三重東クリニック


last up date
2019/5/25
   

since Sep.2010


診療受付
月〜土曜
(水・土は午前)

午前
内科・小児科
8:30〜12:00

午後
内科
13:30〜17:00
小児科
15:00〜18:30

休診日 日曜・祝日・年末年始

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■社会医療法人
 関愛会

■関愛会 清川診療所


<検査情報>
下記の検査が出来ます。
血液検査など、当日に検査結果をご説明できる検査が多いので、スタッフにご相談ください。

  • MRI検査
  • ヘリカルCT検査
  • 骨密度検査
  • エコー検査
  • 睡眠時無呼吸症候群検査(SAS)
  • 胃内視鏡検査
  • 大腸内視鏡検査
  • ホルター検査(24時間心電図)
  • 頸動脈エコー、血圧脈波検査
  • 各種血液検査
  • その他
     各種予防接種、禁煙外来、もの忘れ外来、肺機能検査、心電図検査、便潜血検査

    〒879-7104
    豊後大野市三重町小坂4109-61
    TEL 0974-22-6333
    FAX 0974-22-6341

    統括管理者・院長
    内科
    宇都宮 健志
    副院長
    内科
    飯尾 文昭
    副院長
    小児科
    別府 幹庸

    清川診療所
    院長
    内科
    坪山明寛
    (火曜午後・水曜午前)

    関連施設
    清川診療所
    きよかわリハビリテーションセンター もみの木
    きよかわ介護サポートセンター 三つ葉

  •  



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    スタッフからひと言

    「不健康な食事が原因で1100万人が死亡 たばこや高血圧より深刻 食事改善で命を救える」
    食事をどのように摂るかという問題は、2型糖尿病、心血管疾患などの慢性的な健康障害に直結している。ワシントン大学などによるこの研究は、約40ヵ国の130人以上の研究者が参加して行われた、これまでで最大規模のもので、詳細は医学誌「ランセット」に発表された。
    「不健康な食事はどんな人でも深刻な問題になりえます。年齢や性別、地理的な影響、経済状態などに関わらず、早死の原因になるのです」と、ワシントン大学の健康基準・評価研究所(IHME)のアシュカン アフシン氏は言う。
    研究では、2017年に不健康な食事が世界の1,090万の死亡の原因になっており、これは成人の死亡の22%を占めることが明らかになった。病気や障害、早死により失われた年数を示す障害調整生存年(DALYs)は2億5,500万に達した。
    解析した結果、主要な死因は心血管疾患(CVD)で、がん、糖尿病がこれに続くことが明らかになった。食事は、心血管疾患による949万7,300人の死亡に、がんによる91万3,100人の死亡に、糖尿病による33万8,700人の死亡に、腎臓病による13万6,600人の死亡に、それぞれ関連していた。
    これに対し、喫煙は800万人の死亡と、高血圧は1,040万人の死亡と関連していた。食事の影響は喫煙や高血圧よりも深刻であることが示された。研究では、食事でもっとも影響が強いのは3つの因子であることが示された。もっとも影響が強いのは、全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないこと、塩分の摂取量が多いことで、死亡の50%とDALYsの66%に影響していた。赤身肉や加工肉の摂り過ぎ、糖質やトランス脂肪酸の摂り過ぎが続き、死亡の50%とDALYsの34%に影響していた。
    アフシン氏らの調査によると、米国では不健康な食事が原因で年間に40万人以上が心血管疾患で死亡しているという。「野菜や果物、全粒穀物、ナッツ類などの健康的な食品を摂り、塩分やトランス脂肪酸の摂取を控えることで、米国だけで年間に数万人の命を救えます」と、アフシン氏は言う。
    ワシントン大学の研究チームが、米国健康・栄養調査(NHANES)の1990~2012年のデータを解析し、食事が心血管疾患にどのように影響しているかを調べた結果、2015年に心血管疾患で死亡した男性22万2,100人と女性19万3,400人で、不健康な食事が食事が要因になっていることが判明した。
    米国心臓学会(AHA)は食生活を改善し、▼野菜や果物、▼精製されていない穀類、全粒粉、▼低脂肪の牛乳や乳製品、▼皮を取り除いた鶏肉、▼魚、▼ナッツ類や大豆――といった食品を摂ることを推奨している。その一方で、▼飽和脂肪酸の多い赤身肉や加工肉は減らすことを勧めている。
    「世界では加工食品やジャンクフードなどの不健康な食品の流通が増えています。健康的な食品を増やし、不健康な食品を減らすために、食事などの生活習慣の改善を促す政策が必要とされています」と、アフシン氏は指摘する。食事摂取基準を設けている国は多いが、乳製品、全粒粉、ナッツ類などの食品で、現実の摂取量とのギャップがみられるという。研究者らは、食料の生産者と食品の製造業のあいだで、こうしたギャップが生じていると予測している。
    健康的な食品の摂取を増やすために、食料の生産、加工、包装、マーケティングなど、食料を供給するサイクルのさまざまな領域で調整する必要がある。大豆食品や豆類などの植物性タンパク質の摂取量を増やすことは、心血管疾患の危険因子を減らすだけでなく、地球環境にも良い可能性があるという報告もある。「加工食品だけでなく生鮮食品においても、食品の輸出入量が世界的に増えています。国を超えて、食事の改善が緊急に必要であることを啓発する必要があります」と、アフシーンは強調している。
    〜保健指導リソースガイドより〜



