2020年2月26日
「褒める授業は子どもの集中力を高める?」
子どもを褒めて伸ばす教育方針を支持する研究結果が、米ブリガム・ヤング大学デビッド・O・マッケイ教育学部のPaul Caldarella氏らにより報告された。教師が、子どもの悪い点を叱ることより良い点を褒めることを重視すると、授業に対する子どもの姿勢が良くなる可能性が示されたという。
今回の研究でCaldarella氏らは、ミズーリ州、テネシー州、ユタ州にある19校の小学校(幼稚園も含む)の生徒2,536人を3年にわたって観察した。生徒の年齢は5~12歳(全体の53%が男児)で、学級数の総計は151だった。
解析の結果、教師が生徒を叱ることを控え、褒めることを増やせば増やすほど、教師の話に耳を傾ける生徒の数が増え、与えられた課題に対する集中力も高まったことが明らかになった。「褒める対叱る」の比率(教師が褒めた回数を褒める+叱責の総計で割ったもの)が最も高いクラスの生徒は、最も低いクラスの生徒と比べ、教師の話や課題に集中する時間が20~30%増えていた。
Caldarella氏によると、過去の研究では、教師はどちらかというと、生徒の良い振る舞いを褒めるよりも、問題のある振る舞いを叱ることの方が多いことが示されているという。同氏は「そうした教師の姿勢は、クラスや生徒の態度にネガティブな影響を与えることが多い」と話す。そして、「褒め言葉は教師からのフィードバックといえるものだ。生徒が、自分に求められている振る舞いや、教師に評価される振る舞いについて理解するためには、そうしたフィードバックは欠かせない」と説明している。
今回の研究では、生徒を褒めた回数が叱責回数と同じ場合でさえ、生徒が授業に適切な態度で取り組む時間の割合は60%に達していた。このことからCaldarella氏は「教師が褒めることを意識して、褒めることと叱ることのバランスを2対1以上にすれば、授業に対する生徒の姿勢はさらに改善するだろう」と付け加えている。
今回の研究により、教師にとって、褒めることが生徒――特に、勉強に遅れが見られる生徒や問題行動を起こす生徒にやる気を出させるための有力なツールとなり得ることが示された。また、過去の研究では、生徒が授業に集中する時間と成績との間には明確な関係があることが示されている。このことから、Caldarella氏らは、褒められることで生徒の学習意欲が高まり、成績が向上する可能性もあるとしている。
「誰にとっても、自分の努力が褒められ認められることは価値のあることだ。子どもの自尊心や自信を育む上で、褒められるという経験が果たす役割は非常に大きい。また、行動学的な観点から言うと、強化された行動は増大していくものだ。それゆえ、例えば、教師の話を集中して聞く、適切なタイミングで助力を求めるといった好ましい振る舞いをした生徒を教師が褒めれば、生徒のそうした行動が増え、学力が向上するというのは、もっともなことだ」とCaldarella氏は述べている。
 〜CareNetより〜



2020年2月25日
「降圧薬使用と認知機能との関連」
高血圧は、修正可能な認知症のリスク因子の1つである。しかし、認知機能を最適化するために、降圧薬のクラスエフェクトが存在するかは、よくわかっていない。オーストラリア・Neuroscience ResearchのRuth Peters氏らは、これまでの参加者データを含む包括的なメタ解析を用いて、特定の降圧薬クラスが認知機能低下や認知症リスクの低下と関連するかについて検討を行った。
適切な研究を特定するため、MEDLINE、Embase、PsycINFO、preexisting study consortiaより、2017年12月までの研究を検索した。プロスペクティブ縦断的ヒト対象研究または降圧薬試験の著者に対し、データ共有および協力の連絡を行った。アウトカム測定は、認知症発症または認知機能低下の発現とした。データは、中年期および65歳超の高齢期に分類し、各降圧薬クラスは、未治療および他の降圧薬治療との比較を行った。メタ解析を用いて、データの合成を行った。
主な結果は以下のとおり。
・27研究より5万例超が抽出された。
・利尿薬を除き、各降圧薬クラスにおける65歳超の高齢者の認知機能低下や認知症との関連は、認められなかった。
・一部の分析において、利尿薬の有用性が示唆されたが、その結果は、フォローアップ期間、比較群、アウトカムにおいて一貫していなかった。
・65歳以下のデータは限られていたため、分析できなかった。
著者らは「認知症や認知機能低下の観点から、降圧目標達成を目指す治療レジメンの選択は、降圧薬クラスによらず、自由に選択可能である」としている。
 〜CareNetより〜


2020年2月22日
「ストレスで白髪が増えるは本当か?」
反抗期の子どもに「あなたのせいで白髪が増える」と言うのは、あながち間違いではないようだ。米ハーバード大学幹細胞・再生医学准教授のYa-Chieh Hsu氏らは、マウスを用いた実験を行い、ストレスがかかると白髪が増える機序を解明したと「Nature」オンライン版に報告した。この発見は、ストレスが人間の身体に与える影響について示唆を与えるものだとしている。
Hsu氏は「われわれは誰もが、ストレスは自分の身体、特に皮膚や髪の毛に影響するものだと思っている」とし、今回の研究では、ストレスと身体の変化との関係に着目したとしている。「もしこれらが関係するのであれば、ストレスがさまざまな組織をどのように変化させるのかを明らかにしたかった」と同氏。その上で、「髪の色素沈着は研究材料として扱いやすく、研究に取り組みやすかった。さらに、ストレスが実際に白髪を増やすのかを純粋に知りたかった」と話している。
生物はストレスを感じると、「闘うか逃げるか」(闘争・逃走反応)のどちらかを選ぶよう自律神経が働き、神経伝達物質のノルアドレナリンが産生される。今回の実験では、マウスを物理的、心理的ストレスにさらしたところ、この闘争・逃走反応の一部を担う交感神経系が活性化されて、放出されたノルアドレナリンの影響で、毛包にある色素をつくる色素幹細胞が永続的に枯渇してしまうことが分かった。ストレスで白髪が増えるのは、この機序によるものだと、Hsu氏らは主張している。
「今回、発見したストレスによる身体への悪影響は、予想以上だった」とHsu氏はいう。「マウスに物理的、心理的なストレスを与えてから数日後には、色素幹細胞は過剰に反応した後、全て枯渇してしまった。幹細胞が消失すると色素は再生できなくなる。しかもこのダメージは永続的なものだった」と同氏は説明している。
Hsu氏らの発見は、動物実験の結果に過ぎないが、「闘争・逃走反応」のネガティブな影響を強調しているという。論文の筆頭著者で同大学のBing Zhang氏は「特に闘争・逃走反応を刺激するような急性ストレスは従来、動物が生き延びるために役立つと考えられてきた。しかし今回、急激なストレスがかかると幹細胞を永遠に失ってしまうことが分かった」と述べている。
また、Hsu氏は「ストレスに対する自律神経反応が色素幹細胞に与える影響を明らかにすることで、他の組織や器官への影響についても解明していく基盤をつくることができた」と研究の意義を強調。「心理的、物理的なストレスにより身体の組織がどのように変化するのかを突き止めることは、ストレスの悪影響から回復する手段を見出す手がかりになる」と付け加えている。
 〜CareNetより〜


2020年2月20日
「幼少期における米のタンパク質摂取が成熟期肥満を抑制」
幼少期に米の胚乳(精米後の白米)のタンパク質(Rice endosperm protein;REP)を摂取していると、成熟してからの高脂肪食摂取に伴う体重増加が抑制される可能性が報告された。新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター病態栄養学講座の細島康宏氏らと亀田製菓株式会社の共同研究によるもの。
米の栄養素の約6%はタンパク質が占め、日本人のタンパク源として肉や魚に次いで3番目に多いが、その摂取量は減少傾向にある。こうした中、細島氏らはREPの機能性に関する研究を継続している。
今回の研究では、まず4週齢のマウスを2群に分け、1群は動物性タンパク質であるカゼインを含む通常食、もう1群にはREPを含む通常食で幼少期(10週齢まで)飼育。11週齢目以降の成熟期は、各群をさらに2分しカゼインまたはREPを含む高脂肪食で22週齢まで飼育し、これら計4群の体重や血液・尿検査値の変化および腸内細菌叢の組成を検討した。
10週齢時点において、体重や除脂肪体重、血糖値などの検査値は、カゼイン摂取群とREP摂取群との間で有意差はなかった。しかし22週齢になると、幼少期・成熟期ともにカゼインを摂取した群の体重が最大(44.6±2.2g)、幼少期・成熟期ともにREPを摂取した群が最小(34.5±2.1g)となった。幼少期にREPを摂取し成熟期にカゼインを摂取した群は、成熟期での高脂肪食という負荷にもかかわらず39.3±3.7gであり、体重増加が有意に抑制されていた。
また体重だけでなく、血圧、空腹時血糖、HbA1c、総コレステロール、中性脂肪、および尿中アルブミンや糸球体メサンギウム領域面積など腎機能関連指標にも同様の有意な関係が見られ、幼少期のREP摂取が成熟期に保護的な影響を及ぼしていると考えられた。
このようなREPによる肥満抑制作用の機序について研究グループは、ヒトにおいても肥満との関連が報告されている腸内細菌叢の組成に着目し、マウス糞便を用いた細菌叢の遺伝子解析を行った。その結果、幼少期にREPを摂取した群は腸内細菌叢の多様性が高く、またグラム陰性菌である大腸菌のリポ多糖結合タンパク(内毒素)産生が抑制されていることが確認された。
さらに肥満は近年、全身性の炎症反応が亢進した状態と捉えられるようになってきたが、今回の検討において、幼少期にREPを摂取した群は血液、腎、肝のいずれにおいても、IL-6やTNF-αという炎症性サイトカインの産生が抑制されていることがわかった。
また研究グループでは、REPの有する作用について、そのペプチドの関与について検討した。カゼインとREPの人工消化から得られたペプチド画分を用いて大腸菌に対する抗菌活性を調べたところ、カゼイン由来のペプチドでは認められなかった大腸菌に対する抗菌活性がREP由来のペプチドでは濃度依存的に示された。よって、REPによる腸内細菌叢への影響は、REPの消化物であるペプチドの関与が示唆された。
研究グループはこれらの結果を総括し、「マウスにおいて幼少期のREPの摂取は、成熟期の高脂肪食摂取に伴う肥満および肥満関連疾患の発症・進展を抑制する。今後は関与するペプチドについての詳細な検討やヒトでの研究も行い、REPの適切な摂取量・摂取時期を明らかにしていきたい」と述べている。
なお、2名の著者が、亀田製菓株式会社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。
 〜CareNetより〜


2020年2月19日
「新型コロナウイルス受診の目安を発表/厚生労働省」
国内での新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、先日開催された内閣の新型コロナウイルス感染症専門家会議で議論された「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」が、2月17日に厚生労働省より発表された。主な目的は、国民の新型コロナウイルスへの不安の鎮静化と検査や診療による医療機関への過度な集中を防ぐためのものである。
具体的な相談・受診の目安として、「風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く」「強いだるさや息苦しさがある」、また、「高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全など)があり、前記の2つの症状が2日程度続く」という人は、各都道府県に設置されている帰国者・接触者センターへの相談を要請している。
同省では、同時に「国民の皆さまへのメッセージ」として風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に各自の咳エチケットや手洗いなどの実施による感染症対策の励行のほか、症状がある人には「帰国者・接触者相談センター」への相談を呼び掛けている。また、国民向けに啓発資料として「マスクについてのお願い」「一般的な感染症対策について」「手洗いについて」「咳エチケットについて」なども掲載されている。
なお、症状に不安がある場合など、一般的な問い合わせ先も掲載されている。
・厚生労働省 相談窓口 電話番号:0120-565653(フリ―ダイヤル)
 受付時間9:00~21:00(土日・祝日)
・電話でのご相談が難しい方 FAX:03-3595-2756
新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安
1.相談・受診の前に心がけていただきたいこと
○発熱等の風邪症状が見られるときは、学校や会社を休み外出を控える。
○発熱等の風邪症状が見られたら、毎日、体温を測定して記録しておく。
2.帰国者・接触者相談センターに御相談いただく目安
○以下のいずれかに該当する方は、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。
 ・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く方
 (解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です)
 ・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方
○なお、以下のような方は重症化しやすいため、この状態が2日程度続く場合には、帰国者・接触者相談センターに御相談ください 。
 ・高齢者
 ・糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)の基礎疾患がある方や透析を受けている方
 ・免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方
 (妊婦の方へ)
 妊婦の方については、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センターに御相談ください。
 (お子様をお持ちの方へ)
 小児については、現時点で重症化しやすいとの報告はなく、新型コロナウイルス感染症については、目安どおりの対応をお願いします。
○なお、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等に御相談ください。
3.相談後、医療機関にかかるときのお願い
○帰国者・接触者相談センターから受診を勧められた医療機関を受診してください。複数の医療機関を受診することはお控えください。
○医療機関を受診する際にはマスクを着用するほか、手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえる)の徹底をお願いします。
(厚生労働省 新型コロナウイルス感染症についてのサイトより引用)
 〜CareNetより〜


2020年2月18日
「ポリフェノールは死亡率も下げるか」
日本人はコーヒーや緑茶から多くポリフェノールを摂取している。ポリフェノール摂取による健康ベネフィットは疫学研究で示されているが、日本人における死亡率との関連は報告されていない。今回、お茶の水女子大学の田口 千恵氏らが高山コホート研究で調査したところ、食事によるポリフェノール総摂取量が全死亡率、心血管疾患および消化器疾患による死亡率と逆相関することが示された。
本研究の対象は高山市の住民2万9,079人。食事摂取量は、1992年に半定量的食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて評価し、その後16年間における死亡率を調べた。食事によるポリフェノール摂取量は、食物摂取データを独自のポリフェノール含有データベースと照合し計算した。
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中に合計5,339人が死亡した。
・多変量調整後、ポリフェノール総摂取量の最高四分位群を最低四分位群と比較すると、全死亡率が有意に低かった(ハザード比:0.93、95%信頼区間:0.82~0.99、傾向のp=0.003)。
・ポリフェノール総摂取量の最高四分位群は、最低四分位群に比べ心血管疾患による死亡率が有意に低く、なかでも脳卒中死亡率で強い逆相関が認められた。ほかの原因、とくに消化器疾患による死亡率でも逆相関が認められた。
・一方、ポリフェノール総摂取量とがん死亡リスクに有意な関連はみられなかった。
 〜CareNetより〜


2020年2月17日
「緑茶をよく飲む人は長生きできる?」
緑茶をよく飲む人は健康で長生きできる可能性が高いことを示唆する大規模研究の結果が報告された。中国医学科学院のXinyan Wang氏らが10万人超の中国の成人を対象に実施した研究で、緑茶を週3回以上飲んでいた人では飲む習慣がない人に比べ、心筋梗塞や脳卒中になる率が低く、50歳の時点での余命も約1年長いことが明らかになったという。
この研究は、中国における動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクの予測を目的とするプロジェクト(China-PAR)に登録された中国の成人を対象にしたもの。解析の対象となった10万902人は、研究開始時に心血管疾患やがんに罹患していなかった。研究チームは質問票を用いて、対象者の飲茶習慣のほか、生活習慣や病歴などに関する情報を集めるとともに、体重、血圧、コレステロール値を測定し、緑茶の摂取量と心血管疾患および全死亡リスクとの関連を調べた。
中央値で7.3年に及ぶ追跡期間中に、心筋梗塞や脳卒中などのASCVDイベントが3,683件生じた。緑茶を週3回以上飲む人は、まったく飲まない人や飲む回数が週に3回未満の人に比べ、心疾患や脳卒中の発症リスクが20%低く、致死的な心疾患や脳卒中による死亡リスクが22%低く、全死亡リスクが15%低かった。さらに、緑茶を週に3回以上飲む人では50歳の時点で、冠動脈心疾患や脳卒中を発症するまでの期間が1.41年長く、余命も1.26年長いことも明らかになった。
これらの結果を踏まえWang氏らは、「緑茶、紅茶、白茶はいずれも同じチャノキに由来するが、紅茶に比べると緑茶はフラボノイドと呼ばれる抗酸化物質の含有量が多い。また、実験では、緑茶抽出物が炎症を鎮め、血管および心臓の細胞の機能を向上させることも示されている」と説明している。
これまで多くの研究で、緑茶は健康的なコレステロール値や体重、心疾患および一部のがんのリスク低減と関連することが示されてきた。しかし、今回の研究も含め、いずれも観察研究であり、緑茶自体にベネフィットがあることを証明するものではない。
米セントルイス大学のWhitney Linsenmeyer氏は、今回の研究では食事全般、運動習慣、喫煙、教育レベルなどが考慮されているが、「それでもあらゆる因子をコントロールすることは不可能だ」と研究の限界を指摘する。その一方で、同氏は「緑茶による健康効果はさまざまな国における研究で多数報告されており、臨床試験によるエビデンスもいくつか存在する」と述べ、イラン人女性を対象にした最近の研究で、緑茶を1日に3杯飲んだ群では、8週間にわたり体重、血圧、血糖値、コレステロール値の改善が認められたことを例に挙げている。
こうした状況を踏まえLinsenmeyer氏は、「緑茶は抗酸化物質が豊富なノンカロリーの飲料であり、好きな人はどんどん飲むべきだ」と話す。ただし、カフェインが含まれているため、相互作用を起こす薬を飲んでいる人や不眠症の人は注意が必要である。
一方、Academy of Nutrition and Dietetics(AND)の元代表であるConnie Diekman氏も、現時点で緑茶に何らかの疾患を予防する効果があるとは言い切れないとしつつ、「少なくとも緑茶に害はないため、カロリーのない水分補給として積極的に飲むことを勧めている」と話している。
 〜CareNetより〜


2020年2月15日
「お腹の脂肪が心筋梗塞の再発リスク増加と関連」
一度心筋梗塞を発症した患者は、腹部の脂肪が多いと、再度心筋梗塞を起こしやすいとする研究結果が、「European Journal of Preventive Cardiology」に掲載された。
腹部肥満により初回の心筋梗塞リスクが上昇することはこれまでの研究で明らかにされていたが、今回の研究では、2度目のリスクも高まることが示された。研究論文の著者であるカロリンスカ大学病院(スウェーデン)のHanieh Mohammadi氏は、「予防薬をきちんと飲んでいても、あるいは血液検査の結果が正常値でも、心筋梗塞や脳卒中の予防のためには標準的な腹囲を維持することが重要だ」と述べている。
この研究は、初回の心筋梗塞を起こしたスウェーデンの患者2万2,882人(男性1万6,950人、女性5,932人)を対象に、腹部肥満と心血管イベント再発との関連を追跡調査したもの。追跡期間の中央値は3.8年だった。なお、心血管イベントとは、致死的・非致死的な心筋梗塞や脳卒中など動脈血栓により引き起こされたものとし、また、腹部肥満は、腹囲が男性では94cm以上、女性では80cm以上と定義した。対象者の大半(男性の78%、女性の88%)は、腹部肥満であった。
その結果、腹部肥満は、喫煙、糖尿病、高血圧、コレステロール、BMIといった他のリスク因子とかかわりなく、致死的・非致死的な心筋梗塞や脳卒中と独立して関連することが明らかになった。
また、心筋梗塞の再発リスクは、女性よりも男性で高かった。Mohammadi氏らはこの点について、今回の研究では女性の数が少なかったため、このリスク差を説明するには研究を重ねる必要があるとした上で、可能性のある理由として、女性の腹部肥満は大半が比較的害の少ない皮下脂肪によるものであるのに対し、男性の腹部肥満の多くは有害な内臓脂肪によるものである可能性があることを挙げている。
腹部脂肪が危険であるのは、高血圧、高血糖、糖尿病、コレステロール値の上昇など、動脈血栓を促進させる症状に関連するためだとMohammadi氏は説明する。しかし、今回の研究では、腹部肥満自体が独立したリスク因子であることが示された。「つまり、腹部肥満にはまだ知られていない有害なメカニズムが存在する可能性があるということだ」と同氏は指摘する。
Mohammadi氏は「腹部肥満には、健康的でバランスの取れた食事と定期的な運動によって対処できる」と述べる。また、再発リスクの高い心筋梗塞患者を特定するために、臨床現場で腹囲を測定することも勧めている。
今回の報告を受け、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心臓病学教授のGregg Fonarow氏は、「体重を落とすだけで心筋梗塞の再発リスクを低減できるとは言い切れない。心筋梗塞を起こしたことがある患者が、腹部脂肪を減らすことで再発リスクを下げることができるのかどうかは、臨床試験で検証していく必要がある」と指摘している。 一方、この研究の付随論評を執筆した、サンタ・クルス病院(ポルトガル)のDaniel Matos氏は、「現在のところ、減量や食事と生活習慣の改善以外に腹部肥満を標的とする治療法はない。しかし、将来的に肥満解消に有効な治療法が開発されれば、心筋梗塞後の患者の転帰を改善できる可能性がある」と話している。
 〜CareNetより〜


