的なネットワークが形成されていく。このネットワークには多彩な事業者や地域住民の顧客組織が含まれることになるが、次第にこのネットワークは価値を高め、収益事業の基盤となっていく。 実際にNPOオンパクはこのネットワークを背景にした出版、各種業務受託、情報発信事業などにより経営のバランスを保てるまでになってきた。

 

オンパクの開催を経て、多くの地域資源を活用したサービスが事業として軌道にのっている。コミュニティビジネス、スモールビジネスを中心としているがこれらのサービスはオンパクの存在が無ければ定着しなかった、もしくは定着にもっと時間がかかったと思われる。 以下の表は、オンパクへの参加を通じて発生してきた社会起業の一覧である。6年の歳月の中で非常に多彩な地域資源を活かした社会起業が起きている。


オンパク関連の社会起業関連事業の一覧

 

サービスの名称

概要

ファンゴティカ

別府の温泉泥を使ったエステのプログラム。オンパクへの参加を通じて顧客の募集とサービスメニューの開発を実施してきた。 既にオンパク・パートナーにより市内2箇所にファンゴティカエステ専用の店舗を開設。 現在、旅館ホテル客室への派遣型ファンゴティカエステサービスをNPOオンパクと協力しながら開発中。

地獄蒸し屋台

オンパク・パートナーである旅館・大黒屋がオンパクの協力を得て自社の敷地に作った飲食施設。温泉の噴気を生かした「地獄蒸し」と呼ばれる伝統的な調理法を現代風にアレンジしたサービスが好評でインターネットなどで好調な集客をしている。

別府八湯ウオーク

地元のNPO法人などが主催しているガイド付きの散策プログラム。 オンパクへの参加を通じてガイド人材の育成を実施している。 一般顧客や旅行エージェント向けの散策ガイドの派遣事業が好調で、当該NPO法人の運営資金源となっている。

別府湾弁当

オンパク・パートナーである地元喫茶店ママが別府の素材を活かして作る手作り弁当。オンパクがJR九州を紹介して事業化。九州駅弁コンテストで上位入賞の常連となり、喫茶店の主要収益源となっている。収益の一部をまちづくりに寄付する仕組みも備えており、第二弾の別府湾弁当事業を他のオンパク・パートナーと準備中。

別府ナビフリーペーパー事業

地元大学生がJR九州とタイアップして別府の観光情報を満載したフリーペーパーを九州一円の駅にて設置する事業。NPOオンパクが統括責任者となり、地元大学とも連携した学生ベンチャー事業として推進している。

べっぴん泉事業

別府の温泉水を使った無添加化粧水の開発と販売をオンパクのネットワークを通じて実施。主体はオンパク・パートナーの美容室。

オリジナルスイーツ開発事業

オンパクが運営する「砂湯」におけるオリジナル商品の販売事業。オンパク・パートナーの菓子店が手がけている。「砂かけババァロア」「別府リン」など好調に販売推移中。

オンパク・ウェルネススクール事業

オンパクが運営する健康増進型温泉施設における住民向けの健康増進教室の実施。オンパク・パートナーの水中運動、ヨガなどの運動指導員が運営。

人材育成事業

エステティシャンや運動指導員など、健康・美容に関わる現場人材育成事業をオンパク・パートナーと連携して実施中。 オンパク開催時のモニター募集、サービスの提供などの実習型研修が育成プログラムに含まれている。

スポーツ・カルチャー・エステ系のサービス

スピリチュアルカウンセリング、フラメンコ、ヨガ、ベリーダンス、マッサージ、ハワイアンロミロミ、アロマエステなど個人事業者により提供される多彩なサービスがオンパクへの参加を通じてサービスレベルの向上と顧客獲得を実現し定着している。 このジャンルの成果事例がもっとも多い。別府・大分での店舗開設や教室開設に繋がる。

地域づくり団体の活動支援

非営利の地域おこしグループはオンパクに「無料」で参加して自分たちの地域の魅力をアピールすることができる。その結果、多くの地域おこし活動が活発化すると共に活動資金確保のためのサービス開発に結びついている。「別府路地裏地域B級グルメガイドブック事業」、「芋汁等農村料理ケータリング事業」、「漁港朝市における買いたて海産物の炭火焼付き朝ごはん提供事業」 など、多数の事例がある。

