玄珠堂の治療の特徴は、指と鍼がシームレスに
つながっているところにあります。
指は凝りを外から揉む太い鍼であり、
鍼は凝りを体の中から揉む細い指です。
見た目は違うようでも、感覚的には違いはありません。
マッサージの途中で、自分の体とマッサージをしている人の体に
気の交流ができて、人と自分の境がなくなることがあります。
こういうときの時間の流れは、実に気持ちのよいものです。
玄珠堂という名前から立派な治療院を想像する人もいるようですが
実は、アパートの一室です。徹底したローコストの治療院です。
看板も出していないので、ほとんどクチコミでしかお客が来ません。
だから、サービスに徹した治療が出来ます。
あなたさまと良いご縁がありますよう祈っております。
以下に記載するものは、一治療家の所感であって他を非難することを目的
としたものではありません。同業者の中では、私の治療そのものが非難の対
象になることが多いのです。似たような治療をしている人はほとんどいない
はずです。まったくマイナーな治療法です。
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袖振れ合うも多生の縁
強度の偏頭痛の治療(30代女性)
めまいの治療(30代女性)
無用の手術を勧められた老女の治療(76歳女性)
手術しないと治らないと言われた人の治療(50代男性)
歯の治療から指導した患者さん(30代男性)
1年がかりで治療した77歳男性の50肩
検査で異常なしといわれた人の足の痛みの治療
右肩の痛みと吐き気の治療(50代男性)
数ヶ月にわたって膝の痛みに苦しんだ患者の治療(70代女性)
ある白人男性の治療(50代男性)
群発頭痛と診断された強度の頭痛の治療例(50代男性)
抗ガン剤投与後の吐き気の治療(50代女性)
左足の膝と足首の痺れの治療(60代女性)
むち打ち症の治療
肩の痛みの治療(60代男性)
肩の痛みの治療(50代男性)
女性の不妊症
治療室で流す音楽
腰痛における医師と患者のやりとりの食い違い
高齢者のマッサージ
高血圧の治癒例(40代男性)
手術するように勧められた人の膝関節症の治療例(70代女性)
寝たきりになった人のマッサージ
漂流する治療難民がいる
手術直前から完治した例(20代女性)
10年で100万円使ったという人の腰痛の治療(40代男性)
事故後後遺症の治療例(50代女性)
□
袖振れ合うも多生の縁
今日は、久留米から、知り合いの知り合いのお母さんが、膝の治療にやって
きました。いろいろやったけど治らなかったと・・・
ああ、そうですか・・・。そうでしょうね・・・
などと言いながら50分ほど治療をしました。
先ほど電話がありまして、「ずいぶん調子が良くなりました」と言ってい
ました。
ああ、そうですか・・・。そうでしょうね・・・
と言っておきました。
このご婦人は、将来、「人工関節にするしかありません」なんてことを言わ
れることはないでしょう・・・・。病名は「老人性膝関節症」だということ
でした。
そげな、アホな・・・・
地域通貨で著名なMさんと、人間を犠牲にした上に成り立っている経済っ
て、ひどいものですね、ということを話しました。
そのMさんは50肩を患っていましたので、やはり治療をしました。医者に
行ったかどうかたずねると、とりあえず行ってみたと・・・・
で、手術を薦められたそうです。
そげな、アホな・・・・
そんなもの、こうやって、こうやって、こうやれば治るんじゃ、というよう
な程度の治療もしてもらえずに、20年も30年もたってしまってどうしよ
うもなくなったという人が、日本中にはいったいどれくらい居ることやらと
思います。たぶん、2000~3000万人は居るでしょう。
本当にひどい世の中だと思います。ますますひどくなる一方でしょう。
私は、ささやかな抵抗をするわけでもなく、ただ、できたご縁を大事にする
だけです。
袖振れ合うも多生の縁・・・・・
事故後後遺症の治療例(50代女性)
18歳の時交通事故にあって以来、いろいろな治療を試みたが、何をして
も思わしくなかったという人が来た。いろいろな症状を訴えていたが、いま
困るのは涙目であるという。ティッシュペーパーを離せない状態で、仕事を
辞めようと思うという。
触診すると、頸椎両側、後頭部下縁にいくつものしこりがあったので、そ
れを治療対象とした。針を刺してみると、コリのひどさに驚いた。まるで木
の柱に針を刺しているようであった。寸3、5番の鍼でとにかくそのコリを
ほぐした。首にこの鍼を使うことは滅多にない。目、耳、前頭部に放散する
強い刺激があった。
翌日、涙が止まりましたと言ってきた。一年半、眼科に通って治らなかっ
た症状である。医師は涙腺炎と思ったのであろう。ステロイドが入った点眼
薬を処方していた。炎症があるならば効くはずであるが、原因は涙管の炎症
ではなかったのだから、効くはずがない。
「事故にあって以来の私の人生は大変なものでした」という。それを聞い
てこの程度の身体を治す治療家が30年間にひとりも居なかったのかと呆れ
てしまった。
.