    お知らせ

  • 飯尾医師の診療について
     先般追突されたことによる頚椎捻挫の体調不良で、当面の間は最低限の診療を続けています。
     ご指名やご希望に沿いかねる状況ですが、どうぞご理解のほどご承知くださいますようお願い申し上げます。

  • 増改築工事で騒音が大きくなることがあります。どうぞご理解いただきたくお願い申し上げます。

  • 「風疹の抗体検査が受けられます」
     昨今、風疹ワクチン未接種による妊娠中の罹患・胎児奇形の危険性について報道がなされています。
     同ワクチン未接種の方で、挙児希望の方・またそのパートナーの方は是非接種されるようお勧めします。
     なお、当医院では風疹に対する免疫(抗体)の有無についても検査を行っています。
     結果は数日後にご報告出来ます。
     国や市町村の補助事業もありますので、詳しくはご連絡ください。

  • もの忘れ外来は、内科で対応していますので、どうぞご相談ください。

  • 小児科での受診はWEB予約をお願いいたします。
     予防接種の際は必ず「母子手帳」をご持参ください。

  • 各種検査のお問い合わせが多いので、下記に検査情報を掲載いたしました。スタッフにお気軽にお尋ねください。

  • 火曜の午後・水曜の午前は、清川診療所の坪山明寛医師が三重東クリニックで診療いたします。専門は血液学です。

  • 禁煙外来の治療を行っています。
     予約制で、月曜・木曜・金曜の午後受診可能です。
     詳細は電話でご連絡ください。

  • 甲斐ジムチョーの読書日記
     時々更新いたします。


    ご案内
  • 清川診療所は坪山明寛医師が月曜日から金曜日まで診療いたしますが、火曜の午後と水曜日の午前は三重東クリニックで診療(完全予約)いたします。

  • 三重東クリニック、清川診療所では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を実施しております。
  • 三重東クリニック、清川診療所では、健康診断を実施しています。事前にご相談ください。
  • 小児科 予約システムを導入しました。携帯電話やパソコンから診察の順番取りができます。
    「小児科の待ち時間について(お知らせ)」 (pdf) です。ご一読ください。
    ここからお入りください。→小児科自動順番予約システムへ

  • 予防接種は予約制です。必ず電話をしてください。

  • 特定健診が受診できます。予約制です。受診券と保険証を必ずご持参ください。
  • 予防接種等自費料金(接種名称・料金・ワクチン名)

    接種名称 料金ワクチン名
    🍒インフルエンザ 1回目 3,500円インフルエンザワクチン
    🍒 2回目 2,500円(小児)
    🌿おたふくかぜワクチン 5,500円
    🌱水痘ワクチン 7,100円
    🍒麻疹風疹混合ワクチン 9,800円MRワクチン
    🌴子宮頸がんワクチン(二価)16,200円サーバリックス
    🌵子宮頸がんワクチン(四価)16,200円ガーダシル
    🍓肺炎球菌ワクチン(十三価)10,300円プレベナー
    🍏ヒブワクチン7,800円アクトヒブ
    🍑肺炎球菌ワクチン(二十三価)8,300円ニューモバックス
    🌷二種混合ワクチン4,700円DTビック
    🌸日本脳炎ワクチン6,800円
    🌼BCGワクチン6,500円
    🌺ロタウィルスワクチン(1価)13,400円ロタリックス
    🌈ロタウィルスワクチン(5価)8,500円ロタテック
    🌿B型肝炎ワクチン(0.25ml)5,000円ビームゲン
    🌱B型肝炎ワクチン(0.5ml)5,000円ヘプタバックス
    🍒A型肝炎ワクチン7,000円エームゲン
    🌴不活化ポリオワクチン8,300円
    🍓四種混合ワクチン10,300円
    🍏血液型検査(自費)2,160円


