| ====================================== 気ままな雑文の雑誌 ◆Into the Blue◆ http://www.coara.or.jp/~miyashu/index2.htm vol.4 2000.4.01 ====================================== エイプリール・フールです。「四月ばか」ということばの方が、親しみがもてるよう な気がします。「ほら話」というのがあります。ウソと分かっていてもつい聴き入っ てしまうような楽しいおおぼら、そういう話しを特集するのもいいかなと、今思いつ きました。来年もこのメルマガが続いているならば、4月1日号は「ほら話」特集で いきましょう。1年間ネタをあたためておいてください。 さて、今回は初の特集です。アイルランド在住の中園隆志さんの旅行記の一挙書き下 ろし大特集です。村上春樹の近著「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」と あわせて読まれるとおもしろさ倍増です。 それでは、はりきってまいりましょう!! ■■■■■■■■■■■■■■■■おしながき■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●特集● アランアイランド旅行顛末記 (上) 中園 隆志 ●お知らせ● 次号予告と編集後記 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■特集■ アランアイランド旅行顛末記 (上) 中園 隆志 アイルランドは、北海道よりやや小さい島…というのは前回お知らせした通り。おい らの住む首都ダブリンは、島の中央部の東岸に位置する。で、今回思い立って、アイ ルランドを横断して西岸にあるゴールウェイと、さらにその先のアランアイランド、 というところに行ってきた。 そもそも3日間の有給をとったおいらは、車を借りて、のんびりドライブをしながら 北アイルランドのベルファストかデリーにでも行きたかったのだが、ご同伴のスウェ ーデン人のアナが、「あたし、タカの運転信用できない!」と高らかに宣言をし、見 事に企画倒れになってしまったのだ。実は以前、南部のケリーというところに一緒に 行ったのだが、この時に後部座席でもシートベルトの着用が義務づけられ、戦車に踏 まれても大丈夫なボルボに乗る(誇大な表現)という安全第一なスウェーデン人の国民 性からか、アイルランドではきわめて普通のおいらの運転がお気に召されなかったら しい。言わせてもらえば、おいらは彼女のぺーでパーな運転にうんざりしていたから お互い様ともいえる。 現実問題として、アイルランドはイナカだから、公共交通のみで旅行をするというこ とはかなり難しいことなのだ。で、車なしでも困らんところといえば、小さな島、つ まりは、アランアイランドという、いわば消極的選択による行き先選択により、アラ ンアイランド行きが決まった。 特に冬場に西海岸に行くというのは無謀に近い。ちょっと中学校の時の地理の授業を 思い出してほしい。アイルランドが樺太よりもさらに北にあるにもかかわらず、冬雪 も降らず割に温暖なのは、大西洋を北上してくる暖流のメキシコ湾流のおかげ。で、 あったかいのはいいんだけど、同時に四季を通して雨が多い。とりわけ冬の天気は概 してよろしくない。 この地方の日照時間はアイルランド内でも特に少ない。聞いたところによれば、精神 的に変調を来たしている人の率が、この地方はとりわけ高いんだそうな。太陽と人間 の因果関係は意外と深いらしい。例えばスウェーデンの北部、白夜の見れるあたりで も、やはり、同じ理由からそのテの人の率が高いらしい。スウェーデン人イコール白 肌金髪美人、ムフフ…などと小沢昭一的なスケベ心で考えるのもいいけど、こういう 事実も裏にあるのですぞ。 話は戻る。こうして決まったアランアイランド行き、おいらたちはとある2月の日曜 日の午前11時、ダブリンのセントラルバスステーションから一路ゴールウェイへ。 その距離200キロちょっと。所用時間は3時間半。途中の村や町に立ち寄りながら この時間だからかなり早いと思う。ところが、概してアイルランドの道路事情はよろ しくない。ほんの一昔前まで、西ヨーロッパ一貧乏だったこの国には、まず高速道路 がほとんどない。とはいえ、国土全体が緑の丘の国だから、バスも含めて車は、老齢 期の丘のアップダウンを100キロ近いスピードで駆け抜ける。