 

 

 


 

<詳細資料>

 

1.ヒトとサービスを育てる「オンパク・イベント」

 

1)オンパクが開催にいたるまで

 

オンパクは、「別府八湯温泉泊覧会」というイベントの略称で「ハットウ・オンパク」または単純に「オンパク」と呼ばれる。

 

オンパクは別府におけるまちづくりの動きの中で発生したイベントで、2001年の秋から開始され2007年の5月まで11回の回数を重ねてきた。2001年当時は別府市内の各地において様々なまちづくり団体や旅館組合などによる地域活性化への取組みが活発化してきた頃であり、単にそれらの取組みを一同に介して「理想の温泉地」を表現するための「博覧会」を開催するというのが当初の開催趣旨であった。

(画像は初回のオンパクのホームページ、インターネット博覧会「インパク」の関連イベントとして開催された。)

 

その後、オンパクは回数を重ねるに従い様々な効果が認められるようになり、地域再生の手法として有効であることがわかってきた。 当初はボランティアの実行委員会組織により運営されてきたが、事業規模の拡大に伴いNPO法人化が検討され、2004年9月にはNPO法人ハットウ・オンパク(以下、NPOオンパク)が誕生した。

 


2)オンパクの目的

 

オンパクの目的は以下に記す課題を達成することである。 a〜cはオンパク開催毎の直接的な成果目標であり、d〜eは開催を重ねる事で実現される成果目標である。これらの目的の達成により地域の集客交流サービス産業の持続的な発展がなされる。

 

a)    地域資源の発掘

b)    人材とサービスの育成

c)    パブリシティ・地域イメージの向上

d)    地域資源を活用した集客交流サービスの日常化

e)    業種横断型ネットワークの構築

 

 オンパクは集客交流サービス産業再生の「仕組み」化を目指している。事業の持続性や自立性は重要な要素となる。集客交流サービス産業再生の取組みは短期間で終了するとか特定の個人や企業に依存するものではなく、持続的かつ自立的な「仕組み」として地域に存在しておくべきだからである。

 

また、オンパクは上記の目的からも分かるとおり、既存のイベントとも異なっている。一般的なイベントは開催期間中の集客や経済波及効果が重要な目的であり、イベントそのものの集客規模が回数を重ねる毎に拡大することが望ましい。しかし、オンパクは開催期間中の集客よりもむしろ、日常的に集客できるサービスや担い手人材の育成・蓄積がどの程度なされたかが重要視される。 以下にそれぞれの集客イメージを記すがイベント期間中の集客は少なくても、蓄積を重視することで地域の集客力(総面積)はむしろオンパク型の方が高くなるという事を示している。

 

   

既存イベント                オンパク


3)オンパクの概要

 

オンパクの特徴は「オンパク・プログラム」と呼ばれる地域資源を活用した多彩な体験交流型プログラムが集中的に開催されるところにある。 それは「地域資源、集客交流サービスの見本市」である。顧客はガイドブックやウェブサイトを閲覧し、気に入ったプログラムに参加する。

 

以下の図表1-1に平成18年10月の別府オンパクを例にとって概要を記すが、テーマ・規模・期間などは開催地の事情に応じて変化させればよい。

 

項目

概要

イベント・テーマ

「物語」…オンパクに関係する人のオンパクや別府に対する想いを紹介し、その人が提供してきたプログラムを紹介する。

オンパク・プログラム

「天然温泉力の体感」「地域の歴史と文化」「自然」「地域の食文化」「健康・癒し・美」といった体験交流型プログラムにより構成。100種類程度のプログラムが用意される。

期間

24日間

場所

旅館ホテル・歴史的建造物・町なみ・郊外・温泉など

顧客

地域住民や観光客など、基本的には個人参加。

プログラム総参加者は延べ2,000人〜3,000人

運営主体

NPOオンパク

プログラム提供者

NPOオンパク

オンパクパートナー(個人事業者・企業・地域づくり団体等)

集客方法

ガイドブック 20,000部発行

ホームページ、新聞広告などにより募集

 

 