  • 健康診断、特定健診を実施しています。
     法定健康診断 Aコース 7,000円(消費税込) 35歳、および40歳以上の方が対象となります。
     法定健康診断 Bコース 4,000円(消費税込) 34歳以下、および36歳〜39歳の方が対象となります。
     予約が必要ですので、ご連絡ください。


    <更新情報>
  • ほぼ毎日更新しています。

    ■スタッフからひと言(過去の記事です)
    2019年/ 2018年


    ■甲斐ジムチョーの読書日記


    ■患者さまからの声


    ■スタッフのエッセイ集です
    過去記事: /2018年(13篇) /2017年(17篇) /2016年(18篇) /2015年(17篇) /2014年(19篇) /2013年(17篇) /2010年〜2012年(41篇)

    ■「医の道の道標」清川診療所 所長 坪山明寛 2019.4.22
    ■「大切に歩みなさい」清川診療所 所長 坪山明寛 2019.3.25
    ■「103歳の心音」清川診療所 所長 坪山明寛 2019.2.25
    ■「己亥に思う」清川診療所 所長 坪山明寛 2019.1.24
    ■「診察室の椅子」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.11.27
    ■「樹木希林さんに思う」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.10.25
    ■「大切にしたいこと」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.9.27
    ■「地域行事の手伝いをして」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.8.27
    ■「災害と伝統の躓き」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.7.23
    ■「生きよ!生きぬけ!」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.6.25
    ■「心を寄せる媼」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.5.28
    ■「燕の振る舞い」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.4.26
    ■「春の夜の色談義」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.3.26
    ■「なんにもできない・・・」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.2.26
    ■「戊戌の幕開け、あれこれ」清川診療所 所長 坪山明寛 2018.1.26
    ■「地域包括ケアに必要なネットワーク」三重東クリニック 事務長 甲斐敏幸 2018.1.19







    2019年4月22日(月)
    「医の道の道標」 清川診療所 所長 坪山明寛 

     診療が一段落した4月1日午前11時41分、テレビに映し出された文字は「令和」とあった。新元号だ。〝れいわ“と呟いてみた、響きはよかったが釈然としなかった。元号には国の目指すところが込められていると聞いていた。明治は、天下は明るい方に向かって治まる、昭和は国民の平和と世界の共存共栄を願う、平成は全て滞りなく順調に運び、正しさを得るという具合に。でも「令和」の国は何を目指しているのか?発表の瞬間にははっきりしなかった。首相談話では「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」とあったが、今一つ納得できるものがなかった。
     しばらくして、万葉集研究家の中西進氏の「令和」への思いに出会った。「令」は麗しい、善の意味があり「和」は聖徳太子の「和をもって貴しとせよ」の和が込められているとあった。このことから令和の時代は、「令和」出典の万葉集巻五の序文のような、麗しく善き和(なごみ)に満ちた平和な国を目指すことだと理解でき、「令和」が素敵な元号として私の心に落ち着いた。発表の夜、令和の文字を繰り返し書いて呟いてみた。

