May 7, 1999

留学先のイリノイ大学アーバナ・シャンペイン校は,シカゴからプロペラ機で約1時間程離れたトウモロコシ畑の真っ直中,アバーナ・シャンペインという二つの町にまたがってある.新しい建物と歴史のある建物が,緑に囲まれたゆったりしたスペース中で並んでいる.

大学の回りがトウモロコシ畑と聞いていたが,それは間違いだった.何十キロも続く広大なトウモロコシ畑の中に町があった.映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の1シーンのようである.車で10数分もドライブすればすぐにトウモロコシ畑である.そしてそれから延々とどこまでもトウモロコシ畑が続く.いくらトウモロコシが好きな小生とはいえ,この風景は田舎育ちの私でも驚く.

留学を引き受けてくれたトーマス・フォワン先生はこのイリノイ大学のベックマン研究所で画像処理研究を行っている.中国生まれの台湾育ち,後にマサチューセッツ工科大学で博士号を取得した.フォワン先生を学生達はみんな「トム」と呼んでいる.年齢はどの学生に聞いても謎である.とにかく歩くのが速い.早足で階段を音もなく上り下りする.廊下も音もなく歩き回る.部屋が近いのでよく先生を見かけるが,小柄だががっちりした体格で部屋を音もなく出入りする姿はまるで忍者である.大学に居るときは分刻みでスケジュールをこなしているようだ.いろいろな部署に出かけていって,相談が終わるとささと戻ってくる.

今も廊下を通り過ぎた...

とても忙しい先生だ.学生が直下に20名ほど.全世界から集まった学生達である.

早口の秘書シャローンは私のためにゆっくり喋るのはストレスだと臆面もなく言う.年齢は50歳前後だと思うが,是非日本に連れて行っていじめてやりたい.先生を含めスタッフの話はまた改めてすることにする.

イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校は,工学部のランキングでは全米6位,コンピュータ関係では全米4位の大学である.ブラウザのNetscapeの開発,スーパーコンピュータ施設,工学部関係図書の蔵書数の多さでも有名な大学である.その他,音楽,美術学科も有名らしい.大学にはコンサートホールと6万人収容できるフットボールスタジアムもある.15万人の都市にこの規模の施設.さすがアメリカである.

大学の学士を取るのはそんなに難しくないらしいが,大学院になるとかなり難しいらしい.トム先生の学生は,すべて大学院の博士課程の学生である.学部にもよるが,トム先生の研究室では,学生達はみんな先生から給料をもらっている.月に$800程度.日本円にして10万円程度.これでは生活できないので,大学の教育のアシスタント(assistantship)をしたり,夏休みは企業に出かけて行き,そこで働いて(internship)生計を立てている.つまり,みんな学生しながら実は教育と研究で食べているのである.

学生達は,博士課程を修了してめでたく卒業である.トム先生の学生達はみんな大手の研究所,各国の有名大学へ就職して行く.ただいつ卒業するかその時期は最後まで分からない.謎である.誰に聞いてもきっとその頃には卒業できるだろうと答える.先生が「卒業して良い」と言うまでらしい.隣の席のシリニバスさんはカーネギーメロン大学で7年かかった.トム先生の学生達は平均で5年,近頃は短くなって4年で修了する学生もいるらしい.ここで耐えて研究成果を上げ,博士の学位を取得するれば素晴らしい未来が保証されている.学生達は本当に生き生きとしており,毎日遅くまで勉強・実験に打ち込んでいる.