10年で100万円使ったという人の腰痛の治療(40代男性)
腰痛に関して言えば、10年で100万円の治療費を使ったという人はざ
らにいる。それが相場かと思う。その間に、とにかくあちこちの治療を受け
ている。その人は40代半ばの男性であった。腰椎両側を触診すると硬いし
こりが出来ていた。これに鍼をしてコリをほぐした。2回で痛みは消えた。
腰椎そのものには異常がない場合は、割と簡単に治る。「東京から月2回帰
りますので、そのたびに来ます」と言ったが来ない。どうしているのかと電
話で聞くと、「あれ以来悪くなりません」という。4000円の治療を3回
ほど行っただけである。これでは金にならぬと思った。治療に皮算用は禁物
である。
手術直前から完治した例(20代女性)
24歳の女性である。知り合いの親類であった。既に整形外科に入院して
手術することが決まっているが、とにかく一度診てくれないかという。医師
は軟骨が少し出ているのでそれを削ると言ったという。様子をいろいろ聞い
てみた。とにかく体が固かった。前屈がおじぎ程度にしかできない。仰向け
に寝せて左足を挙げると45度くらいで痛みを訴える。明らかな坐骨神経痛
である。
とにかく治療をしてみることにした。最初の治療でこれは治るかも知れな
いと感じた。3回目の治療でほぼ治せると確信した。それから週1回の治療
を6ヶ月継続した。案の定、どうしようもなく凝り固まった筋肉が第4.5
腰椎左側にあったので、それをほぐすことに専念した。使った鍼は2寸、5
番である。3ヶ月治療した時点でほとんど治っていたのであるが、念のため
に治療期間を3ヶ月延ばした。その間、出張やら旅行やらで治療できないこ
ともあったが、もともと腰痛のために外泊が出来なかったのであるから、大
いに結構なことであった。
その間、病院での検査は定期的に行ってもらった。MRIという高価な機
械を使ったらしい。1台1億円とも聞く。検査のたびに症状が消失していく
ので、医師が不思議がっていると言っていた。治療のことは伏せておくよう
に指示していたので、医師は自然治癒と思っていたのであろう。「不思議で
すね」を連発していたと言う。
6ヶ月後、出ていた軟骨がほとんど元に戻っていることが確認された。圧
迫によって変形しているだけなので、原因になっている圧迫、つまり筋の過
緊張を取り除けば、軟骨の変形も戻る。柔らかいから軟骨というのである。
手術で変形した部分を削っても、変形の原因である圧迫を除去しなければ、
ふたたび変形する。そのとき、医師は、また手術をすすめるのであろうか?
実際、2度手術した例を知っているが、それはいかがなものであろうか?
ついでに言うと、骨も筋肉の力で変形することがある。水滴が石の上に20
年も落ちていたら、石もへこむ。コリによる圧迫が20年、30年と続けば
軟骨はおろか骨まで変形する。変形しているから削りますと言うのは、東洋
医学の見地からすれば考えものである。もっとも私の治療法などは、経絡治
療家からはこっぴどくけなされるのであるが・・・・
それから3年経つ。このあいだ紹介してくれた知り合いが治療に来て「あ
いつ、ピンピンしてますよ」と言っていた。
漂流する治療難民がいる
治療難民とも言うべき一群の人々がいる。日常生活を何とか送ってはいる
がはなはだ苦痛で不快な症状を持っており、10年、20年、あるいは30
年以上ものあいだ、あちこちの病院・治療院を転々とし、それでも治らずに
いる人たちである。原因はいろいろであるが、主として過度の疲労、事故な
どの外傷による後遺症などである。それらが、およそ50歳を過ぎる頃から
だんだん耐え難いものになっていく。
日本中に病院はいくつあるのであろうか? 世に名人大家と言われる治療
家が何人いるのであろうか? しかし治療難民の数は増えるばかりである。
治療難民は、言うなれば、治療の落ちこぼれである。既成の治療の枠内では
治癒しない人たちである。こういう人たちを対象にして、新たな治療が模索
されるべきであると思われる。
寝たきりになった人のマッサージ
いろいろな理由で寝たきりの生活を余儀なくされる人たちがいる。短期間
の場合もあれば、長期にわたる場合もある。時には20年以上にわたること
もある。こういう人たちには、マッサージが非常に効果的である。が、体位
変換が出来ないので、それなりの技術を治療する者が持っていなければなら
ない。私は、いまふたりほど、寝たきりのご老人のマッサージをしている。
もちろん、出張治療である。仰臥位で全身をマッサージするのであるが、ま
ことに気持ちがよいらしい。とにかく、自分の手が必用とされる間は、治療
をやめるわけには行かない。人間の手というものは、実に良くできた治療道
具でもある。
手術するように勧められた人の膝関節症の治療例(70代女性)
医師に手術をするように勧められたという人が、老人性の変形性膝関節症
を訴える人に多い。内容は人工関節への置換である場合が多い。「病院に行
くと、決まって”切る”ように言われるので、もう行かない」という人もい
た。しかし、痛みに関して言えば、鍼とマッサージで、日常生活に支障がな
い程度には治療できる。患者が訴える痛みの原因は、必ずしもレントゲン所
見と一致しないのであるが、そのことが見過ごされているように感じるので
ある。あるご婦人(70代半ば)の場合であるが、数回程度の治療で、本人
の訴える痛みはほぼ消失した。痛まなくなれば、治療には来なくなる。2ヶ
月くらいして、人づてにその人のことを聞いた。あれほど悪かったのに、い
まは走り回ってますよ、ということであった。嘘ではない。その程度には治
せるし、人間の身体は、その程度には、自己の損傷にたいして耐性を持ちう
るのである。人間の身体は機械ではない。故障していますから部品を交換し
ましょうというのは、デカルト以来の人間機械論の思想的系譜に属するもの
の考え方であろうと思う。東洋医学の見地はそれとは違う。気血水の流れが
滞っていなければ、痛みは消えるのである。鍼灸医学の見地からすれば、形
態上の損傷と痛みは、必ずしも直接的に関連するものではない。
高血圧の治癒例(40代男性)
職場の事故で車の運転もできなくなったという人の治療をしている。何で
も300キロほどの重量の機械の下敷きになって、おまけにその機械が身体
の上をズズ~っと通っていったというのである。肋骨を3本折り、それは治
ったがどうしても後が悪いというので治療をすることになった。鍼は嫌いと
いうことなのでマッサージだけである。触診してみると身体全体が強張って
いる。これでは悪いはずである。それでうつぶせで脊椎両側をとにかく揉み
ほぐすことにした。治療は週一回のペースで、すでに5回行った。この間、
見る見るうちに元気になっていった。車は運転できるようになったし、仕事
への意欲も湧いてきたという。事故の後、高い方の血圧が180以上あり、
薬を飲んでいたが、どうしても160以下にならないといっていたのである
が、5回目の治療の時、130に下がりましたと言っていた。これは要する
に凝りによって血管が圧迫されていたのであろうと思う。そこに血液を流さ
ねばならないのであるから、当然血圧は高くなる。これはまったく物理的な
原因であるから、原因を取り除きさえすれば、それに起因する分だけは下げ
ることが出来る。このようなケースには頻繁に遭遇する。が、血圧に関して
は、治療家が勝手な判断をすべきではない。医師の指示に従って薬を飲んで
いるような場合は、勝手に薬をやめてはならないことを強く言っておかねば
ならない。中には、服薬を勝手にやめる人がいるからである。ついでに治療
にも来なくなる人がいる。そうなると元の木阿弥である。いったい何のため
に治療をしたのか、分からなくなる。医事法規上の問題もあるが、それ以前
に、身体にとって危険である。
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後日、この人と偶然出会った。「やあ、センセー」と声がするので振り向
くと、この人がいた。「その後どうですか?」と聞くと「すっかり良くなり
ましたよ」という。こういうことはままあるのだが、一抹の寂しさを覚える
ものである。
高齢者のマッサージ
高齢者をマッサージする場合、骨粗鬆症があるかどうか、それを検査した
ことがあるかどうかを必ず尋ねることにしている。私の母の例であるが、母
は自分が骨粗鬆症であることを知らなかった。それでどこかの治療院で指圧
をしてもらって、肋骨が指の形に凹んでしまった。腰椎も圧迫骨折を起こし
ている。いまは良い薬があるみたいだと言っても、「骨の病気が治るわけが
ない」と言って聞く耳を持たない。おまけに「おまえの治療は効かない」な
どという憎まれ口を叩く。困った人である。こういう人は、とにかく骨を強
く押さないようにしなければならない。骨粗鬆症の検査は、積極的に受けて
欲しいものだと思う。「あなたのせいで骨が潰れた」などという苦情を言わ
れるのは正直言って困るのであるが、この種のトラブルはかなり生じている
はずであるし、高齢化社会になるにつれ、ますます増えてくると思われる。
腰痛における医師と患者のやりとりの食い違い
たいていはこうである
患者:先生、腰(の筋肉)が痛んでいるのですが・・・
医師:--レントゲンを見ながら--(腰の骨には)別に異常はありません。
痛いのなら痛み止めを出しておきましょう。それにビタミン剤、消炎剤、
湿布薬・・・
こういう経験を持つ人が何百万人いることであろうか?
その一方、通り一辺倒のことをして治療と称する鍼灸師、マッサージ師が多いこ
とも事実である。
かくして早期に治しておけば大事に至らないはずの腰痛が耐え難いものになって
なっていく。
治療室で流す音楽
私は、音楽を聴きながら治療をする。よく聴くのは、ピエール・フルニエの演
奏したバッハの無伴奏チェロ組曲とか、フジコ・ヘミングの「奇跡のカンパネラ」
などである。
男性を治療するときは、無伴奏チェロ組曲がよく、女性を治療するときは「奇
跡のカンパネラ」がよい。これらの曲は、私を無我の境地に誘ってくれる。治療
の時間は、私にとって最高のリスニングタイムである。こんなに良い時間を過ご
して、おまけにお金までもらって良いものかと思うことがある。
心を音楽のリズムに合わせてのマッサージは、治療する私にとっても、治療さ
れる患者にとっても、実に心地よいもので、日常の煩わしさから遠く離れた至福
の時間をともに味わうことができる。
女性の不妊症
稀であるが、女性の不妊の治療を頼まれることがある。私は腰の凝りを取るこ
とを最初に行う。とくに第4.5腰椎の凝りは丹念に取る。おおかた凝りが取れ
たら、排卵日の3日前に治療に来るように勧める。治療は基本的には変わらない。
これを繰り返しているうちに妊娠することがある。3人頼まれて、3人とも妊娠
した。3人目が双子だったので出来た子供は4人である。
むろん、こういう人たちは婦人科での治療を既に受けているのであるが、それ
でもうまく妊娠しない人たちである。こういう場合に、鍼治療は試してみる価値
のある治療法であると思う。
肩の痛みの治療(50代男性)
3年前から肩が痛むという。ウエートトレーニングが好きで、インストラクタ
ーの資格も持っているという。非常に良い体格をしている。整形外科でレントゲ
ンを撮ったことがあるかと聞くと「あるが、骨に異常はなかった」という。医師
の診断は?と聞くと「回旋腱板炎」だったという
しかし、触診してみると筋肉の疲労痛があちこちにあるので、まずそれを鍼で
で取ることにした。圧痛点治療と運動鍼の組み合わせである。マッサージは少し
だけ。1時間ほど治療したところで、痛みはほとんど消えた。「あれ? 身体が
軽い・・・」と不思議そうにしていた。この一年、トレーニングは、控えていた
そうである。少しずつ初めて、痛み出したらまた来るように伝えた。治療は一回
で終わった。
この3年間、病院にも治療院にもカイロにも通ったのだそうだ。ずいぶん無駄
な治療費を使ったものであると思う。治療費4500円なり。この人は、この3
年間、治療にもならない治療のために、いったいどれくらいのお金を使ったので
あろうか?
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この男性は、その後2回治療に来た。ただし、2度ともトレーニングの疲労を取
るための治療である。2度目の治療でひとまわり、3度目の治療でさらにひとま
わり筋肉がついているのに驚いた。私のように華奢な身体に生まれついた人間に
はまことに羨ましい限りである。
肩の痛みの治療(60代男性)
建設現場で働いているという。重い機材を保つため肩と腰を痛めている。治療
は鍼とマッサージであるが、主として鍼。痛みを訴えるところに鍼をして、痛み
を次々に消していく。一通り、痛みが消えたところで、3キロの鉄アレイを持ち
上げてもらった。特に問題なく持ち上げられるという。鍼が効いたときは、皮膚
が一気に弛緩するので、すぐに分かる。それが効果の目安である。年齢と労働に
による負荷の大きさからしても、一週間に一度程度の治療を継続する必要がある
と思う
この人も、いろんな治療に通っていたクチである。「鍼は効かない」という先
入観を持っていたので「私の鍼はちょっと違います」と言って治療した。「鍼は
効かない」という先入観を与えるようではいけない。
むち打ち症の治療
むち打ち症で治療に来る人が時々いる。事故の直後であれば、数回以内の治療
で速やかに治る。ついでにほかの悪いところも治してしまう。事故後3ヶ月以上
経過している場合は、治療が長引くこともあるが、それでも頸椎に特別な異常が
ない場合はほぼ間違いなく、短期間に完治する。任意保険の支払い対象になるの
で(保険会社が同意すればであるが、いまのところ拒否されたことはない)本人
の負担はない。治療をしながら「不幸中の幸い。袖振れ合うも多生の縁というか
から、あまり話をこじらせない方がいいよ」などと話すことが多い。
だいたいは、示談交渉はスムーズに進むようである。早く治して、早く仕事に
復帰して早く忘れてしまうことである。
ちなみに、私が治せなかったむち打ち症は、いまのところ無い。骨に異常がな
いのであれば、確実に治せるという自信がある。
ただし、低髄液圧症候群とむち打ち症との関連を指摘する医師もいるので、今
後も確実な治療を続けられるかどうかは分からない。鍼師およびマッサージ師と
しては、自然治癒力の増強による回復を促すのであるが、ブラッド・パッチによ
らねばならない場合と、鍼灸を主体とした治療によって回復する場合の両方があ
ると考えられるし、双方の治療を組み合わせることも可能であるはずである。低
髄液圧症候群に対するブラッド・パッチ療法の補助治療として位置づけることも
できよう。
しかし、私の経験から言えば、髄液の漏出があるとしても、脊椎周囲の組織を
正常化することによって、本人の自然治癒力による回復が十分に可能であると思
われる。いまでも、この3年間、交通事故後の耐え難い不定愁訴に悩まされてき
たという男性が治療に来ているのであるが、治療後の経過からして、仮に髄液の
漏出があるにしても、自然治癒して行くであろうと思っている。「どうしても治
らなければ思い切って一番ちかい熊本の○○病院でブラッド・パッチを受けてみ
るという選択肢もあります」とは伝えているのであるが。
左足の膝と足首の痺れの治療(60代女性)
ご主人が脳梗塞で倒れ、その看病や介護をしている間に自分の左足に何とも言
えぬ痺れを感じるようになり、じっと立っていると耐えられないほどひどくなる
と言う。あちこちの病院や接骨院に通っていたらしいが、偶然、近くの人が私の
治療を受けており、紹介されて治療をするようになった。
まず、症状のある膝と足首を触診したが、何の異常もない。年齢からすれば、
これ以上ないようなきれいな関節をしている。「腰から下の症状は、腰の凝りか
ら出ていることが多い」と言って、左の腰を触診してみると、一番下の肋骨と腰
の間にある三角形の部分(第12胸椎から第2腰椎までの間と一番下の肋骨が作
る領域)に、野球の硬式のボールのような凝りがある。「原因はほぼ間違いなく
これです。この凝り固まりを取り除かねば痺れは消えません。この凝りは指圧や
マッサージで取ることは無理で、どうしても鍼を使わねばなりません」と言って
鍼治療をすることになった。
治療は週2回のペースで続けた。1ヶ月ほどで「じっと立っていられないほど
の痺れ」は無くなったが、やはり炊事などで長い時間立っていると、もやもやし
た痺れが出始めるという。
凝りは徐々に小さくなっていき、それに伴って症状も消えていくのであるが、
最後に残った凝りの「芯」-おそらく30年はこり続けていたであろう-は、お
いそれとは消えてくれなかった。それでも根気強く治療を続けた結果、半年ほど
でほとんど全ての症状が消えてしまった。その後の治療は、本人が何か違和感を
感じたときに行うようにした。
何よりもこのご婦人が喜んだのは、自分がいつか歩けなくなるのではないか、
半身が不随のご主人の世話ができなくなってしまうのではないかという不安から
開放されたことである。まだまだ20年の余命はある。不安な20年と不安のな
い20年とでは大違いである。「主人が喜んでくれましてね・・・」と言ってい
た。何よりである。良い縁がまたひとつできた。
抗ガン剤投与後の吐き気の治療(50代女性)
肩こりその他の治療をしている内に、おなかに何か触れるものがあるというの
で触診してみると、明らかに子宮筋腫か何かの病変が疑われたので、すぐに病院
を紹介して、診察してもらうように伝えた。結果はかなり発達した子宮筋腫とい
うことで、すぐに手術をすることになった。術中、生検で細胞を見たが、明確に
ガンを疑うことはできないが、さりとて組織学的に正常とも言い難いという灰色
判定であったという。それで念のため、何度か、抗ガン剤を打つことになった。
一回目の抗ガン剤投与から、激しい吐き気に襲われたが、事業を始めたばかり
なので、どんなことがあっても仕事を休めないという。何とか鍼で吐き気を止め
られないかという電話があったので「いまより軽くすることはできます」と答え
ておいた。翌日、さっそく治療に来た。
こういう場合は、まず胃兪のあたりを触診してみる。たしかに凝りがあり、強
く抑えると気持ちが良いという。深部に硬結があることがわかったので、2寸8
番の鍼でその硬結をやわらげることに専念した。硬結がほぐれるにつれ、吐き気
も薄らいでいった。左右におよそ20分ずつ、同じ処置をした。
その後、仰向けになってもらい、三里に1寸3分5番の鍼を1寸ほど刺入して
10分ほど置鍼した。これで吐き気はほぼ消失した。翌日「帰ってすぐに食事が
できた。食事の後も吐き気はしなかった」という連絡があった。
抗ガン剤投与は、結局3回で終わったが、3回とも同様の処置で吐き気を止め
ることができた。食事もできたので体力の低下もなかった。かくして、この婦人
は通院で抗ガン剤を投与しながら、日々の仕事をこなして行きつつ、病気から回
復したのである。手術の成功は言うまでもないが、術後のケアにおける鍼の効果
は絶大と言うべきである。
群発頭痛と診断された強度の頭痛の治療例(50代男性)
50歳を超えた群発頭痛の患者はほとんどいないらしいので、この記載は、た
んに私の治療時期と、この男性患者の生涯最後の群発頭痛の終息期が重なった
だけという可能性が高いが、この人は例外だったようである。
偏頭痛の治療はほとんど毎日のように行っているが、群発頭痛の治療は2例し
か経験がない。うち一例は30歳くらいの男性で「限りなく群発頭痛に近い」と
診断された人であり、もうひとりがここに記録する、群発頭痛と明確な診断を下
された54歳の男性である。
聞いているうちに、こちらまで気分が悪くなるような激しい頭痛である。左目
の奥が抉(えぐ)られるような耐えがたい痛みが、年に何回か発作的に生じて、
一度始まるとなかなか治まらないというのである。治療法としては、大分市内で
ふたつの病院にしかおいていないという強烈な鎮痛剤を注射することしかなかっ
たという。
いつもの通り、首の凝りを疑った。さわっただけでひどい凝りがあることがわ
かる。深いところの凝りがどうなっているのか、針先を第1・第2頸椎に向けて
1寸6分5番の鍼を通してみたところ、まるで頸椎に張り付くように親指大の凝
りが在ることがわかった。とりあえずこの凝りをほぐしてみることにしたが、5
番の鍼ではとうてい歯が立たないので、8番の鍼に変えた。首に8番の鍼を刺す
ことは滅多にないが、ガチガチと骨に当たるような凝りがあって5番の鍼では歯
が立たないのであるから仕方がない。これは頸椎・首ツボ治療法の知見とも合致
する。頭痛の原因の多くが頸椎(およびその周辺組織)に由来するということは
ほぼ間違いないと思われる。
このような治療を数回繰り返したところ、頭痛が軽くなったというので、上部
頸椎の治療を得意にしているカイロプラクターに頸椎のズレを矯正してもらい、
その後さらに鍼で凝りをほぐす治療を重ねた。治療が10回に及んだところで、
ほぼ、頭痛は治まったという。毎年夏になると決まって群発頭痛が起きていたと
いうのであるが、夏になっても頭痛発作は起きなかった。その後、少し頭痛がす
ると治療に来るということを数回繰り返したのであるが、その後、全く治療に来
なくなった。
本人が勤めている会社の同僚も治療に来ていたので「その後、○○さんはどう
していますか?」と聞くと、「調子いいようですよ」ということである。悪けれ
ばまた治療に来るであろう。
職場が割に近いところなので、2、3度立ち寄ってみたのであるが「やあ、先
生、お元気ですか?」と、こちらの健康を心配してくれる。頭痛から解放された
おかげで、仕事の成績がずいぶん良くなったらしい。私がこの人から得た治療費
10万円程度のものであろうか。安いものであると思う。
この人は、お盆が近くなると群発発作に見舞われていた人である。今年も大丈
夫とは限らない。「そろそろ悪友が訪ねてくるころではありませんか? 治療し
ておいた方が良いですよ」と電話で言っておいた。忘れたころにやってくるのが
持病というものであるから、油断は出来ない。
その後、一回治療に来てもらったが、石のようであった首の凝りはきれいに消
えていた。そろそろ石のように固まっているころだろうと予想していたので、意
外であった。
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昨日、今回の発作期はどうだっただろうかと心配になり電話をしたところ「出
なかった」ということであった。「完治したと思いますか?」と尋ねたところ、
「まだ完治したとは思えない」と言うことであった。この人の発作期は、8月中
旬と1月あたりである。夏はクーラーが発作の引き金になるので、熱帯夜でもク
ーラーを入れられないということである。とにかく、とんでもない頭痛である。
ある白人男性の治療(50代男性)
別府でバーナード・リエター氏を招いての地域通貨の集まりがあり、私も専門
の三浦梅園の研究を紹介することになった。針灸治療の話もいくらかはした。そ
こに来ていた50代の白人男性が話に興味を持ってくれたらしく、会合の後、話
しかけてきた。日本で育ったということで、日本国籍を持っているというから、
日本人である。職業は医療カメラマン。この仕事は日本にはない。欧米では、手
術の最中などには、専門のカメラマンがついていて写真撮影を行うのだそうであ
る。
その男性が、3年前に肩が痛くなり、今は痛みは無くなったが、手が上がらな
くて困っているという。勤務しているサンフランシスコの病院の医師に聞いたら
おそらく頸椎から出ている神経が圧迫されているのであろうから、手術してみる
方がいいかも知れないと言われたという。
しかし、アメリカの手術費用はバカ高い。200万~300万円はかかるし、
治るかどうかは分からないと言われ、ずいぶん困っているようであった。「ちょ
っとみてみましょう・・・」と言って肩を触ってみたところ、どう考えても、単
なる五十肩の後遺症としか思えない状態であったので、時間のあるときに、治療
に来るように伝えておいた。
それから数日して治療に来たので、鍼とマッサージで硬くなっている筋肉をほ
ぐしていったところ、「アレ~、テガアガル・・・。アレ~、テガウシロニマワ
ル・・・」と言って驚いていた。
「これはただの50肩ですよ。いまはもう五十肩そのものは治っているので、
運動範囲を広げる治療をすればよいだけですよ」と言ったら、「ヘ~・・・・」
としきりに感心していた。
しかし、アメリカの医師はどうして50肩という診断をしなかったのであろう
か? 「フローズン・ショルダー」は、肩関節の疾患として教科書にも載ってい
るはずである。不思議に思ったのは、私の方であった。
その後、さらに一回治療して、正常の可動範囲の85パーセントくらいには回
復した。4000円の治療2回で8000円である。200万~300万円はか
かると言われた症状が、たったの8000円でほぼ回復したのである。
「ホントニ、バンザイデス」と喜んでいた。今は航空運賃も安くなっているの
で、休暇を取って日本で治療することもできるから、アメリカの友達に紹介する
と言っていた。まあ、近くのビジネスホテルに泊まってもアメリカで手術するよ
りは安上がりだと思う。
数ヶ月にわたって膝の痛みに苦しんだ患者の治療(70代女性)
膝が痛いといって尋ねてきた婦人がいた。「病院でレントゲンを撮ってもらっ
たことはありませんか」と尋ねると、「お医者さんは、骨には異常はないと言っ
ていました」と言う。触診してみると、水がたまっている様子はなく、どう見て
も関節周囲の筋組織の疲労が原因であるとしか思えなかった。もう5ヶ月もいろ
んな治療をしてきたのだそうである。いつもの通りに圧痛点を探し、針をした。
階段を下りるときに膝が痛むというので、治療の途中で、少し膝を曲げてみても
らったところ、痛みが消えたという。膝がまっすぐに伸びないというので、これ
も治療したところ、すぐに伸びるようになった。遠くから来た人なので、翌日も
治療した。帰るときには、少し違和感を感じる程度になっていた。「半月板がす
り減っていると言われた」ということであったが、自覚的な症状は、2回の治療
でほぼ消えてしまった。いつもこんなふうにうまくいくとは限らないが、膝の疲
労痛は案外簡単に治るものである。もっとも、日常生活に支障がない程度まで治
すのに8ヶ月かかったこともあったが・・・・
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この8ヶ月かかった患者さんから、賀状をもらった。痛みのない生活を送れる
ようになったということである。よかった、よかった・・・・
右肩の痛みと吐き気の治療(50代男性)
右肩全体(主として肩上部と肩胛骨の内側)と右の首筋に強い痛みがあり、昨
晩はほとんど眠れず、吐き気までしてきたという人が来た。触診してみると痛み
の在る範囲全体が緊張し、やや腫れたようになっている。これでは痛いだろうと
思った。予約なしで来たので、次の予約の人が来るまでの時間しか治療出来ない
ということを告げ、痛みを早く取るには鍼がよいと説明した。肩の周辺は、ほと
んど1寸3番の鍼を使う。一通り圧痛点を治療したところで、ベッドに座っても
らい、肩と首を回してもらったところ、「あ~、ぜんぜん違う。楽になった」と
言った。再び右を上にして横になってもらい、ホットパックを首筋に当てて5分
ほど温め、10分ほどマッサージをしたところで、筋肉の緊張の左右差がほとん
ど無くなった。左右差が無くなれば治療は終わりである。「2,3日してまだ気
になる症状が在れば電話してください」と伝えた。・・・が、だいたいはまた同
じように悪くなるまで治療に来ないのが普通である。この男性の前回の治療は2
年前であった。
検査で異常なしといわれた人の足の痛みの治療
新年(平成16年)早々、MRIで検査してもらったが特に悪いところはない
と言われたという60代半ばの男性が治療に来た。100メートルも歩くとお尻
から足にかけて我慢できない痛みが走り、動けなくなってしまうという。それで
神経ブロックを何度かやってもらったのだけれども、しばらくすると痛みがぶり
返してくるというのである。触診してみるとお尻から太ももにかけて筋肉がすっ
かり硬くなってしまっている。異常なしではない。明らかに異常である。ただ、
検査にひっかからないだけのことである。
最初の針治療で太ももの前の部分を治した。「治療した日の夜、1キロほど歩
けましたが、足の外側の痛みがたまりません」という。「じゃ、今日は、外側の
治療をしましょう」と言って、1時間くらい治療をした。「痛みはこれで消える
でしょうが、もう一度治療しておいた方がいいですよ」と言っておいた。これで
痛みは、ほぼ消えた。あとは、適宜、メンテナンスのための治療をしておけばよ
い。
高価な機械による検査は何のためだったのだろう? 結局は痛みがぶり返して
しまう痛み止めの注射は何のためだったのだろう? こういう齟齬には毎日のよ
うに出会っている。
もっとも、交通事故などで大怪我をした人などに針やマッサージは役立たずで
ある。針やマッサージが通用するのは、基本的には日常生活疲労である。中には
名人がいてずいぶん難しい病気を治したりしているが、それは誰にでもできるこ
とではない。
私自身、現代医学の恩恵にずいぶん浴している。日常生活疲労の治療には、伝
統医療の方が、効果の面でもコストの面でも現代医学より適していると言うだけ
のことである。
1年がかりで治療した77歳男性の50肩
3年前、胃の手術で入院しているときに、右肩が痛み出し、痛み止めを飲んだ
り、リハビリに通ったりしているうちにどんどん悪化し、服を着ることも、髪を
洗うことも出来なくなったという。とにかく痛んで夜眠れない。典型的な50肩
である。
この人は、勤めていた会社を定年退職したあと、造園業を営むようになった。
それまでの趣味を生かして、定年後の本業としたのである。それから20年ほど
造園業者として仕事をしていた。
ところがある日、胃の具合が悪いので病院に検査に行くと、ひどい潰瘍が出来
ているので手術した方がいいということになった。手術はうまくいって、いまで
は胃の調子は良くなったのであるが、ひどい50肩になってしまったというわけ
である。
この人は、若い頃から愛煙家で、なんと1日に強いタバコを100本も吸い続
けてきたという。さすがに最近は吸う本数は減ったが、それでも2箱は空けるら
しい。よく肺ガンにも食道ガンにもならなかったものであると感心する。
さて、治療を開始したが、針の痛みは相当なもので、1本刺すごとに、ウッ、
ウッ、っと声を上げる。触診をして硬結点に針をするのが、私の治療の流儀であ
るし、多少の痛みは我慢してもらうことにした。
治療は痛いものの、50肩の症状はどんどん消えていった。本人も痛みが消え
ていくのがうれしいらしく、週2回のペースできっちり通い続けた。この調子な
ら2~3ヶ月もすれば治るだろうと思っていたのだが、コリの芯がなかなか取れ
ない。半年たった頃には、90パーセントは治ったのであるが、夜中に痛みで目
が覚めるという。そこから、痛みで目が覚めないところまで治療するのに半年か
かってしまった。
定年退職後に始めた造園業である。右の肩から腕にかけて筋肉が盛り上がって
いたということであるが、大病をして入院している間に正常な筋肉はどんどん失
われていき、針も通らない硬い石のような「しこり」が、関節を取り巻くように
残って、それが炎症を起こして疼き出したのである。
最終的には、痛みはほとんど消え、握りしめることが出来なかった右手も雑巾
を搾れるところまで回復した。
「百里の道は九十九里をもって半ばとする」という先人の言葉を身にしみて感
じさせられた治療であった。
歯の治療から指導した患者さん(30代男性)
治療用ベッドに横になったときから、もう、全身の気力も体力も消耗しきって
いることがわかるような、極度に疲労した状態で来院した。完全虚脱状態である。
主訴は腰痛であったが、とにかく全身状態を改善しないといけない患者である。
経絡治療家ならば、脈診をして虚した経絡に補法を行うのであろうが、私は徹
底して物理的な歪みを正すことにしている。軽いマッサージをしながらあれこれ
問診しているうちに歯が悪いことがわかった。奥歯が一本抜けたままになってい
るというのである。これはいけない。噛み合わせが悪いと全身状態も悪くなる。
