〜わが輩はジュンである〜
人を眺めていると 
三種類のひとがあるようダ

岩に刻んだ文字のような人と、
砂に書いた文字のような人と、
水に書いた文字のような人である。
岩に刻んだ文字のような人は、
よく腹を立てて、
その怒りが長く続き
そして、怒りが岩に刻んだ
文字のように
長くきえる事のない人ダ
砂に書いた文字のような人とは、
よく腹を立てるが、
すぐ機嫌がよくなる。
その怒りが、
砂に書いた文字のように
すぐ消えてしまう人の事。
水に書いた文字のような人とは
水の上に文字を書いても
流れて形にならないように、
他人の悪口や、
不愉快な言葉を聞いても
少しも心に跡を残すこともなく
静かで穏和な人の事をいう。
僕の本性は、
岩に刻んだ文字に似ているが、
朝晩の修行のお陰で
だんだん砂に書いた文字に
なりつつある。
頑張って、
水に書いた文字のような
名実共に熊王になりたいと
願っているんダ。
今日は天気が良くなったんで
皆がキレイだキレイだと
言っている蓮の花を
見に行くことにした。
玄関から 和尚さんに
「一緒に行こうヨ 早くてバー」
と声をかけた。
和尚さんが
「今チョット手が離せないヨ」
と言うので、独りで出かけた。
よく喰うくせに、卵を産まなくて
「スープにするゾ」と、脅している
スープに見送られて
坂道を下り、蓮の処に行った。
咲いてル 咲いてルワ
「美しい」という単純な言葉では表現できない
「清聖」「清浄」・・・清らかな花ダ
僕の魂にジーンときた。
碧厳録という禅書に
  「百花誰か為にか開く」 
の一節があるんダ

春になって、
沢山の花が色とりどりに咲いて
まことに美しいが、
いったいだれのために
咲いているのだろうか− と。
蓮の花は、
だれの為に咲いているのかナ? 
 八木重吉さんの詩に

 「花は
  なぜ 美しいか
  ひとすじの気持で
  咲いているからだ」
−ひとすじとは
外のことは考えないことです
花は花だから咲くだけだ
だから美しいという
人が見ているから
咲くのでもない
人が見ていなくても咲く
だから美しい
人もまた この様に生きようと、
花から生き方を学ぶ
和尚さんの受け売りだ。
 高田敏子さんの詩に
「花は咲く
 だれか見ていなくても
 花のいのちを 美しく咲く為に
 人は人であるそのために
 生きているのかしら」

そうだ 「人は人であるために
人間を完成するために
生きるのだ」
これも受け売りなのダ。
  「青色青光 黄色黄光」
   「赤色赤光 白色白光」

ボクが晩のおつとめに
読誦する「阿弥陀経」
の一節にあるんだ。
白い花は 白い光を出している
赤い花は 赤い光を出している
それぞれの花が 
それぞれの 色の光を
無心に出している
そして 相手の光に照らされて
皆 それぞれ輝いて 
まことに美しい 極楽の池
・・・・・・・・・・・

あア〜 目を閉じればよくわかる
みんな それぞれ自分の
持分を精一杯出して
今日の一日を
頑張ればいいんダ。
いろいろ瞑想しているボクの
静かな一時を破って
、大きな声が聞こえる。
毎日お詣りする
阿南さん親子とお兄ちゃんが
記念写真を撮っている。
お兄ちゃんは何故か
この親子から
大層可愛がられている。

ボクにはお声が、かからない。
淋しい
昨夜 キリンカップサッカー
2001最終戦が
大分のビックアイで行われた。
ユーゴスラビア代表と
日本代表で、優勝決定戦が
行われたそうで、
もの凄い人出だったと
お兄ちゃんが、阿南さんから
聞いてきた。
僕は、サッカーなんか興味がない
こんな大きな競技場をもって
大分のような貧乏県で
維持ができるんでしょうか?
僕の取り越し苦労する悪い癖が
また出てきた。
帰って和尚さんに言おうっト。
蓮の花は美しかったけれども
阿南さんがお兄ちゃんを
エコひいきするのを見て
何となくムシャクシャして
走って帰ってきた
「和尚さん〜 和尚さんテバ〜」
和尚さんが、本堂のお経が済んで
事務所にやって来た。
「和尚さん 蓮の花を見ました
きれいでした。
僕の心も洗われましたヨ」
「そうか よかったネ」
「和尚さんが丹精込めて
作っただけありますヨ
和尚さんはスゴイ。
僕 改めて尊敬しますヨ」
最上級のお世辞を言っちゃった
和尚さんも、お兄ちゃんに似て、
割合単細胞だ
ニコニコ・・・・ニコニコ 
この上ない笑顔
「和尚さん 阿南さんが、
お兄ちゃんと写真を撮っていた。 
僕とっても羨ましかったヨ〜」
「そうか ジュン 可哀想に」
仕事のいそがしい和尚さんが
座り込んで、
僕を抱きしめてくれた。

「・・・・・・・・・・・・・・」
胸がジーンとなった。
幸せが胸にジワーっと広がった
和尚さんの暖かい手と、
胸の感触にふけりながら
久しぶりにおだやかな
夕飯前の至福の一時をすごした。

明日は早朝から 頑張るゾ

           おわり