日本診療情報管理機構会長就任の挨拶 

大阪府立病院 病歴室  大津 淑子(Yoshiko Ootsu )

  平成14年3月31日をもって田原孝先生が機構の会長を任期満了の区切りとして退任されました。その後任として思いがけず私が大役をひきうけることになり少々とまどっています。
 昨年12月22日の第10回研究会で先生は「シーザーのものはシーザーへ」という有名な言葉をのべられて、我々診療情報管理士を叱咤激励された事は記憶に新しく残っています。

  過去の足跡を振り返ってみますと、日本診療情報管理機構が先輩方の努力で誕生したのが1997年(平成9年)4月でした。設立目的は「診療情報管理士等が関与する3つの活動領域として_学術的側面 _実務的側面 _社会的側面をあげ、それぞれについて支援、牽引、相互連携を行う事により、診療情報管理士等の能力向上と医療、健康分野の質の向上、および患者家族を中心にした社会的要請に応える」というものでした。

 私も引き続き同じ目標でいきますがそのなかでも_の社会的側面に重点を置き、患者さん、家族を中心に満足と安心を与える情報はどのようなものか、それはどのようにすればよいかを検討課題にしたいと思います。

  上記の三つの目標は特別な事でなく、普通の事をいっていますが、今なお新しい課題と言って良いでしょう。とくに患者中心の診療情報管理については、情報開示がすすみ、個人が自分の情報をコントロールする権利、治療方法や医療機関を自らが選ぶために十分な情報の公開を要求するうねりが、医療の透明性と説明義務を促進させた事は自明の理といえるでしょう。その状況の中で我々が果たす役割はどのようなものかといえば、患者、あるいは家族と医療者の間にあって情報をコーディネイトすることです。と言えばかたぐるしく聞こえますが、簡単にいえば患者が知りたい情報、あるいは役に立つ情報を、わかりやすくして提供することであると考えています。しかしその情報がただ集められていればよいと言うものではありません。その情報がある一定のルールにしたがって収集され処理されていなければ、役に立たないばかりか、害になったりする現実はご承知のとうりです。

  最近の新聞の記事に「病院選びは症例数を目安に」と言う見出しがありました。これは厚生労働省が4月から二つの制度改革を行いますが1つは医療機関が新聞やチラシで広告できる項目に、手術件数と疾病ごとの受診者数などを加える事。もう1つは医療機関に支払われる診療報酬の算定に関係する110分類の手術について、それぞれ決められた件数を前年度に実施していないと、基本額の7割しか手術代が支払われない。という状況から出てきた記事でした。確かに受診者数、手術件数は医療の質をあらわす要素のひとつにはなるでしょうが、それだけでは不十分で、最低でも転帰、在院日数、治療費がなければ病院を選ぶ基準にはなりえません。しかし症例数と治癒率がどのていど相関するのか、あるいは在院日数と他のどのような条件とを検討すれば医療の質をあらわす情報になるか、などを自分の病院で検証するのも診療情報管理士として大切な仕事ですが、更にいろいろな状況のもとでデータをみて、これはおかしい、とか なぜ?など何かを感じとる感性とその感覚を生かして検証していく態度と能力がこれからの我々に求められる資質だとおもいます。なぜなら、それは他人の痛みや喜びを自分のものとして共有し判断できる感性が情報を偏らない普遍的な方向に導く大きな要素と考えるからです。

◎教育の問題について

  診療情報管理についての教育はこれからの医療を考える時にとても重大な問題です。機構としては、日本診療録管理学会や日本診療録管理士協会あるいは地域の研究会などと協力、交流して生涯教育を行い、実力アップをめざしたいと思います。幸い今年の第28回日本診療録管理学会では演題発表終了後に、診療情報管理士による卒後教育についての検討会が企画されています。ここでは従来の垣根をこえて検討し、将来のあるべき姿を描きたいと思います。又酒井理事長を中心にして国際間の交流もめざしたいものです。

◎活動方針と運営について

  機構は全国組織ですから南は沖縄から北は北海道まで会員はいますが、会員数のバラツキが大きいのが現状です。地区ごとの会員数をふやして、研究会を開催する事が会の活性化につながります。その為の努力をする事、理事は各地区から選ぶようにしたい。

  機構の特徴のひとつに会員の職業が多様であることがあげられますが、それは層の厚さを現します。異なる職種のメンバーからうける刺激は新鮮で、強力ですし、楽しいです。これはアクティビテイを高めるためにも大切なことなので、今後とも色々な方々と真剣に楽しく活動して参りたいと思います。

  なれない会長ですので皆様のサポートを期待しています。よろしくお願い致します。