2020年2月14日
「新型肺炎を”COVID-19”と命名、ワクチン開発には18ヵ月か」
WHO(世界保健機関)は2月11日、スイス・ジュネーブの本部で開いた記者会見で、中国・武漢市を中心に、世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症について「COVID-19」と命名し、ワクチンの開発には18ヵ月かかるという見通しを示した。
COVID-19を巡っては、中国国内だけでも4万2,708人の確定症例、1,000人超の死者が報告されており、中国以外では24ヵ国で393例の確定症例、1人の死亡が確認されている(すべて11日6時現在)。
各国でワクチンや治療薬の研究が進められており、WHOでは11日から2日の日程で、世界から400人以上の科学者を集めて治療やワクチン開発に関する会議を開催している。
テドロス事務局長は会見で、「最初のワクチンの準備が整うまでには18ヵ月を要する可能性がある。われわれは長期的にこのウイルスと戦うために利用可能な武器を使い、あらゆることを実施していかなければならない」と述べた。
 〜CareNetより〜


2020年2月13日
「新型肺炎を”COVID-19”と命名、ワクチン開発には18ヵ月か」
WHO(世界保健機関)は2月11日、スイス・ジュネーブの本部で開いた記者会見で、中国・武漢市を中心に、世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症について「COVID-19」と命名し、ワクチンの開発には18ヵ月かかるという見通しを示した。
COVID-19を巡っては、中国国内だけでも4万2,708人の確定症例、1,000人超の死者が報告されており、中国以外では24ヵ国で393例の確定症例、1人の死亡が確認されている(すべて11日6時現在)。
各国でワクチンや治療薬の研究が進められており、WHOでは11日から2日の日程で、世界から400人以上の科学者を集めて治療やワクチン開発に関する会議を開催している。
テドロス事務局長は会見で、「最初のワクチンの準備が整うまでには18ヵ月を要する可能性がある。われわれは長期的にこのウイルスと戦うために利用可能な武器を使い、あらゆることを実施していかなければならない」と述べた。
 〜CareNetより〜


2020年2月12日
「肥満は運命ではない!?」
肥満は遺伝によって定められた運命ではないことを示唆する報告が「JAMA Cardiology」に掲載された。
遺伝子の研究が進歩したことで、さまざまな病気の発症と遺伝子の関連が明らかになった。そのような情報が社会に広がるにつれ、過体重や肥満はDNAのせいであって逃れることはできないと多くの人が考えるようになってきた。しかし今回の報告によると実際はそうでなく、はるかに大きな役割を果たしているのは日常生活の送り方だという。
この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスク因子を探索している「CARDIA研究」のデータを用いて行われた。1985~2010年にわたり20歳代の米国人2,517人(白人1,608人、黒人909人)を25年以上追跡して、遺伝的背景が肥満リスクに及ぼす影響を検討。遺伝的背景の評価には、DNA情報と疾患発症の事例を多数検討することでその関連の強さを遺伝統計学的に点数化した「多遺伝子リスクスコア(PRS)」という指標を用いた。
ベースラインにおける平均BMIは24.2±4.5であったものが、25年後には29.6±6.9に増加していた。このBMIの変動に関連する3つの因子(年齢、性別、および親の過体重・肥満歴)にPRSを追加し、白人のデータを用いて解析すると、ベースライン時のBMIの11.9%、25年目のBMIの13.6%を説明すると計算された。黒人はPRS追加による説明力の上昇が白人よりも少なかった。
一方、PRSのかわりにベースライン時のBMIの値を前記3因子に追加すると、25年目のBMIの52.3%まで説明できることが分かった。さらにBMIの経時的な変化を情報として追加した場合、25年目のBMIを最大80%程度まで説明可能と計算された。
この研究を主導した米ミシガン大学のVenkatesh Murthy氏は、「われわれは、日常診療で手軽に入手できる臨床データに遺伝子データを追加することの効果を知りたかった。結果として、肥満の発症に対して遺伝子がある程度影響することは明らかだが、影響力は他の因子の方がより強いことが分かった」と結論づけた。つまり、若年期のBMIが肥満リスクの最良の予測因子だということだ。同氏はまた「BMIの計算は、遺伝子検査よりはるかに容易であり安価である」とも語っている。
研究指導著者である米ハーバード大学のRavi Shah氏は、「遺伝的リスクは、肥満の原因となる希少な遺伝子を受け継いだ人においてのみ重要なのかもしれない。大多数の人にとっては健康的な食事や活動的な生活などの普遍的な推奨事項の方が重要だ」と述べている。
 〜CareNetより〜


2020年2月10日
「”気候非常事態”に世界の科学者らが警鐘」
地球は「気候の非常事態」に直面しており、思い切った方策をとらなければ人類に計り知れない苦難がもたらされることになる――。そう主張する研究論文が、「BioScience」に発表された。この論文には世界153カ国の科学者1万1,258人が賛同し、共同署名している。
論文の筆頭著者である米オレゴン州立大学教授のWilliam Ripple氏は、「気候変動による地球温暖化は飢餓や疾患を劇的に増加させ、既に人々の健康に打撃を与えている」と説明。その上で、「気候変動は人類の心身の健康や幸福にとって重大な脅威となっている」と話している。同氏らの論文によれば、気候変動は多くの科学者の予測よりも早い段階から始まり、急速に進行し、その影響は極めて深刻なものだという。
今回の警告は、トランプ政権が地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定からの離脱を正式に通告した翌日に発せられた。Ripple氏らは、地球温暖化を遅らせるためには、以下の6つの政策を直ちに講じる必要があるとしている。
・化石燃料の使用削減に向けた規制などの大規模な省エネ対策の実施
・メタンやすす、ハイドロフルオロカーボンなどの大気汚染物質を速やかに削減。これにより今後数十年間に温暖化の進行速度を半減できる可能性がある
・二酸化炭素などの温室効果ガスの制御に重要な役割を果たす森林や草地、湿地などの自然生態系を復元し、保護する
・動物性食品を減らし、植物性食品を主体とした食習慣に切り替える。家畜の飼育にはより多くの資源を必要とし、また、メタンなどの温室効果ガスの排出にもつながっている
・人間の生活は生物圏に依存しているとの認識に立った世界経済にシフトし、自然生態系の開発を見直して地球を健全な状態に保つ
・現在、1日当たり20万人以上増加している世界人口の安定化に向けた政策を推進する
Ripple氏は「われわれは緊急事態に直面しているが、今すぐに効果的な行動を起こせば、壊滅的な気候変動を回避することができるかもしれない」と話す。また、別の専門家で米ノースウェル・ヘルスのEric Cioe Pena氏も「地球温暖化が既に人々の健康に影響を与えていることは明白だ」とし、一例として、温暖化の進行に伴い蚊やダニの生息地域が北に広がり、多くの感染症がもたらされている問題を挙げている。「今やフロリダ州のマイアミでもジカウイルス感染がみられる。温暖化が進み、熱帯に近い気候になれば、米国全土にジカ熱やデング熱などの感染症が広がるだろう」と同氏は警鐘を鳴らす。
また、人々の生命と健康を脅かす極端な異常気象は増えるであろうと専門家らは予測している。Ripple氏によれば、カリフォルニア州で起こった山火事もその一つだという。Pena氏は「ハリケーンや竜巻も頻発するようになっており、その勢力も増している」と付け加えている。
さらに、専門家らは今後、気候変動の影響で農作物の収穫量が減り、海水の温度が上がれば魚の漁獲量も減るため、飢餓も広がっていくとみている。Ripple氏は「世界では既に数億人の人々が飢餓に苦しんでいるが、今後も気候変動によってその数は劇的に増加する可能性がある」と話している。
〜CareNetより〜


2020年2月7日
「子どもの頃に宿題をため込んだホワイトカラー男性はメタボになりやすい?」
子どもの頃に学校から出された宿題などを、期限のぎりぎりまでやらなかったホワイトカラー労働の男性は、成人後に体重が増加し、メタボリックシンドロームになるリスクが高いことを示す報告が「BMJ Open」に掲載された。ただし、この関係はブルーカラー労働者には当てはまらないという。愛知医科大学産業保健科学センターの成定明彦氏らの研究。
目の前の小さな誘惑に負けて、将来の大きな利益を失ってしまうことは少なくない。このような特性の健康面の影響として、将来のために体重に気を付けるより、今の満足のためについ食べ過ぎてしまい肥満になるということが指摘されている。
座っている時間が長く就業中にある程度は自分の裁量で菓子などを口にできるホワイトカラー労働者では、このような特性の肥満への影響が助長される可能性がある。成定氏らは、このような特性と職種、体重管理の関連を調べるために、子どもの頃に学校から出された宿題をいつ行っていたかという本人の特性の一端を表すと考えられる行動と、成人後のメタボのリスクを職種別に検討した。
研究の対象者は電子機器メーカー(2事業所)に勤務する男性従業員795人(平均年齢46.9±8.1歳)。ホワイトカラー(515人)とブルーカラー(280人)の2群に分けて分析した。
子どもの頃の行動については、「休み前に出された宿題をどのタイミングでやり終えたか」という質問で判定。1.すぐに終わらせた、2.なるべく早めに終わらせた、3.均等のペースで終わらせた、4.期間の最後の方に終わらせた、5.期限ぎりぎりになって終わらせた、という五択のうち1~3を課題の先延ばしをしない群(270人)、4を中等度の先延ばし傾向がある群(323人)、5を先延ばし傾向が強い群(202人)として全体を3群に分類した。
対象者全体でのメタボの割合は15.5%だった。これを前記のカテゴリー別に比較すると、ホワイトカラーにおいて先延ばし傾向が強い群の23.1%がメタボであり、先延ばししない群に比べ有意に多かった(P=0.024)。その一方、ブルーカラーでは先延ばし傾向とメタボの間に有意な関係は見られなかった。
次に、年齢、教育レベル、長時間労働の頻度、喫煙・飲酒・身体活動習慣で調整し検討すると、ホワイトカラーでは先延ばし傾向に応じてメタボリスクが高くなるという有意な関係が認められた(傾向性P=0.013)。先延ばししない群を基準とすると先延ばし傾向が強い群のオッズ比は2.29であり、2倍以上メタボリスクが高いことがわかった。一方、ブルーカラーでは有意な関係は見られなかったが、先延ばし傾向が強い群のオッズ比は0.40であり、むしろリスクが低下する傾向にあった。
これらの結果から成定氏らは「先延ばし傾向は男性のホワイトカラー労働者のメタボリスク上昇と関連しており、メタボ関連疾患の予防には、先延ばし傾向の強い男性により注意を払う必要がある」と結論をまとめている。
 〜CareNetより〜


2020年2月6日
「1日10分の運動でも認知機能の維持につながる可能性」
1日わずか10分の運動で認知機能を良好に維持できる可能性が、フラミンガム研究から報告された。米ボストン大学のNicole Spartano氏らが発表した研究。
フラミンガム研究は、米マサチューセッツ州で1948年から行われている大規模疫学研究。当初からの参加者に加えその子孫も対象とし、健康状態や生活習慣について現在も追跡が続けられている。Spartano氏らは同研究の参加者2,770人を対象に、中年(平均年齢48.7±8.6歳)および高齢(同71.3±7.6歳)のグループ別に身体活動量や強度と認知機能の関係を検討した。
その結果、いずれのグループも1日約10~20分の中等度~高強度の身体活動を行っている人で、良好な認知機能との関連が認められた。また、中年グループでは、わずか10分の中等度~高強度の身体活動を行っている人でも言語記憶が良好だった。高齢グループでは、身体活動の強度ではなく、総活動量が認知機能の高さとより強く関係していた。
身体活動と認知機能の関連を調査した先行研究と今回の研究が異なる点として、身体活動を正確性に欠ける自己申告で評価するのではなく、加速度計を用いて正確さを期した点が挙げられる。しかし観察研究であるため、身体活動と認知機能の因果関係の解明に踏み込んだ検討はできていない。ただしSpartano氏は、「今回の研究結果は運動によってアルツハイマー病などの認知症を抑制できるかどうかを示すものではないが、身体活動が早期の認知機能低下の予防に役立つことを示唆するものだ」と述べている。
もう1つ重要なポイントとして、同氏は「今回の知見は、米国保健福祉省(HHS)の運動に関するガイドラインの推奨を満たすのが難しい、あるいは不可能と思われる高齢者にとって、特に重要だ」と指摘している。ちなみに同ガイドラインでは、1週間に150分以上の中等度の有酸素運動を推奨している。
この点に関しては今回の研究には関与していない研究者からも前向きに評価するコメントが寄せられている。例えば米タフツ医療センターのRichard Dupee氏は「1週間に150分の運動を行うことができない高齢者を励ます知見だ」としている。また本論文の査読を担当した米スポールディング・リハビリテーション病院のRoss Zafonte氏によると、「認知機能を保つには、人付き合いや社会参加を続けることも重要」という。
身体活動と認知機能の関連を巡る今後の研究の方向性としてSpartano氏は、「認知機能を維持・向上させるのに各年齢層でどの程度の運動量が適切なのかなどがまだ明らかでない」と指摘。また、フラミンガム研究の参加者はおもに白人の米国人であるため、ほかの人種や民族でも同様の結果が得られるかどうか検討する必要があると述べている。
〜CareNetより〜


2020年2月5日
「フレイル施策を掲げる、国の本当の狙いとは」
2020年度から75歳以上の健康診査にフレイルが追加される。高齢者の低栄養に医師の介入が求められることから、国からのプライマリケア医に対する期待は大きいであろう。2019年11月28日、「人生100年時代の健康と栄養を考える-フレイル予防対策における日本型食生活の役割-」が開催(日本医師会、米穀安定供給確保支援機構主催)。本稿では飯島 勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構 教授)による基調講演の内容についてお届けする。基調講演において、『健康長寿 鍵は“食”-人生100年時代を元気で乗り切るためのフレイル予防-』について講演した飯島氏は、少子高齢化問題が沸騰していた2014年、日本老年医学会の一員として『フレイル』を提唱し、この言葉の定着に貢献した。
フレイルとは、サルコペニアやロコモティブシンドロームなど、病気依存性のものと考えられがちであるが、実は、社会的、心理的、認知的と非常に多面的な事象が相絡み合うことによって生じる概念である。同氏は「とくに、社会的フレイル(孤食、経済的困窮など)の側面から負のスパイラルが生じ、心理的、認知的フレイルに影響が及んでいるケースが散見される」とし、「フレイルの状態は十人十色。複合的に読み解いていかなければならず、フレイル健診では単に筋肉量を測定しているだけではいけない」と、診察時の姿勢について呼びかけた。また、近年では、口の働きの衰えを示すオーラルフレイルにも注目が寄せられており、オーラルフレイル群では正常群と比して総死亡リスクが2.09倍にもなることが報告されている。
今では、国をはじめ多くの自治体がフレイルについて注目しているわけだが、その理由について、同氏は「国の施策であるのはもちろんのこと、フレイルは可逆性であり“頑張れば健康に近い状態に戻れる”ため、心に響きやすい」と、説明した。
ところが、フレイルを含む介護予防への事業者の参加率や継続率の低さが問題視されている。それでも、これからフレイル・認知症予防についてしっかり策を講じた場合、2034年までに介護費用の伸びを抑制する効果は、対策を行わなかった場合と比較して“約3兆円”にのぼることが経済産業省の試算で示されている。このことから、少子高齢化で互いを支え合うためには、「高齢者のなかでも元気な方の場合、支えられる側ではなく、支える側になることが求められる」とし、「フレイル予防を通じて、支える側の高齢者を増やすことが、国の目指す方向性の一つ」と解説した。
支える側の高齢者を増やしていくには、食事指導をはじめ、医師による患者指導が肝心である。しかし、国民はフレイルに関する基本的な情報をすでに収集している。それを踏まえ、「国民は食に関して何の情報を求めているのか。医師は国民が本当に知りたい情報・ソリューションは何かを理解しておかないといけない。でなければ、患者は情報の乱れ打ちにあってしまう」と、同氏は患者の心を動かす指導を推奨している。
たとえば、フレイル予防として患者に歩行を呼びかけたい場合、『歩かないと歩けなくなりますよ』という説明をしても患者には響かない。この説明を『2週間寝たきりになると、7年分の筋肉が落ちます』のように、科学的根拠を盛り込みつつもわかりやすく言い換えることで、「患者に響く指導になる」と同氏は述べた。
同氏はこのような指導を、地域高齢者を対象とした柏スタディ(コホート研究)1)において実践している。このほか、サルコペニアの予後予測に有用な“指輪っかテスト”も発案し、縦断追跡を行っている。また、この研究から、「1人暮らしよりも“孤食”かどうか」「食事内容」などがフレイル予防におけるポイントであることを示し、地域での人とのつながり2)が多い人や日本型食事パターンの人(魚・大豆製品・野菜・果物を多く摂取)、食事炎症性指数(炎症誘導性食事)の低さが、フレイル予防やサルコペニアの有病率低下に影響することも明らかにしている。
最後に同氏は、健康長寿に向けたフレイル予防のための『3つの柱』(栄養・身体活動・社会参加)を掲げ、これを体現するフレイルサポーターについて紹介。彼らは全国68自治体でフレイルチェック事業を行う団体で、地域の集いの場を“気づきの場”へ、そして真の“活躍の場”としている。「黄緑色のポロシャツが全国共通のユニフォームで、そこにも高齢者と呼ばれる年齢の方が活躍し、フレイルサポーターとして食支援サポーターを兼任するなど、専門職では出せない能力を発揮している」と、彼らのさらなる活躍を期待した。
 〜CareNetより〜


