■1991年度以降の男子の年度別記録の変遷をまとめたものが上のグラフである。

1990年台初頭、男子の記録は低迷し91~
93年は10分以内の記録が10人程度しか記録されない年が続く。

1994年は年明けから胎動を予感させた。まず2月の東京国際でS・モネゲッティーが2:08:55で優勝する。続く3月の慶州(韓国)では優勝したM・マティアス(ポルトガル)を初めとして4人が10分を切る。そして4月17日を迎えた。この日ロッテルダムでは、2月の東京で2位であったV・ルソー(ベルギー)が2:07:51で優勝した。この記録は1988年以来6年ぶりに8分を切る好記録であった。同じ日ロンドンではD・セロン(2:08:53)を筆頭に5人が10分を切る快走を見せた。圧巻だったのは翌日のボストン。西風の吹く好条件下とはいえ、優勝したC・ンデティ(2:07:15)以下11人が10分以内でゴールしたのである。この勢いは秋のベルリン、福岡へも引き続がれ結局この年サブテン記録は28回を数え、単年度ではこれまで最高だった1983年の21人を抜いた。94年をもって現在の高速マラソン時代が始まったといってよかろう(それも突然)。ちなみにこれまで7年連続サブテンを続けているA・ピント(ポルトガル)の記録はこの年のベルリン優勝(2:08:31)から始まっている。

1995年は前年度の反動からかサブテン記録は17回。この年台頭してきたのは

M・フィス(スペイン)ロッテルダム優勝(2:08:57)
D・カストロ (ポルトガル)パリ優勝(2:10:06)
J・カグウェ (ケニヤ)ピッツバーク優勝(2:10:24 )

1996年はオリンピックイヤーでありサブテンは22回とやや落ち着くが、明らかに高速化は定着してきた。この年台頭してきた選手は

A・アントン(スペイン) ベルリン優勝(2:09:15)
A・エルムーアジズ(モロッコ)マラケッシュ優勝(2:09:50)
F・ロンセロ(スペイン) カルピ優勝(2:09:43 )
G・レオーネ (イタリア)ニューヨーク優勝(2:09:54 )
V・リマ(ブラジル)東京優勝(2:08:38 )
J・チュグワネ(南アフリカ)アトランタオリンピック優勝

1997年はマラソン界のビッグバンの年である。年頭はおとなしい始まりだった。2月の東京国際は清水、服部が1〜2位を占めたが優勝記録は2:10:09と平凡なものであった。しかし続く3月の琵琶湖でビッグバンの予兆が現れる。それまで伝統はあるものの記録には恵まれなかった琵琶湖マラソンでM・フィスの2:08:05優勝を初めとして一挙に4人のサブテンが生まれたのである。さて、4月ついにビッグバン爆発。ロンドンではピント(2:07:55)以下9人、ロッテルダムではカストロ(2:07:51)以下9人、秋のベルリンではE・ラガト(2:07:41 ) 以下9人と大量のサブテンランナーが輩出し、しかも優勝記録は大会ごとに更新していく。圧巻は10月のシカゴで8人のサブテンが生まれたが、優勝はK・ハヌーシで2:07:10、マラソンデビューを華々しくかざる。ニューヨークも好記録であり、年度末を飾る福岡国際もチュグワネが2:07:28のコースレコード(当時)で優勝。この年サブテンは55回と一挙に2倍に増加するのである。ケニヤ勢が20回と急速に台頭してきたことは特筆すべきであろう。
日本人はこの年4人(真内、大家、早田、佐保)がサブテンを記録し漸く長い低迷期を脱する。

この他目立った選手としては

J・チェベト(ケニヤ)トリノ優勝(2:08:23)
・コリル(ケニヤ)アムステルダム優勝(2:08:24)

1998年は別大で清水 昭(2:09:11)3月には琵琶湖で小島宗幸(2:08:43)がそれぞれ優勝し、日本がさい先よいスタートを切った。主要マラソンでは高速マラソンの傾向は定着し、東京4人、ロッテルダム5人、ボストン、ロンドン6人、シカゴ7人、福岡5人のサブテンが生まれている。
1998年特筆すべきことは9月のベルリンでブラジルのダコスタにより10年ぶりのマラソン世界最高記録(2:06:05)が生まれたこと、その20日後にシカゴでオンドロ・オソロが2:06:54で初マラソン世界最高記録を出すなど、ここ数年来の高速化により従来考えられなかった記録が頻発するようになったことであろう。この年のサブテンは58回記録されたが 、8分以内の記録もまた12回とレベルアップは著しい。

また上記大会以外にアムステルダム、ローマ、パリ、ウイーン、プラハでも複数のサブテンが生まれるようになりマラソンの裾野は一挙に拡大している。
日本人はこの年7人(清水昭、清水庚、小島宗、小島忠、佐藤、佐保、五十嵐)が8回サブテンを記録し順調に回復してきている。

