いちのいで会館/景観の湯・金鉱の湯(いちのいでかいかん/けいかんのゆ・きんこうのゆ)
観海寺温泉。ラクテンチの下。仕出し・折詰弁当の「いちのいで会館」にある2ヵ所の露天風呂は、抜群のロケーションと乳青色の神秘的なお湯が魅力。「いちのいで会館」で食事をすると入浴可能。きり傷・やけど・慢性皮膚炎などに効果があります。「金鉱の湯」は、元別府金山の跡を生かした露天風呂。「景観の湯」は、文字通り別府屈指の景観を堪能できる露天風呂。5月~8月は松花堂弁当、9月~4月は大分郷土料理のだんご汁定食が味わえる。営業時間午前11時~午後5時 別府市上原町14-2 TEL:0977-21-4728【別府観光・産業経営研究会】



温泉そのものが好きという皆さんにとっては、質・量ともに格段に豊富な別府というところはきっと評価が高いのでしょうね。「いちのいで会館」の名も以前出されていましたが、これも地元の人々というよりは全国の「生粋の温泉好き」の皆さんから名前が挙がることが多いように思います。【村上Masa】

いちのいで会館はメタ珪酸型の青色湯の代表で、希に見る名泉です。ここが最近まで一般公開されてなかったことも別府の奥深さを物語ってますね。【2000/01/05 斉藤雅樹】


村松@仙台です こんにちは
手土産といっては何ですが、昔、温泉ML等で、流したメールを流させていただきます。webで公開しておりますので、ご覧になった方もおられることと思いますが、重複いたしましたら、何卒ご容赦を。内容は、いちのいで会館温泉水がなぜ青いか、を化学的に解析したものです。ご賞読ください。(_ _;)
------------------ココカラ
「温泉の化学」〜別府いちのいで会館温泉水の青色〜
いちのいで会館の温泉水、藤田さんから送って頂いた、
別府いちのいで会館の温泉水の分析について報告します。
試料採取: 平成11年5月
試料分析: 平成11年5〜7月

まず、観察結果:
1)薄い青白色を呈しているが、透明に近い
2)浮遊が認められますが、たぶん、有機物だろう

解析:
(1)遠心分離による固体と液体の分離
手順
1.温泉水 20 mlを遠心分離機にかける
 遠心分離 10,000 r.p.m.  30 min
 この条件で、コロイドはすべて沈んだ
(この条件でシリカなら、20 nm程度のものまで沈む)
2.上澄み液(固相のない)を保存
3.沈んだ固体(白色)に2段蒸留水 20 mlを入れる
4.超音波分散

写真1,2
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide1.jpg
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide2.jpg
左は、温泉水そのもの
右は、遠心分離して固相を除去したもの(上澄み液)

遠心分離により、透明になった。
つまり、色がつく原因のものは固相になった
可能性1
シリカコロイドによる着色
可能性2
シリカコロイドに色の原因のイオンが吸着

可能性2は、遠心分離で得た固相の色が白色だったことから可
能性が薄い。

その固相に2段蒸留水 20 mlを入れて、超音波分散し
た写真が
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide4.jpg
左は、温泉水そのもの
真ん中は、遠心分離して固相を除去したもの(上澄み液)
右は、固相に2段蒸留水 20 mlを入れて超音波分散したもの
写真では見えにくいが、右はほぼ元の青白い色を呈している。

というわけで、可能性1が大です。

なお、最初見えた、浮遊物はトルエンに溶解することから、有
機物であると判断しました。
このシリカコロイドは小さいためにまるで溶液のように見えた
わけです。


(2)電子顕微鏡写真
いちのいで会館の温泉水に含有されるシリカ粒子の電子顕微鏡
写真はこちら:
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide6.jpg
バックに見える、大きな孔は、電子顕微鏡サンプルを作るとき
に用いた、「マイクログリッド」という、膜です。
シリカコロイドは全て球形であることがわかります。
また、左下のバー(直線)は、400 nm(nano-meter)を表すスケ
ールです。非常に小さな粒子であることがわかります。
20 nm 〜 0.2 μmくらいのシリカ粒子と思います。

結晶性と組成について:
形は球形で、アモルファス(非晶質)であることがX線などの
解析によってわかっりました。
なお、FT-IRで分析したところ、シリカ組成であることがわかり
ました。

球形シリカ粒子は、高いアルカリ領域で加水分解により合成さ
れますので、地下深部で高アルカリ、高温で生成したものと推
測されます。


(3)pHやメタケイ酸濃度の分析
20.0℃で pH 8.438
pH標準液 6.86, 9.18を校正用に使用。
pHメーターは東亜電波の高性能pHメーター

ICPでSi濃度を求めたところ、
2.706 mmol/L
でした。
これを H2SiO3(分子量=78.09958)の標記に変えると
211.3 mg/L
となります。