2020年2月4日
「平熱37度はもはや常識ではない?」
欧米では長らく、平熱の目安は摂氏37度と考えられてきた。しかし、米スタンフォード大学医学部教授のJulie Parsonnet氏らの研究で、米国成人の体温は19世紀から下がり続けていることが明らかになった。同氏は「子どもの頃に教わった“平熱37度”は、もはや常識ではない」と述べている。
平熱の目安は、1851年にドイツの医師が37度とすることを提唱して以来、それが一般的とされてきた。しかし、近年では、その基準は高すぎるとする研究報告が相次いでいる。例えば、約3万5,000人の英国成人を対象とした最近の研究では、平均体温は約36.6度であると報告されている。
今回の研究は、南北戦争の退役軍人の兵役記録や医療記録から収集した1862~1930年のデータと、1971~1975年に実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)データ、米スタンフォード大学病院の患者データベースから収集した2007~2017年のデータを用いたもの。1862年から2017年の間に測定された計67万7,423件の体温データを分析した。
その結果、2000年代に生まれた男性の平均体温は、1800年代初期に生まれた男性よりも0.59度低かった。一方、2000年代に生まれた女性の平均体温は、1890年代に生まれた女性よりも0.32度低いことが分かった。全体として、米国人の体温は10年ごとに0.03度低下していることが明らかになったという。
Parsonnet氏らは、米国人の平均体温が下がった理由の一つとして、代謝を上げる炎症が減ったことを挙げている。「感染症などで炎症が起こると、代謝を上げて体温を上昇させるタンパク質やサイトカインが産生される」と同氏は説明する。しかし、過去200年の間に、医療の進歩や衛生状態の改善、食生活や生活水準の向上により、公衆衛生面が劇的に改善したことで、こうした炎症を起こすことが減ったと考えられるとしている。
また、住環境が快適になったことも、体温が低下した一因である可能性がある。19世紀とは違い、現代の住居では、セントラルヒーティングやエアコンがあたりまえのものとして設置されており、快適な暮らしが送れるようになった。そのような環境では、体温を維持するために、より多くのエネルギーを消費する必要もなくなったことは大きいという。
Parsonnet氏は「200年前と比べ、室温や微生物との接触、入手できる食品などを含めた生活環境は大きく変化した。われわれ人間は、生理学的な変化を遂げていると言える」と話している。
 〜CareNetより〜


2020年2月3日
「鉢植え植物は室内の空気をきれいにする?」
鉢植え植物に室内の空気の質を良くする効果は期待できないようだ。一般に空気清浄効果があると考えられている観葉植物だが、自宅やオフィスの空気の質を良くするには、室内に植物を置くよりも自然換気を行う方がはるかに高い効果が得られることが、米ドレクセル大学建築環境工学准教授のMichael Waring氏らによる研究で示された。
今回の研究は、過去30年間に実施された、鉢植え植物が室内の揮発性有機化合物(VOC)量に及ぼす影響を検討した12件の研究結果を分析したもの。Waring氏らは、これらの研究から得られたデータをクリーンエア供給率(CARD)と呼ばれる空気清浄機の性能を表す指標に換算した。
分析の結果、自然換気か換気装置によるものかにかかわらず、換気によって室内のVOC濃度が低下する速度は、植物が空気中からVOCを除去する速度を大幅に上回っていることが明らかになった。
結果を受けてWaring氏は、「鉢植え植物が部屋の空気をきれいにするというのは、かねてより信じられてきたよくある誤解の1つだ。植物に優れた力があるのは確かだが、自宅やオフィスの空気の質に効果をもたらすほど素早く室内の空気を清浄化することはできない」と述べている。
研究チームによると、鉢植え植物には空気清浄効果があるという誤解は、1989年にNASAが発表した「植物は発がん性化学物質を空気から除去するのに役立つ可能性がある」とする研究結果がきっかけで広まったのではないかという。しかし、この研究でもその他の同様の研究でも、実験が行われたのは締め切った空間であり、実際のオフィスや家庭の環境とは共通点がほとんどないものであった。
また、これらの研究では植物がVOC濃度を徐々に低下させることがデータとして示されたが、自然換気が行われる室内や換気設備の備わった室内に実際に植物を置いた場合はどうなるのかまでは検討されていなかった。研究チームが計算したところ、建物の空気処理システムによる空気清浄能力、あるいは単に家の窓をいくつか開けるだけの換気に匹敵する効果を鉢植え植物から得るには、床面積1平方メートル当たり100~1,000鉢が必要であるという。
Waring氏は「このことは、科学的知見がいかに誤解につながりやすいかを示す一例である。それと同時に、科学研究において、身の回りで実際に起こっていることの理解につながる確かなデータに近づくためには、常に結果に疑問を持ち、検討を重ねていく必要があることを示す好例でもある」と話している。
〜CareNetより〜


2020年2月1日
「犬を飼ったことがある人はフレイルになりにくい?」
犬を飼ったことがある人は、フレイル(要介護状態の予備群)になりにくい可能性が、日本人の高齢者を対象とした検討から示された。東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優氏(現在の所属は国立環境研究所)らのグループの研究によるもの。
この研究は、東京都大田区の住民を対象に行われている「大田元気シニアプロジェクト」の一環として実施した縦断調査。2016年に登録された65歳以上のフレイルでない地域住民7,881人のうち、2018年の追跡調査で再評価が可能だった6,197人(平均年齢73.6±5.3歳、うち女性53.6%)を対象とした。フレイルの定義は、Friedらの虚弱指標に対して併存的および予測的妥当性が確認されている日本人高齢者向けの指標によった。
ベースライン時点で犬や猫を飼っていたのは870人(14.0%)、過去に飼ったことがあるのは1,878人(30.3%)で、3,449人(55.7%)は犬・猫いずれも飼った経験がなかった。犬や猫の飼育経験がある人はない人に比べて年齢が若く、同居する家族や配偶者がいる割合、学歴、所得、生活体力指標(MFS)が高い傾向があった。一方、脳卒中や心疾患、呼吸器疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症の既往者率、運動習慣の有無、老年期うつスケール(GDS-5)に有意差はなく、喫煙者率は犬や猫の飼育経験者の方が高かった。
2年間の追跡期間中に918人(14.8%)がフレイルを発症した。年齢、性別、居住地域で調整し、犬や猫の飼育経験がない人を基準にフレイルの発症リスクを検討すると、過去に飼っていた人はオッズ比(OR)0.85(95%信頼区間0.71~0.99)で有意にリスクが低く、現在飼っている人はOR0.90(0.72~1.13)だった。調整因子に、世帯規模、収入、脳卒中の既往、食事の多様性、GDS-5スコア、飲酒・喫煙習慣を追加した多変量調整モデルでも、過去に犬や猫を飼っていた人はOR0.84(0.71~0.98)で引き続き有意だった。 犬の飼育者と猫の飼育者を分けて解析すると、過去に犬を飼っていた人のフレイル発症リスクはOR0.82(0.69~0.99)で有意であり、現在飼っている人のORは0.81(0.62~1.07)だった。一方、猫の飼育経験とフレイルの発症リスクの間には有意な関連はみられなかった。
以上の結果から著者らは、犬を飼うことで散歩などによって運動量が増えることがフレイルリスクの低下に関連していると仮定し、年齢、性別の他にMFSスコアと運動習慣を調整因子として加えて解析。すると犬の飼育経験によるフレイルリスクの低下は有意でなくなった。また、犬の散歩によって近隣住民と会話をする機会が増えることが想定されることから、隣人との付き合いの深さ(接触なし、挨拶のみ、会話をする、より重要な関係で層別化)を調整因子に追加したところ、やはりリスク低下の有意性は消失した。
これら一連の検討をもとに谷口氏は、「犬を飼育する経験は身体活動量と屋外で過ごす時間を増やすため、高齢者の身体的・社会的機能を高く維持することにつながり、フレイルリスクを抑制する上で重要な役割を果たす可能性がある」と述べている。
〜CareNetより〜


2020年1月31日
「仕事のストレスと不眠症との関係」
横断的データによると、仕事のストレスと睡眠不足は密接に関連しているといわれているが、プロスペクティブデータによるエビデンスは限られている。スウェーデン・ストックホルム大学のJohanna Garefelt氏らは、認識されたストレスや仕事のストレッサー(仕事の要求、意思決定、職場の社会的支援)が不眠症に及ぼす経時的な影響について、構造方程式モデリングを用いて分析を行った。
スウェーデン労働者の大規模サンプルから得られた2008~14年の2年ごとの測定値より、ストレスから睡眠への影響および睡眠からストレスへの影響の両方向について分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・全体として、不眠症と4回すべてのストレス測定値との間に相互の関連が認められた。
・しかし、不眠症の各症状と各ストレス測定値の関連は、影響の方向においていくつかの違いが認められた。
・ストレスから睡眠への影響においては、認識されたストレスを含むすべての仕事のストレッサーが、入眠困難と睡眠維持困難を予測した。
・また、意思決定を除き、熟眠障害においても同様の影響が認められた。
・睡眠からストレスへの影響においては、睡眠維持困難が、仕事の要求および認識されたストレスレベルの増加を予測した。
・ストレス測定値を予測しなかった不眠症状としては、入眠困難が最も顕著であった。
・一方、すべてのストレス測定値を予測した唯一の症状は、熟眠障害であった。
著者らは「ストレスと睡眠の関係、不眠症と仕事のストレッサーおよび認識されたストレスとの潜在的な悪循環への理解がより深まり、職場における不眠症緩和のための介入の必要性が示唆された」としている。
 〜CareNetより〜


2020年1月30日
「不飽和脂肪酸が認知機能の低下を抑制?」
これまでの研究では、高齢者の食事脂肪摂取と認知機能の関係について、一貫性のない結果が示されてきた。今回、中国・華中科技大学同済医学院のYi-Wen Jiang氏らの研究で、総炭水化物または飽和脂肪酸(SFA)を、一価不飽和脂肪酸(MUFA)や多価不飽和脂肪酸(PUFA)、とくにn-6 PUFAへ置き換えることが、高齢者の認知機能障害のリスク低下に関連していることが明らかとなった。さらに、植物性脂肪では認知機能障害との逆相関が示された。
本研究では、中年期の脂肪摂取量と高齢者の認知機能障害リスクとの関連を調べることを目的として、Singapore Chinese Health Studyの1万6,736人の参加者を対象に前向きコホート研究を実施。参加者の年齢は45〜74歳(平均年齢±SD:53.5±6.22歳)、ベースラインは1993〜98年の登録時点とし、食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して食事情報を評価した。認知機能障害の有無は、参加者が61~96歳(平均年齢±SD:73.2±6.41歳)の3回目のフォローアップ時(2014~16年)にシンガポール版のミニメンタルステート試験を使用して特定した。多変量ロジスティック回帰モデルを使用して、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・参加者2,397人で認知機能障害が確認された。
・総炭水化物の代わりに食事脂肪を摂取した場合、認知機能障害の進行に逆相関した(OR:0.80、95%CI:0.67~0.94、傾向のp=0.003)。食事脂肪を分類した場合の各ORと95%CIは、SFAでOR:1.08、95%CI:0.89~1.31(傾向のp=0.51)、MUFAは同:0.80、95%CI:0.64~0.99(傾向のp=0.02)、PUFAは同:0.84、95%CI:0.72~0.99(傾向のp=0.02)であった。また、n-3 PUFAの場合、同:0.92、95%CI:0.77~1.09(傾向のp=0.49)、n-6 PUFAの場合は同:0.83、95%CI:0.70~0.98(傾向のp= 0.01)であった。
・植物性脂肪の摂取(OR:0.84、95%CI:0.72~0.98、傾向のp=0.02)では逆相関がみられたが、動物性脂肪の場合は(同:0.96、95%CI:0.81~1.15、傾向のp=0.76)みられなかった。
・SFAの代わりにMUFAやPUFAを摂取した場合、それぞれ、OR:0.77、95%CI:0.61~0.97(傾向のp=0.02)、同:0.82、95%CI:0.70~0.95(傾向のp=0.003)であった。
 〜CareNetより〜


2020年1月29日
「初マラソン参加で「血管年齢」が若返る?」
「マラソンに初挑戦する」を新年の抱負にしてみてはどうだろう。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の心血管科学研究所およびバーツ心臓センターの顧問であるCharlotte Manisty氏らによる新たな研究で、トレーニングを行って初マラソンを完走した人では、血圧と加齢に伴う大動脈の硬化の程度が改善したことが示された。これは、「血管年齢」が4歳若返ったことに相当するという。
この研究では、2016年と2017年のロンドンマラソンで初めてマラソンを完走した健康なランナー138人(男性49%)を追跡。ランナーは平均年齢が37歳(21~69歳)で、マラソンの6カ月前から、週に3回程度、1週間当たり6~13マイル(約10~21km)走るトレーニングを行った。研究チームはトレーニングの開始前とマラソン完走の2週間後に、ランナーの血圧と大動脈の硬化度を調べた。
その結果、トレーニングを6カ月間続けたランナーでは、薬物療法に匹敵する血圧降下が認められ、心臓が収縮したときの収縮期血圧(上の血圧)が平均4mmHg、心臓が拡張したときの拡張期血圧(下の血圧)が平均3mmHg低下した。大動脈の硬化度にも改善が認められ、肺動脈分岐部の下行大動脈の伸展性(加圧時に膨張する血管の能力)は9%増加していた。Manisty氏らによると、この結果は、血管年齢が4歳ほど若返ったことに相当するという。さらに、こうした血管の健康効果は高齢者でより大きく、最も大きかったのはマラソンのタイムが遅い男性であったという。
Manisty氏は、マラソンの完走という目標を設定することで運動を継続しやすくなり、健康な食生活や睡眠の質の向上といった生活習慣の改善にもつながると指摘した上で、「マラソンに限らず、どんなレベルの運動でも、目標をもって継続的に行うことが健康に有益だ」と話す。
米ウィリアム・ボーモント病院のBarry Franklin氏によると、定期的な運動により心筋梗塞リスクは最大50%低減し得ることが、さまざまな研究で明らかにされている。それにもかかわらず、米国人の間では運動不足がますます蔓延しており、「テクノロジーの進歩により、われわれは慢性疾患リスクの増大という大きな代償を支払っている」と同氏は嘆く。
 米ハーバード大学医学大学院は、トレーニングを行う際の注意点として以下のことを挙げている。
・運動レベルは、最初は緩やかなものとし、徐々にレベルを上げていくこと。
・関節、骨、筋肉に痛みがないか注意すること。使い過ぎが痛みの原因である可能性もあるので、医師に診てもらうこと。
・体調が悪いときや疲れがひどいときは休みを取ること。
・天候に応じて適切な服装を選び、水分を十分に取ること。
Franklin氏は、「持久走では、少しでもタイムを良くしようと、ゴール直前でラストスパートをかけがちだ。しかし、その時点でランナーは脱水症状を起こして体温や血圧が上昇している可能性が高い」とし、いずれも危険な不整脈の原因となり得るため、その衝動を抑えるべきだと助言している。
 〜CareNetより〜


2020年1月28日
「新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?」
中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が、急速に拡大している。中国・金銀潭医院のChaolin Huang氏らは、2020年1月2日までに新型コロナウイルスの感染が確認された入院患者について、現段階で判明している疫学的特徴と臨床転帰について前向きに調査、分析した。
調査対象は、新型コロナウイルス感染が疑われ、武漢市内の指定病院に入院した患者のうち、RT-PCR法および次世代シーケンシングによって同症と特定された41例で、国際重症急性呼吸器・新興感染症協会(ISARIC)のデータを基に分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・41例中30例(73%)が男性であった。
・年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)。
・13例(32%)が何らかの基礎疾患を有していた(糖尿病:8例、高血圧:6例、心血管疾患:6例)。
・27例(66%)が海鮮市場(華南海鮮城)に何らかの直接的関係があった。
・最初に特定された症例の発症日は2019年12月1日で、当該例ではほかの家族に発熱や呼吸器症状は見られなかったが、その後1例の家族クラスターが判明している。
・発症時の一般的症状は、発熱(98%)、咳(76%)および筋肉痛または疲労(44%)で、喀痰や頭痛、喀血および下痢などもわずかに見られた。
・全症例で肺炎があり、胸部CTで異常な所見が認められ、98%で両側性病変を有していた。
・40例中22例(55%)で呼吸困難が見られ、発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日(四分位範囲:5.0~13.0)。
・合併症として、急性呼吸促迫症候群(29%)、RNAaemia(15%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などが見られた。
・32%がICUに入り、15%が死亡した。
著者らは、本研究以降も感染者および死亡者数が急速に増加していることを踏まえ、「今回の新型コロナウイルスが効率的なヒト-ヒト感染能力を獲得したのではないかと懸念している」とし、「パンデミックの可能性があるため、今後の宿主適応、ウイルスの進化、感染性、伝染性および病原性を注意深く監視しなければならない」と述べている。
 〜CareNetより〜


2020年1月27日
「中年期の健康的な生活様式は平均余命にどう影響?」
中年期の健康的な生活様式の順守は、主要慢性疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)のない平均余命を延長することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYanping Li氏らによる検討の結果、示された。これまで、修正可能な生活様式因子(喫煙、身体活動、アルコール摂取、体重、食事の質)が、平均余命および慢性疾患発症の両者に影響することは知られていた。しかし、複数の生活様式因子の組み合わせと、主要な疾患(糖尿病、心血管疾患、がんなど)のない平均余命との関わりについて、包括的に検討した研究はほとんどなかったという。
研究グループは、米国で行われた前向きコホート研究「Nurses' Health Study」(1980~2014年、女性7万3,196人)と「Health Professionals Follow-Up Study」(1986~2014年、男性3万8,366人)の参加者データを分析し、健康的な生活様式が主要な慢性疾患のない平均余命とどのように関連するかを調べた。
「非喫煙」「BMI 18.5~24.9」「中強度~高強度(30分/日以上)の身体活動」「適度なアルコール摂取(女性5~15g/日、男性5~30g/日)」「食事の質のスコア(Alternate Healthy Eating Index:AHEI)が高い(各コホートで上位40%に属する)」の5個を「低リスク生活様式因子」と定め、その実践数別(0、1、2、3、4/5個)に、糖尿病、心血管疾患、がんのない平均余命年を算出して評価した。
女性227万411人年、男性93万201人年のフォローアップ中に、3万4,383人(女性2万1,344人、男性1万3,039人)の死亡が記録された。
低リスク生活様式因子の実践数が多い被験者は、マルチビタミンサプリメントおよびアスピリンの服用者が多い傾向がみられた。
50歳時点での総平均余命(慢性疾患の有無を問わず集計)は、低リスク生活様式因子が多いほど長く、女性は31.7年(0個)~41.1年(4/5個)、男性は31.3年(0個)~39.4年(4/5個)にわたっていた。
50歳時点での糖尿病、心血管疾患、がんのない平均余命は、女性においては低リスク生活様式因子の実践が0個の場合は23.7年(95%信頼区間[CI]:22.6~24.7)であったが、4/5個実践の場合は34.4年(33.1~35.5)であった。男性においては、実践が0個の場合は23.5年(22.3~24.7)であったが、4/5個実践の場合は31.1年(29.5~32.5)であった。
50歳時の総平均余命に対する慢性疾患のない平均余命の割合は、重度の現行男性喫煙者(紙巻きタバコ15本/日以上)や、肥満(BMI 30以上)の男性および女性で最も低く、いずれも75%以下であった。
 〜CareNetより〜