図表1-1  オンパクの概要 ガイドブックとプログラムの例

 


4)オンパク・プログラム

 

オンパクは、オンパク・プログラムと呼ばれる地域資源を活用した多彩な体験交流型のプログラムを集積させたイベントである。 オンパク・プログラムは開催する地域の地域資源によりテーマの設定や構成が決められる。 

 

別府の場合は、「天然温泉力の体感」「地域文化の体験」「自然・歩く」「地域の食文化」「健康・癒し・美」の5本柱がプログラムのテーマとなる。

 

以下の図表1-2に過去の別府オンパクで実際に行われたプログラムを例に説明する。

 

種別

プログラムの説明

散策

2006-07-31 09:29:25 2006-07-31 09:29:40

地域住民によるガイドと一緒に歩くガイドツアー。地域の歴史や生活文化を楽しい解説とビジュアルで紹介していく。(写真は鉄輪ゆけむり散歩)

 

エコ

 

公共交通機関や貸切バスを使って周辺地域を訪問する自然や地域文化体験のテーマツアー。オンパクで育成したガイドと受入地域の住民が対応する。(写真は、国宝…座禅&写経で1000年の歴史を感じる旅)

 

イベント

2006-07-31 11:23:24 2006-07-31 11:23:34

歴史的な空間などでの音楽会などの催し。教養や地域文化をテーマ。

(写真は、芸者遊びのススメ)

 

スポーツ

2006-07-31 23:11:41 2006-07-31 23:11:30

専門の講師の指導により体を動かすプログラムと温泉入浴の組み合わせ。

(写真は、ヨガ&ヒーリングスパ・岩盤浴)

 

デイスパ

「ファンゴティカ ディセ」は大分県別府市、別府駅近く、ファンゴパック、メンズエステ、ピーリング、フェイシャルエステ、ブライダルエステ、アンチエイジング、デコルテマッサージなどのお店 

エステやマッサージと温泉入浴をセットにしたプログラム。個人向けである。(写真は、別府の八色の温泉泥を使用するエステ・ファンゴティカ)

 

カルチャー

2006-07-31 21:21:21 2006-07-31 21:21:32

暮らしを豊かにする教養講座。ホテルや歴史的空間を会場に専門の講師により行われる。温泉入浴がセット。(写真は、STORY〜ワインの歴史物語)

 

クラフト

 

専門の講師によって指導される工芸体験。

(写真は、初心者の為のポーセリン陶絵付け体験)

 

ヒーリング・スピリチュアル

 

精神世界の理解を高め、ストレスの解消を図るカウンセリングプログラム。専門の講師により指導される。

(写真は、スピリチュアル・フェスティバル)

 

グルメ・食文化

 

地域の伝統的な食文化の体験、地域住民により説明される。

(写真は、鉄輪地獄蒸し屋台)

 

 

図表1-2 オンパク・プログラム


5)オンパクの事業構造

 

オンパクの事業構造は一見複雑であるが、理解しやすくするために「見本市」に例えてヒト・モノ・カネの観点で図表1-3に整理してみる。

 

項目

見本市の場合

オンパクの場合

目的

テーマに沿った商品やサービスを紹介し販売につなげる

a)    地域資源の発掘

b)    人材とサービスの育成

c)    パブリシティ・地域イメージの向上

d)    地域資源を活用した集客交流サービスの日常化

e)    業種横断型ネットワークの構築

主催者

見本市開催者

NPOオンパク

サービス

提供者

見本市に参加しているブース出展者

一部シンボリックなプログラムをNPOオンパクが提供し、その他はオンパクパートナーが提供する。

顧客

見本市参加者

オンパクファン倶楽部会員

地域住民・観光客

スポンサー

展示会スポンサー

自治体・業界団体・企業など

提供物

テーマに沿った商品やサービス

地域資源を活用した多彩な体験交流型プログラム

運営資金

スポンサー協賛金

出展費用

協賛金

ガイドブック出展料

ガイドブック広告掲載料

自主プログラム収入

運営コスト

会場費・ブース設営費

宣伝費

ガイドブック・HP制作費

ガイドブック・HP制作費/広告費/自主プログラム経費

商品価格

サンプル品は無料だが販売も行う。

NPOオンパク主催プログラムは集客・パブリシティの為に格安価格で提供。

パートナープログラムはまちまち。

 

