ドストエフスキーと予言

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ドストエフスキーの作品は、折に触れ、「現代の予言書」「21世紀の予言書」「20世紀の予言書」「現代の黙示録」と言われてきました。
このコーナーは、具体的にどういうことがドストエフスキーのどの作品・どの箇所で予言・予見されてい
るのか、検証・確認していくコーナーです。
事柄のあとに付した「
予言度:〜予見度:〜」は、ページ主宰者側の判断で記した予言・予見の的中度。(10」を細かく正しく予言した最高度とします。)
ゴシックにした部分は特に細かく鋭く予言されていて注目すべき箇所、赤色にした部分は後世への鋭い警鐘が読み取れる箇所。  



1、
http://www.coara.or.jp/~dost/bo.gif ロシア革命(1917)(bc)と、その後の民衆にパンを与えていくソビエト社会主義体制とその強権化(a)・無神論的宗教弾圧(ad)、及び、その行き詰まりと体制の崩壊(1991)(a10行目)、及び、その後のロシア正教への回帰?(e)を予言。 予言度 : 9

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 スカイダイビング、宇宙飛行士の宇宙遊泳、ジェット噴射機を用いての人間の空中飛行を予見?(a1行目) 予見度 : 8
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 ジェット機や宇宙ロケットの開発を予見?(a12行目) 予見度 : 9 
※、動力付き飛行機は1903年にライト兄弟が発明 )
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 バイオ技術のことやクーロン牛の開発を予見?(a24行目) 予見度 : 9
http://www.coara.or.jp/~dost/bo.gif 高性能レーザー光線砲(あるいは、プラズマ兵器)の発明(出現)を予見?(f) 予見度 : 8 


a
人びとはやがて空中を歩いたり飛んだりするかもしれない。いま鉄道で旅行している速度の十倍の速さで、非常に広い空間をひとっ飛びということになるかもしれない。土の中から信じられぬくらいの収穫をひきだし化学によって有機体を作りだし、わがロシヤの社会主義者たちが夢みているように、牛肉が一人一キロずつ行きわたるようになるかもしれない。一口に言って、さあ飲め、食え、楽しめというわけだ。「さあ」 すべての博愛主義者たちは絶叫するに違いない。「今こそ人間は生活を保障された。今こそはじめて人間は本領を発揮することだろう! もはや物質的窮乏はないし、すべての悪徳の原因だった、人間を蝕(むしば)む《環境》ももはやない。今こそ人間は美しい、正しいものになるだろう! もうこれからは、どうにかこうにか暮らしてゆくための絶え間ない労苦はなくなり、今やだれでも高尚で深遠な思想や普遍的な現象に関心をもつようになる。今、今こそやっと最高の生活がやってきたのだ!」  …… だが、おそらくこうした歓喜は人間の一世代ともつまい!人びとは突然、自分たちの生命がもはやほろび、精神の自由も、意志も個性もなく、だれかが何もかも自分たちから一遍に盗んでしまったのだということに気づくだろう。人間らしい顔つきは失せ、畜生のような奴隷の姿、形、畜生の姿が、やってきたのだ ( 『作家の日記』18761月号より )
※、上のぶんは、
『ドストエフスキー』(原卓也著、講談社新書・1981年講談社初版)p52p53

・『ドストエフスキー 闇からの啓示』(森和朗著、中央公論社1993年初版)p96p97
で引用し指摘しているもの。
*、「意見・情報」交換ボード20010916日の書き込みのぶんを補足及び追加。

b
ドストエフスキーは、ロシア社会にユダヤの勢力が浸透しており(「ユダヤ人はロシアに入った毒であり悪魔であり」)ロシアにユダヤによる革命が起こるとしばしば述べていた。

※、上の引用箇所にはドストエフスキーのユダヤ人への憎悪や悪口が見られるが、ロシア革命の黒幕は国際ユダヤ財閥であるとする見方が正しければ、かなりの的中と言える。

c
社会主義は可能ではあるけれども、ただそれはフランスではなく、どこかほかだ。」 ( 1863年『冬に記す夏の印』第六章「ブルジョア試論」より。) 
※、ベルジャーエフ(ロシアの宗教思想家)1918年の論文で、「ドストエフスキーはロシア革命の予言者」と述べている。

d
『社会主義は主として無神論の問題である。無神論に現代的な肉付けをした問題である。地上から天に達するためではなく、天を地上へ引き下ろすために、神なくしてたてられたバビロンの塔だ。』
( 『カラマーゾフの兄弟』より )
※、ロシア革命のあと、ソビエトの政権は無神論を奉じ、全国のロシア正教の寺院の閉鎖や破壊、聖職者に対してはあらぬ嫌疑をかけての過酷な追放や処刑や弾圧を行ない多くの犠牲者が出た。
レーニンはドストエフスキーの『悪霊』に対しては「反動的小説」と決めつけドストエフスキーの本を以後発禁処分とした。

e
『悪霊』の中の、ステパン氏の最後の放浪における回心の言葉 (ルカ福音書を引いて、悪鬼が入り込んだ豚たちが悪鬼に導かれて気が狂い崖から海に飛び込みおぼれ死んでしまうが、やがて彼らの病は癒えてイエスの足もとに座るであろ
〔以上その趣意〕 ) ( 『悪霊』の中のステパン氏の言葉。新潮文庫の下巻のp493p494)
※、アンジェイ・ワイダ監督の映画「悪霊」(1987年制作)での、ステパン氏がロシアの行く末を述べる回心のシーンは印象深い。
※、上の引用文の末部は、体制崩壊後のロシア正教の勢力の回復、人々のロシア正教への回帰を述べたものか?

f
15年もすればおそらく、もはや鉄砲で撃つのではなく、何か稲妻のようなもの、機械から発せられ、すべてを焼きつくす電流のようなもので撃つようになるかもしれない。」( 1873年に雑誌「市民」に掲載した評論記事より ) 
※、
『ドストエフスキー 闇からの啓示』(森和朗著、中央公論社1993年初版)p96p97で森氏が引用し指摘しているもの。「意見・情報」交換ボード20010916日の書き込みのぶんを補足。森氏は、ドストエフスキーがエリート大学校で当時の最先端の科学情報を身につけていたことを指摘している。また、上の内容や表現などは、ドストエフスキーが親しんだ聖書の預言書の記述を頭においているのかも知れません。



2、
http://www.coara.or.jp/~dost/bo.gif ソビエトにおけるレーニン及びスターリンの出現・統治体制を予言? 予言度 : 8
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 ドイツにおけるワイマール憲法発布のあとのナチス体制及びヒットラーの出現を予言? 予言度 : 8

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『カラマーゾフの兄弟』の中の、「大審問官」の章の大審問官の人物像やその言説

今後の民衆や社会にとって自由ほど耐え難いものはないのであり、彼らは自分たちに確実なパンや心の平安を与えてくれる強大な権力者が現れればキリストが約束する天上のパンなどは捨てて、自ら自由を権力者に譲り渡し、喜んで権力者につき従っていくであろう。聖書で言うキリストの選択よりも悪魔の選択を選んだ権力者はその手を通して彼らにパンをうまく分配し、社会の争いや混乱を鎮撫し、彼らの悩み一切をすべて解決し、権力者のゆるしを得れば罪や悪行もゆるしてやることにする。彼らには時に子供の遊戯のようなものを施してやる。社会にはパンと心の平安を得た多くの羊のような民衆と善悪の選択という受難を背負った権力者が存在していくのだ。
( 以上、「大審問官」の章の大審問官の統治思想の趣意 )
*、「意見・情報」交換ボード20010916日の書き込みのぶんを補足。
※、大審問官の民衆統治に向けての語り口やスタンスはレーニンやヒットラーのそれと類似している。クロポトキン(ロシアの政治思想家)も、のちに、キリストよりもパンを取ることを選択している。 
※、一方、ナチスに関してはドストエフスキーの作品からの影響という面もあるだろう。ナチスの宣伝相であったゲッベルスをはじめナチスはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」の章や『悪霊』から全体主義体制での統治のあり方を学んだ形跡あり。ナチスは統治下のドイツで B・ブラッヒャーにオラトリオ「大審問官」(1942年作)を作曲させて演奏させたりなどしている。

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わたくしの結論は、出発点となった最初の観念と、直角的に反対している。つまり、無限の自由から出発したわたくしは、無限の専制主義をもって論を結んでいるのです。しかし、一言申し添えておきますが、わたくしの到達した結論以外、断じて社会形式の解決法はありえないのです。」( 『悪霊』に登場するシガリョフの社会統治をめぐっての言葉。新潮文庫の下巻のp101)
※、(小説『悪霊』の登場人物として、)このほかに独断的革命理論家シガリョフがおり、彼によれば、革命が与える自由は全体的専制政治を導き出すためのものであるということになる。この理論がすぐれて(=とりわけ)予言的であることは今では私たちにも分(わか)っている。」 ( 内村剛介(評論家・ロシア文学者)の言葉。)  

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『悪霊』の中の、扇動家の策士ピョートルが超人的な美貌のスタヴローギンを人心掌握のためのカリスマとして表に立てようとする図式 
   
※、のっぺりした仮面のような容貌も含めてヒットラーはスタヴローギンに似ていると小林秀雄(文芸評論家)は随想「ヒットラァと悪魔」で述べている。 




3、
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 ソビエトのスターリン独裁政権下の密告体制・大粛清を予言? 予言度 : 8
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 日本での連合赤軍内部でのリンチ殺人(1971年〜1972)を予見? 予見度 : 8       

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『悪霊』の中の、秘密結社グループの革命組織活動のスタンス〔スパイ制度や密告を提唱、時に中傷や殺人もありえる
( 『悪霊』の中のグループの首領ピョートルが語るスタンス。新潮文庫の下巻のp124p125)
グループの仲間によるシャートフ殺害

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「私は『悪霊』の中で、
この上なく純潔な心を持つ人間でさえ、身の毛のよだつような悪事へとままきこまれていくその多様をきわめた動機を描こうとしたのである。」 (週刊雑誌「市民」に発表された「現代的欺瞞のひとつ」(1873)の中のドストエフスキーの発言 )


 
のない良心は恐怖そのものである。そんな良心は、最も不道徳なところにまで迷いかねない。 ( 晩年のメモより。筑摩書房1997年刊『ドストエフスキー 未公刊ノート』のp158)    
 
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『悪霊』の中の、ステパン氏の最後の放浪における回心の言葉(ルカ福音書を引いて、悪鬼が入り込んだ豚たちが悪鬼に導かれて気が狂い崖から海に飛び込みおぼれ死んでしまうが、やがて彼らの病気は癒えてイエスの足もとに座るであろう
〔以上その趣意〕) ( 『悪霊』の中のステパン氏の言葉。新潮文庫の下巻のp493p494)
※、ドストエフスキーは当時のネチャーエフ事件に取材して『悪霊』を創作したが、「歴史は繰り返す」ということでもあるのでしょう。 
※、1995年の地下鉄サリン事件においても容疑を受けたオウム真理教内のありようをめぐって、論者たちによって『悪霊』の登場人物や人物関係などのことが想起されて、『悪霊』の内容がしばしば引き合いに出された。    

※、以上のことなどから、ドストエフスキーの『悪霊』は、「二十世紀の革命とテロリズムの予言書」とも言われている。



4、
http://www.coara.or.jp/~dost/bo.gif 将来、科学技術とその作り出していくものが《生命の源》を濁し人類に破滅をもたらすほどの大いに呪 うべき災厄となることを予見・警鐘。  予見度 : 9