2020年1月24日
「がんの家族歴がある人はがん罹患リスクが高い」
がんの家族歴のある人はがんに罹患するリスクが高いことが、日本人を対象とする前向き研究から明らかになった。全ての部位の合計では約1.1倍、部位別に見た場合、膀胱がんのようにリスクが約6倍に上るがんもあるという。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもの。
この研究は、1990年と1993年に全国10地域の住民を対象に行った生活習慣などに関するアンケート調査に参加し、がん既往歴のなかった40~69歳の人10万3,707人を、2012年末まで追跡したもの。アンケート調査の回答に基づき対象者全体を、がん家族歴の有無で2つのグループに分け、全部位のがん罹患リスク、および部位別のがん罹患リスクを比較検討した。なお、家族歴は、実父、実母、兄弟、姉妹に1人以上がんになった人がいる場合に「あり」とした。また、がんの部位別の検討では、各部位のがんごとに同じ部位のがん罹患リスクとの関連を検討した。
がんの罹患に関連する可能性のある、年齢、性別、地域、BMI、喫煙、飲酒、身体活動、糖尿病歴、健診受診歴、および婦人科がんについては月経状況とホルモン剤の使用について統計的に調整して解析。その結果、全部位のがんをはじめ部位別のがんも、家族歴がある場合は罹患リスクが高いことが分かった。統計的に有意なリスク上昇が見られたがんとそのハザード比(HR)は以下の通り。
全部位のがん1.11、食道がん2.11、胃がん1.36、肝臓がん1.69、膵臓がん2.63、肺がん1.51、子宮がん1.93、膀胱がん6.06。このほか、大腸がん1.14、胆道がん2.33、乳がん1.50、前立腺がん1.47もHRの上昇は見られたが統計的には有意でなかった。
続いて本人の喫煙の影響を除外する目的で、喫煙歴の有無別に解析すると、家族歴があることでリスクの上昇が見られた前記のがんは、喫煙歴の有無にかかわらずリスクが高い傾向にあった。例えば全部位のがんは喫煙歴のある群もない群もHRはともに1.11だった。また、飲酒習慣や体格で群分けした検討においても同様の傾向が見られた。 なお、膵臓がんに関しては喫煙歴のない群で、家族歴がある場合にリスクが有意に上昇し、喫煙歴がある場合のリスク上昇は有意でなかった。この点について著者らは、喫煙の影響よりも家族性膵臓がんの影響の方が強いことを反映しているのではないかと考察している。
家族歴がある場合にがん罹患リスクが上昇する理由として、同じ生活環境を共有することによる環境的側面と、遺伝的側面が影響していると考えられる。今回の研究結果から、本人の喫煙や飲酒、体格にかかわらず、家族歴があることがリスク上昇と関連することが明らかになった。研究グループは、「がんの罹患にはさまざまな要因が関連する。家族歴がある人は、予防のためにリスクとなる生活習慣を避け、推奨されているがん検診を受けることが勧められる」と述べている。
 〜CareNetより〜


2020年1月23日
「食事の質は中途失明の一因か」
牛や豚などの肉(赤肉)や脂肪の多い食事を取る高齢者では、そうではない人と比べて、病変が進行した後期加齢黄斑変性(AMD)の発症リスクが約3倍に上る可能性があることが、米ニューヨーク州立大学バッファロー校疫学・環境衛生学准教授のAmy Millen氏らの研究で示された。同氏は「後期AMDは中途失明の主な原因である。食生活は心血管や肥満のリスクだけでなく、高齢者の視力にとっても重要な因子である可能性がある」と述べている。
AMDでは、加齢に伴って「黄斑」と呼ばれる網膜の中心部が障害され、視力が低下する。米国眼科学会(AAO)によれば、早期のAMDでは黄斑へのドルーゼン沈着や色素上皮異常などがみられる。一方、病変が進行した後期AMDは、色素上皮の変性や脱落、色素沈着などがみられる萎縮型と、網膜下に新生血管が発生して網膜に成分が漏れ出たり、出血を起こしたりする滲出型に大別されるという。また、これまでの研究から、遺伝と喫煙習慣はAMDのリスク因子であることが分かっている。
Millen氏らは今回、前向きコホート研究であるARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究のデータを用いて、研究に参加した約1,300人の成人を対象に18年間追跡し、食事パターンとAMD発症の関連について調べた。参加者のうち117人には早期AMDが、27人には後期AMDが認められた。研究では、66品目の食物摂取頻度調査票を用いて29の食品群別の摂取量を算出し、食事の質を評価した。
その結果、赤肉や加工肉、マーガリンやバターなどの脂肪、高脂肪乳製品、揚げ物などが多い食事を取っている人では、そうでない人と比べて後期AMDの発症率が大幅に高いことが分かった(オッズ比3.44、95%信頼区間1.33~8.87、傾向P値=0.014)。一方、食事パターンと全てのAMDまたは早期AMDとの間には有意な関連は認められなかった。 これらの結果を踏まえ、Millen氏は「食生活の改善は、AMDによる視力低下のリスクを低減できる方法の一つだと考えられる。特に、この疾患の家族歴がある人にとっては重要だ」と説明している。ただ、今回の研究は観察研究であるため、健康的な食生活を送ればAMDリスクは低下することを裏付けるものではないとしている。
今回の研究には関与していない、米マウントサイナイ眼科耳鼻科病院の眼科医であるAvnish Deobhakta氏は「AMDの進行に、脂肪の多い食品や加工肉、精製された穀物が多い食事が影響するとした今回の研究結果は、日頃から感じていたことで驚きはなかった」と話している。
MillenとDeobhaktaの両氏は「AMDが進行する背景には、質の悪い食事によって引き起こされる炎症と眼の細胞にかかる酸化ストレスが関与している可能性がある」と指摘。一方で、両氏は、色の濃い葉物野菜などの野菜全般と果物、魚には、ルテインやゼアキサンチンなどの眼の健康に重要な栄養素が含まれているとし、「少しずつでもこれらの摂取量を増やすよう心掛けるべきだ」と助言した上で禁煙も強く勧めている。
 〜CareNetより〜


2020年1月22日
「”糖尿病 燃え尽き状態”との向き合い方」
糖尿病の治療に終わりはない。生存のためにインスリンが必要な場合、一歩間違えば死につながることさえある。米テネシー大学のSamereh Abdoli氏らは、こうした日々のストレスの積み重ねによって「糖尿病バーンアウト(燃え尽き状態)」が引き起こされると報告した。
研究グループは、糖尿病燃え尽き状態の経験がある1型糖尿病患者18人を対象に、詳細なインタビュー調査を行った。対象者の年齢は21~65歳(平均38歳)、女性11人(61%)、白人10人(56%)で、17人(94%)が仕事を持ち、10人(56%)が既婚者、16人(89%)が大学卒であり、13人(72%)はインスリンポンプを使用していた。インタビューの結果、対象者の39%は現在も糖尿病燃え尽き状態にあることが分かった。また61%は前年に燃え尽き状態を経験していた。
今回の研究では、糖尿病による精神的・感情的・肉体的疲労、燃え尽きの予防・克服法など、4つの主要テーマを設けていた。そのうち「疲労」に関しては、例えば36歳の女性は、「疲れている。本当に疲れている。常に自分の世話をし、食べるもの、なすべきこと、全てにおいて糖尿病を心配しなければいけない」と語り、「いつも疲れている。年老いたようにただ疲れ果てている」と答えた22歳の女性もいた。
研究グループによると、糖尿病の燃え尽き状態にある人は心身ともに疲弊し、現実から切り離されたような感覚があり、自己の健康管理の必要性に対して無関心になるという。そしてそのような状態が数時間から数日間、ときには数週間、数カ月あるいは年単位で続くこともあると指摘している。
今回の研究でも「極度の疲労」の他に、糖尿病患者としてのアイデンティティーや自己の健康管理への関心を失ったり、サポートシステムから切り離されたと感じるなど「孤立(detachment)」した感覚を訴える人もいた。その一方で、燃え尽きを予防したり立ち直るための方法としては、家族や友人、医療従事者からのサポートを受けたり、前向きな姿勢を維持するといった回答が得られた。
米国糖尿病協会(ADA)ヘルスケア・教育部門の前部門長Felicia Hill-Briggs氏はこの研究には関与していないが、「糖尿病という疾患は、その自己管理に精神的かつ身体的にエネルギーを注がなければならない状態が持続するという点で独特である。薬を用い、血糖値を確認し、健康的な食事を用意してそれを食べ、適度な運動も必要であり、これら全てにおいてバランスが取れていなければならない」と指摘し、「糖尿病とともに生きることは、マラソンを走るようなものだ」と述べている。
また米ニューヨーク大学(NYU)ランゴンヘルスHassenfeld小児病院の児童青年心理学者であるBecky Lois氏は、「燃え尽きはほぼ不可避である。誰も糖尿病になりたくてなったわけではなく、自分を制御しきれないときがある。常に指示を受けているように感じるのは、非常につらいことだ」と述べている。同氏は、患者が燃え尽きる前に周囲の人が患者の苦痛に気が付き、医療従事者とともに協力することが大切だとして、「近しい家族が血糖値の測定を忘れないよう声をかけたり、サポートシステムの担当者と連絡をとることも一助となるだろう」と助言している。
Hill-Briggs氏は、燃え尽きに対してどのように対処するか事前に考えておくよう促すとともに、「常に完璧であることなど不可能」として、過度の罪悪感を持たないよう呼び掛けている。
 〜CareNetより〜


2020年1月21日
「ミケランジェロの医学知識を示すダビデ像の特徴とは?」
ルネサンスの巨匠ミケランジェロの代表作であるダビデ像には、彼が解剖学的知識を持っていたことを示す「しるし」が刻まれているとする報告が米マリアン大学の医師Daniel Gelfman氏により発表された。たいていの彫刻作品はもちろん、生きている人間においても、通常は表面に現れない頸静脈が、ダビデ像では鎖骨の上部で明確に怒張しているのだという。
ダビデ像は『旧約聖書』を題材にした彫像で、後にイスラエルの王となる青年ダビデが、ペリシテ人との闘いのさなか、投石器ひとつで巨人ゴリアテに挑まんとする姿を表している。Gelfman氏によると、健康な若い男性が、命をかけて敵に立ち向かおうとして興奮していれば、実際に頸静脈が怒張する可能性は高いという。怒張は心内圧の上昇や心機能障害などがある場合にも起こりうるが、ダビデの年齢や彫像の背景にある物語などを考え合わせると、一時的な興奮により生じたものと見る方が自然な解釈であると同氏は考える。
Gelfman氏は「ミケランジェロや同時代の一部の芸術家らは解剖学を学んでいた。ミケランジェロは、健康な人が興奮すると頸静脈が怒張することに気付いていたに違いない」とし、「ダビデ像が公開されたのは1504年だが、解剖学者で医師でもあるウィリアム・ハーベーが循環器系の仕組みに関する説を唱えたのは1628年だ。医学の分野で解明されて記録される100年以上も前に、ミケランジェロがこの現象に気付いていたことに感銘を受けた」と述べている。
解剖学的な観点で細部にこだわったミケランジェロの作品はダビデ像だけではない。ローマ教皇ユリウス2世の依頼で制作したモーセ像でも頸静脈の怒張が表現されている。この像が、シナイ山で神から十戒を授かった後のモーセの様子を表していることを考えると、興奮により怒張が生じているとみなすことに異を唱える人は少ないだろうとGelfman氏は説明する。その一方で、十字架から降ろされたキリストの遺骸を抱く聖母マリアを表したピエタ像では、頸静脈が浮き上がって見えることはない。
「循環生理学の情報が限られていた時代に、ミケランジェロは頸静脈の変化に気付き、作品にそれを反映させていた。これには驚かされた」とGelfman氏は話す。なお、ミケランジェロが頸静脈の怒張を表現していたことを指摘した医学文献はこれが初めてだという。
今回のGelfman氏の報告書について、米スタテンアイランド大学病院の心臓電気生理学部門を統括するMarcin Kowalski氏は、「500年も前に作られた彫像に、今日の診断に使われることがある身体所見が表されていることに非常に驚いた」とし、「今後も、若い医師たちが身体所見の技術を身に着け、また、医学部がハイテク技術を用いた検査以前に身体所見の技術について教えていくことを願っている」と話している。
一方、米ノースウェル・ヘルス、ロングアイランド・ジューイッシュ・バリー・ストリームで心不全治療を統括するDavid Friedman氏は、「今回Gelfman氏が報告したダビデ像の“しるし”は、緻密な身体診察によって患者の健康状態を評価できることを医師に再認識させるものだ」と述べている。
 〜CareNetより〜


2020年1月20日
「長時間労働で”仮面高血圧”リスク増」
長時間労働は血圧に悪影響を与えることが、ラヴァル大学(カナダ)社会医学・予防医学のXavier Trudel氏らによる研究から明らかになった。カナダ・ケベック州の公的機関で働く3,547人のホワイトカラー労働者を対象に、労働時間と血圧値を5年間にわたって追跡したこの研究では、週当たりの労働時間が35時間未満の人と比べて、週に49時間以上働く人では「仮面高血圧」のリスクが70%高いことが分かった。
仮面高血圧とは、診察室で測定した血圧値は正常でも、家庭で測ると高血圧という状態を指す。研究では、週49時間以上働く人では、診察室でも家庭でも血圧値が高い「持続性高血圧」のリスクが66%高いことも示された。さらに、週当たりの労働時間が41~48時間の人でも、仮面高血圧リスクは54%高く、持続性高血圧リスクは42%高いことが分かったという。
なお、研究対象の労働者全体において、既に降圧薬を服用している人を含めた持続性高血圧患者の割合は19%だった。また、降圧薬は服用していないが、仮面高血圧がある人の割合は13%を超えていた。また、Trudel氏らは今回、年齢や職種、喫煙習慣や肥満の有無などの因子のほか、仕事の要求度(仕事量や仕事に伴う緊張の度合いなど)と裁量権の2つの要素の組み合わせで決まる「ジョブ・ストレイン」を考慮した上で解析した。
Trudel氏によれば、この研究は因果関係を証明したものではなく、長時間労働と高血圧が関連する背景は明らかになっていないという。しかし、同氏らは「今回の研究では、男女ともにこれらの関連が認められた」と説明している。
また、今後の展望について、Trudel氏は「将来的には、子どもの人数や家事、育児の分担など家庭での役割に関係する因子が、仕事の状況と相互に作用して血圧を上昇させている可能性についても検討したい」と話している。
ただし、この研究はホワイトカラーの労働者のみを対象としているため、Trudel氏らは「シフト勤務者や肉体労働者には、今回の結果は当てはまらない可能性がある」と強調している。また、同氏は「長時間労働は心臓の健康に悪い可能性があることを知っておくことが重要だ」とし、「労働時間が長い人は、ウェアラブルな家庭血圧計の使用について医師に相談するとよい」と助言している。
なお、この助言について、2人の専門家も同意している。米ノースウェル・ヘルス傘下のサンドラ・アトラス・ベイス心臓病院のBenjamin Hirsh氏は「“サイレントキラー”にもなりうる仮面高血圧は、ウェアラブル血圧計を使えば簡単に診断できる」と話している。一方、米レノックス・ヒル病院のSatjit Bhusri氏は「仮面高血圧を未診断のまま放置すると、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高まる」と指摘。「医師は、患者の仕事内容や職場環境などの背景について把握しておく必要がある」としている。
 〜CareNetより〜


2020年1月18日
「芸術に触れる人は長生き」
音楽会や美術館に年に1、2回行く人は行かない人より14%死亡リスクが低く、もっと頻回に2~3ヵ月に1回は行く人では、31%も低いという興味ある成績である。演奏をしたり絵を描かなくとも芸術を見たり聴いたりして楽しむ、いわゆる受容芸術活動できる人が長生きということを、50歳以上(平均65.9歳)の住民6,710人を約14年間追跡した調査でこの論文は明らかにした。
外出する意欲や、経済力、身体能力が一定以上ある人は長生きできるということは当然考えられるが、研究者たちがそれらの交絡因子を除外しても結論は変わらなかったと著者らは述べている。しかしサブ解析では高齢、独居、学歴がなく、無職で、職業ステータスが低い傾向がみられたとしているので、やはりこれらの人たちは受容芸術を楽しむ機会が少ないことを示唆している。
音楽を聴いたり観劇することが長生きの原因なのか、積極的に外に出掛けることができる人だから長生きなのか、その因果関係についてはこの追跡調査からは明らかではない。それにしてもこの調査で年に1回も音楽会、映画、美術館に行かない人たちは、カウチポテト族が多いのかもしれない。
 〜CareNetより〜


2020年1月17日
「日本人高齢者の認知症発症率に対する感覚障害の影響」
認知症および認知症の周辺症状(BPSD)は、高齢者の介護の必要レベルに影響を及ぼす。高齢者では、加齢に伴い感覚障害の発生率が上昇し、認知症の発症を加速させる。大勝病院の丸田 道雄氏らは、視覚障害(VI)、聴覚障害(HI)などの感覚障害とBPSDおよび認知症の発症率との関連について調査を行った。
日本のある都市における2010~17年の介護保険データを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。2010年時点で認知症でなかった高齢者2,190人を、感覚障害の4つのカテゴリー、VI群、HI群、VIとHI両方の感覚障害(DSI)群、感覚障害なし(NO)群に分類した。認知症の発症率は、カプランマイヤー生存分析およびlog-rank検定を用いて調査した。NO群と比較した、感覚障害に関連する認知症発症リスクは、Cox比例ハザード分析を用いて調査した。4群間のBPSD有病率は、ピアソンのχ2検定を用いて比較した。
主な結果は以下のとおり。
・HI群(log-rank χ2:10.42、p<0.001)とDSI群(log-rank χ2:39.92、p<0.001)は、NO群と比較し、認知症の累積発症率が高かった。
・DSI群はHI群と比較し、認知症の累積発症率が高かった(log-rank χ2:11.37、p=0.001)。
・Cox比例ハザード分析では、感覚障害の中でDSIが認知症発症に対する最も大きなリスク因子であることが示唆された(ハザード比:1.45、95%CI:1.22~1.71、p<0.001)。
・VI群は、そのほかの群と比較し、昼夜逆転の有病率が有意に高かった。
著者らは「感覚障害を有する高齢者では認知症の発症率が高く、DSIは最もリスクが高いことが示唆された。また、VIを有する高齢者では、認知症の発症時に昼夜逆転を呈する可能性が高いことが示唆された」としている。
 〜CareNetより〜