舗装は大根が数秒で おろせそうな荒い路面だから、よく揺れる。 で、2時半にゴールウェイの中心、エイアスクエアに着いたおいらたち。迎えてくれ たのは当然、雨。やむなく、最寄りのパブまで緊急避難。そう、アイルランドを語る からにはまずパブを説明せねばどうにもならん。パブ、正確には"Public House" と 呼ばれるこいつ、どんなに小さくても集落がある限りそこには必ず存在する。当然酒 を出すんだけど、酒のみならず、食べ物を出すところも少なくない。パブのめしは、 最近出てきたダブリン市内の軟弱おしゃれパブを除いて、無骨だけどボリュームのあ る物が出てくる。味は…追及しないこと。そのうち書くから。 たいがいの地元のパブに入っていくと、まずカウンターに飲んだくれのおやじどもが 数人、ギネスをちびちび飲んでいる。カウンターの中には、最低10多けれはその数 倍の種類のビールのタップがずらりと並ぶ。そしてその後ろには、ウィスキーにウオ ッカにラムにと、途方もない数の酒瓶が並ぶ。例えば、ビールを頼むと1パイント (568mlだから、日本の中瓶と大瓶の間)のグラスに、なみなみビールが注がれて2.5 ポンド前後。(1ポンド=140円として、350円くらいか)これをテーブルに置 いてちびちび飲むのが正しい由緒あるアイルランドのパブでのお酒の飲み方。間違っ ても、一気飲みなどはしない。 で、おいらたちが入ったのは、ゴールウェイの目抜き通りにあるパブ。おいらは、ハ ムとイモと茹でた野菜という、「典型的アイルランド料理」をいただく。5.5ポン ド(800円)デ*ーズや、ジョナ*ンで、チンした食事が1000円以上するのに 比べてはるかにマシと思う。ただし、アナは典型的なアイルランドの重い食事に嫌気 がさしていたように見えた。 で、巨大な昼食とビールを平らげ、スーパーで買い出しの後、おいらたちは再びバス に乗り35キロ程西のドーリンという港町へ。ようやく雨も上がった港には、おいらた ちの目的地、インシュモア島からフェリーと呼ぶにはあまりに小さな船がやって来て 多くのバックパックを背負った旅行者たちが降り立った。それに引き換え折り返しで 島に行く人の数の少ないこと!地元の人と思える人数人と、アメリカ人、フランス人 イタリア人、日本人旅行者のバイブル「地球の歩き方」を熟読中の日本人の旅行者数 名のみ。 さすがは小船。よく揺れた。そんな悪条件の中、アナが図書館から借りてきた"Lonely Planet '97年版"を苦労して読む。以下は、その記述と、おいらが実際に見てきた最 新情報を重ねあわせたものです。アランアイランドは、3つの島からなり、その中心 となるのが、おいらたちが今向かっているインシュモア島。 インシュモア島は、東西に長く東西方向に10数キロ、南北方向には、4キロほどし かない。島の南側は、何を血迷ってか100メートル以上の断崖絶壁。つまり島自体 が、南側を上に傾いた船の甲板のような感じなのだ。で、島には厳しい自然のため、 木が1本も生えていない。続くのは、広漠とした石畳と、土地を区切る「ヘッジ」と 呼ばれる、腰の高さくらいまで積み上げられた石壁のみ。人口は、800人。13の 村に別れて住むが、港がある村を除けば、あとは家が何軒かあるだけ。 40分の「航海」の後、おいらたちは、いよいよ、インシュモア島に上陸。おいらた ちの泊まるユースホステルはかなり村外れにあるので、さあどうしようかと思いきや 埠頭には、15人乗りのミニバスが待っており、「1ポンドで、ホテルまで乗っけて あげるよ」と、ほとんど理解不能なほどの崩れた英語で、40過ぎの運転手ノエル氏 がおっしゃる。んじゃと乗り込む。村人は慣れたもので、本土から買って来た荷物を 車に乗せてゆく。 時刻は、ほぼ6時。日もとっぷり暮れる頃。ミニバスは、離合できるかちょっと不安 になるような島の「メインストリート」を走りはじめる。聞けば、島にある車は60 台ちょっとなんだそな。それじゃこの道の狭さで十分だな、と一人で納得。ミニバス は村外れのB&B(ベッドアンドブレックファースト、早い話が民宿です)にフラン ス人一行4名様を降ろした後、再び埠頭の側を通って村の反対側へ。 ふと見れば、先程の船の中で、「地球の歩き方」を熱心に読んでた、一昔前にはやっ たキムタクできそこない長髪にーちゃんが重そな荷物を引っ張りながら明らかに道に 迷っている。果たして止まった運転手のノエル氏、くだんの理解不能英語で、彼に対 してどこへ行くのかと尋ねる。ニセキムタクは一瞬何を言われているかわからずきょ とん。