図表1-3 一般的な「見本市」とオンパクの事業構造の比較

 


 

 オンパクの事業模式図を以下の図表1-4に記載する。第一章ではヒト・モノ・カネの役割と流れのみを整理した事業概要の紹介にとどめている。 地域資源の発掘、プログラム企画支援、ガイドブックやHPの制作、パブリシティ、開催を通じた人材やサービスの育成、事業評価、収支モデルなどの具体的な運営ノウハウは第三章にて整理する。

 

 

 

 

図表1-4  資金・サービスの流れからみたオンパクの事業模式図

 

 


2.持続性を実現する「オンパク・プラットフォーム」(ソーシャルキャピタルの一形態) 

 

1)オンパク・ネットワーク

 

オンパクは全体像を見ると複雑なイベントに見えるが、個々のプログラムの提供にかかわる事業者の関与は労力、資金、時間において限定的であるので比較的参加しやすい構造になっている。したがって、オンパクの開催を重ねる事により、地域には主催者を中心にした業種横断的なネットワークが自然と形成されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図表1-5  オンパクネットワークの概念図

 

 

 


2)ネットワークからプラットフォームへ

 

オンパクの開催を通じて形成されるオンパクネットワークは以下のような特徴を有することになる。

 

a)    地域内外にわたり広範かつ業種横断的である

b)    地域再生という長期ミッション、オンパクの成功という短期ミッションを共有している

c)    オンパクの開催により情報の伝達と共有が容易である

d)    オンパクの開催によりネットワークに参加しやすく、開かれている

e)    オンパクの開催により協働(コラボレーション)の機会が多い

f)    それぞれの役割が明確であり、主体的な参加が期待できる

g)    顧客となるファン倶楽部(リピーター会員)や地域住民も参加している

 

このネットワークは次第にヒト・モノ(サービス)・カネの集積を生み、地域における集客交流サービス産業の企画・開発・人材育成・情報発信の基盤(=プラットフォーム)となっていく。このオンパクを背景に生み出される基盤を「オンパク・プラットフォーム」とする。オンパク・プラットフォームは充実したネットワークを背景にして、以下の機能を担っていく。イベントとしてのオンパクが期間限定的な取組みであることに対して、オンパク・プラットフォームの取組みは常時行われるべきものである。

 

a)    地域資源活用型の集客交流サービスの日常化促進機能

b)    地域の情報発信窓口機能

c)    地域の集客交流サービスの窓口機能

d)    人材育成・商品開発機能


3)オンパク型の集客交流エージェント事業の自立・持続的運営モデル

 

イベントとしてのオンパクは単独の事業収益性という観点から見ると赤字になりやすい。オンパクの目的である地域資源の発掘や人材・サービスの育成は公的な色彩が強いものであり、まずは収益よりも効果を優先すべき事業とも言える。 したがって事業立上げ当初はなんらかの公的支援を必要とするが、公的支援に依存した運営では事業の自立性・持続性の確保は困難である。

 

そこで、オンパク・プラットフォームにおいて収益事業を展開する必要が生じる。以下の図表1-6は、オンパク・プラットフォームが各地域において行う可能性の高い事業を列記する。下記 a)〜e)は平成18年度においてNPOオンパクが既に展開している事業分野である。

 

a)    出版、フリーペーパー、ウェブサイトなどの地域情報発信事業

b)    体験プログラム、研修・視察などの手配(ランドオペレーション)事業

c)    オリジナル商品、サービスの提供

d)    公共施設の指定管理業務の受託

e)    商業活性化・まちづくりなど各種調査業務などの受託

 

 

オンパク・イベントの開催

 地域資源の発掘

 人材の育成

 テストマーケティング

*赤字ベースのイベント

 

オンパク・プラットフォーム

 企画・開発

 人材の育成

 サービスの日常化支援

*赤字ベースの取組み

 

 

 

オンパク・プラットフォームを背景にした各種収益事業の運営

 

*運営資金の獲得

 

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図表1-6 オンパク型集客交流エージェントの持続的運営サイクル