2020年1月16日
「コンタクトレンズが電気で潤う?」
コンタクトレンズを使う人の多くが「目が乾く」という悩みを持っているが、その解決に近づく新しい技術が開発された。電気の力でコンタクトレンズの表面に涙の膜を作り、しかもそれに必要な電気もコンタクトレンズ自体が発生するという。東北大学大学院工学研究科の西澤松彦氏らの研究によるもの。
コンタクトレンズ使用中に生じるドライアイ症状に対して、これまでのところレンズ素材の保湿性を高める改良が続けられてきている。これに対して今回発表された新技術は、電気による保湿効果を利用する。液体と固体が接している部分に電圧をかけると液体が流れだす「電気浸透流」という現象があり、この電気浸透流によって、コンタクトレンズの表面を涙の膜で覆うという仕組みだ。
開発にあたり研究グループはまず、既に市販されているコンタクトレンズで用いられ安全性が確立されているメタクリル酸などのモノマー(基質)を使い、電気浸透流を発生する親水性のハイドロゲルの調整を試みた。メタクリル酸の割合が高いほど電気浸透流が発生しやすくなる一方、ハイドロゲルが脆くなる。いくつかの素材を作成し比較検討した結果、電気浸透流が発生しやすく、かつコンタクトレンズの形状維持に必要な十分な強度の両立が可能な素材として、最終的にメタクリル酸10%のハイドロゲルを以後の研究に用いることとした。
続いて、このハイドロゲル素材の一部を水に浸し、水に浸っていない部分の乾燥を電気浸透流によって防ぐという実験を行った。すると電流を流していない時は時間経過とともに乾燥していったが、電流を流し始めると湿潤な状態に回復することが確認された。
次にこのハイドロゲルをコンタクトレンズの形に形成し、アクリル樹脂の眼球モデルに装着して、その隙間の水分が蒸発するまでの時間を計測した。すると、電流を流さないときは60分後に水分が蒸発し消失したが、電流を流した場合は60分経過しても十分な水分が保たれていた。
最後に、電気浸透流を発生させるのに必要な電気をコンタクトレンズ自体が生み出す方法を検討。涙に含まれているブドウ糖と酸素から電気を発生させる微小なバイオ電池を組み込んだ。実験の結果、バイオ電池を組み込んでいないときに比べて乾燥速度が明らかに抑制されることが確認された。
研究グループではこれらの成果を、「煩雑な点眼にかわる全く新しい水分補給方法の提案であり、自己保湿型コンタクトレンズの可能性が示された」とまとめている。また「この技術はドライアイの緩和だけでなく、点眼薬の徐放化技術や房水(眼球内の水分)の排出を促し眼圧をコントロールする技術としても、応用できる可能性がある」と期待を示している。
 〜CareNetより〜


2020年1月15日
「中年期の肥満で認知症リスクが高まる?」
中年期に肥満だった人は、その後の認知症リスクが高まる可能性があることが、100万人を超える英国女性を対象とした研究から明らかになった。英オックスフォード大学のSarah Floud氏が実施した研究から、50歳代半ばに肥満だった女性は、適正体重だった女性と比べて、15年後以降に認知症と診断されるリスクが21%高いことが分かったという。
Floud氏らは今回、英国で1935年から1950年の間に出生した女性の約4人に1人に当たる113万6,846人を追跡した。研究開始時の女性の平均年齢は56歳で、全て認知症のない女性であった。同氏らは、参加者の肥満度(BMI)を評価したほか、食事のカロリー摂取量と運動習慣に関する情報を収集した。
ベースライン調査から15年後には89%が認知症なく生存しており、その後、1万8,695人が平均77歳で認知症を発症した。分析の結果、15年後以降の追跡期間中に、ベースライン時に肥満だった女性は、その後、約2.1%が認知症と診断されたのに対し、適正体重の女性では1.6%にとどまっていた。
専門家の一人で米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏は「今回の研究結果は、中年期までの生活習慣や行動が、老年期の認知症リスクに影響を及ぼすことを示す新たなエビデンスとなるものだ」と述べている。
同じく専門家で米ノースウェル・ヘルスのGayatri Devi氏は「高コレステロールや炎症レベルの亢進、脳卒中リスクの上昇など、肥満と関連する因子の多くは脳にも悪影響を与える」と指摘。「肥満の人は睡眠時無呼吸のため脳に十分な酸素が行き渡っていない可能性もある」と付け加えている。この意見には、Fargo氏も同意し、「脳の機能や構造を維持するのに必要な身体能力を妨げるものは何であれ、加齢とともに認知機能が低下するリスクを高める」と述べている。
Floud氏らはこのほか、BMIの低下や身体活動量の低下、食事のカロリー量の減少と認知症の関連についても検討した。その結果、最初の10年間はこれらの間に関連がみられたが、それ以降、関連は弱まり、15年後にはみられなくなった。同氏は「これまでの研究から、認知症と診断される10年前から身体活動量の低下と体重減少がみられることが報告されている」と指摘。「体重減少や身体活動量の低下、食事のカロリー不足は、認知症の初期の兆候である可能性が高い」と説明している。
しかし、Fargo氏は「今回の研究は観察期間が短く、また、食事や運動といった生活習慣は肥満と密接に関連しており、これらを切り離して認知症との関連を判断するのは難しい」とコメント。「今回の結果から、中年期に減量したり、食事や運動の習慣を変えたりすることで、後の認知症リスクを低減できるかどうかは結論づけられない」と述べている。一方、Devi氏は、肥満の人が中年期に減量すれば、認知症リスクを下げられる可能性については「絶対的に」確信していると述べ、「年齢にかかわらず、健康に気をつけてアルツハイマー病の予防に努めるべきだ」と助言している。
 〜CareNetより〜


2020年1月14日
「スポーツは聴力向上に役立つ?」
スポーツをすると、脳が音を処理する能力が向上する可能性があることが、米ノースウエスタン大学コミュニケーション科学・神経生物学教授のNina Kraus氏らの研究から示された。同氏らは「この研究結果は、聴覚低下に苦しむ人々のための新しい治療法の開発につながるかもしれない」と期待を述べている。
この研究は、同大学の学生アスリートの男女495人と、年齢および性をマッチさせたスポーツ経験のない対照群493人を対象としたもの。参加者には、言語音が流れるイヤホンを装着してもらい、言語音に対する周波数追従反応(Frequency Following Response;FFR)と呼ばれる脳波の一種を測定し、脳活動をモニタリングした。その結果、対照群と比べてアスリート群では、周囲の雑音を調整して言語音を処理する能力が優れていることが分かった。
Kraus氏は「スポーツをすると体力が向上することに異論を唱える人はいないだろう。しかし、スポーツは脳の健康にも影響することを思い浮かべる人はあまりいない」と述べている。「今回の研究結果から、スポーツをすると脳の機能が調整されて、音や光などの感覚を通して感じる環境をよりよく理解できるようになる可能性がある」と同氏は説明している。
また、この能力は、試合中に、選手がチームメイトやコーチの呼び掛けを聞き取ろうとする際に有用であると考えられる。Kraus氏によれば、これはラジオでDJの声を聞くことと同じだという。「脳内にある周囲の電子ノイズを、ラジオの雑音のようなものだと考えるとよい。DJの声を聞き取るためには、雑音を減らすか、DJの声を大きくするかの2通りがある。アスリートの脳は、DJの声をよく聞き取るために、雑音を最小限に減らしていることが分かった」と同氏は説明している。
Kraus氏は「運動に集中して取り組むと、それに伴って神経系も研ぎ澄まされてくるようだ。神経系の働きが向上すれば、怪我やその他の健康上の問題にもうまく対処できるようになる可能性がある」と付け加えている。また、同氏は、この研究結果を踏まえて、聴覚に問題がある人のためにスポーツを利用した新しい治療法が開発される可能性があると展望している。
 〜CareNetより〜


2020年1月11日
「ダークチョコを毎日食べると認知機能が向上」
ダークチョコレートを毎日食べると、神経成長因子(NGF)という蛋白質が増加し認知機能も向上するという研究結果が報告された。しかもチョコレートの摂取を中止した後もしばらく認知機能が高い状態が維持されるという。ただしホワイトチョコレートにはこの効果はないとのことだ。島根大学医学部環境生理学の住吉愛里氏らの研究によるもの。
この研究は島根大学の健康な学生20人(20~31歳、男性14人)を対象に行われた(介入中に2人が脱落)。全体を無作為に2群に分け、1群にはカカオパウダーを含むダークチョコレート(24.0g/日)、別の1群にはカカオを含んでいないホワイトチョコレート(24.5g/日)を支給し、30日間毎日食べてもらった。この間、カフェイン入り飲料は1日3杯までとし、支給したもの以外のチョコレートの摂取を禁止した。認知機能および血中NGF濃度は、連日摂取の介入前、介入終了時、そしてカカオ成分であるテオブロミンの血中濃度が通常レベルに戻ると考えられる介入終了から3週間経過した時点の計3回、計測した。
認知機能は以下の2つの方法で判定した。テスト1は、赤、黄、青、緑という文字が4色の異なる色(赤、黄、青、緑)で印字されたもの(文字の色と文字の読みは無関係)を見て、文字の読みまたは色を瞬時に答えるというもの。テスト2は、無作為に並んでいる0~9の数字の中から、指示された数字だけを時間内にできるだけ多くチェックするというもので、1分間の休憩を挟み3回繰り返した。
これらの測定結果を時系列で見ると、まず、介入前の認知機能と血中NGF濃度は両群同等だった。その後30日間の介入期間中、チョコレートの摂取やカフェイン入り飲料の摂取制限は、両群ともによく守られており群間差がなかった。
次に、介入終了時にダークチョコレート群ではNGF濃度が有意に上昇していることが確認された(P=0.0059)。そして、テスト1の文字読みの正答数が有意に増加していた(P=0.017)。またテスト2では3回目のトライの正答率が有意に向上していた(P=0.014)。ところがその一方、ホワイトチョコレート群ではいずれも有意な変化がなかった。 続いて介入終了から3週間後の結果だが、ダークチョコレート群ではNGF濃度は介入前のレベルに戻っていた。しかし、認知機能は引き続き有意に高い状態に維持されていた。なお、テスト1の文字の色読みの正答数は、ダークチョコレート群では介入前より有意に増加していた(P=0.012。ホワイトチョコレート群はP=0.050)。
この他、同時に検討されたテオブロミン濃度はダークチョコレート群の介入期間のみ、血中レベルが有意に高かった。血中カフェイン濃度、脳由来神経栄養因子(BDNF)、前頭前野血流量は、両群ともに有意な変化は見られなかった。
これらの結果について著者らは、「ダークチョコレートの連日摂取によって、血中NGFとテオブロミンのレベルが上昇し、認知機能の向上が認められた」とまとめるとともに、「連続摂取が終了しNGF、テオブロミンレベルが介入前値に戻った後も、認知機能の高い状態が継続していたことは興味深く、分子メカニズムの検討が必要」としている。
 〜CareNetより〜


2020年1月10日
「週7パック以上の納豆で骨粗鬆症性骨折リスクが半減?」
納豆摂取と骨密度との間の直接の関連は知られているが、骨粗鬆症性骨折との関連については報告されていない。今回、大阪医科大学/京都栄養医療専門学校の兒島 茜氏らの研究で、閉経後の日本人女性において習慣的な納豆摂取が骨密度とは関係なく骨粗鬆症性骨折のリスク低下と関連していることが示唆された。
本研究は、納豆の習慣的な摂取と骨粗鬆症性骨折リスクとの関連を調査した前向きコホート研究。対象は、1996、1999、2002、2006年にJapanese Population-based Osteoporosis(JPOS)研究に登録され、ベースライン時に45歳以上であった閉経後日本人女性1,417人。登録時に、納豆、豆腐、その他の大豆製品の摂取について食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して調査した。骨折は1999年、2002年、2006年、2011/2012年の追跡調査で確認した。主要アウトカムは骨粗鬆症性骨折で、医師がレントゲン写真で診断した、強い外力によらない臨床的骨折とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・1万7,699人年の追跡期間中(中央値15.2年)、172人の女性に骨粗鬆症性骨折が確認された。
・年齢、股関節の骨密度年齢について調整後、納豆摂取量が週当たり1パック(約40 g)未満に対するHRは、1~6パックで0.72(95%CI:0.52~0.98)、7パック以上で0.51(95%CI:0.30~0.87)であった。
・さらに、BMI、骨粗鬆症性骨折の既往、心筋梗塞または脳卒中の既往、糖尿病、現在の喫煙、飲酒、豆腐および他の大豆製品の摂取頻度、食事性カルシウム摂取について調整すると、1パック未満に対するHRは1~6パックで0.79(95%CI:0.56~1.10)、7パック以上で0.56(95%CI:0.32~0.99)となった。
・豆腐や他の大豆製品の摂取頻度は、骨粗鬆症性骨折のリスクと関連がなかった。
 〜CareNetより〜


2020年1月9日
「寝不足が脳に与える影響は深刻」
寝不足で頭が働かないと感じるのは、気のせいではないようだ。睡眠不足がもたらす脳への影響は、これまで考えられていたよりもはるかに深刻であることが、米ミシガン州立大学の睡眠・学習ラボ代表を務めるKimberly Fenn氏らの研究で示された。睡眠不足が認知機能に与える影響は注意力だけにとどまらず、予想以上に大きな危険を伴うことが分かったという。
Fenn氏らは今回、計138人の参加者のうち77人には一晩中眠らずに起きていてもらい、61人には自宅で普段通りの睡眠を取ってもらい、認知機能を比較する実験を行った。全ての参加者には、実験当日の夕方と翌朝に2つの認知機能に関するテストを実施した。一方では、光に反応してボタンを押すまでの時間を測定して注意力を評価。もう一方では、途中で作業を中断されても、1つのタスクを完了させるために複数の手順を踏むことを指す「プレースキーピング」の能力を評価した。
その結果、睡眠不足のグループでは、作業が中断された後にプレースキーピングエラーを起こす確率は、実験当日の夕方には15%だったのに対し、翌朝には30%にまで急上昇したことが分かった。一方、自宅で普段通りに眠ったグループでは、実験当日の夕方と翌朝でエラーを起こす確率に変化は見られなかった。
Fenn氏は「今回の研究では、睡眠不足によって不注意によるミスが起こる確率は3倍に上ったが、プレースキーピングエラーが起こる確率も2倍になることが示された。これは驚くべき結果だ」と説明。その上で、「睡眠不足の人は、何をするにも十分に注意を払う必要があり、大きなミスなどはしないと思ってはいけない。とりわけ自動車を運転する際には、そうしたミスが悲劇的な結果をもたらすことも少なくない」と同氏は警鐘を鳴らしている。
なお、Fenn氏らの研究は、この分野の中では最も規模が大きいもので、睡眠不足がプレースキーピングに与える影響を初めて検討したものだという。
共著者の一人で同大学のMichelle Stepan氏は「私たちの研究結果は、睡眠不足が認知機能に与える影響は注意力に限られるという一般的な見方を覆すものだ」と指摘。「睡眠不足でも、例えば医師であれば、患者のバイタルを取るといった日常的な作業は問題なく行えるかもしれない。しかし、いくつかの手順に従う必要がある医療行為では、睡眠不足の状態だと予想以上のミスを犯す危険性が高い可能性がある」と説明している。Fenn氏も「睡眠不足は、仕事や生活のあらゆる面に多大な損失をもたらすことを知っておくべきだ」と注意を促している。
 〜CareNetより〜


2020年1月7日
「大麻やクラトム使用による相談が急増」
大麻やクラトム、マジックマッシュルームといった天然の精神活性物質の使用に関して米国内の毒物管理センターが受けた電話での相談件数は、過去18年間で6万7,369件に上っていたことが、米ネーションワイド小児病院の傷害政策研究所および中央オハイオ中毒センターのチームによる調査で明らかになった。ほとんどの物質に関しては相談件数が減っている一方で、大麻とナツメグ、クラトムについては急増していることが分かったという。
今回の調査は、全米中毒データシステムのデータを後ろ向きに分析したもの。その結果、2000~2017年の間に、天然の精神活性物質の使用に関して、年間平均3,743件の電話相談が寄せられていたことが分かった。これは1日当たり約10件に相当するという。また、使用者の64%は男性で、全体の約9割は自宅での使用だった。年齢層別に見ると「19歳超」が41.4%、「13~19歳」が34.8%を占めていた。
使用した物質のうち大麻が46.9%を占めて最も多く、シロバナヨウシュチョウセンアサガオなどの抗コリン作用性の植物(21.1%)、幻覚作用のあるキノコ(15.6%)などが続いた。また、入院や重篤な転帰に至る確率は、クラトムやカート、抗コリン作用性の植物のほか、マジックマッシュルームを使用した事例で高かった。
共著者の一人で、同センターのディレクターを務めるHenry Spiller氏は「これらの物質は、年齢にかかわらず、けいれんや昏睡などの重篤な転帰をもたらす」と説明している。 Spiller氏らによれば、相談事例の約半数は大麻の使用に関連したもので、その要因の一つには、娯楽や医療目的の大麻を合法化する州が増えたことが挙げられるという。同氏は「多くの州で大麻は合法化されているが、子どもを持つ親や医療従事者は、他の薬剤と同様に、これらの物質を子どもの手の届かないところに厳重に保管する必要がある」と指摘。その上で、「天然の精神活性物質を含む食用品は、子どもがお菓子と間違えて口に入れてしまう危険性が高い」として、特に注意を呼び掛けている。なお、今回の調査では、6歳未満の子どもの多くは好奇心から大麻などを使用したことも示されている。
さらに、今回の調査では、2000年から2017年にかけて、ほとんどの天然の精神活性物質に関しては相談件数が大幅に減少した一方で、大麻は150%、ナツメグは64%、クラトムに至っては5,000%近くまで急増したことが分かった。今回特定された42例の死亡例のうち、クラトム関連は8例を占めていたことから、「これらの結果から、クラトムの使用には特に注意を払う必要性が強調された」とSpiller氏らは説明している。
なお、今回特定された死亡例のうち7例は小児とティーンエイジャーの若者であった。そのうち5例は13~19歳で、抗コリン作用性の植物や幻覚作用のあるキノコ、カバカバ(ポリネシアの島々に自生するコショウ科の植物)、大麻の使用が原因だった。一方、13歳未満の残りの2例は、いずれも大麻の使用を原因としていたという。
 〜CareNetより〜


2020年1月4日
「少しのランニングでも死亡リスク低下」
走る速度や時間、頻度にかかわらず、ランニングは死亡リスクの有意な低下と関連することが、オーストラリア・Victoria UniversityのZeljko Pedisic氏らが実施した対象23万例超のシステマチックレビューとメタ解析で示された。
健康のためにランニングを習慣にしている人は少なくない。ランニングには持久性や心血管機能の改善など、さまざまな健康効果があることが確認されているものの、ランニングと死亡リスクの関連について検討したこれまでの研究では一貫した結果が示されていなかった。
そこで、Pedisic氏らはランニングの量(頻度、時間、ペースなどに基づく)と全死亡、心血管死、がん死のリスクとの関連について検討するため、システマチックレビューとメタ解析を実施した。
解析には6つの前向きコホート(計23万2,149例)のデータを用いた14件の研究データを組み入れた。
5.5~35年の追跡期間中に2万5,951例が死亡した。解析の結果、ランニング習慣がある人では、ない人と比べて全死亡、心血管死、がん死のリスクが有意に低下していた〔ハザード比(HR)はそれぞれ0.73(95%CI 0.68~0.79)、0.70(同0.49~0.98)、0.77(同0.67~0.87)〕。
また、メタ解析を行ったところ、1週間当たりのランニング頻度や時間、ペース、量〔ランニングの時間と代謝当量(MET)に基づく〕とこれらのリスクの間に用量依存性の関連は認められなかった。
以上を踏まえ、Pedisic氏らは「頻度や時間、ペースなどの程度にかかわらず、ランニングは健康や長寿に寄与する可能性が高いことが示された。週1回以下、1回50分未満、時速8km以下のランニングでも、全くランニングをしない場合と比べれば有益と考えられる」と結論。「ただし、ランニングの量を増やすことで死亡リスクの低減効果が高まるわけではない可能性がある」と付言している。
〜Medical Tribuneより〜


