2019年1月23日
「カーテンコール」 加納朋子 新潮社
僕が10代や20代の青年であったら、もっと感動していたかもしれない。ピュアな心にはほど遠く、荒みきっているのか。しかし、ところどころに鏤められた言葉があり、それなりに胸を打つ。
誰にでも、人を傷つけたり、失敗した過去がある。自分も思い出したくないような恥ずかしい反省や人を傷つけた悔悟の過去がある。
それを角田理事長はこう話す。
”大人になった今のあなたが、当時のあなたを許してやらなきゃならないんです。”
自分で自分を許す。
それぞれの女子大生が抱える問題を、角田理事長は温かい言葉で包み込んでいく。
僕はよく妻に、おまえはヒマワリのようだねと話す。
角田理事長は、落ちこぼれの学生たちの卒業式で、スピーチした。
”あなたは素晴らしい。”
これはヒマワリの花言葉。
”あなた方は素晴らしい。過酷な灼熱の太陽の下で、すっくと天を仰ぐ大輪の花のように、とてもとても素晴らしい。どうかヒマワリのように、明るい方、温かい方を目指して進んでください。”
読後感はいい。素晴らしい。
僕の心がねじ曲がっているのか、そう自問する。真正面に捉えきれない年齢と経験。
というより、好悪なんだろう。
もっとギラギラ、ギトギト。
現実はこれがいい、と思うのだが。



2019年1月22日
「甘いもの中毒」  宗田哲男 朝日選書
・脂質は食べ過ぎても全部が吸収されるわけではなく、余剰は体外に排出されます。だから太りません。それに対して糖質は、食べたら食べた分だけ全部吸収されて、余剰は脂肪となって体内に蓄えられます。だから糖質過多になると太るのです。
・私たちは、自分の体内でブドウ糖を作れるのだから、外から糖質を入れる必要がないということなのです。
・ケトン体はサプリメントが抗がん剤になるのではないでしょうか。
・M3.comのアンケートで、医師の66.5%が糖質制限に賛成或いはどちらかといえば賛成している。


2019年1月19日
「認知症は脳のメタボだった!」 白澤卓二著 宝島社
認知症関連の本で飯尾副院長より紹介があり、すぐに取り寄せて読了。
認知症は、アルツハイマー型と血管性で75%を占める。他にはレビーや混合型などがある。
最近は糖質制限が盛んだが、白澤先生も糖質と油の害を説く。糖が脳の唯一の栄養源というのは真っ赤なウソで、糖質が人類をボケさせていると言う。
油には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸には中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸がある。中鎖脂肪酸がケトン体を合成し、認知症の予防・改善に役立ち、それはココナッツオイルやココナッツミルクなど。
不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸があり、多価不飽和脂肪酸のオメガ3系脂肪酸がEPAと言われるもので、動脈硬化を抑制する。
糖尿病と認知症の密接な関係はインスリンがキーで、グルコーススパイク(食後の血糖値の急上昇)を避ける。
僕が驚いたのは、全世界の認知症介護の費用は、現在6000億ドル(約66兆円)であり、全世界の国内総生産(GDP)の約1%にあたるということだ。
もっと予防や治療の研究が必要だが、日本は経済的には先進国でありながら、医療面では後進国となっている感は否めない。
では若さを保ったり、生活習慣病の予防は何が必要か。白澤先生は、インスリンの分泌を抑えることだと言う。それは血糖値を上げないことだ。
50歳を過ぎたら糖質に頼る生活から抜け出すことが、何よりの認知症予防になる。
最近ケトン体の研究が進み、体内でケトン体が合成されているときには細胞の長寿遺伝子が活性化していることが分かってきたそうだ。
そのためにはケトン食を食べる。糖質を制限する。朝は生ジュースを飲む。質の良いタンパク質をしっかり取る。アルコールの適度な制限。おやつは糖質の少ないものを取る。
手っ取り早いのは、熱いコーヒーに中鎖脂肪酸のココナッツオイルやミルクを一日に一杯飲むことでしょうか。
今までの常識がコペルニクス的転回となり、新しい発見を受け入れるか、これまでの常識を信じ続けて否定するのかはあなた次第です、と著者は書いています。