(4)なぜ、青いのかの考察
Rayleigh散乱の概念を導入します。

粒子によって散乱される強度Iは
     8π^{2} α^{2}
I = ----------------- (1+cos^{2}θ}
      r^{2} λ^{2}
で表されます。
ここで、πは円周率、αは粒子の分極率(粒子の粒径に比例
する量)、rは粒子から散乱光測定点までの距離、λは光の波
長、θは散乱角(透過光を0とする) です。
^は上付を示しています。
このように、粒径が小さくなると短い波長、つまり青色は
散乱しやすいのがわかります。
こうして、コロイドが青白くなる、って寸法で、その粒径は
どのくらいか、かなり粗く見積もったところ、シリカと仮定
すると、数十nm程度でして、電子顕微鏡の結果と合ってしま
うわけです。
で、この散乱強度を紫外可視分光光度計でいわゆる、UVスペ
クトルをとりました。
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide7.gif
は、紫外可視分光光度計による測定結果を示しています。可
視光青色領域の400 nm以下から、紫外領域まで、散乱が観察
されます。
なお、赤い方は、遠心分離でシリカコロイドを固相として分
離し、蒸留水を加えて再分散したもので、元の温泉水よりも
散乱効果が低いことがわかります。これは、十分に分散でき
なかったことを示しています。
(5)コロイド溶液の見分け方
さて、いちのいで会館の温泉水がコロイドであることを簡単
に見分ける手法を説明します。
食塩の飽和溶液をたとえば、10 mlの温泉水に1〜2 ml程度加
えると、コロイドならば、凝集して沈殿します。凝集とは、
分散しているコロイド粒子同士が分子間力という力で集まる
ことで、個々は独立ながら、凝集体として大きくなります。
丁度、団子を丸めて大きくした感じです。凝集体として大き
くなるともはや、分散できないので、比重が水よりも大きい
と沈殿します。
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide5.jpg
は、左側が、温泉水。右側は、温泉水に、KCl(塩化カリウム)
を混ぜて、1 mol/l KCl溶液としたものです。2〜3時間で
完全に凝集体となって沈殿しました。右側の底にこずんでい
るのが、そのシリカコロイド凝集体です。
以上、これまでの分析により、コロイドによる青色着色が明
らかとなりました。
附記:
齋藤@別府さんより知らせて頂いた、分析表
pH8.4(気温16℃)
主成分は(mg)
Li+         6.9
Na+     753
K+        76
Ca2+     31
Cl-    1190
Br-        3.9
SO42-  181
HCO3-  24
CO32-  29

HBO2    58
H2SiO3 468
源泉温 101.8 ℃
謝辞:
わざわざ温泉水を送っていただいた藤田さんに深く御礼
申し上げます。
------------------ココマデ
【2000/02/09 村松淳司】

別府の人でもあまりいないのでは無いでしょうか?地獄の温泉水は。。いちのいで会館の温泉水分析は、応用化学科卒業の私としましても頭がくらくらしました。すごい。。こちらこそよろしくお願いします。また一段と濃くなりそうですね【2000/02/09 野上やすお】

感動しました---よくわからないから、なおさら感動しております。当館のお風呂もこのように解析すると、感動されるかもしれません----。【2000/02/10 鶴田浩一郎】 難しくてすいません。要点は、青色の原因が、非常に小さな酸化ケイ素=シリカの粒子によるものだった、っていうことです。別名、シリカコロイドっていうやつで、小さいのでまるで透明の液のように見えてしまうのです。ですが、光を散乱させる(映画館で、上映中、光の筋の中できらきら光っている、アレです)効果があって、空が青く見えるのと同じ理屈です。で、是非、ご覧頂きたいのは、この http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/ichinoide6.jpg (WWWでご覧下さい) 電子顕微鏡写真で、1mmの千分の一よりも小さな粒子がいっぱい温泉の中を漂っている、ってことです。小さいので、ブラウン運動という熱による運動が活発で、重力によって落ちることなく、いつまでも、漂っています。それでも長い時間がたつと粒子同士が凝集(くっついて離れなくなること)が起こって、青色がなくなり、白くなって、沈んでいきます。溶液ではなく、コロイド分散液ですので、時間とともに色が変化するのです。まさに、温泉は生きている、っていうことの、あかし、かもしれません。【2000/02/10 村松淳司】