第十二章


 無理矢理性転換されて三ヶ月ほどが経過した。食事をきっちり取っているから、ミイラのように痩せていた体に肉が付いてきた。
 (おかしいな。こんなに毎日トレーニングしているのに)
 恵は二の腕に力こぶを作って首を傾げた。
 (もっと筋肉が付いてもいいのに・・・・)
 筋肉よりも脂肪の方が余計に付いているようだった。
 (トレーニングと言ったって、こんな狭い部屋の中でちょっと運動しているだけだからな)
 恵はそんなふうに考えていた。ところがその考えが間違っていることに気がついた。それは、着替えの時に感じ始めた乳首の痛みのせいだった。
 最初、恵は右の乳首に痛みを感じた。着替えをしたりするとき、乳首に衣服が触るとピリピリと乳首が痛んだ。そうするうちに、乳首の下に硬いしこりも感じた。
 中学二年のときも同じような経験をしたことがあった。孤児院の女の先生が、大人になって性ホルモンが出るようになったのよ。男も少し女性ホルモンが出るから一時的にそうなるのよ。ひと月もすれば自然に良くなるわよ、と教えてくれた。
 あの時と同じ痛みとしこりだった。一ヶ月経って、右の乳首の痛みはなくなったが、しこりは少し大きくなっていた。しかもさらに左の乳首も痛み始め、しこりも出来ていた。
 次第に膨らんでいく胸を両手でそっと触ってみて、そうなっている原因が、思春期のような一時的な変化ではなく、何か別の原因があると考えた。
 恵は自分の体に起こっている変化をひとつひとつ確認していった。トレーニングをしても一向に付かない筋肉。それに反して付いてきた皮下脂肪。その皮下脂肪のために体つきが何となく丸く柔らかくなってきた感じがしていた。ひげと腋毛はどうも手術後に眠っている間に脱毛処理されているらしく、まったく生えてこなかったが、ほかの部分の毛は薄くなってきている。ただ、髪の毛だけは、伸びる速さが早く、柔くなって量も増えてきていた。それに声の質が変わってきていた。看護士たちに悪態をつくとき、自分の声が高くなっているのを感じ、悟られないために恵はしだいに言葉を出さないようになったくらいだ。
 これらの変化を総合すれば、恵は自分に女性ホルモンが与えられていると結論せざるを得なかった。
 恵は注射などはされていなかった。もちろん薬も飲まされてはいなかった。残る可能性は水道水か食事だった。水道水にそんな薬を混入するのは非効率的だ。とすると、食事しかありえなかった。食事の中に女性ホルモンが混入されているに違いなかった。
 恵は、そんな結論を出してから、食事に出されてものをひとつひとつじっくり味わってみた。しかし、変な味がするようなものはなかった。
 飯、みそ汁、おかずのどれかに入っているのならそれを食べなければいいだろう。けれど、食事の中のどれに入っているのかはまったく見当がつかなかった。
 食事を摂らないようにしようかとも思ったが、考えてみれば、この先胸が大きくなろうとどうなろうと、閉じこめられて看護士たちに犯され続けるという状況に変化はないし、体力を維持するためには、食事だけはきちんと摂るしかないと恵は判断した。権藤の思う壺かもしてないが、歯を食いしばってじっと耐えるしかなかったのだ。


 木枯らしが吹く季節になったある日、食事に小さなケーキがついていた。恵はクリスマスだろうかと考えた。その日から一週間後、トレーに乗った食事はどうもお節料理のようだった。ケーキの日がクリスマスで、お節料理が付いた日が元旦だと恵は悟った。
 正月が来たのだ。権藤の経営する精神病院に閉じこめられたのがクリスマスイブだった。閉じこめられて二度目の正月になるなと恵はぼんやり思った。
 恵の誕生日は一月一日だ。捨て子の恵は一月生れらしいことは分かっていたけれど正確な誕生日が分からず、孤児院の院長先生が一月一日にしたのだ。恵は二十一歳になった。雑煮の中の餅を食べながら、恵は自分の誕生日を祝った。餅は固く、とても食えたものではなかったが、何とか飲み込んだ。
 (いつまでこんなことが続くのだろう。逃げ出せる日が来るのだろうか)