1999年は20世紀のマラソンがひとつの頂点を極めた年である。64回のサブテンが生まれた。2月の東京ではG・タイスがコースレコード(2:06:33)で優勝し、4月にはパリ、ロンドン、ロッテルダム、ボストンで合計21回のサブテンが一挙に生まれている。とりわけパリで6回記録されたのは驚異的。更に9月26日ベルリンから10月24日シカゴまで一ヶ月で20回のサブテンが記録されたが、ベルリンでは優勝したJ・キプロノ(2:06:44)に続き犬伏孝行が 12年ぶりの待望の日本最高記録(2:06:57)を出した。10月17日にはアムステルダムで優勝したF・キプロプ(2:06:47 )以下4位までが6分台を記録する((6:49 、6:50、6:57)という快挙が生まれると、その1週間後24日のシカゴではK・ハヌーシが満を持していたかのように人類初の2時間5分台に突入。この一ヶ月だけで7分を切る記録が7回も生まれるという類を見ない「黄金の一月」であった。ニューヨーク、福岡も盛況であり福岡では無名の新人G・アベラ(エチオピア)が2:07:54で優勝した。
日本人はこの年6人(犬伏、三木、小島宗、清水庚、森下、渡邊)が7回サブテンを記録した。犬伏の快挙と小島宗幸4回目のサブテンは特筆すべきであるが、主要大会での優勝にはなかなか結びつかない。

2000年は過去3年間のすさまじい進歩を受けたオリンピックイヤーであった。59回のサブテンが生まれている。前年度の迫力がすさまじかっただけに、若干記録が落ちるものの、しかしほぼ同様の記録レベルを維持できていることは素晴らしいことである。またメイジャー大会以外の充実は注目に値する。ローマで4回、トリノ3回、パリ4回のサブテンが記録されているがこれらは96年以前のメイジャー大会レベルに充分匹敵する。また年末の福岡で藤田敦史が2:06:51という非常にレベルの高い日本最高記録で優勝したことは特筆に値する。
さてシドニーオリンピックであるがサブテン・ランナーが30人ほど参加するというかつてないハイレベルなレースであった。しかしながら、高低差の激しい難コース、高い気温に加えて予想外の強風に見舞われ、多くの有望とされたランナーが次々と脱落していく。非常に苦しいサバイバルレースを制したのはエチオピアの若干22歳G・アベラ(エチオピア)であった。
日本人はこの年7人(犬伏、三木、川嶋、五十嵐、武井、佐藤、藤田)が7回サブテンを記録した。オリンピックでは(ほとんどの海外有力選手とともに)惨敗を喫した。サブテンランナーがこの3年間で全く増えていないのは残念なことである。せめてこの2倍14〜5人のサブテンランナーに増えると、国内レースでの競争も熾烈になるものと思われるのだが....あるいは常時6〜7分台を出せるランナーはその中から生まれてくることだろう。

97〜2000年の4年間の男子の記録向上は素晴らしいものがある。しかしながら上のグラフを見ればわかるように、99年を頂点として飽和状態にあるともいえる。このレベルにまだまだ日本男子陣は追いついているとは言い難い。とはいえ世界のレベルアップが始まってから日本が胎動しはじめるのに約3年かかっている(94年→97年)。これから1〜2年で日本男子陣が質・量ともに世界のレベルに追いつくことはおおいにあり得ることである。
世界のレベルは果たして21世紀はいかにあいなりますやら......また日本男子のレベルアップを大いに期待したいものである。


主要男子マラソン過去4年間の優勝タイムの変遷   印は今年記録が伸びたレース印はコースレコード

 
2000年
優勝者
1999年
優勝者
1998年
優勝者
1997年
優勝者
ロンドン
2:06:36
A・ピント
2:07:57
AE・エルムーアジズ
2:07:57
A・アントン
2:07:55
A・ピント
福 岡
2:06:51
藤田 敦史
2:07:54
G・アベラ
2:08:42
J・カビガ
2:07:28
J・チュグワネ
シカゴ
2:07:01
K・ハヌーシ
2:05:42
K・ハヌーシ
2:06:54
O・オソロ
2:07:10
K・ハヌーシ
東 京
2:07:15
J・コスゲイ
2:06:33
G・タイス
2:08:01
A・フズダド
2:10:09
清水 康司
ベルリン
2:07:42
S・ビオット
2:06:44
J・キプロノ
2:06:05
R・ダコスタ
2:07:41
E・ラガト
琵琶湖
2:08:14
M・フィス
2:08:50
M・フィス
2:08:43
小島 宗幸
2:08:05
M・フィス
ロッテルダム
2:08:22
K・チェルイヨット
2:07:09
J・コスゲイ
2:07:26
F・ロンセロ
2:07:51
D・カストロ
トリノ
2:08:33
S・アレマエフ
2:08:27
S・コリル
2:09:59
J・コスゲイ
2:08:23
J・チェベト
パ リ
2:08:49
M・ウアディ
2:08:10
J・ルト
2:09:36
J・カビガ
2:10:14
J・ケンボイ
アムステルダム
2:08:57
FJ・コルテス
2:06:47
F・キプロプ
-
-
2:08:24
S・コリル
ボストン
2:09:47
E・ラガト
2:09:52
J・チェベト
2:07:34
M・タヌイ
-
-
ニューヨーク
2:10:09
AE・エルムーアジズ
2:09:14
J・チェベト
2:08:45
J・カグウェ
2:08:12
J・カグウェ
別 大
2:10:44
榎木 和貴
2:09:54
E・モレノ
2:09:11
清水 昭
-
-