特異な奥歯の痛みと舌の痺れの治療例

公開してよいものかどうかためらわれる治療例です。こういう症例に遭遇するのは
10年に一度くらいでしょう。

舌先で右下の犬歯に触れると、舌に電気がビリッと走る。話すと左下の奥歯と舌が痛む。

というのが、この人の症状です。

歯も歯茎にも異常はないのです。整形外科でも、脳神経外科でも異常は見つかりません。
それでも痛むのです。通常の痛み止めはまったく効きません。最後に出されたのは、
小児用抗てんかん剤のテグレトール(別名カルバマゼピン)でした。
この薬は、三叉神経痛などによく処方されます。歯科にも、脳神経外科にも、
ペインクリニックにも置いている薬です。(三叉神経)

この薬を処方した医師は、三叉神経痛を疑ったのでしょうが、この人の症状には、
まったく効きませんでした。副作用で、頭がボ〜っとして仕事にならないので、
飲むのをやめたと言っていました。

その他、針治療、カイロプラクティック、整体など、あらゆる治療を試していました。
やっていないのは、お祓いくらいのものでしょう。

最初は、首の凝りを取ることから始めましたが、思ったほどの効果は現れませんでした。
そこで、顎を直接治療することにしました。驚いたことに、左側の咬筋が石のように硬縮していたのです。
なぜ、ここまで咬筋が凝ったのが分かりませんが、ウェイト・レーニングが趣味の人なので、
長年にわたって歯を食いしばっていたのが原因かもしれません。ただ、それなら、一般のスポーツ
選手にも同様の症状の人がいるはずですが、私は聴いたことがありません。

この人は、電話で話をするとき、いつも不機嫌そうな印象でしたが、それは口を開けると歯も舌も
痛むからでした。あらゆる治療を試して効果がなかったのですから、それをすべて否定したところから
新たに治療戦略を立てるしかありません。

私の場合、それはいつも最硬結点直刺という方法になります。

それだけは、誰もやっていないのです。

私が、咬筋の異常な硬結に気づいたのは、治療3回目のことです。


使っている針は、1寸6分の8番鍼(50mm,φ=0.30mm)です。5番鍼(0.25mm)では、歯が立ちません。
すべて曲がってしまいます。何ヶ所もためして、この3本が通りました。鍼は骨面に達しています。
鍼は、簡単には動きません。まるで、樫の木に鍼を刺したようなものです。
鍼の痛みは、あまり感じませんし、翌日、治療のあとが腫れることもありません。

10分ほどすると、いくらか柔らかくなりましたので、5番鍼(0.25mm)を追加で刺しました。

この治療を始めてから、徐々に痛みが軽くなり、8回の治療で、ほぼ消失しました。

咬筋の異常な凝りが取れたのです。

痛みが出たら治療に来るように伝えました。その後、2度、再発しましたが、
それぞれ1回ずつの治療で痛みは消えました。

不可解で耐え難い痛みの原因は、この部分の異常な硬結でした。


きれいな治療ではありません。美観のない鍼ですが、鍼を曲げずに刺すだけでも大変なのです。
結局、一年以上悩んでいた痛みと痺れが消えたのですから、これでよかったのです。

なお、この患者さんの最後の治療は、2008年8月23日です。


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