運転手のノエル氏「この道じゃない!そこ左に曲がって、それから…」と説明 する。彼はわかったと礼を言い、バスは走り去った。おいらがすれ違いざまに見た彼 の顔は、「何言ってんだこのおやじ!」と完全困惑顔。 そうなのだ。おいらもそうだったのだけど、日本人旅行者は、恥ずかしいと思うのか わかってなくても「イエス」と言うのだ。わかってない時は素直にわからないと言わ ないと、あとでひどい目にあうこともありますぜ。実際、そこにつけ込もうとするや つだっているんだから。 偉そうなことを言うのはこの辺までにして、おいらたちは、ユースホステルらしき建 物の前で降ろされる。運転手のノエル氏、「裏口から入らないとだめだよーーー」と 言い残し、バスは暮れかかった夕闇へと消えて行った。 裏口に行ってみると、そこはキッチン。無人。建物は、静寂以外の何者でもなく、そ のままってもの中へ、ふっと、頭の中に井上陽水の「リバーサイドホテル」が浮かぶ。 「日暮れにバスはタイヤをすりへらし…」あ、もしかしたら、チェックインは寝顔を 見せればいいのかな?ばかなことを考えていると、ぬうーっと背後に表れたのは、カ リブ系の黒人。これにはさすがのおいらも驚いた。どこのばかが世界の果てのアイル ランドのそのまた果てのアランアイランドの場末の人気のないユースホステルで黒人 のにーちゃんが背後から現われると思うもんか! 何とこのにーちゃんこの場末のホステルを一人で仕切ってる模様。このにーちゃん妙 に無愛想に機械的にことを済ませて、おいらたちは2階の部屋へ。この頃から気がつ きはじめたのだが、この島はその主たる産業観光業のおかげで、村人たちが昔持って いた素朴さを失ってしまったようなのだ。アイルランドのいなか、とりわけ観光客が 絶無の北アイルランドの方へ行くと、人々が素朴で親切なのだ。ところが、観光客が どっと押し寄せるようになった地方では、そういう素朴な人たちに会うことが、年々 再々難しくなっているように感じる。そして、アランアイランドまでもがそうなって いるというのは、ちょっと淋しい事実だと思った。そして、そういうふうにしてしま ったのは、おいらたち観光客なのだ。彼の無愛想さの奥に何か大きな物悲しさを感じ た。 で、そんな無愛想にーちゃんを背に、部屋へ行って見れば、……寒い……いや、そん な甘いもんじゃない。凍えんばかり。午後6時過ぎにして、おいらたちは途方に暮れ る…やることがない。ユースホステル自体、堀江謙一太平洋一人ぼっち状態。近所に は、パブ、商店はおろか民家すらない!(正確には一軒あったけど、突然「こんばん は」と訪ねて行っても歓迎されるとは思わない)ラウンジに降りても誰もいないしや ることがない。(あとで、もう一組泊まっていることに気がついたが…。)おいらは 思い遅い昼食をとっていたことを心から感謝する。かくて、出かけることもできぬま ま、二人は、厳寒のホステルの部屋で、9時を待たずにふて寝する。 (6号につづく・・・) ■中園 隆志(なかぞの・たかし) mail takasanbaby@hotmail.com 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■次号予告■ 次号は、普通号でお届けします。 音楽ファン、映画ファン必見の、テーマ連作です。キーワードは、「ラフマニノフ」 どうぞお楽しみに。 ラーメン話、サッカースタジアム客席ウオッチングなどおもしろ話満載です。 4月10日配信予定です。 ■編集後記■ 特集を組んでみました。一挙書き下ろしというのはなかなか読み応えがあってよいで すね。こういう企画もしますので、長編なんだけどというかたもお気軽に投稿くださ い。 ●御感想・投稿は メール miyashu@art.coara.or.jp 掲示板 http://www65.tcup.com/6504/miyashu.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 編集発行人:宮永 修治(みやなが・しゅうじ) ■Into the Blue■ http://www.coara.or.jp/~miyashu/index2.htm ■風に吹かれて■ http://www.coara.or.jp/~miyashu/ ■本箱の片隅で■ http://www.amy.hi-ho.ne.jp/s-miyanaga/ see you next! ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |