2010/04/22更新


『ここからはじめるチェス』
渡辺暁

皆さま
このたびはじめて、チェスの本を出すことになりました。ナツメ社さんというところから出る『ここからはじめるチェス』という本です。(A5版192頁、ISBN:978-4-8163-4865-5、税込1,260円、)

自分でいうのも何ですが、なかなかよい本になったと思います。ポジショナル・プレイやエンディングの重要性についてもかなり書いたので、そのあたりからチェスの独特の面白さというのが伝わってくれるといいかな、と思います。もちろん入門書という制約や、図面を多用するという独自のフォーマットもあるので、その分伝えきれなかったことはありますが、手順よりも図面を使って見せる、という手法としては、それなりに成功していると思います。


白の最後の手は1.Rc2です。c1にいたルックを一つだけ上がりました。
この手の意図は何か、白の狙いとともに説明してください。 白番です。すでに優勢ですが、さらに駒得をねらってください。
白番です。すでに優勢ですが、さらに駒得をねらってください。 白の最後の手は1.Rc2です。c1にいたルックを一つだけ上がりました。 この手の意図は何か、白の狙いとともに説明してください。

練習問題もかなりたくさん入れました。左のような簡単なものから、 右のようなかなり論理的思考力を要するものまで、いろいろと考えて いただけるものをそろえたので、ご一考いただければと思います。 なお、解答については申し訳ありませんが本書をご覧下さい。

問題は、間違いがかなり多いことです。図面の中で矢印(駒の動きや利きを表すものなど計6種類)を多用したこともあって(チェスベースから直接出力するのなら簡単なのですが)、これまで以上にミスが起きやすいという事情はあるにせよ、申し訳なく思っております。今後ナツメ社さんのホームページやこちらのページ、あるいはその他の場をお借りして修正に努めていきたいと思います。単純なミスも多いのですが、私自身が今になって「ここはこうしておいた方がよかったかな?」というところもあって、もし再版がかかれば直せないかな、と思っているところです。

それでも図面で駒が落ちている致命的ミスは、とりあえず私が発見したところでは一箇所だけ(ツーナイツ・ディフェンスのマックスランゲの変化[1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.0-0 Bc5]で、なぜかd7のポーンがない[!])というものなので、おしかりを覚悟で申し上げれば、まあよくそこまで直したかな、という気がしなくもありません。今後さらに皆さんにご指摘を頂いて、直していければ、と考えております。



ちなみにこちらが正しい図面です。緑のd7のマスの
ポーンが消えていました。申し訳ありません...



また、文章では細かいミスも多々ありますが、一ヶ所意味の通じにくいところが生じてしまいました。第6章を実戦編として、私のゲーム2局のダイジェスト(1994年オリンピアードでの対Carless(香港)戦、1996年ジャパンオープンでの対権田戦を載せたのですが、そちらのセクションのタイトルと紹介文が、わかりにくいものになってしまいました。このページをご覧になって下さるトーナメント事情にお詳しい皆さまには、おそらくああこういうことをいいたいのだろうな、とご理解いただけると思いますが、いずれにせよそちらの文章についても追ってナツメ社ホームページに訂正が出ると思いますので、よろしくお願いいたします。

なお、これらの実戦編でとりあげたゲームについては、編集段階ではPGNで提供するというのを本文中に明記していただく、という口約束をしていて、それを前提に紙面作りをした(棋譜はあえて載せない、など)のですが、最終的にはそちらの文言をカットすることになったので、それだけでは少々わかりにくいものになってしまっています。その点についてももし再版がかかれば修正をしたいと思っているのですが、当初の予定通りPGNファイル(とそれをPDFに変換したもの)をこちらにアップしますので、あわせてご利用下さい。なお、もちろん私のゲームばかり使っているわけではなくて、メインのゲームはTal-Hjartarson, Reykjavik 1997です。このページを隅から隅までご覧になっている方にはもうおなじみかとは思いますが(「ルイロペスの歴史」で扱った4局のうちの一局です)、ちょうどチェスをはじめた頃に見て感動した愛着のあるゲームなので、あらためてご覧になっていただければ、と思います。

PGNファイル
PDFファイル

実はこの2局以外にも、多くの局面は私の実戦からとりました。勝手に(しかも自分が負けた試合を)使って、とお怒りの方もいらっしゃるかもしれませんが(?)、私自身の負けもたくさん載っていますし、ご容赦いただければ、と思います。謝辞のところに「本書に掲載したゲームの対局者の皆様」と入れさせて頂きましたが、この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

ついでにちょっと宣伝させていただきますと、以前関わった翻訳もちょうど3月に出版されました。重なるときは重なるものだな、ふと思ってしまいました。ちなみにそちらは、マルカム・ラウリー著『火山の下』(斎藤兆史監訳、白水社)という本です。プロジェクトの中心となられた英語の斎藤先生とももとはチェスを通じてのおつきあいで、そのおかげでこんな仕事もさせていただいたこと、不思議なご縁だな、と思っております。内容は、著者の分身とも言えるメキシコに住むアル中のイギリス人のところに、別れた奥さんが帰ってきてお互い歩み寄ってよりを戻そうとするんだけど....という話で、分厚いし安くはないしあまり明るく楽しい話でもないので、あまり積極的にお勧めはしないのですが、文学好きの方には必読・必携の書だと思います。私もいざ出版されたのを機にあらためて通して読んでみてやはりすごい本だと思ったし、ヨイショするわけではありませんが斎藤さんの翻訳はすばらしい訳だと思います。

最後に一言。もしまた本を出せるとしたら、次は是非このOpen your eyesに書いてきたことを本にしたいと思います。今自分で読んでも読み応えのあるものだと思うし(正直今の自分にはかけないでしょうね)、一部に関してはもう大分内容的に古くなってしまっていますが、そうしたところについても使える部分を何らかの形で絞り出していって、さらには全体を貫くストーリーが描ければ、と思っています。もうすでにこういう風にしたらうまくいくのでは、という漠然としたアイディアはあるのですが、もう少し詰めていったときに実際うまくいくかどうか、そして出してくれるところが見つかるかどうか、ですね。

ご指摘、ご批判等々色々あると思いますし、完璧な本でないのは著者自身が重々承知しておりますが、まずは手にとってご覧になっていただければ、と思います。今後このページなどを活用して、何らかの形で読者の皆さまとの意見交換を進めていければ、と思いますので、よろしくお願いいたします。