【6月1日(火曜日)午後8時30分】

今日は、6月1日(火曜日)午後8時30分を過ぎたところである。テレビにWの文字が出ている。このWの文字の意味は、英会話のナンシー先生に教えて頂いた。

「ヒデ。Wの文字がテレビに出たら、それはトルネード警報ですよ。」

今まさにWの文字がテレビに出ているのである。さあ、どうしたものだろうか?イタリア人のRenzoにも連絡してみたが、不在である。実にのんきな奴である。

雷が光った。

窓の外の風の音は実に不気味である。妙に蒸し暑い。ケーブルテレビのチャンネルは、天気予報のチャンネルである。一日中、天気予報をやっている。しかし、全国チャネルなので、なかなかイリノイの田舎の天気の話しは出てこない。こんなときこそ、インターネット。

The Weather Channel - Champaign, IL

どうもこの町はやばいらしい。嵐と大雨とトルネードが仲良くやってくるらしい。

また雷が光った。

不気味である。再びテレビで他のチャンネルを見てみる。各チャンネルの右上にWの文字がでている。あるチャンネルでは、近くでトルネードが発生したことを知らせている。まずいかも。。。

あ、サイレンが鳴った。。。

【午後9時00分】

まさかと思ったが、確かサイレンが鳴ったときは、避難しなければならない。このアパートは大学の持ち物で、古いが作りはしっかりしていて、よく考えられている。地下のラウンジに避難である。普段は、住人のためのラウンジになっているが、緊急時には避難の場所となる。私の部屋の前をフランス語で話しながら不安げに駆け抜けるカップル。うーん、こりゃ大変な状況になったかも。。。

愛用のマックPowerbookと貴重品を抱えて地下室に降りる。台風と違って、数時間避難しておけば良いらしい。

【午後9時10分】

移動の途中外の様子を窓から見た。雷の音が不気味に鳴っている。大粒の雨が音を立てて降っている。地下に降りてみると、数人ほどが心配そうな顔でテレビのWの文字の出た番組を見ている。私は結構早い方のようだ。

そこにいたグループが普通のミーティングではないことを確認し、地下室の電源コンセント付近に陣取る。あ、パスポートが見あたらない。部屋に戻ることにした。

【午後9時15分】

まだ、外は大丈夫なようである。急いでパスポートと思いつくものを取り出し、ポケットに押し込んで再び地下室に戻る。途中、びしょ濡れで自転車を押しながら戻ってきた人もいる。外はもう土砂降りらしい。

戻ってみると、あらあら、もう地下室は住人で一杯である。この時間にトルネード警報はみんな怖いようだ。心配そうな顔をしている。人が多いので、地下には熱気が立ちこめている。住人の一人がクーラのスイッチを入れた。やれやれ多少は、この暑さから解放される。

【午後9時30分】

日頃は住人のためのラウンジであるので、テレビもクーラも完備している。みんなテレビのトルネード情報に見入っている。字幕でトルネード警報の内容が表示される。今後も更なる注意が必要らしい。みんなのため息が漏れる。

【午後9時40分】

どうもこの地下室にいると外のことが分からない。聞こえる音は住人の話し声、クーラの音、テレビの音。たまに遠くで雷の音。ちょっとこれから、外でも覗いてこよう。

【午後9時50分】

窓越しから見ると外に人が歩いている。この警報のさなかに、さすがアメリカ。竜巻見物でもしたいのだろうか?テレビは刻々と変化するトルネード警報区域を伝えている。徐々に遠ざかっているようだ。

【午後10時10分】

いきなりトルネード警報解除である。ほっとしたと同時に、人間欲深いもので、もちょっとすごいのを見てみたくなる。テレビはあと4時間ほど注意が必要であるらしい。お構いなしにアパートの住人は続々部屋に戻っている。小生も部屋に戻る。部屋は何も被害は無かった。

【午後10時30分】

Sean(大学の同じ研究室)から電話。

「おおきさん、大丈夫だったかい?心配だったので何度か電話したよ。」

「Sean、ありがとう。私の方は大丈夫だ。地下のラウンジに避難してた。」

この後、軽い雑談をして電話を切る。

Renzoから電話。

「ヒデ、何か用事?」(彼の電話はナンバーディスプレーである)

「トルネード警報が出たんだよ。それを知らせようと思って電話した。」

「ああ、知ってるよ。大学で実験してた。」

「大丈夫かい?」

「もちろん、大丈夫。問題はない。これから夕食だよ。ところで今度の週末なんだけど。。。」

再び酒飲みの日の話しをして電話を終わる。

結局、トルネードはこの町にはやって来なかったらしい。もっとも昼夜を選ばすタッチダウン(空中の渦巻きが地面まで到達すること。)するらしいので、恐ろしいものである。予定では、アメリカの新聞記事でも読んで、トルネードの事情でも書こうと思っていたが、まさか、自分がトルネード警報の真っ直中に遭遇できるとは思わなかった。貴重な体験をさせて頂いた。

最後にトルネードが発生した際の職場のマニュアルはこちら。

Tornado Preparedness