 蝉が鳴き始めた。性転換されて一年が経とうとしていた。恵の胸が両方ともかなり大きくなっていた。紗織の他には恵は女の胸は触ったことはないが、そのときの恵の胸は紗織より少し大きいと思った。
 恵の胸がBカップほどに膨らんだある日、看護士たちはメジャーを持ってきて恵の胸の大きさを測った。
 「結構な大きさじゃないか。これならブラジャーが必要だな」
 「ブラジャー・・・・」
 翌日、早速看護士たちはブラジャーを手に恵の病室を訪れてきた。
 「着けろ!」
 恵は手にしたブラジャーをじっと見つめた。
 「早くしろ! おまえにはそれが必要だろう?」
 (パンティーだけでなく、ブラジャーまで着けなければならなくなった・・・・)
 涙がまた流れた。しかし、ブラジャーを着けてみて、看護士たちが言ったように、今の恵にはブラジャーが必要なことがわかった。
 看護士たちはしばらくの間は普通のブラジャーを持ってきて恵に着けさせた。しかし、2週間ほどして持ってきたものを見て恵は絶句した。
 「どうした? 早く着けろ」
 看護士たちが恵の胸の上にポンと投げてよこした下着は、股間をやっと隠すくらいの布きれに紐がが付いたものだった。ブラジャーは乳首の部分に穴の開いたもので、カップ全体もすけすけのものだった。
 「早く着ないか!」
 抵抗しても無駄だから、恵は裸になってその下着を身につけた。
 「いいぞ、いいぞ。次はこれを着ろ」
 看護士が恵の足元に放り出したのは、濃紺のオーソドックスなセーラー服だった。恵は黙ってそのセーラー服を着て、真っ白なネクタイを巻いた。
 その日、あの大柄な看護士は、恵の中に入れたまま二度射精した。痩せた看護士は一回だったけれど、もう一人の看護士は3回も続けざまに恵の中に射精して満足そうに部屋を出て行った。

 翌日から、看護士たちはどこでどうやって手に入れるのか知らないが、真っ赤な下着や豹柄の下着を持ってきては恵に着せて喜んだ。
 セーラー服の次はナース服だった。真っ白なパンティーストッキングに、白のナースシューズはもちろん、聴診器まで用意してあった。
 それ以降も、看護士たちは様々な服を持ってきた。ヘソが見えるほど丈の短いタンクトップに、太腿の中ほどしかないミニスカートをはかせた。その上でベルトの部分を折り曲げさせて、ほとんどショーツが見えるくらいの長さにして、下から覗いて下卑た笑いを浮かべた。
 ミニスカートのウエイトレス姿やスチュワーデスの格好もさせられた。バニーガールも色違いのものを何度か着せられた。
 もちろん恵は女物の服を喜んで着たわけではない。着なければ着るまで暴力を振るわれ、食事を抜かれるから着る他はなかった。
 着れば着たで、それだけではすまなかった。
 「逆立ちしろ」
 そう言われて、恵はスカートをはいたまま逆立ちした。
 「音楽に合わせて一枚一枚脱げ! 待った! 雰囲気を出すんだぞ」
 どんなふうにやったらいいのかわからなかった。昔見た映画の一シーンを思い出しながら、恵は着せられた服を脱いでいった。男たちは拍手喝采しながら、恵が服を脱ぐのを見ていた。
 全裸になったところで、その時間の担当の看護士が立ち上がり、恵をベッドに導いてセックスが始まるのだった。ほかの二人は、その様子を見ながら目を爛々とさせていた。


 恵の胸が大きくなり始めた頃から、看護士たちは、恵の腟の中に突っ込んで射精するだけの義務的な行為から、恵を相手にセックスを楽しむようになっていた。
 「吸えよ」
 そう言って、恵に看護士たちの舌を吸わせた。さらに、恵の大きくなってきた胸をもみ、乳首を舌で転がした。長い愛撫をし始めたのだった。

 この頃から、恵は乳首や胸を触られると感じるようになっていた。もともと女じゃないから、それが本物の女の感じ方と同じかどうかは定かではないと思っていたが、あのペニスが屹立したときに股間に感じていた快感を全身に覚えるのだった。
 (男の時はこんなことはなかった。ぼくは女として感じ始めている)
 恵は、看護士たちのそのことを知られたくなかった。恵は感じても決して声には出さなかった。
 しかし、同じ頃から、陰部にジェリーを塗られるとき、たまたま敏感な部分を触られると、体の奥にぞくっとした感じがして、陰部にいつもと違う感覚を覚えるようになった。
 夜中に自分でそっと自分の敏感な部分を触ってみると、ペニスをしごいているときのような、イヤもっと強烈な快感がわき上がってきて、そこが濡れてくるのを感じた。
 (最初は触られても痛いだけだったのに・・・・)
 ペニスの先端から作られた恵のクリトリスは、ちゃんとその機能を果たすようになっていた。恵には信じられなかったが、事実だった。

