速いといわれている選手が出場していないため、女子マラソンほどの華やかさは一見ないようにみえるが、どうしてどうしてシドニー男子マラソンは、いわゆる「強い」選手が目白押しで目が離せないのである。 マラソンが好きなファンならこれ以上のメンツはないのではないかと思わせる「好取組」である。もしハヌーシやダコスタ、タヌイが出ていても実際のところ余り目立たないのではないか.... それくらい選手層は厚いのである。

もちろんシドニーで走りを見たかった選手は他にもいる。ケニヤのコスゲイ、
チェベト、キプロノ、あるいはカグウェ。特にニューヨークで連勝していたカグウェはこのシドニー向きの選手であると思っていただけに残念であった。更には南アのゲルト・タイスも選考を逃し残念のひとこと。

いろいろなタイプの選手がいる。いくつかのカテゴリーにわけてリストアップしてみよう。このコーナーはまさに「独断と偏見」にみちみちている。いろいろなご意見はあるかと思いますが、ご容赦のほどを........

「強い選手」:実績があり、優勝あるいは優勝に必ずからむレースをしてきたランナー

ピント

現在、実力ナンバーワンである。安定している(7年連続サブ10、事実上サブ9に相当する記録を残している)。ほとんどのレースで3位以内。10000m、ハーフのスピードもぬきんでている。加えてこの1〜2年記録はますます充実してきている。ピントを中心にレースが展開すると、ピントの思うつぼになりそうである。
2:06:36  1  London 2000.4.16
2:07:55  1  London 1997.4.13
2:08:13  3  London 1998.4.26
2:08:31  1  Berlin 1994.9.25
2:08:38  2  Tokyo 1996.2.12
2:08:48  3  London 1995.4.2
2:08:57  3  Berlin 1995.9.24
2:09:00  2  London 1999.4.18
2:10:02  1  London 1992.4.12

イ・ボンジュ

スピードに加え、粘りは天下一品である。間違いなく現在を代表するマラソンランナーの一人であるが、優勝経験が実はあまりない。レースを支配すること、主導権を握るレースは苦手ではないのだろうか?必ず上位に入ってくるレースを心がけるであろうが、今度のシドニーでは戦略が問われるところであろう。前半押さえて自分のペースが守れ、なおかつトップと差がつかず後半を迎えられたら面白いとみる。
2:07:20  2  Tokyo 2000.2.13
2:07:44  2  Rotterdam 1998.4.19
2:08:26  2  Gyeongju 1996.3.24
2:09:57  11  Boston 1994.4.18
2:10:27  1  Kwangju 1993.10.16

フィス

強いランナーの一人であり、優勝経験も豊富である。しかしその多くが琵琶湖マラソンであり、実力以上に評価されていると私は思います。シドニーではフィスの真の強さを評価されるレースになる。
2:08:05  1  Otsu 1997.3.2
2:08:14  1  Otsu 2000.3.5
2:08:25  1  Gyeongju 1996.3.24
2:08:50  1  Otsu 1999.3.7
2:08:57  1  Rotterdam 1995.4.23
2:09:33  2  Otsu 1998.3.1
2:10:21  12  Boston 1994.4.18

アントン

確かに強い選手である。しかし私にはアントンはセビリアがピークだったと思われてならない。自国スペインでの優勝のあと今年の韓国では5位に甘んじている。
2:07:57  1  London 1998.4.26
2:09:15  1  Berlin 1996.9.29
2:09:41  3  London 1999.4.18
2:10:27  4  Fukuoka 1997.12.7

エルムーアジズ

実際のレースをみたことがないがモロッコ・マラケッシュでのレースぶりは以前から気になっていた。97年々以降ニューヨークやロンドンで華々しい活躍を見せているが、エルムーアジズはニューヨークの坂を苦手としているのではないか?。シドニーはエルムーアジズ向きではないのではないかと考えるのだが.....
2:07:33  2  London 2000.4.16
2:07:57  1  London 1999.4.18
2:08:07  2  London 1998.4.26
2:08:15  1  Marrakech 1999.1.31
2:09:50  1  Marrakech 1996.1.14
2:09:50  1  Marrakech 1997.1.5
2:10:04  4  New York 1997.11.2
2:10:28  7  New York 1999.11.7

オリンピックで強いのは最近急速に充実しているランナーであるが、その中では.........