      新元号つぶやき書きぬ春の夜 明寛

     令和の足音が近づいてきたが、私は平成の時代を歩まれてきた天皇皇后両陛下には、医師として貴重な学びを得たと思っている。
     平成時代は戦争こそなかったが、災害多き時代だった。両陛下は災害地を足しげく訪問され、被災者を慰められ励まされてこられた。またご高齢の身をおして、先の大戦の地にも足を延ばされ、慰霊の誠を捧げられてきた。
    私はこのお二人を動かしているのは、悲しみに「寄りそう」真心の強さだと思う。それは天皇のお言葉に、「寄りそう」「祈る」という言葉が多いことからも理解できる。
    例えば「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていく・・」「障がい者を始め困難を抱えている人に心を寄せていく・・」「何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ました。人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄りそうことも大切・・」と、事あるごとに「寄りそう」の言葉がある。
     また美智子皇后の存在も大きかったと思う。昭和天皇は勿論、現天皇が皇太子の時には、視察や災害地訪問の際に国民の前で跪(ひざまず)くことはなかったが、美智子皇后と行幸啓され始めてから、国民や被災者と目線を同じにされ、息づかいが聞こえる距離で語りかけられるようになったように思う。その意味では、美智子皇后の存在は、皇室のあり方を善き方向へ導かれたのではないか。
     美智子皇后は、多くの困難の中で失声になられたことがあった。その困難を乗り越えられた原動力は何か?真実は知る由もないが、私は絵本「でんでんむしのかなしみ」と神谷恵美子さんとの出会いではと思っている。「でんでんむしのかなしみ」は、第26回国際児童図書評議会ニューデリー大会の基調講演で紹介されていた。私も読んでみた。
     「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」と結ばれていた。神谷さんは美智子皇后の相談相手の精神科医で、長くハンセン病患者を支えていた方だ。神谷さんは「生きがいは困難や苦しみの中から生まれる」と説いている。美智子皇后はふたつの出会いがあり、困難を乗り越えられたと私は思う。 
     私は病む人が苦しみを乗り越え、生きがいを持って生きていけるように支えていきたいとの思いで医の道を歩いている。
    この道を歩む時に、天皇皇后両陛下の努めて来られた「寄りそう」姿勢は、大きな道標になっていたので、退位される今心から感謝したい気持ちで一杯だ。
     診療所の燕が抱卵を始めた。新しき命の囀(さえずり)を楽しみに令和を迎えたい。



    2019年3月25日(月)
    「大切に歩みなさい」 清川診療所 所長 坪山明寛 

     庭の沈丁花の香りが薄れ、紫陽花の新芽が膨らみ、通勤路には桃の花が満開だ。桃の花と言えば、毎年この時期に清川駅の大鉢の桃の花に会えるのを楽しみにしてきた。
     桃は仙木、仙果と言われ、悪鬼を追い払う魔力を持つと言われる。古事記を読むと、変わり果てたイザナミノミコトの命令で追いかけて来た黄泉(よみ)の国の軍人を、イザナギノミコトが桃の実を三つ取って投げて追い払えたので、桃の実にオオカムヅミノミコト(偉大な神の実)と名付け、これからも苦しむ人々を助けてくれと言ったとある(口語訳古事記28-29頁:三浦佑之訳)。
     3月3日の桃の節句も、女の子を邪鬼から守る桃の力に願う神仙思想に由来する行事だ。
     私には孫が6人いるが、全員女の子だ。雛祭には、娘たちの雛飾りは嫁いだ時に持たせてないので、孫娘達の健やかな育ちを願い、これまで収集した小さな立ち雛、内裏雛などを毎年妻が玄関に飾ることにしている。
       六人の孫皆めの子雛飾る 明寛
     初孫が今年小学校卒業だった。自分は出席できなかったが、妻の撮って来た写真を見ていると、誕生の日、初参り、お食い初め、七五三、歩き出した時の笑顔などなどが走馬灯の如く流れ、感無量で胸が熱くなった。
    祖父の卒業を祝う気持ちを「卒業おめでとう」の題で詩にして贈った。

     こっちゃん
     安岐中央小学校卒業/おめでとう!
     六年間どうだったかな
     あっという間だったかな
     でもあるよね
     思い出がいっぱい
     出来たよね
     お友達がたくさん
     学んだよね
     知識を生きることを

     こっちゃんは
     元気に大きく育ってくれたね
     じいじとばあばの初孫として
     ばあばとじいじは
     あふれるほどの喜びを
     言い切れないほどの幸せを
     こっちゃんから貰ったよ
     ありがとう!
     ほんとうにありがとう!