それで知り合いの歯科医師を紹介し、歯の治療と針治療を平行して行うことと
し、さらに漢方薬を処方してくれる内科クリニックを紹介した。全身が虚脱した
状態を治すには、針よりも漢方薬の方が適しているし、保険が使えれば薬代が安
くなる。
こうして、3人(?)がかりの治療が始まった。3ヶ月ほどして歯の治療が終
わった時、この人は見違えるように元気になり、声にも十分な元気が出てきた。
今年、賀状をもらった。全身虚脱の時は、こういう方法をとることが多いが、治
療効果は実に高い。
手術しないと治らないと言われた人の治療(50代男性)
今日(平成16年1月30日)の話である。右手の痺れと腰の痛みがひどく、
医者で診てもらったら「手術しないと治らない」と言われたという男性が来た。
ひととおり話を聞いて、触診してみると、腰にかなりのコリがあった。手術しな
ければ治らないと言われたのは首であるが、どうみてもそれほどひどいとは思え
なかった。病院では造影検査までしたという。そのうえで「手術しないと治らな
い」と言われたのであるから、本人はいささか動揺していた。
医師が手術の必要性を訴えたのは、要するに手の痺れの原因が首にあるという
診断なのであろうが、れは明らかな誤診である。というのは、この男性の前腕部
には強度のコリがあって、これを15分くらいかけて針で取り除いたら、きれい
に消失したからである。腰の痛みも帰るときには消えていた。
さてでは、この男性にとって造影検査は意味があったのであろうか? 手術の
必要は本当にあったのであろうか?
1年に何人こういう人が訪れてくることだろう? しかし、責任は針灸師の側
にあるのだろう。こういう患者をさっと治療できる人がたくさんいれば、手の痺
れなどは鍼灸院で治るということが、世間一般で通用する常識になっているはず
である。
そうでないから病院に行くのである。病院も問題だらけだろうが、針灸の世界
も問題だらけである。
しかし、それにしても、である。背筋を3回くらい触診したとき、いったいこ
の背骨のどこを切ると言うんじゃい!! と、思ったのである。いくらなんでも
「手術しなければ治らない」はひどすぎる。日本全国で、いったい何人の人が必
要のない手術を受けていることであろう?
無用の手術を勧められた老女の治療(76歳女性)
腰の骨と股関節が変形しているので手術するしかないとお医者に言われたと、
とある老女が訪ねてきた。歩くのに難儀をするほど右足が痛むという。触診して
みると腰から股関節、さらに膝にかけて強度のコリがある。「変形は治せないが
このコリが出している痛みは取れる」と伝えた。それで良いという。1時間ばか
り治療をした。「あ、足が軽い。これなら歩けます」と言って帰って行った。さ
ほど遠くないところに住んでいるので、また痛み出したら来ればいいと伝えてお
いた。ひとり暮らしであるという。ひとり暮らしの76歳の老女の腰を手術して
いったいどうするのであろうか。退院後、誰が面倒を見るのであろうか・・・・
めまいの治療(30代女性)
久しぶりの患者さんが来た。半年ぶりであろうか。「どうしたのですか?」と
尋ねると「めまいがひどくて2度、病院に行きました」という。「どう言われま
したか?」とたずねると最初の病院でメニエル症、2番目の病院で自律神経失調
症と言われたという。ベッド上で寝返りをすると天井が回ると言うから、生活に
も仕事にも支障があるはずである。
こういうときは首の奥、つまり第1・第2頸椎周辺がひどく凝っていることが
多い。針を通してみると案の定、ひどい凝りがあった。1寸6分、5番の針を刺
して、しばらく安静にしておいたところ、だんだん身体がリラックスしていくと
言う。
左右に同様の処置をしてから、首をゆっくりマッサージしてあげた。1時間ほ
どして帰るときには、首を左右に振ってもめまいは起きなかった。治療はこの一
回で終わった。
凝りが起こす症状は多様であるが、原因は至って単純であるし、治療法も単純
である。社会から、そういう知識と技術が消えてしまっていると言うだけのこと
である。
強度の偏頭痛の治療(30代女性)
10年来の偏頭痛に悩まされているという女性が来た。最近はとくにひどくゾ
ーミックという強い薬を毎日飲むようになったという。やせ形で一見するところ
冷え性・低血圧タイプであるが、実は、血圧が高く冷えは感じないという。触診
したところ、案の定、頭痛のツボに見事なコリがあったので、それに針をして丹
念にマッサージをした。それだけでは足りないと思い、漢方薬を処方してくれる
病院を紹介した。そこでは、血行を良くする薬をもらったという。治療は2回で
終わった。ウソのように治ったというのである。毎朝、頭痛が起きそうな不安が
あったが、それもなくなったという。2度目の治療が終わったとき、また頭痛が
起きるようになったらすぐに来るようにと伝えておいた。針と漢方薬の相乗効果
を狙った治療であったが、これほどうまくいく例も珍しい。
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