アベラ

2:07:54  1  Fukuoka 1999.12.5
2:09:47  2  Boston 2000.4.17

ウアディ

2:07:55  2  Fukuoka 1999.12.5
2:08:49  1  Paris 2000.4.9
2:09:17  6  Paris 1999.4.4
2:09:54  1  Reims 1998.10.11

この二人のランナーには注目したい。要注意だと私は思う。

マラソン経験はほとんどないが可能性の非常に高い選手として............

ラマーラ

ハーフの実力は群を抜いている。ようやくマラソンに間に合ったが、丁度今回の シドニーに符丁を会わせるように登場してきているのが不気味。

2:09:43  5  London 2000.4.16

チェルイヨット

イタリアの師匠ローザ博士によると「練習が十分でない」とのことであるのが気に なる。選考のごたごたはケニヤ選手に決して良い影響を与えていない(と、思 う)。

2:08:22  1  Rotterdam 2000.4.16

全盛期は過ぎていると思われるが、どうしても気になるランナー

カストロ

97年のロッテルダムで7分51秒で優勝したのがピークであると思っていたが、 昨年ニューヨークでの2位の走りっぷりは見事であった。これは侮れないと思った 次第。なにせニューヨークである。

2:07:51  1  Rotterdam 1997.4.20
2:09:20  2  New York 1999.11.7
2:10:06  1  Paris 1995.4.2
2:10:23  6  New York 1997.11.2
2:10:24  8  London 1999.4.18

モネゲッティ

なんといっても地元である。レース展開如何によっては銅メダルくらいはとるかも知れない。マラソン14年目でいまだ10:00を出せる(2000年東京)実力は見事で ある。88年ソウル5位、92年バルセロナは48位だったが、96年アトランタは7位そ して97年世界選手権で銅メダルと実に息が長い。オーストラリア初のメダルが意 外にあるも知れない。

2:08:16  1  Berlin 1990.9.30
2:08:33  2  London 1995.4.2
2:08:45  6  London 1997.4.13
2:08:55  1  Tokyo 1994.2.13
2:09:06  2  London 1989.4.23
2:10:00  7  Tokyo 2000.2.13

全盛期は過ぎていると思われるが、ちょと気になるランナー

エスピノーザ(MEX 1963.2.4)Andres Espinosa

91年に10分台で走っているからモネゲッティ並の息の長さ。7分19秒を出したの が94年だものね。世界の高速化が始まった1994年のあのボストンのレースの2位 です。今年のメキシコでは2位2:11:24秒.......あれっ。メキシコで11分?(海抜 何メーターの記録なんだろう?)68年のメキシコオリンピックの記録と比較する と隔世の感がする。

2:07:19  2  Boston 1994.4.18
2:10:00  2  New York 1991.11.3
2:10:04  1  New York 1993.11.14
2:10:22  3  Amsterdam 1997.11.2

フズダド

モネゲッティ同様、今年の東京で8分8秒を出し起死回生の一発です。だいたいイ ベリア半島のランナーは年齢層が高いが、やはりピークは過ぎていると思う。

2:08:01  1  Tokyo 1998.2.8
2:08:08  3  Tokyo 2000.2.13
2:08:46  3  Tokyo 1996.2.12
2:09:59  3  Amsterdam 1998.11.1
2:10:08  7  London 1999.4.18

注目度は低いが、おそらく入賞してくる予感がするランナー(たとえば女子のビクタギロワのような.....)