2018年12月15日
「本日は、お日柄もよく」 原田マハ 徳間文庫
言葉や漢字が好きだった。
若い頃、父と一緒に新聞社の漢字試験に出て、父よりも高い点数を取ったときは複雑な気持ちになった。
言葉を組み合わせて相手の心に響く文章を考えるのは、好きな時間でもある。
難解な言葉を避けながらさまざまな思いを巡らし、きらりと光る言葉を紡ぐ。
言葉には力がある。
そう確信したのは涙が出るほどに感動的なスピーチに出会ったとき。
ケネディ、ヴァイツゼッカー、ジョブズ、ムヒカ、セヴァン、マハ。
でもね、小さな子どもが話す何気ない言葉を注意深く聞いてごらん。
きっと懐かしいなかにもハッとさせる言葉を感じるから。



2018年11月23日
「日々是好日」 森下典子 新潮文庫
学生時代に友人と二人で冬の京都を旅行した。大原三千院の前の茶店に上がり、抹茶と菓子をいただいた。
吹き抜けの寒さに、凜として背筋が立つ。竹林越しに見る里の雪景色に、観光客の喧噪は瞬く間に静の世界に変わった。
それから数年後、田舎の茶室の噂を聞き、友人と二人で訪ねた。若い二人の突然の来訪に戸惑いながらも、老婦人はこころよく迎え入れてくれた。
上品な本鳥の子の襖、見事な引き手、柿の木の炉、茶室のすべてが輝いて見えた。
森下さんの本で、「葉々、清風を起こす」という禅語を知った。
清々しかった。
迷わない、前を見る、集中する、そんな勇気が湧いてきた。
森下さんの本を読み始めたのは、映画「日々是好日」の原作と知ってからで、彼女の花鳥風月のとらえ方は僕の心を離さない。
竹の葉擦れの音に寄せて門出を祝す。
背中をぽんと押される、そんなきっかけが人間には必要なのかもしれない。



2018年11月21日
「人口減少社会の未来学」 内田樹編
各界の著名人11人が人口減少について書いた11編を、内田さんがまとめたものである。
とめどなく11編点描するのも定まらないので、平田オリザさんが書いた「若い女性に好まれない自治体は滅びる」という1編に絞ろう。
平田さんの著作は具体的事象がたくさん盛り込まれて分かり易いので、好んで読んでいる。
「二世帯住宅はあまり好まれない。好まないのは親の世代の方で、『自分たちは苦労したから、今さら子どもに同じ苦労はさせたくないし、この歳になってから嫁に気も遣いたくない』と言う」。出だしから相槌を打つ文面が並ぶ。自分が肯定するよりも、日本社会はそういう空気感に包まれている。
「子育て世代は、子どもの育つ環境を一番に考えて住む自治体を選ぶ時代になった。そしておそらく、その決定権の七割、八割は、実質的に子育てを担わされている母親が握っているのではあるまいか」。そうだ。なんとなく納得する。
平田さんは、日本は世界の先進国の中で最も人間が孤立しやすい社会になったと言う。企業社会は崩壊し、古き良き地縁社会は欠乏し、セーフティーネットである宗教もないと書く。
つまり、ゲゼルシャフトとゲマインシャフト、利益共同体と地縁血縁共同体が危機に瀕しているという。確かにOECD加盟国では、韓国に次いで自殺率は2位である。 考え込んだのは次の言葉である。
「子育て中のお母さんが、子どもを保育所に預けて劇場に芝居を見に行くと後ろ指を指される社会と、生活保護世帯が劇場に来ると後ろ指を指される社会は、深いところで、その排除の論理はつながっていると私は思う」。
こども園に預けて夫婦で遊びに行く親、子どもが熱を出して電話したらパチンコの音がして後で行くと言う。そういう現実を聞いていただけに、自分の中の排除の意識にハッとした。
三浦梅園の「価原」には、次のように記している。
「農業が減じれば財も減じる。財が減じれば国家の根本も弱体化する。これが郡県の人口が年ごとに減少し、都会の人々が日々増加する理由である。まことにひとつの感慨をもよおすではないか」。
人が離れる社会と集まって来る社会の違いは何だろう。
人口減少は国家や経済の弱体化につながるかもしれないが、それは果たして斜陽なのだろうか。
人に寛容な社会とは何だろう。
斜陽であったとしても、私たちは周囲の景色を愛でながらゆっくりと下っていけばいい。
そして成熟した社会を目標にすればいい。




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