2019年12月28日
「年1~2回の芸術活動が寿命に好影響」
美術館やコンサートに行くといった受容的芸術活動(receptive arts engagement)は、高齢者の寿命に保護的作用をもたらす可能性が示された。同活動を1年に1~2回行う人は、まったく行わない人に比べて死亡リスクが約14%低く、2~3ヵ月に1回行う人では31%も低かったという。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDaisy Fancourt氏らが、50歳以上の住民6,710例を約14年間追跡したデータを解析して明らかにした。なお示された関連性について著者は、「芸術活動をする人としない人における認知レベル、メンタルヘルス、身体活動度の違いによって部分的に説明はできそうだが、それらの因子を補正したモデルでも関連性は維持されていた」と検証結果を報告し、今回の観察的試験では要因を仮定するには至らなかったと述べている。
研究グループは、地域で暮らす50歳以上を対象に行った「English Longitudinal Study of Ageing:ELSA」の被験者のうち、2004~05年にベースラインの質問に回答した6,710例を対象に前向きコホート試験を行い、被験者の自己報告による受容的芸術活動(美術館、アートギャラリー、展覧会、劇場、コンサートやオペラに行く)と死亡率との関連を調査した(死亡の最終データ取得は2018年3月)。
被験者のうち女性は53.6%、平均年齢は65.9歳(標準偏差:9.4)だった。死亡率との関連はNHSの中央レジスタデータを利用して評価した。
平均追跡期間は12年2ヵ月で、最長は13.8年だった。その間に2,001例(29.8%)が死亡していた。死亡者は、女性よりも男性で多く、また高齢、独居、学歴がなく、現在無職で、財産・職業ステータスは低い傾向がみられた。さらに死亡率は、抑うつ症状が高く、視力・聴力が弱く、がん・肺疾患・心血管疾患と診断されていた人・その他慢性症状がある人、運動をあまりしない人、飲酒はきわめてまれな人、および喫煙をしていた人で高かった。また、認知レベルは低く、孤立しており、親密な友人がおらず、独居、無趣味、社会的活動への参加はまれ、地域のグループとの関わりがない人でも高かった。
死亡数は、受容的芸術的活動をまったく行わない人(1,762例)では837例(47.5%)だったのに対し、まれ(1年に1~2回)でも同活動を行っていた人(3,042例)は809例(26.6%)で、追跡期間中どの時点でも死亡リスクは約14%低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96)。
同活動を頻繁(2~3ヵ月に1回)に行っていた人(1,906例)の死亡は355例で、まったく行わない人に比べて死亡リスクは約31%低かった(HR:0.69、95%CI:0.59~0.80)。
同活動は、人口統計学的・社会経済的要因、健康関連・行動学的要因、社会的要因とは独立した要因であることが認められ、感度分析の結果、性別、社会経済学的状態、社会的要因による影響は受けないことが確認された。
 〜CareNetより〜


2019年12月27日
「なぜ風邪とインフルエンザは同時にかかりにくいのか」
すでに風邪を引いている場合、インフルエンザにはかかりにくく、逆に、インフルエンザにかかっているときは風邪を引きにくいことが、英グラスゴー大学英国医学研究会議(MRC)ウイルス研究センターの研究グループが行った大規模研究で明らかにされた。「研究結果は、風邪やインフルエンザの流行の予測および疾患の蔓延をコントロールする方策の改善につながる可能性がある」と研究グループは述べている。
研究では、2005年1月から2013年12月の間に、ウイルス性呼吸器疾患の疑いで検査を受けた患者のデータを利用して、3万6,157人の患者における4万4,230例の急性呼吸器疾患例の検体を解析。ライノウイルスやA型およびB型インフルエンザウイルス、RSウイルスなど11種類の呼吸器系ウイルスのうち、どのウイルスに感染しているのかを調べた。その結果、35%(1万5,302例)が少なくとも1種類のウイルスに対して陽性を示した。このうち8%(1,247例)は複数のウイルスに感染していた。
コンピューターモデルによる解析の結果、個人と集団のいずれにおいても、A型インフルエンザウイルスと、最も一般的な風邪の原因であるライノウイルスとの間には、同時感染を抑制する相互作用が生じることが判明した。A型インフルエンザに感染している患者では、他のウイルスに感染している患者に比べ、ライノウイルスに感染する率が約70%低かったという。
研究グループは結果について「風邪とインフルエンザのこうした関係性は過去の研究でも認められていたが、これほど大規模な研究で強力なエビデンスが得られたのは今回が初めてである」と述べている。また、論文の筆頭著者であるSema Nickbakhsh氏は、「われわれの研究では、インフルエンザが流行する冬の間は、軽症の風邪を引き起こすライノウイルスの感染例が減少するという傾向が非常に顕著に認められた」として、「サバンナでライオンとブチハイエナが餌を奪い合うように、呼吸器系ウイルスも、気道内の資源をめぐって争っている可能性がある」と推測する。
ただし、今回の研究では相互作用が認められたに過ぎず、それがなぜ生じるのかは分かっていない。また、解析対象となった検体はすでに呼吸器感染症状のある患者から採取されたものであったため、症状がない患者においてはウイルスの振る舞いが違ってくる可能性もある。
研究グループは、ウイルスが体内で感染する細胞を奪い合っているのか、あるいは、あるウイルスに対する免疫応答が別の無関係のウイルスが感染するのを妨げているのかなど、ウイルスの相互作用についてさまざまな可能性を検討しているところだという。
 〜CareNetより〜


2019年12月26日
「超加工食品の取り過ぎは心臓に悪い?」
冷凍食品や缶詰のソース、ファストフードなどの「超加工食品」は忙しいときには便利だが、取り過ぎはやはり健康に良くないようだ。平均的な米国人の1日の摂取カロリーのうち約55%は超加工食品が占めており、その割合が高いほど心血管の健康度は低下するという研究結果を、米疾病対策センター(CDC)のZefeng Zhang氏らが米国心臓協会の年次集会で発表した。
超加工食品とは、脂肪やでんぷん、マーガリンなどの硬化油、添加糖のほか、香味料や着色料、乳化剤などの添加物を加えた加工済みの食品を指す。「コンビニエンスフード」として販売されている食品の多くは超加工食品で、冷凍食品や瓶詰めのソース、ファストフードのほか、清涼飲料やスナック菓子、ホットドック、ハムなどの加工肉、チキンナゲットなどさまざまな食品が店頭に並んでいる。
超加工食品と心疾患リスクの関連を報告した研究はこれが初めてではない。「BMJ」5月号に掲載された別の研究では、10万人以上のフランス人を5年以上にわたり追跡した結果、超加工食品の摂取量が最も多い人では脳卒中や心疾患リスクが高まることが示された。Zhang氏らは今回、2011~2016年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用い、20歳以上の男女1万3,446人を対象に収集したデータを分析した。
参加者には、前日の食事内容に加えて、AHAが提唱する心疾患予防のための生活習慣因子「Life's Simple 7」(血圧、脂質、血糖のコントロール、禁煙、健康的な食事、適正体重の維持、運動習慣)についても尋ねた。
その結果、1日の摂取カロリーの約70%を超加工食品から摂取していた群では、40%以下だった群に比べて心血管の健康が理想的である確率は約半分であることが分かった。また、1日の摂取カロリーに占める超加工食品の割合が5%増えるごとに、全体的な心血管の健康度は低下していた。
Zhang氏は「果物や野菜、全粒穀物などの健康的な食事は、心血管の健康を保つのに重要な役割を果たす。しかし、超加工食品はこれらの代替とされることが多い」と指摘。「さらに、超加工食品は塩分や糖分、飽和脂肪が多く、その他にも心疾患リスクの増加と関連する物質が多く含まれている」と説明している。
専門家の一人で米ノースウェル・ヘルス、サンドラ・アトラス・バス心臓病院のBenjamin Hirsh氏は「この研究結果から、高度に加工された食品の消費量が多いほど、心臓の健康は悪化する可能性が示唆された」と述べている。一方、同じく専門家で米レノックス・ヒル病院のEugenia Gianos氏は「食事の質が低い人は、喫煙したり運動不足であったりする場合も多く、超加工食品が心臓の問題の直接的な原因であるとは言い切れない」と指摘している。
しかし、Gianos氏は、超加工食品は栄養価が低く、炎症の亢進や腸内細菌バランスの崩れ、血管内のプラーク沈着を促す可能性があるとし、「栄養豊富な植物ベースの食品をそのまま食べることが健康に良いことを、もっと啓発していく必要がある」と付け加えている。
なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
〜CareNetより〜


2019年12月24日
「ミートレスマンデーは食生活を変える?」
自分が食べるものと気候変動との関連に対する意識を高めるために毎週月曜日に肉を食べない日を取り入れる「ミートレスマンデー(肉なし月曜日)」運動に参加した人の多くは、運動終了後もこの習慣を継続させていることが、ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のBecky Ramsing氏らの研究で明らかになった。
ミートレスマンデーは、人の健康と地球環境のために肉の消費量を減らすことを人々に促す運動で、世界規模で広がっている。今回、研究チームが研究対象としたのは、気候変動に対する米ニューヨーク州ベッドフォードの取り組みの1つである「ミートレスマンデー」に参加した320世帯。参加者らは2018年2月5日から4月23日までの間、週に1日肉を食べずに過ごす日を設けた。研究チームは、12週間にわたるこの運動の開始時と終了時、さらに終了後6カ月時点の3度にわたり参加者に対して調査を行った。
その結果、運動終了後6カ月時点の調査から、参加者の約57%は運動に参加する前と比べて肉の消費量が減り、70%以上は毎週月曜日に(32.7%)、または少なくとも週に1日(39.8%)は肉を食べない日を設けていることが分かった。また、週に1日食事から肉をなくすことは容易または非常に容易だったと答えた人は約70%に上り、肉なしの食事を週に1日設けることに、より熱心に取り組んでいると報告した人は68%に上った。さらに、肉の消費量を減らすこの取り組みで一番やっかいだったのは、食事を共にする友人や家族が肉食を好んでいる場合であることも分かった。
一方、3回の調査全てにおいて、肉の消費量を減らす理由として最も多かったのは「健康のため」であった。運動終了時点の調査で挙げられた理由では、「地球温暖化緩和のため」「環境のため」「省エネルギーのため」「節水のため」といったものが増えた一方で、「健康のため」は減っていた。運動終了後6カ月時点の調査でも、気候変動と環境に関する理由はわずかに減ったものの、理由として挙げられる率は依然として高かった。
研究チームによると、ベッドフォードは米国の平均的な地域と比べると、高学歴で高収入であるという。Ramsing氏はこのことを踏まえ、「この地域の人々はすでに肉の摂取量を減らす食生活を取り入れていたため、今回の研究では、人々が気候変動に対する意識を高め、週に1日肉を食べない食生活へスムーズに移行したという結果となった」と指摘する。しかし同時に、「今回の研究で得られた知見は、食と地球温暖化に対する意識をコミュニティレベルで高め、行動を促すには、可能性としてどの方法が最も効果的であるかを知るのに役立つだろう」と付け加えている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
 〜CareNetより〜


2019年12月23日
「インフルエンザは呼吸するだけで感染する?」
米国では現在もインフルエンザの大流行が続いているが、さらに悪いニュースだ。これまで、インフルエンザの主な感染経路は感染者のくしゃみや咳で飛び散ったウイルスを含むしぶきを吸い込むことで感染する「飛沫感染」か、ウイルスが付着したものを触ることで感染する「接触感染」のいずれかだと考えられていた。しかし、感染者が呼吸するだけでウイルスが周りに拡散し、同じ部屋にいる人に感染する「空気感染」も予想以上に起こりやすいことが新たな研究で示唆された。
この研究を実施したのは米メリーランド大学環境衛生学教授のDonald Milton氏ら。同氏らは今回、インフルエンザ患者142人に協力してもらい、発症から1~3日目に(1)いつも通り呼吸しているとき(2)話しているとき(3)咳をしたとき(4)くしゃみをしたとき―の呼気サンプル(計218サンプル)を集め、分析した。
リアルタイムPCR法による遺伝子検査の結果、咳が出ていない状態で採取された呼気サンプル(23サンプル)の48%(11サンプル)でインフルエンザウイルスが検出された。また、イヌ腎臓由来細胞を用いて培養し、感染力を有するインフルエンザウイルスの量を測定したところ、これら11サンプルのうち8サンプルで感染力のあるウイルスが確認された。このことから、咳が出なくてもインフルエンザウイルスの含まれるエアロゾル(空気中に浮遊する粒子)は発生しうることが示唆された。さらに、くしゃみが数回出た場合も呼気サンプル中のウイルス量に変化はなかったことから、くしゃみによる影響もこれまで考えられていたほど大きくはないことが示されたという。
Milton氏は、今回の研究に関する同大学のプレスリリースで「咳やくしゃみをしなくても、インフルエンザ患者が呼吸するだけで周囲の空気にウイルスが放出されることが分かった。したがって、インフルエンザに感染した人が職場に現れた場合には、周囲への感染を防ぐため職場にとどまらせず、すぐに帰宅してもらうべきだ」と強調。また、同氏らは「この研究結果を企業や学校、地下鉄車内の換気システムの改善などを通じたインフルエンザ予防策の向上に生かしてほしい」としている。
この研究には関与していない米サンノゼ州立大学のSheryl Ehrman氏は「部屋を隅々まで清潔にし、頻繁に手洗いをし、咳をしている人に近づかないようにするといった対策は、インフルエンザの感染リスクを低下させる上で一定の効果がある」とした上で、「患者が呼吸するだけでインフルエンザウイルスが飛び散ってしまうのであれば、これらの対策だけでは完全に感染から身を守ることはできない」と話している。
 〜CareNetより〜


2019年12月21日
「“記憶された痛み”をうまく取り除くには?」
国が主導となって研究チームを発足するくらい、日本人は慢性的な痛みに日々悩まされている。おまけに、なかなか症状改善しない患者がドクターショッピングに陥ることで、国の医療費はますます圧迫されてしまう。そんな負の連鎖を断ち切り、臨床現場での正確な病態把握を求めるべく、昨年、厚生労働省「慢性の痛み対策」研究班と痛み関連の7学会が連携して『慢性疼痛治療ガイドライン』を発刊した。
このガイドライン作成にも携わり、上記研究班で中心的な役割を担っている牛田 享宏氏(愛知医科大学医学部学際的痛みセンター 教授)と伊達 久氏(仙台ペインクリニック院長)が、2019年10月31日に開催されたボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社主催のメディアセミナー「『難治性慢性疼痛』による経済的・社会的影響と日本の『難治性慢性疼痛』治療の最新動向~病診連携モデルと臨床データの構築~」に登壇し、慢性疼痛対策の現状を語った。
日本での慢性疼痛疫学調査1,2)によると、痛みの訴え部位は腰痛が大半(58.6%)を占め、次いで肩:38.7%、下肢部:37.9%と続き、筋骨格系=運動器に引き起こされることが多い。驚いたことに、その年齢分布を見ると高齢者よりも30~50代の訴えが多い。自己負担の治療費は年間4,000億円以上、患者の15%以上が仕事への影響を抱えていた。牛田氏は「調査結果を見ると、患者の治療満足度は非常に低く、慢性疼痛を訴えた患者の1/3しか満足していない。結果、患者の半数が治療機関を変更している」と、実態を説明した。
また、このような慢性疼痛に悩む患者を精神科医が見た場合、線維筋痛症の有無を問わず約半数に身体表現性障害があり、患者の約95%には何かしらの精神疾患名(気分変調障害、大うつ病など)が付くことが明らかになった。
このように慢性疼痛患者が精神疾患を抱える理由について、同氏は「痛みは頭で経験しているため」とコメントした。頭では痛み自体を感じる感覚体験と、辛さや苦しさを感じる情動体験が同時に生じているため、国際疼痛学会では痛みを“不快な情動体験”と定義している。これを踏まえて同氏は「なかなか治らない痛みの原因は情動の要素が大きい」と、話した。
治りにくい痛みの代表例として神経性障害疼痛がある。これは体性感覚神経系の損傷や疾患により引き起こされる痛みであり、罹患者数は日本人人口の1~3%に上る。脳梗塞患者の痛みもこれに該当し、患者にはうつや睡眠障害の併発、医療機関受診件数が3件以上になるケースが多くなるなどの特徴がある。
このほかにも、通常では痛みを伴わないような微小刺激が疼痛として認識される感覚異常をきたすアロデニアという病態の研究報告5)から、同氏は痛みが記憶されていることを説明。痛みが感覚だけではなく情動によっても悪化することに対し理解を求めた。さらに、「慢性疼痛患者は整形外科と精神科のどちらに行くべきか、診療における境界線によって悩まされている」とし、患者をチームで診るために厚生労働省による集学的痛みセンターが構築されたことを説明した。
集学的痛みセンターとは、医科だけではなく歯科も含めたシステム構築、地域医・在宅医療の連携モデル構築、を目指した厚生労働省政策研究班による事業である。系統的に改善しない患者を分析することで、治療方針やゴールの方向性を検討し、自宅でのコントロールを目的としているが、「慢性疼痛の診断法の確立のために主観的な痛みを客観的に見える化して評価する方法の構築が必要」と、同氏は今後の課題を語った。
続いてペインクリニックの視点から、伊達氏が慢性疼痛治療ガイドラインでの推奨内容について解説した。本ガイドラインでは、推奨度を「1:する(しない)ことを強く推奨する」「2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)」の2通りで提示し、エビデンスレベルを「A(強):効果の推定値に強く確信がある」「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」と規定している。
たとえば、運動療法の有効性はエビデンスレベル・推奨度が慢性腰痛:1A、変形性膝関節炎:1A、慢性頸部痛:1Bであり、身体を直接動かすことは慢性疼痛に効果的と示されている。同氏はこれらの根拠となる海外文献6,7)を紹介し、「運動療法は筋トレではなく血流改善を促すストレッチが中心なので、痛みがある時こそ有用。ストレッチはドパミン遊離にも影響を及ぼすため、痛みの蔓延化につながる心理社会的要因(不安、抑うつ、破局化思考)も解消される。また、慢性疼痛患者の突発痛は30分すると軽減することが多いため、痛い時にストレッチを行えば薬の依存から脱却できるかもしれない」とコメント。「心理社会的要因からくる痛みには認知行動療法が有効とされ、マインドフルネスなどの導入もガイドラインでは推奨(1A)している。しかし、現時点で保険適用外のため、診療報酬に対する要望を複数の学会が行っている」と、補足した。
最後に、痛みを直接除去する視点からインターベンショナル治療について説明。ガイドラインではパルス高周波神経根ブロック、末梢神経パルス高周波などが推奨度1A、脊髄刺激療法や肩甲上神経パルス高周波などが推奨度1Bに設定されている。なかでも脊髄刺激療法システムはほかの治療法と比較して、中枢感作、痛みのいずれにおいても効果が得られたことから、同氏は「運動療法や認知行動療法に加え、脊髄刺激療法も慢性疼痛治療の1つになり得る」と締めくくった。
〜CareNetより〜