レオーネ

2:08:41  2  Roma 2000.1.1
2:09:07  7  Rotterdam 1997.4.20
2:09:36  4  New York 1999.11.7
2:09:46  4  Tokyo 1998.2.8
2:09:54  1  New York 1996.11.3
2:10:03  6  London 1999.4.18

バルディニ

2:07:57  2  London 1997.4.13
2:09:31  3  New York 1997.11.2
2:09:33  1  Roma 1998.3.29
2:09:45  6  London 2000.4.16

リマ

2:08:31  2  Tokyo 1998.2.8
2:08:34  3  Rotterdam 2000.4.16
2:08:38  1  Tokyo 1996.2.12
2:08:40  3  Fukuoka 1999.12.5

タイエ

2:09:21  1  Wien 1998.5.24
2:09:49  4  Roma 2000.1.1
2:09:51  2  Roma 1998.3.29

モレノ

2:09:36  6  dChicago 1999.10.24
2:09:48  6  Chicago 1998.10.11
2:09:54  1  Beppu-Oita 1999.2.7
2:10:14  5  Tokyo 1998.2.8

未知の6分台ランナー

トーラ

ジファールとともに去年のアムステルダムでいきなり6分台を出してきが、その実力は未知数である。6分台で頭角を現した選手の中には、犬伏、キプラガトやオソロのように実力がその後も発揮できているランナーと、ダコスタのように余り振るわない選手がいて、 評価が難しい。

評価が非常に難しい人として

チュグワネ

オリンピック直前のロンドンでぎりぎりセーフになったが、98〜99年はまともな マラソンがなく普通に考えればノーマークに近いはず。もし、本当に調子が上がっ てきているのなら、ちょっと怖い選手かも知れない。

2:07:28  1  Fukuoka 1997.12.7
2:08:06  3  London 1997.4.13
2:10:29  8  London 2000.4.16

マラマネ

南ア選手権で優勝しエントリーされた。96年のチュグワネと同じ選ばれ方である が、大きく違うのは96年のチュグワネにはそれまで相当なマラソン経験があった こと。それに反してマラマネには残された記録がほとんどない。評価が難しい。

モディカ

記録がほとんどない。でも世界陸上で銀をとっているから.....

ラガト

実力はトップクラスであるが、なんせ選考されたタイミングが遅すぎたと思う。こ れではシドニーにピークを持ってくるのは難しいと思うが....もともと太る体質であるし......


2:07:41  1  Berlin 1997.9.28
2:08:50  5  Paris 1999.4.4
2:08:52  1  Praha 1998.5.24
2:09:19  2  Torino 1997.5.11
2:09:47  1  Boston 2000.4.17
2:09:59  6  New York 1999.11.7

日本の3選手について

シドニーのコースをこれほど実際に体験しているチームはオーストラリアを除くと日本だけであろう。この3選手は実力もさることながら、この1〜2年で急速に力を付けてきた、あるいは、一皮むけた選手群であるため、世界的な評価がいま一つであるが上昇機運にあるのは間違いなく、過去を振り返るとまさにこのような選手たちがオリンピックではメダルを取ってきたのである。

幸い過去のオリンピックとことなり各選手順調に仕上がってきているようであるのは何よりの朗報である。

川嶋選手には駅伝で鍛えた坂の妙技を見せて欲しい。また川嶋選手は過去2回オーストラリアで走っているが、ゴールドコーストでは優勝しているし、今春のホスト・シティーも練習とはいえあの順位である。オーストラリアとは相性があっているとしか思えない。

佐藤選手にはセビリアで見せたあの果敢な走りを期待したい。シドニーの前半は大集団で推移するであろうが、その中で自分のペースを作ってどこかで仕掛けてほしいと思う。25kmで他の選手がついてこれないペースができると実に面白いと思う。どこまでも駆け抜けていって欲しい。

犬伏選手はマークの対象であろう。犬伏が動けばかならずレースが動く。主導権を握れるランナーである。それだけに勝負所が難しい。どのようなレースになっても「このレースは俺が支配する」というつもりで頑張って欲しいものです。自分の記録とこれまでの練習を信じることだと思う。

このコースの難度の高さはすでに女子マラソンで見てきたわけであるが、男子マラソンは女子以上にその過酷さが目立つのではないかと予想する。はたして高橋、シモンがみせたあの脅威のレース運びが男子で再現されるのか?女子の粘りは意外に男子を上回っているのではないか?いわゆる上位陣が四苦八苦し出す頃、そこにつけ込む隙はないのか?

見所はつきないと思えるのである。日本3選手同士の順位は全く予想できないが、必ず上位に食い込んでくると思っているし、金メダルも夢ではないと私は思うのである。