     こっちゃんの卒業の姿を目にして
     じいじとばあばは
     とても喜んでいるよ
     心から嬉しいよ
     おめでとう!
     こっちゃん
     初孫よ


     この詩を書きながら、昆愛海さんのことも考えていた。3月20日の新聞に、愛海さんが卒業式の日に、3・11の日から育ててくれたおばあちゃんに、卒業証書を渡している写真と3・11の日に行方不明のお母さんに覚えたばかりの平仮名で、「ままへ いきているといいね。おげんきですか」と手紙を書いて眠り込んでいる4歳の写真が掲載されていた。袴姿の愛海さんは、素敵な女の子になっていた。その姿を8年ぶりに見て、言葉が出なく唯見入っていた。「よく頑張ったね」も「大変だったね」・・・の言葉も空虚に思えた。
    未曽有の大地震と大津波に両親と妹を3・11に突然失い、抱かれて甘えることも、手作りの好物を食べることも、絵本を読んでもらえることも、両親の温もりに触れることも奪われてから8年間、私の想像を絶する2900余日を、耐えて生きて大きく育ってくれて笑顔を忘れずにいる姿に、唯見入ることしかできなかった。そして愛海さんから卒業証書を渡されているおばあちゃんの心情は、写真からは読み取れなかったが、同じく孫の卒業式を迎えた祖父の私の倍する喜びが、否!考えの及ばない次元の違う感慨が渦巻いておられたんだろうと拝察した。私は写真のおばあちゃんのお姿に、〝ありがとうございました″と呟いて深く頭を垂れた。
     人は生きてゆくしかない。地球という生命を育んで来た奇跡の星で、生かされて生きてゆくしかない。その地球も、宇宙誕生から難儀な嵐の中で生き抜いてきて、まだ不安定のまま蠢(うごめ)いている星であることを忘れずに、人は淡々と生きてゆくしかない。 
    小学校を卒業した孫娘と愛海さんには、「新しき広場に向かって、日々を大切に大切に歩みなさい」という言葉を贈っておこう。



    2019年2月25日(月)
    「103歳の心音」 清川診療所 所長 坪山明寛 

     2月19日は24節気のひとつ、雨水(うすい)の日だ。天の神はタイミングよく柔らかい雨を降らせた。雨水の日は、空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になるという意味だ。草木が芽生える頃で、農耕の準備を始める目安とされて、春の兆しを知らせる風物詩のひとつだ。これから春一番が吹き、三寒四温を経て春本番となる。そう思うからか、雨水の日の雨は、少々濡れても身震いすることはなかった。
     出勤前に庭に出てみたら、沈丁花は香りを振りまき、椿の蕾が大きく膨らみ、翁草の鉢には土のふくらみが見えた。
      そこここに土の膨らむ雨水の日 明寛
    春の香りといえば梅だ。水戸の偕楽園で梅林を散策した時の花の可憐さと爽やかな薫を思い出す。梅と言えば、冬の寒さを耐え凛とした姿で、穏やかに登場してくる姿に、ふわっとした心地になる。
     診察室でこんな心地になる方がいる。毎月一度家族に付き添われて受診される。診察の様子はこんな具合だ。「○○さんどうぞ」と声をかける。看護師さんに支えられながら、診察室に登場される。そこで立ち止まって、私に顔を向け、ちょこんと会釈、それから2,3歩進み椅子に腰を下ろされる。両手を膝に揃えて、首を垂れながら「お早うございます」と挨拶される。そして背筋を伸ばし、口元に笑みを浮かべ、また会釈される。私もまっすぐに座りなおし「○○さん、おはようございます」と挨拶する。この5年余、診察の始まりのしきたりに、狂いは微塵もない(歩く時の支えが、ちょっといるようになったが・・・)。
     この方は御年103歳の媼(おうな)です。私が診察している患者さんのなかで最高齢者です。しかし所謂老いの雰囲気を感じないのです。とても小柄な方ですが、瞳は透きとおり目元には優しさが漂い、口元には微笑みが絶えません。その表情には、齢という年月しか醸すことのできない古酒のような、味わい深さ、気品さが漂っているのです。
     この雰囲気は、103歳の今を、風のゆらぎ、太陽のおおらかさに委ね切って生きておられるかのようです。まさに心身脱落の心境で日々を過ごしておられるのでしょう。
    心身脱落とは、道元禅師の教えで「只管打坐」と並ぶ教えだ。すなはち「身も心も一切の執着を離れて、自由で清々しい境地への解脱(五欲煩悩が取り除かれた状態)」と言われる。この103歳の媼と会い話していると、まさに心身脱落の雰囲気を感じるのだ。
    103年を生きてこられたことに対してもそうですが、その立ち居振る舞いの品格を目の当たりにすると、思わず手を合わすことがある。
     挨拶が済むと、聴診器で呼吸音と心音を聴く。私はリズミカルな103歳の心音を聴くと、感動する。心臓が血液を力強く全身に拍出しているのだ。ふと考えたことがあった。この方の心臓は何回動いているのだろうと。心臓は一日約10万回動くから、この方の心臓は、約37億6千万回動いてきているのだ。しかしいささかも動きは乱れてもいないし、弁の閉じる音も確かだ。
     103年間、寂しい時にはゆっくり、通学列車の中で恋した時にはときめき、農作業の時には早鐘のように打ち、老いた今は淡々と命を支えている。
    私は医師として、103歳の心音を聴けていることに、言い知れぬ有難さを感じる。またこの方の心音を聴くと、103歳7カ月で亡くなった私の母親の心音を思い出す。ひと月に一度、これからも103歳の心音を聴き、命の不思議さ尊さを噛みしめていきたい。
    窓辺を見ると診察室で孵化したメダカが、射しこむ光にキラキラ輝いて泳いでいた。