2019年12月20日
「海洋由来オメガ3脂肪酸と大腸がん予防効果」
オメガ3脂肪酸には植物由来と海洋由来があるが、本稿は海洋由来オメガ3脂肪酸の話題。米国・ハーバード公衆衛生大学院のMingyang Song氏らは、「Vitamin D and Omega-3 Trial:VITAL試験」で事前に設定された補助的研究において、海洋由来オメガ3脂肪酸(1日1g)の摂取は大腸がん前がん病変リスクの減少と関連しないことを明らかにした。ただし副次解析で、ベースラインのオメガ3濃度が低い参加者やアフリカ系米国人に関しては有益性を示す結果がみられ、筆者は、これらの対象についてはサプリメントの有益性についてさらなる調査が必要であると述べている。
研究グループは2011年11月~2014年3月に、がんおよび心血管疾患の既往がない米国の一般集団2万5,871例(うちアフリカ系米国人5,106例)を登録し、海洋由来オメガ3脂肪酸1g/日(エイコサペンタエン酸[EPA]460mgとドコサヘキサエン酸[DHA]380mgを含む)およびビタミンD3(2,000 IU/日)を投与する群と、プラセボ群に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、大腸の通常型腺腫(管状腺腫、管状絨毛腺腫、絨毛性腺腫および高度異形成腺腫など)または鋸歯状病変(serrated polyp:SP)(過形成性ポリープ、鋸歯状腺腫およびsessile serrated polypなど)のリスクとした。追跡調査のアンケートでポリープの診断を受けたと報告した参加者(ポリープサブグループ)については、内視鏡および病理学的記録にて診断を確認。ロジスティック回帰分析を用い、年齢、性別、ビタミンD3治療群および内視鏡検査の使用について補正後、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出して評価した。
主な結果は以下のとおり。
・投与群とプラセボ群で患者背景は類似していた。女性50.6%、50.5%、黒人19.7%、19.8%、平均年齢は67.2歳、67.1歳。
・介入は予定どおり2017年12月31日に終了。追跡期間中央値5.3年において、通常型腺腫が投与群294例、対照群301例(多変量OR:0.98、95%CI:0.83~1.15)、鋸歯状病変がそれぞれ174例、167例(OR:1.05、95%CI:0.84~1.29)が記録された。
・ポリープサブグループにおいて、大きさ、位置、多発性または組織型で関連はなかった。
・副次解析において、ベースラインの血漿中オメガ3指数が低い参加者で、海洋由来オメガ3脂肪酸の投与が通常型腺腫のリスク低下と関連していた(OR:0.76、95%CI:0.57~1.02、オメガ3指数による相互作用のp=0.03)。
・サプリメントによる有益性は、アフリカ系米国人集団で示されたが(OR:0.59、95%CI:0.35~1.00)、他の人種/民族集団ではみられなかった(相互作用のp=0.11)。
〜CareNetより〜


2019年12月19日
「米国中高生にフレーバー電子タバコが蔓延」
2019年の米国の高等学校(high school)および中学校(middle school)の生徒における電子タバコ使用者の割合は高く(それぞれ27.5%、10.5%)、特定の銘柄の電子タバコ使用者の多くがフレーバー電子タバコを使用(72.2%、59.2%)している実態が、米国食品医薬品局(FDA)タバコ製品センターのKaren A. Cullen氏らの調査で明らかとなった。米国の青少年における電子タバコの使用率は、2011年から2018年に、実質的に増加しているという。青少年の電子タバコや他のタバコ製品の使用率の継続的な監視は、公衆衛生学上の施策や計画立案、規制の取り組みへの情報提供として重要とされる。
研究グループは、2019年の米国の高等学校および中学校の生徒における電子タバコの使用状況(使用頻度、銘柄、フレーバー製品の使用など)を調査する目的で、横断研究を行った(FDAと米国疾病予防管理センター[CDC]の助成による)。2019年度の全国青少年タバコ調査(National Youth Tobacco Survey)に参加した第6~12学年(高等学校:第9~12学年、中学校:第6~8学年)の米国人生徒1万9,018人を対象とした。調査期間は、2019年2月15日~5月24日。
参加者の自己申告に基づき、現在電子タバコを使用中(過去30日以内に1回以上使用)、頻回使用(過去30日間に20日以上)、現使用者が習慣的に使用している銘柄(JUUL、blu、Logic、MarkTen、NJOY、Vuse、その他、なし)、特定銘柄の使用者(他のタバコ製品は使用しない)におけるフレーバー電子タバコの使用の有無と、使用しているフレーバーの種類を調査した。使用率の推定値は複雑抽出デザイン(complex sampling design)で重み付けした。
調査には、高等学校の生徒1万97人(平均年齢16.1[SD 3.0]歳、女性47.5%)と、中学校の生徒8,837人(12.7[2.8]歳、48.7%)が含まれた。学年別の参加者割合は全体として類似していた(範囲:第12学年12.9%~第7学年14.6%)。全体の回答率は66.3%だった。
2019年の電子タバコの現使用率の推定値は、高等学校生が27.5%(95%信頼区間[CI]:25.3~29.7)、中学校生は10.5%(9.4~11.8)であった。また、現使用者のうち、高等学校生の34.2%(31.2~37.3)、中学校生の18.0%(15.2~21.2)が頻回使用者であり、それぞれ63.6%(59.3~67.8)および65.4%(60.6~69.9)が特定の銘柄の電子タバコを使用していた。
現使用者のうち、高等学校生の59.1%(95%CI:54.8~63.2)、中学校生の54.1%(49.1~59.0)が、過去30日間にJUUL(ニコチン塩ベースの電子タバコ製品)を習慣的に使用しており、それぞれ13.8%(12.0~15.9)および16.8%(13.6~20.7)は、習慣的に使用している電子タバコの銘柄はないと回答した。特定の銘柄の電子タバコの使用者のうち、高等学校生の72.2%(95%CI:69.1~75.1)、中学校生の59.2%(54.8~63.4)が、フレーバー電子タバコを使用しており、使用頻度の高いフレーバーは、果物(高等学校生66.1%[62.4~69.5]、中学校生67.7%[62.6~72.5])、メンソール/ミント(57.3%[53.3~61.3]、31.1%[25.6~37.2])、キャンディー/デザートなどの甘い物(34.9%[31.3~38.7]、38.3%[32.6~44.2])であった。
なお、過去30日間に、電子タバコ以外のタバコ製品を使用したと答えた生徒の割合は、高等学校生が5.8%(95%CI:4.6~7.3)、中学生は2.3%(1.8~2.9)であり、電子タバコと合わせると、それぞれ31.2%(29.1~33.5)および12.5%(11.2~13.9)が、何らかのタバコ製品を使用していた。
著者は、「これらのデータにより、2019年に米国の高等学校生410万人と中学校生120万人が電子タバコを使用したと推定される。このうち160万人が頻回使用者で、97万人は毎日使用しており、特定銘柄のフレーバー電子タバコの使用者は240万人と考えられる」としている。
〜CareNetより〜


2019年12月18日
「金銭管理の問題はアルツハイマー病の予兆か」
未払いの請求書がたまり、銀行口座の残高はマイナス、投資は先細り――。高齢者にこうした金銭管理の問題がみられたら、認知症やアルツハイマー病の予兆であるかもしれない。未診断で早期のアルツハイマー病患者は、適切な家族の援助を得ることができず、金銭管理で誤った決断を下してしまうリスクが高いことが、米ジョージタウン大学教授の 今回の研究は、1992~2014年の出来高払い方式のメディケア請求データと50歳以上の米国人の健康に関する調査(Health and Retirement Study;HRS)のデータを用いたもの。HRSでは各世帯の金融資産や負債に関する調査も行われていた。
研究では、家族にアルツハイマー病または関連する認知症(ADRD)と診断された人がいる2,777世帯を含む8,871世帯のデータを分析した。ADRDの患者がいる家庭のうち、家計管理を主に行っている人がADRDである家庭は73%を占めていた。その結果、早期のアルツハイマー病患者は、自分の資産や貯蓄、預金口座を適切に管理できなくなるため、資産の大幅な減少につながることが多いことが分かった。
Gresenz氏は「アルツハイマー病は早期に診断されないと最悪の事態を招く可能性がある」と指摘。「アルツハイマー病のために金銭管理能力が低下することで、請求書の未払いやクレジットカードでの浪費、投資への関心が薄れるといった問題が生じる可能性がある。また、金銭感覚が失われた高齢者は詐欺や悪徳商法などの被害にも遭いやすい」と説明している。
今回の研究には関与していないアルツハイマー病協会のRuth Drew氏は「アルツハイマー病が進行するに伴い、患者は誰でも金銭管理だけでなく、最終的には日常生活を送るためにも介助や介護が必要になる」と説明。自身の経験でも、多くの人からこのような問題について話を聞いているとしている。
なお、Drew氏によれば、職場や家庭で金銭管理に責任を持つ立場にあった人が、自分の認知機能が低下していることに気付いていなかったという事例もあったという。「こうした変化に周りの人は気付かなかったり、気付いても家族に伝えられなかったりしたようだ。その間に金銭に大きな影響が及んでしまっていた。われわれが会った時には、患者の家族は、資産が予想以上に減ってしまった患者を介護しなければならない状況に陥っていた」と同氏は振り返る。
また、Gresenz氏は「早期のアルツハイマー病患者がいる家族は、患者本人だけでなく家族も、預金や貯金、株式、債券など高齢者でも動かしやすい資産が大幅に減ってしまうリスクが高いことを知っておくべきだ」と強調。「家族は、高齢になった親の金銭管理能力を早めにチェックする方がよい。認知症の兆候がなくても、セーフティネットの存在を確認しておいてほしい」とアドバイスしている。さらに、「高齢者を守る上では金融機関にも重要な役割がある」と同氏は付け加えている。
一方、前出のDrew氏は「アルツハイマー病や認知症に関しては、今後の計画を立てるのに早すぎるということはない」とし、高齢者自身には、信頼できるファイナンシャルプランナーと早めに話し合うことを勧めている。
 〜CareNetより〜


2019年12月17日
「週1本のワインによるがん生涯リスクはタバコ何本に相当?」
適度のアルコールもやはりリスクなのか。英国・サウサンプトン大学病院 NHS Foundation TrustのTheresa J. Hydes氏らが英国のデータを解析し、ワインを1週間に1本飲む女性は、アルコール関連がんの生涯絶対リスクが増加し、この増大をもたらしているのは、乳がんであることを明らかにした。女性では、週1本のワインは週10本の喫煙に相当するという。著者は、「今回の結果は、女性にとって適度な飲酒は公衆衛生上の重大なリスクであることを知ってもらうのに役立つだろう。男性でも、週1本のワインが週5本の喫煙に相当することに注意が必要である」とまとめている。
研究グループは、適度な飲酒に起因するがんの絶対リスク(1,000人当たりの症例数)の増加を推定するとともに、これらを低頻度の喫煙が関与するがんの絶対リスクと比較した。アルコール関連がんおよび喫煙関連がんの一般集団における生涯リスクから、アルコールおよび喫煙の寄与割合を差し引き、禁酒をしている非喫煙者のがんの生涯リスクを算出した。これにアルコールおよび喫煙の寄与として、消費レベルの増加も含み、1週間にアルコール10単位の飲酒またはタバコ10本の喫煙の相対リスクを乗じた。
主な結果は以下のとおり。
・非喫煙者のがんの生涯絶対リスクは、1週間にワイン1本で男性では1.0%、女性では1.4%増加した。
・ワイン1本/週によるがんの生涯リスクの絶対増加は、タバコにすると男性で5本/週、女性で10本/週に相当した。
・飲酒による顕著な性差は、女性の非喫煙者の乳がんの絶対リスクが0.8%増加することであった。
〜CareNetより〜


2019年12月16日
「寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連――睡眠中は暗い方が良い?」
夜間の寝室の照明が明るいほど動脈硬化が進行する可能性が報告された。肥満や糖尿病などの既知の動脈硬化危険因子の影響を調整しても、なお有意な関連が認められるという。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究によるもので、詳細は「Environment International」に掲載された。
ヒトは昼と夜が24時間周期で繰り返される環境で進化してきた結果、「概日リズム」という生理機能が備わっている。そのため、夜の不適切な明るさは「光害」として概日リズムを乱す可能性があり、これまでにも夜勤労働者で肥満や高血圧、糖尿病のリスクが高いことが報告されている。今回発表された論文は、夜間の寝室の明るさと動脈硬化の進行の関連を、縦断的に研究したものだ。
前向きコホート研究「平城京スタディ」に登録されている60歳以上の地域住民を追跡調査し(観察期間中央値34カ月)、動脈硬化の指標である頸動脈IMT(首の動脈の血管壁の厚さ)を測定した。睡眠時の寝室の明るさのほか、動脈硬化の進行に関係する因子として、BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病、高血圧、経済状況なども評価した。
分析対象者数は989人で平均年齢71.4±6.9歳、男性が47.2%、観察開始時の頸動脈IMTは、平均IMTが0.88±0.15mm、最大IMTが1.10±0.32mm。照度計で測定した寝室の明るさにより対象者を4群に分け、観察期間中に頸動脈IMTが厚くなる程度に差があるかを比較検討した。寝室の明るさは、最も暗い第1四分位群が平均0ルクス、第2四分位群は0.3ルクス、第3四分位群は1.6ルクス、最も明るい第4四分位群は9.3ルクスだった。
BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病、高血圧、経済状況などを調整した多変量解析で、夜間の寝室が明るい群で有意に頸動脈の平均IMTが厚くなることがわかった(第4四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.028、P=0.019)。同様に最大IMTも厚くなることがわかった(第4四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.083、P<0.001。第3四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.046、P=0.048)。
以上の結果から大林氏らは「夜間の寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連していることが示された。この関連は、年齢や肥満、喫煙、高血圧、糖尿病など、既知の動脈硬化危険因子とは独立していた」と結論をまとめている。
今回の研究では、夜間の寝室の明るさが最も暗い群と最も明るい群で、頸動脈最大IMTの進行に0.083mmの差が見られた。先行研究の結果から、この差は心筋梗塞を10.0%、脳梗塞を11.6%増加させる差に相当すると著者らは述べている。
また、夜間の寝室の明るさが動脈硬化を進行させる機序について、著者らは、概日リズムが乱れることにより、血管内皮機能の低下が生じること、交感神経活性が亢進すること、血管拡張作用のあるメラトニンの分泌が低下することなどが関与している可能性を考察している。
なお、数名の著者が、住宅・建材関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
〜CareNetより〜


2019年12月12日
「食物繊維とヨーグルト、肺がんの発症リスクを低下?」
いわゆる善玉菌の栄養源である「プレバイオティクス」と、善玉菌を含む食品である「プロバイオティクス」の摂取は、いずれも有益なのか。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJae Jeong Yang氏らは、代表的な食品成分として、プレバイオティクスの「食物繊維」と、プロバイオティクスの「ヨーグルト」の摂取と肺がんリスクとの関連を調べた。欧米およびアジアで実施された前向きコホート研究10件のプール解析の結果、食物繊維とヨーグルトの摂取は、既知のリスク因子調整後および非喫煙者において、肺がんリスクの低下と関連することが示されたという。食物繊維もヨーグルトも、腸内微生物叢および代謝経路の調節を介してさまざまな健康上の有益性をもたらすことは知られているが、肺がんリスクとの関連についてはこれまで十分に検討されていなかった。結果について著者は、「プレバイオティクスとプロバイオティクスの肺がん発症に対する潜在的な予防機能を示すものであった」とまとめている。
研究グループは、欧米およびアジアで実施された前向きコホート研究10件、合計144万5,850例(成人)について、データ解析を行った。
主要評価項目は、肺がん(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんの組織型に分類)の発症。食物繊維ならびにヨーグルトの摂取量は検証済みの調査票で測定し、参加者個々のデータを用いて食物繊維ならびにヨーグルトの摂取と肺がんリスクとの関連について、Cox回帰分析により各コホートで、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算するとともに、ランダム効果メタ分析により統合した。
主な結果は以下のとおり。
・144万5,850例の内訳は、男性62万7,988例(平均年齢:57.9歳)、女性81万7,862例(54.8歳)であった。
・追跡期間中央値8.6年における肺がんの発症記録は、1万8,822件であった。
・食物繊維の摂取量が最低五分位群に対する最高五分位群のHRは0.83(95%CI:0.76~0.91)、ヨーグルトの摂取ゼロ群に対する同最高群のHRは0.81(95%CI:0.76~0.87)であった。
・食物繊維またはヨーグルトの摂取と肺がんとの関連は、非喫煙者において顕著であり、性別、人種/民族および腫瘍組織型にかかわらず一貫して観察された。
・食物繊維とヨーグルトの摂取を合わせて検討した場合、食物繊維もヨーグルトも摂取量が最も高い群では、食物繊維の摂取量が最も少なくヨーグルトをまったく摂取しない群に比べ、肺がんのリスクが30%以上低下し(全体のHRは0.67[95%CI:0.61~0.73]、非喫煙者のHRは0.69[95%CI:0.54~0.89])、潜在的な相乗効果が示唆された。
〜CareNetより〜


2019年12月10日
「深い眠りが脳の老廃物の除去を促す?」
深い眠りについている状態であるノンレム睡眠中に、脳内の有害物質が洗い流されている可能性が米ボストン大学のLaura Lewis氏らの研究で示唆された。脳内を循環する脳脊髄液により老廃物の排出が促されることは知られていたが、その細かい様子は解明されていなかった。今回の研究では、ノンレム睡眠中に脳波が徐波化し、それを受けて血液の振動が起こり、次いで脳脊髄液が律動的に脳内を出入りすることが示されたという。
Lewis氏によれば、脳内の老廃物には認知症患者の脳内に蓄積していることが知られるタンパク質のアミロイドβも含まれる。ただし、同氏は「今回の研究は深い眠りにつくことで認知症などの疾患を予防できることを証明するものではない」と強調。その上で、「この種の研究の最終的な目的は、なぜ睡眠の質が低いと認知症や心疾患、うつ病といったさまざまな慢性疾患のリスクが高まるのかを明らかにすることだ」としている。
これまでの研究で、代謝の過程で生じる副産物が脳内に蓄積しないように脳外へ除去するプロセスにおいて、脳脊髄液が重要な役割を果たしていることが示されていた。また、このプロセスは睡眠中に活発になることも分かっていた。しかし、その機序や理由については不明な点が多く残されていた。
そこで、Lewis氏らは今回、11人の健康な成人を対象に、非侵襲的な方法を用いて睡眠に関する研究を実施した。研究では、MRIを用いて脳脊髄液の流れを観察し、脳波によって脳内の細胞の電気活動を測定した。
その結果、ノンレム睡眠の中でも大きくゆるやかな波が現れる深い眠りの段階である徐波睡眠中の研究参加者において、脳活動で徐波が起こるたびに血流の速さや量が変動し、脳脊髄液が大きな振幅を有する波として脳内の隙間に流れ込んでいることが分かった。
Lewis氏らの説明によると、人は加齢とともに徐波の出現量が減少する。徐波が減ると、脳内の血流量にも影響が及び、睡眠中の脳脊髄液の律動的な動きが減少し、有害物質の蓄積と記憶力の低下をまねく。同氏らは、これまでの研究ではこうしたプロセスが個々に評価されがちであったが、今回の研究によりこれらが密接に関連している可能性が示されたとしている。
今回の報告を受け、睡眠の専門家らは「これまでに明らかにされている脳脊髄液の働きを踏まえると、徐波睡眠は脳内の老廃物の除去を促していると考えるのが妥当」とする見解を示している。
その一人で、今回の研究には関与していない米ノースウェスタン大学のPhyllis Zee氏は、「この研究は、脳の神経細胞を健康に保ち、脳内の有害物質除去を促すために睡眠が重要であることの理由や、その機序の解明に向けた手がかりとなるものだ」と話している。
一方、米ワシントン大学セントルイス校のRaman Malhotra氏は、「脳から有害物質を除去する上で睡眠がどのような役割を担っているのかについては今回の研究を含めてエビデンスが集積されつつある。例えば、最近報告された研究では、健康な成人でも一晩眠らないだけで脳内にアミロイドβの増加が認められた」と説明する。
なお、今回の研究は健康状態の良い若年成人を対象に実施された。Lewis氏は「今後は健康な高齢者や持病のある人を対象に研究を実施し、深い睡眠時に脳脊髄液の動きに違いがあるかどうか検討する必要がある」としている。
〜CareNetより〜