 看護士たちはいつもジェリーを塗るから、恵の陰部が濡れてくることには気づいていなかった。しかしある日とうとう、あの大柄の看護士が恵の陰部を撫で回していてそのことに気づいてしまった。
 「おおっ。おまえ濡れてるじゃないか。おい、見てみろ。こいつ濡れてるぞ」
 ほかの二人が恵の陰部を覗き込んできた。恵は体を捩って見せないようにしたが、すぐに押さえつけられてまじまじと見られた。
 「ほんとだ。濡れてる、濡れてる。感じているんだ」
 「そうか、そんなに感じるか」
 自分でもわかっていたことなのに、看護士たちの口から感じていると言われたとき、恵は自分のペニスがなくなったとき以上のショックを受けた。
 「嘘だ。ぼくは感じちゃいない! 感じてなんかいない!」
 そう叫んだが、看護士たちはにやにやするばかりだった。虚勢を張っただけで、本当は感じていることを見透かされていた。
 「今日まで可愛がってやった甲斐があるというものだ。もうジェリーは要らないな。感謝しろよ。おまえはおれたちが女にしてやったも同然だ」
 その日を境に彼らはジェリーを使わないようになって、それまで以上に前戯に時間を掛けるようになった。
 気持ちに反して体は正直だ。恵は刺激されると濡れ、簡単に挿入されてしまうようになってしまった。


 看護士たちに恵が感じていることを知られてからしばらくの間、恵はできる限り感じていない振りをしていた。けれども、どんなに隠したつもりでも体の反応は隠せなかった。いやだと思っても濡れてしまうのだ。濡れなければ、感じて濡れるまでいつまでも感じる部分を刺激された。
 だんだん面倒くさくなって、恵は感じたときは感じたように振る舞うことにした。そうするうちに気持ちが体に伝わるのか、恵の感じ方はどんどん鋭く激しくなっていき、看護士が恵の中に射精した瞬間、気を失うような絶頂を何度も感じるようになった。それは男だったときには経験できなかった激しい絶頂だった。
 看護士たちが来る時間が近づくと胸が張って乳首が立ち、陰部が濡れてくるようなこともあった。女としての快感が得られるようになってしまうと、あれだけいやだったセックスが苦痛でなくなり、恵は声を上げ、自ら楽しむようになっていった。
 そうすることで、ひとつだけ良いことがあった。毎日のことだから、毎回その気になるわけではない。やはり苦痛なときもある。
 看護士たちとのセックスに応じないわけにはいかないので、気分が乗らないときは、逆に大袈裟に感じた振りをしてやるのだ。そうすると早く終わった。気分が良いときは、ああして、こうして、というと看護士たちは喜んで従ってくれた。監禁されて以来、少しだけだが初めて主導権を握れるところができたのだった。しかし、それは小さなものだった。
 恵は看護士たちに媚びを売り、もっと自分の言い分を聞いてくれるように努力した。3人のうち一人でも恵の言うことを聞いてくれれば、逃がしてくれるかもしれないと考えたのだ。
 そのためには恵はどんなことでもやった。イヤだったフェラチオも進んでやり、看護士たちの放った粘液をすべて飲み下した。言葉遣いも仕草も紗織を思い出しながら可能な限り女に近づけていった。
 「アナルファックをさせてくれないか?」
 「変なことやりたいのね?」
 「うちじゃ、やれないからな」
 「そうでしょうね」
 当然拒否したいところだったけれど、黙って応えた。最初は気持ちが悪く痛かったけれど、腟とは違った快感が得られた。

 かなり長い間、看護士の一人が恵とセックスし、ほかの二人はそれを見ているという状況だった。しかし、いつの日からか、3人とも一緒に恵を弄ぶようになった。
 フェラチオをしているときに後ろから突かれると言うことなど日常茶飯事となり、膣と肛門に受け入れ、さらにフェラチオをやるという芸当もやらされた。
 看護士たちの性の奴隷として生活しながら、恵はチャンスを窺っていた。
 (いつかは逃げ出して、権藤に復讐してやる)