    2019年1月24日(木)
    「己亥に思う」 清川診療所 所長 坪山明寛 

     清川町の皆さま 明けましておめでとうございます。今年も診療所、三つ葉、もみの木をよろしくお願い致します。
    通勤路の庭先に、蝋梅の花が春の水先案内人となる数多の光を抱き育てていた。
      蝋梅やあまたの光うごめいて 明寛
     さて今年は「亥年(つちのとい)」、猪の年ですね。イノシシについては、診療所に来られる方々から「稲がやられた」「野菜が荒らされた」「電柵代もバカにならない」「もう農業はやっちゃおれん」・・と聞かされてきた動物です。干支には十二の動物がいますが、こんなにも憎まれている動物はいません。
    そうなると「己亥」という今年、何だか不安になり、どんな年になるか調べてみた。
     己は草木が十分に生い茂って整然としている状態で、亥は草木が枯れ落ちて種の内部に草木の生命力が籠っている状態とあった。
    つまり2019年は、何事も次の段階に踏み出すために、知識や心や体を育て成長を期する年で、決して暗澹たる年ではなかった。猪にめげることなく力強く生きていくのが今年という歳のようです、頑張りましょう。
     今年の正月は、故郷鹿児島へ帰省することもなく過ごした。室生犀星に「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて 異土の乞食となるとても 帰るところにあるまじや ・・・(小景異情―その二―)」という詩があるが、決して犀星の詩ほど故郷が嫌なわけではなく、両親や弟を亡くしたからか、何となく故郷を遠くに感じるようになっている。
     今年も3社参りをした。昨年お賽銭をいれたらブザーが鳴った大国社(今年は鳴らなかった)、杵築の奈多宮、近くの松坂神社に初詣して、家内安全・健康と幸せを祈願し、気持ちがすっきりした感じになり良かった。
     正月3日には孫が遊びに来たので、双六、福笑い、紙独楽まわし、トントン相撲などに興じた。今流行りの電子ゲーム遊びではなく昔風の遊びだったが、孫も喜んでいた。子供の心をくすぐる遊びに今昔はないようだ。そのことを一番感じるのは昔話だ。今でも「ももたろう」「舌きりすずめ」「うらしま太郎」などは面白がる。昔物語と言えば、「猿カニ合戦」を読んでいた時に、昨年患者様から頂いた1個の柿が思い浮かんだ。尖った形でやや赤味を帯びていた。「これは、“じゅうれんじかき“。今は少なくなった」と聞いた。その名を聞いたのは初めてだった。「じゅうれんじかき」は「十連寺柿」と書く。珍しい柿だなと思いながら調べたら、この柿には悲しい物語があることを知った。
     この柿のルーツは、祖母傾山を越えた隣町の高千穂町土呂久集落だ。この部落では、猛毒亜ヒ酸中毒により100人近くの人が、平均39歳で亡くなっていた。水俣病より古い公害病だ。人は勿論だが、大気や土壌の汚染で蜜蜂は消え、椎茸も芽をつけず、十連寺柿も実をつけなくなったのだ。現在は鉱毒対策で自然が回復し、十連寺柿も再び実をつけ始めている。十連寺柿という紙芝居が作られており、その中に患者さんの言葉「たとえ根治の見込みはないと言われましても、生きていく権利があります。また、生きとうございます」があった。公害病を知る中で悲しいのは、水俣病裁判を含め公害病裁判の過程で、一時的にせよ医療者が公害の加害者側に立つことがあることである。土呂久公害裁判でもその傾向が見て取れたのは、悲しみを増幅させた。頂いた十連寺柿は、医療者は常に病む人の側に軸足を置いて、揺らぐことがあってはならないことを再度教えてくれた。
     平成最後の正月は、三社参り、孫との戯れ、十連寺柿の教えと清浄な空気の中で過ごせた。
     己亥の今年、イノシシも清浄心の境地に浸り、清川の自然と人の心を、猪突猛進に駆け回り荒らし乱さないで欲しいと祈りたい。