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「ひとり鉄道ばかりが
《生命の源》を濁すものじゃありません。そういったものをみんなひっくるめて呪うべきなんです。最近、数世紀における科学や実際的方面の風潮をみんなひっくるめて、あるいは実際に呪うべきなのかもしれません」 (途中二行略) 「呪うべきです、呪うべきです、たしかに呪うべきですよ! ( 以上、レーベジェフの言葉。『白痴』の第三編の4内。)
※、上の少し前の箇所で、作者ドストエフスキーは、ヨハネの黙示録の中の茵蔯星(ニガヨモギ)についてのレーベジェフ(黙示録の講釈者でもあった)の説(せつ)に触れていて、その茵蔯星はヨーロッパの鉄道網のことだ(当時ロシアにも鉄道は敷設され始めていた)と考えて、
「鉄道は呪うべきものであり、それは人類を破滅させ《生命の源》を濁すために、この地上に墜ちた災厄
とレーベジェフに述べさせている。

*ヨハネ黙示録第8章1011第三の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が、空から落ちてきた。そしてそれは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。 この星の名は「苦よもぎ」と言い、水の三分の一が「苦よもぎ」のように苦くなった。水が苦くなったので、そのために多くの人が死んだ。
甚大な被害をもたらした1986年のチェルノブイリでの原発事故は、チェルノブイリという地名はその地に生えているニガヨモギから命名されたウクライナ語だということもあり、ヨハネ黙示録の中のその記述が実現したものとして当時のソビエト国民は恐れ戦(おのの)いたとされている。
*、以上、「事項・テーマ別ボード」に2010/04/03に投稿したぶん(一部補記)より。

※、ヨハネ黙示録のその箇所を作中で取り上げて注目したこともさることながら、上記のその解釈は、鉄道そして飛行機・自動車の開発へと引き続いていく科学技術の発展により築かれる機械物質文明〔特に原子力の軍事転用の原子爆弾や核兵器の使用、原発の事故、有害物質の排出による公害や自然環境の破壊の進行〕が下手をすると生命の源までもおかしてしまう災厄と破滅を人類にもたらすことをドストエフスキーは予見的に警鐘したと言えます。2011年の福島第一原発事故においても、私たちは、また、上記の箇所により、ドストエフスキーのことを想起したのでした。 
※、
森 和朗(評論家)の言(げん)
ドストエフスキーは神秘的な宗教思想家と見られがちだが、近代の科学技術が人間に突きつける問題を彼ほど鋭く洞察した人がいるだろうか。「二二が四という方程式」の天文学的な射程を、おそらく彼は直感的に見通していたであろう。



5、
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 現代日本における老若にわたるヒッキー(=ひきこもり)やニートの出現を予見? 予見度 : 9

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『地下室の手記』の主人公の人物像やその独白

*、「意見・情報」交換ボード20010915日の芋粥さんの書き込みのぶんを補足。



6、
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 三島由紀夫の割腹自決(1970)を予見?? 予見度 : 5?

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『悪霊』におけるキリーロフ像〔この世界に対する美意識を持ち日頃から身体の鍛錬を怠らないキリーロフは思想的に自殺する〕

※、高橋和己(作家)の指摘
「ドストエフスキーの『悪霊』のなかに、キリーロフという人物が出てきますが、私は、三島由紀夫氏の死はキリーロフ的な自殺という感じが現在ではしています。」〔高橋和巳の文章「自殺の形而上学」(文和書房1971年刊『自立の思想』に所収)
*、「意見・情報」交換ボード1997823日・ 20010916日の書き込みのぶんを補足。

※、むしろ、三島は『悪霊』のキリーロフからも影響を受けて自決したということなのかもしれません。  
      

( ほかのぶんは、のちに追加掲載します。 )

 






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