2019年12月9日
「脳は馴染みのある曲を瞬時に聞き分ける」
ラジオから馴染みのある曲が流れてきたときに、すぐにメロディや歌詞を全て思い出せたという経験は誰にでもあるだろう。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン聴覚研究所のMaria Chait氏らが行った研究で、人間の脳は、聞き慣れた曲であれば、わずか0.1~0.3秒で聞き分けられることが分かった。
今回の研究では、まず、計10人の参加者(男女各5人)に、良い思い出と関連する馴染みのある5曲を選んでもらった。次に、Chait氏らは、各参加者が選んだタイトルから1曲を選び、テンポやメロディ、ハーモニー、ボーカル、演奏に使う楽器が似ているが、その参加者には馴染みのない曲を対照として用意した。
その後、参加者には、馴染みのある曲と馴染みのない曲から、長さ1秒未満のメロディ断片をランダムに計100回再生して聞かせ、脳の電気活動と覚醒の尺度となる瞳孔径を記録した。脳が曲を認識したか否かは、覚醒の亢進と関連する可能性がある「瞳孔の散大」に続いて、「記憶想起に関連する脳活動」が生じたかどうかで判断した。
研究では、馴染みのない曲だけを聞く12人の対照群でもテストを行った。その結果、参加者は、馴染みのある曲と馴染みのない曲を瞬時に判別していることが分かった。馴染みのある曲の断片を聞くと0.1~0.3秒で瞳孔がより散大し、脳活動が活性化していた。一方、馴染みのない曲だけを聞いた「対照群」では、どのメロディの断片に対する反応にも差はみられなかった。
Chait氏は「この研究結果からは、私たちの脳は、聞き慣れた曲を瞬時に認識することが示された」と述べ、「今回の発見は、非常に高速で一時的な脳回路の存在を指し、馴染みのある曲は私たちの記憶の中に深く残るという事実とも一致する」と付け加えている。
また、Chait氏は「基礎科学の範疇を超えて、脳が馴染みのある曲を認識するメカニズムを明らかにすることは、音楽をベースとしたさまざまな治療的介入に役立つだろう」と指摘。「例えば、近年では、記憶に問題があっても、知っている音楽はよく覚えているという認知症患者に対して、治療のブレークスルーとして音楽を活用することへの関心が高まっている」と説明。「音楽の聞き分けを司る神経回路やプロセスを特定することは、このような現象の基礎を解明する手掛かりになるかもしれない」と期待を示している。
〜CareNetより〜


2019年12月7日
「乳製品摂取量と死亡リスクとの関連は?」
米国・ハーバード公衆衛生大学院のMing Ding氏らは、3件の前向きコホート研究において乳製品の摂取量と全死亡および死因別死亡との関連を検証し、乳製品の総摂取量と死亡リスクに逆相関は確認されず、乳製品の健康への影響は代用の類似食品に依存する可能性があることを報告した。また、「わずかだががん死亡率の上昇が、有意ではないものの乳製品摂取と関連がみられており、さらなる検証が必要である」とまとめている。これまで、乳製品摂取と2型糖尿病、心血管疾患、がんなどさまざまな健康アウトカムとの関連が広く検証されているが、多くの研究で明らかな有益性あるいは有害性は示されていない。さらに、前向きコホート研究での乳製品摂取と死亡との関連に関するエビデンスは限定的であった。
研究グループは、女性および男性における乳製品の摂取と全死亡および死因別死亡リスクとの関連を調べる目的で、米国で実施された3つの前向きコホート研究「Nurses' Health Study(NHS)」「Nurses' Health Study II(NHS II)」「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」を用い、ベースラインで心血管疾患およびがんを有していない女性16万8,153人と男性4万9,602人について解析した。
参加者は、乳製品の摂取について食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて、NHSでは1984年と1986年以降は4年ごとに、NHS IIおよびHPFSではそれぞれ1989年および1986年から4年ごとに調査を受けていた。
主要評価項目は、国民死亡記録(national death index)、州生命記録(state vital records)、または家族および郵送による報告によって2016年12月31日までに確認された死亡とした。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、乳製品の摂取量と死亡リスクとの関連を解析した。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、食事パターン(代替健康食指数2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、閉経状態(女性のみ)、閉経後のホルモン剤使用(女性のみ)に関して補正を行い評価した。 解析は、各コホートで個別に実施した後、固定効果モデルを用いて統合・評価した。
追跡期間最大32年間で、心血管死1万2,143例、がん死1万5,120例を含む計5万1,438例の死亡が確認された。
多変量解析で統合した全死亡のハザード比(HR)は、乳製品摂取量が最低の第1群(平均0.8サービング/日)に対して、第2群(平均1.5サービング/日)で0.98(95%信頼区間[CI]:0.96~1.01)、第3群(平均2.0サービング/日)で1.00(0.97~1.03)、第4群(平均2.8サービング/日)で1.02(0.99~1.05)、最高の第5群(平均4.2サービング/日)で1.07(1.04~1.10)であった(傾向のp<0.001)。
心血管疾患死のHRは第1群に対して、第2群0.97(95%CI:0.91~1.03)、第3群0.97(0.92~1.03)、第4群0.96(0.90~1.02)、第5群は1.02(0.95~1.08)であった(傾向のp=0.49)。
がん死のHRは第1群に対して、第2群0.95(95%CI:0.90~1.00)、第3群1.00(0.94~1.05)、第4群1.04(0.98~1.09)、第5群は1.05(0.99~1.11)であった(傾向のp=0.003)。
乳製品の種類別では、全乳の摂取量増加は、全死亡(0.5サービング/日増えるごとのHR:1.11、95%CI:1.09~1.14、傾向のp<0.001)、心血管死(同1.09、95%CI:1.03~1.15、傾向のp=0.001)およびがん死(同1.11、95%CI:1.06~1.17、傾向のp<0.001)のリスク上昇と有意に関連していた。
代替食品の解析で、乳製品の代わりにナッツ、豆類、全粒穀物を摂取した場合は死亡リスク低下と関連していたが、赤身および加工肉の摂取は死亡リスク上昇と関連していた。
〜CareNetより〜


2019年12月6日
「喫煙と認知症リスクの関連、禁煙後何年で消失?」
喫煙は認知症の危険因子として知られているが、禁煙によってリスクは減少するのだろうか。米国・ジョンズホプキンス大学School of Public HealthのJennifer A. Deal氏らが、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究で調べたところ、禁煙は認知症リスク減少に有益ではあるものの、禁煙期間に依存することがわかった。本研究では、禁煙後9年以上経過した場合に認知症発症との関連が消失し、認知症リスクを減らすためには中年早期に禁煙する重要性が示唆された。
ARIC研究は、1987~89年に始められた米国の4つのコミュニティーでの前向きコホート研究で、52〜75歳の1万3,002人の男女(25%がアフリカ系アメリカ人)が参加。認知症(すべての原因を含む)は、縦断的認知データ、代理報告書、病院および死亡証明書における認知症のコードを組み込んだ標準化アルゴリズムを用いて定義した。認知機能低下は、2つの時点(1996~98年および2011~13年)で測定された3つのテストによる複合認知スコアを用いて測定した。喫煙と禁煙は、1987~89年および1996~98年のデータを用いた自己申告によって定義した。認知症発症リスクと喫煙有無による認知機能低下の違いは、それぞれCox比例ハザードモデルと線形回帰モデルで推定した。
主な結果は以下のとおり。
・非喫煙者、元喫煙者、現在喫煙者の割合は、44%、41%、14%であった。
・元喫煙者の79%は、ベースライン時点で9年以上禁煙していた。
・1,347人の参加者が認知症を発症した。
・非喫煙者に対する現在喫煙者の認知症の調整ハザード比は1.33(95%信頼区間[CI] :1.12~1.59)、ベースライン時に禁煙から9年未満の元喫煙者は1.24(95%CI:1.01~1.52)であった。
・ベースライン時に9年以上禁煙していた場合、認知症との関連はなかった。
・認知機能低下率について喫煙の有無による差は認められなかった。
 〜CareNetより〜


2019年12月5日
「幸福感が強い人の脳は“ゆらぎ”が少ない―感情処理力と関連か?」
幸福感と脳活動の関連が報告された。自分が幸福だと強く感じている人は、大脳右楔前部という部分の安静時活動性が低いという。京都大学こころの未来研究センターの佐藤弥氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。
佐藤氏らの研究グループは、大脳右楔前部の灰白質容積と主観的な幸福感が正相関することを既に報告しているが、右楔前部の活動性との関連は明らかでなかった。近年、脳内の低周波変動(低周波ゆらぎ)の振幅が自発的な神経活動の強度を反映すると報告されており、安静時に低周波ゆらぎとして観察される右楔前部の活動性が、主観的な幸福感と関係している可能性が考えられる。そこで佐藤氏らは、主観的幸福感と右楔前部の活動性との関連を検討した。
研究対象はボランティア51人(平均年齢22.5±4.5歳、女性26人)。主観的幸福感は日本語版SHS(Subjective Happiness Scale)を用いてスコア化した。右楔前部の活動性は、被験者を5分かけて脳をリラックスさせた状態で、fMRI(磁気共鳴機能画像法)にて評価した。
検討の結果、SHSスコアが高い(主観的な幸福感が強い)人ほど右楔前部の活動性が低い(低周波ゆらぎが少ない)という、有意な負の相関が確認された(r=-0.52、P<0.001)。楔前部の活動性は、否定的な自己意識や心の迷いと関係があることが先行研究で示されている。この知見と今回の検討結果を合わせて考察すると、否定的な自己意識や心に迷いを生じる働きが弱いことが、幸福感の基盤となっていることが示唆される。
研究グループはさらに、右楔前部と右扁桃体の機能的なつながりに着目。両者の機能的結合が強い人ほどSHSスコアが高いという、有意な相関を認めた(r=0.48、P<0.001)。右偏桃体は感情の処理に関わる領域であることから、感情を適切に処理することで幸福感が生まれる可能性が考えられる。
これら一連の結果について著者らは、「主観的幸福感と対応する脳活動および脳内ネットワークを初めて明らかにしたもの」としている。そして「楔前部の活動性が瞑想によって低下するといった知見もあることから、科学的データに裏打ちされた“幸福増進プログラム”の作成も期待される」と将来の展望を述べている。
 〜CareNetより〜


2019年12月4日
「子どもをよその家に行かせたくない親は2割超、全米調査」
米国では、子どもを持つ親の22%が、よく知らない家庭に子どもを遊びに行かせたくないと考えていることが、米ミシガン大学C.S. Mott小児病院が実施した子どもの健康に関する全米調査(National Poll on Children's Health)で明らかになった。親の多くは、他の親に自分の子どもを預けることに不安を感じるとの理由で誘いを断っているという。
調査を実施した同大学のSarah Clark氏はニュースリリースの中で、「よその家で遊ぶことは、子どもの自立心を育んだり、学校以外の環境で他の子どもと遊ぶ経験を積んだりすることにもつながる」と指摘。一方で、「親は、よその家に子どもを送り出す前に、自分の子どもが安全かつ適切に見守られると確信する必要がある」と説明している。
今回の調査は、4~9歳の子どもが1人以上いる親881人を対象としたもの。親同士が知り合いではない家庭に子どもが招かれた場合、「親の同伴なく子どもを行かせる」と回答した親は22%に過ぎず、43%は「親も一緒に行く」、22%は「誘いを断る」と回答していた。
親の懸念は主に「見守りが不十分にならないか」「聞かせたくない言葉を耳にしないか」「薬物や有害な物質に手を出してしまわないか」「ケガをしないか」であった。誘いを受けるか受けないかの親の決定には、「人見知りをする(17%)」「ペットを怖がる(11%)」「食物アレルギーがある(8%)」「疾患などがある(6%)」といった子ども側の要因が影響することも分かった。
さらに、親の大半は、子どもを遊びに行かせる前に、相手の親に会おうと試みていることも明らかになった。また、相手の親について友人や隣人に尋ねたり、ソーシャルメディアをチェックしたり、家の近くまで行ってみたり、性犯罪者の登録簿や犯罪歴を検索したりするほか、学校の教師やスタッフに尋ねたりする人もいた。
しかし調査では、よその子どもを預かる前に、「子どもが安全に過ごせるのかどうか尋ねられたことがある」と回答した親は4人に1人に過ぎなかった。一方で、4人に3人の親は、もし子どもの安全性について事前に聞かれても気にしないと答えていた。
この結果について、Clark氏は「子どもを安全に預けられると確証を得るには、相手先の親に安全に過ごせるのかどうかを確かめる必要がある。しかし、今回の世論調査からは、このような話題を積極的に話し合う親は少ないことが示唆された」と説明。その上で、同氏は「親同士が事前にコミュニケーションを取ることで不安は解消できる。アレルギーやペットの有無は事前に確認できるほか、当日は親が子どもを送って行けば、その場で、子どもが安全に過ごせるような方法について相談することもできるだろう」と助言している。
 〜CareNetより〜


2019年12月3日
「テレビを見ている時間が長いほど、糖やカフェインの摂取が増える」
テレビやスマートフォンなどにくぎ付けになっているティーンエイジャーは、運動不足になるだけではなく、甘味飲料やカフェイン入り飲料の摂取量が増えることが、マックマスター大学(カナダ)のKatherine Morrison氏らによる研究から明らかになった。
この研究は、米国立衛生研究所(NIH)が行っている全国横断研究の2013~16年のデータを用い、全米各州から無作為に抽出した252~263校の8年生と10年生(日本では中学2年生と高校3年生に相当)、計3万2,418人の嗜好飲料の摂取量と電子機器の利用時間との関係を解析したもの。
検討の結果、対象の27%が世界保健機関(WHO)推奨量以上の糖分を、21%が推奨量以上のカフェインを、炭酸飲料やエナジードリンクなどから摂取していることが明らかとなった。男子生徒は女子生徒よりも炭酸飲料やエナジードリンクを多く摂取しており、また年次別では8年生の摂取量は10年生よりも多かった。
全体的に見ると、2013~16年にかけて炭酸飲料とエナジードリンクの摂取量は減少していたが、電子機器、特にテレビの視聴時間の長さとこれらの飲料の摂取量に関連が認められた。そしてテレビの視聴時間が1日1時間増えると、摂取量が推奨量を超過するリスクが、糖分については32%、カフェインについては28%増加していた。1日1時間の携帯電話の通話やソーシャルメディアの使用でも、糖分やカフェインの摂取量が推奨量を超過するリスクの増加が見られた。
一方、テレビゲームの視聴時間とカフェインの摂取量との関連性は弱かった。研究者らはこれを意外な結果としており、Morrison氏は「テレビゲームのプレイヤーをターゲットとしたマーケティングキャンペーンを考えると、エナジードリンクや炭酸飲料からのカフェイン摂取量とテレビゲームの使用とに特に強い関連があると予測していたが、テレビの視聴時間との関連の方が強かった」と述べている。また今回の研究では、学校の課題でコンピューターを使った場合は、推奨量を超過して糖分を摂取するリスクが低いことも示された。
砂糖や人工甘味料を含む甘味飲料は、肥満、糖尿病、虫歯、睡眠障害と関連しており、カフェインの摂りすぎは頭痛や高血圧、吐き気、嘔吐、下痢、胸痛、睡眠障害と関連するとされ、過剰摂取を控える施策がなされている。Morrison氏は、「2013~16年で炭酸飲料やエナジードリンクの摂取量の減少傾向がみられたが、思春期の若年者では電子機器、とりわけテレビの視聴時間が長いと糖分とカフェインの摂取量が増えることが示された」とし、「糖分とカフェインの摂りすぎに対処するには、カウンセリングやヘルスプロモーションが有効である可能性がある」と述べている。
 〜CareNetより〜


2019年12月2日
「”天候は関節痛に影響する”は本当か?」
「天候が悪いと関節の痛みが強まる」というのは、単なる迷信ではないかもしれない。英マンチェスター大学のWill Dixon氏らが、同国の慢性疼痛患者を対象に、スマートフォンを用いた調査を実施したところ、湿気が高い日と風が強い日には関節の痛みが増す可能性があることが分かった。一方、痛みの程度と気温との間には有意な関連はみられなかったという。
この研究は、関節炎や線維筋痛症、片頭痛、神経障害性疼痛を有する英国人の慢性疼痛患者2,657人(平均年齢51歳、女性83%)を対象としたもの。参加者には、スマホアプリを用いて、関節痛の症状の程度を毎日記録してもらった。次に、スマホのGPS機能から得た位置情報を用いて地域の天候を特定し、痛みの程度と関連づけた。なお、これらのデータは約6カ月間にわたり収集された。
その結果、乾燥した日よりも湿度が高い日には、関節痛の重症度が高まることが分かった。また、気圧が低い日や風速が強い日にも痛みは強まったが、これらの天候条件のうち「湿度」が痛みの強さと最も強く関連していた。
一方で、気温と関節痛の重症度との間には明らかな関連は認められなかった。しかし、「湿度が高くて寒い日」や「風が強くて寒い日」には、痛みはより増す可能性が示された。なお、雨と痛みの強さとの間に関連はみられなかった。
さらに、高い湿度と強風、低気圧の3つの条件が揃う日には、平均的な天候の日と比べて強い痛みを感じる確率が20%高いことも明らかになった。Dixon氏は「このことは、強い痛みを感じる頻度が、平均的な天候の日では100日中5日なのに対し、これらの悪条件がそろった日には6日に増えることを意味する」と説明している。ただし、同氏らは、今回の研究では因果関係が証明されたわけではないとしている。
今回の研究の意義について、Dixon氏は「この研究結果は、以下に挙げる2つの理由で、将来、患者にとって重要なものとなるだろう」と指摘している。まず、天候と疼痛の関連を明らかにできれば、天気予報と同じく痛みの強さを予測できる可能性がある。次に、痛みの強さを予測できれば、例えば、痛みが強まると予想される日には体に負荷がかかる業務を別の日に変えるなど、日常的な活動の予定が立てやすくなるとしている。さらに、今回の研究データは、疼痛の新しい治療法の開発につながることも期待されるという。
ヒポクラテスの時代から、天候は関節炎の症状に影響すると考えられてきた。今回の研究では、試験開始時点で、対象患者の4人に3人は「天候は関節痛の症状に影響する」と信じていたことも判明した。
一方で、数多くの研究が行われてきたにもかかわらず、これらの関連について、いまだ科学的に一致した見解には至っていない。Dixon氏は、今回の研究で利用したスマホの利便性に触れ、「スマホを活用することで、より多くの対象者の疼痛症状を毎日、季節別に追跡できるようになれば、この領域の研究は大きく進展するだろう」と展望している。
 〜CareNetより〜



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