    2018年12月25日(火)
    「忠恕の精神」 清川診療所 所長 坪山明寛 

     10月22日冬至の夜、いただいた柚子2個を入れた柚子湯を楽しんだ。湯船に入ると、ほんのりと甘酸っぱい香りを放ち、柚子は浮き沈みしながら湯船を動いていた。
      柚子ふたつ浮き沈みして冬至かな  明寛
     柚子湯に浸りながら来し方を振り返ると、柚子のように浮き沈みがあった。でも今何とか浮いていることを喜びたい。
     三木清は「人生論ノート」の中で、「人生は運命であるやうに、人生は希望である。運命的な存在である人間にとって生きてゐることは希望をもってゐることである」と述べている。私も沈んだ時には、“とにかく生きぬこう!医師という生業は、神が私にくださった『神の用』。疾苦の人に寄り添い続けることが生きがい・希望”と覚悟し歩んできた。そして72歳の今なお、人生の波間に、やっとながらも浮いておられることを幸いと思っている。
     患者さんと話をしていると、自分の歩みの中での疾苦・沈みが些細に思えることがある。
     85歳の媼が、開墾の話を聞かせてくれた。働き者のご主人と山に入り、鍬や鋸で山林を切り開き斜面を削り、畑や田んぼを作ったというのだ。写真を趣味にする自分が、美しいと感じる段々畑は、媼のような難儀の結実だということを、体現者から直に聞き身が震えた。開墾作業には、数十分では語りつくせない苦労があったことは推察できた。私は腰の曲がった小柄な媼の大きな生命力に、心からの畏怖と尊敬の念を禁じ得ず、診察室を出ていく後姿に頭を垂れた。
     頭を垂れるといえば、媼の診察をした翌日23日、天皇誕生日記者会見での御言葉に居ずまいを正し頭を垂れて聞き入った。
     特に胸の詰まる思いをした言葉を列記する。
    “私は即位以来、日本国憲法の下で象徴と位置付けられた天皇の望ましい在り方を求めながらその勉めを行い・・”“多くの犠牲者が生まれ、多数の難民が苦難の日々を送っていることに心が痛みます”“沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません”“心に残るのは災害のことです。・・被害を受けたことに言葉に尽せぬ悲しみを覚えます”“障がい者を始め困難を抱えている人に心を寄せていくことも、私どもの務めと思い、過ごしてきました”“天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで、象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝するとともに、自らも国民の一人であった皇后が、私の人生の旅に加わり、60年という長い年月、皇室と国民の双方への献身を、真心を持って果たしてきたことを、心から労いたく思います”
     これほど胸を打つ言葉を最近聞いたことがない。日本国憲法の象徴天皇として初めて即位され、象徴天皇のあるべき姿を深く思慮され行動してこられた真摯な姿勢を表した言葉だ。天皇の真摯な姿には、天皇教育係の小泉信三の薫陶が影響している。小泉が象徴天皇のあり方に示唆を受けたのが、福沢諭吉著「帝室論」の一節、「わが帝室は日本人民の精神の収斂する中心・・帝室はひとり万年の春にして、人民がこれを仰ぎ見れば悠然として和気を催すであろう」だ。小泉が天皇に強く求めたのは、自分の良心に忠実で、他人のことをおもいやる精神「忠恕」だ。天皇は平成の30年間、師の教えを体現せんと、国民の様々な疾苦をわがものとして、忠恕の精神で沖縄の人々、戦没者、被災者、障害者に真心を寄せ続けられ、癒しと慰霊の旅を皇后陛下とともに歩んでこられたのだ。天皇陛下の「心を寄せる」姿勢、忠恕の精神は、医師として生きる私にとって大きな道しるべとなった。
     さて清川町の皆様には、今年一年、診療所・三つ葉・もみの木をお世話いただきありがとうございました。来年が皆様にとって良き年であることをお祈りいたします。







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