〜わが輩はジュンである〜

8月3日 晴れ 

元来、僕は暑がりで、
夏はキライなのだが、
お参りの皆さんが、口々に
「今年は特別 暑いなア〜」
と言っている。
新聞やテレビでも報道されている。
そのうち各地で断水騒ぎや、
節電騒動が起こることだろう。
僕に言わせれば、このような現象は
気の利いた様な面をした
人間どもがつくり出した、
自業自得だと思うのダ。
自動車や電化製品・・・・
さまざまな便利さを求めて、
「この位でよし」
という感謝や満足を忘れた、
人間の奢りの結果ダ。
地球温暖化現象・・・・
これが異常気象となり
各種の生態系を乱している。
地球を傷つけ、
私物化している人間の傲慢さが
生み出した苦しみなのダ。


このことについて、
カラアゲと手羽先が話し合っている。
「すぐカラアゲにするぞって・・・・
人間て本当に自分勝手よね・・・・」

かけがえのないこの地球は、
人間どもの為にあるんじゃない!
俺様達やカラアゲ達の命も
育んでいるんダ。

俺様達は、千年一日の如く静かに
命を育んでいる。
ところが、人間どもの贅沢さの
影響を受けて、俺達の仲間にも
糖尿病や心臓病が増えている。
かく言う俺様も、肥満から
糖尿になる恐れがあると言われて
このクソ暑いのに外に引っぱり
出されて歩かされているのダ。 
頭に来るゼ。


長官さんを囲んでパー子や
チヨ子が暑いので
木陰で油を売っているワ。




僕がお家に帰るとき
「足を洗いなさい お口をふきなさい」
と、小言のうるさいトキ婆に、
皆が居る時わざと聞いたんダ。
「仕事もしないで、油を売っている
とよく言うけど、『油を売る』という
語源を知ってるかい?」
案の定、トキ婆が下を向いて
モジモジしている。
僕が鼻を鳴らして
説明してやったのダ。

「『油を売る』という語源は、
実際に『油を売る』
ことから生まれている。
電灯がなかった時代には、
油屋さんが一軒ずつ売り歩いていた。
油は水と違い、
計り売りするときは大変やっかいで
一滴も残さず計るために、
油屋さんは、のんびりと、客を相手に、
世間話でもしているほかなく、
さぼっているように見えた、
というわけだ。
このことから、さぼることを『油を売る』
というようになったのダ。」


厳しい暑さのせいか、本で見た
スイスのマッターホルンの雪景色や、
ノルウエーの世界一長いフィヨルド
“ソグネ・フィヨルド”
というやつの夢を見た。
つかの間の涼しさを味わったのダ。





夢から醒めて、ウダる暑さの中
和尚さんからせき立てられて
いやいや散歩に出た。
まず、各部屋を一巡した。
どの部屋にも灯籠が一杯。
灯籠祭りの用意が出来ていた。
昨年、初めて眺めたあの美しさは
いまも脳裏にこびりついているワ。


8月16日のことなのダ。
お参りの若い娘さんが
灯りのともった沢山の灯籠の中から、
自分のお母さんの戒名が書かれて
ゆらいでいる灯籠を見つけだした。
そっと手を合わせて、涙をふく姿を見た。
僕の胸にジーンときた。

生き別れて、その後一度も会ってない
オフクロのことが思い出された・・・・・。
お空にまたたくお星様に向かって
つぶやいたのダ。

「お母ちゃん ・・・・お母ちゃ〜ん」

その時、丸山さんから
「ジュンは危ないんで
部屋の中に入ってなさい!」
と叱られたんダ。
頭に「カチッ!」ときた。
僕の気持ちも知らないで・・・・。
これは、ご先祖様や水子さんの
名前を書いた戒名用紙だ。
お盆に本堂祭壇におまつりするんだ。
僕は親父の名前も知らない。
生きてるのか死んでるのか?
「ジュンの父母・身体健康」 
と和尚さんに書いてもらおうと
思っているのダ。






















延暦4年 7月19日 御年19歳
伝教大師様は比叡山に入山。
草庵を結び、修行生活を始められる。
そして 延暦7年(788)山中で
得られた赤栴檀の霊木で
薬師如来様を一刀三礼して刻まれた。

その御宝前に
「あきらけく のちの仏の み世までも
ひかりつたえよ のりのともしび」
と詠まれて ともしびを灯された。
以来1200年の間、
消されることなく連綿と燃え続けている。
この灯火が、
比叡山開創1200年を迎えた記念に、
昭和61年10月15日
臨済寺に分燈されて
今日まで本堂内陣で燃え続けている。

この「不滅の灯火」の前に
戒名用紙がおまつりされて
お盆にご供養されるのダ。

午後5時
本堂の階段で油を売ってから、
お兄ちゃんと外に運動に出かけた。
蝉が ワシワシワシワシ 
短い命を精一杯輝かせ、
燃え尽きようと鳴き続けている。
暗く狭い土の中に6年、身をひそめ、
明るい世界に出て来て、
わずか一週間の命。
せわしげに鳴く声は、
今日か明日の命かと思えば、
あわれをさそう。
第二駐車場で、広瀬の兄貴と
丸山のオッチャンが、
樹木の剪定作業をしている。
汗ビッショリだ。
僕たちが油を売っている間も
頑張っていたのかと思うと
人間てやっぱりすばらしい
人間万歳ダ!!
人間どもは、傲慢で、強欲で
鼻持ちならぬ点もあるが、
まじめで素直な心やさしい面もある。
だから、悪い点を改め、
よい面を伸ばすべく
仏様の教えを聞き
生涯修行を心がけろと言いたくなるのダ。
その点、俺様もお兄ちゃんも
表裏なく、いつも平常心ダ。

今日はちょっと油を売りすぎたかナ
明日は頑張ろう。

           おわり