第十一章


 ベッドの上で声を殺して泣いていると、ドアが開いて誰かが入ってきた。また犯られると絶望しながら、顔を上げてドアの方を見ると、入ってきたのは権藤だった。
 権藤は見下すような目で恵を見ながら話し始めた。
 「西岡君、調子はどうだい」
 「権藤、おまえ、よくも」
 「なかなかいい仕上がりだろう。満足してくれたかな。自分の目では確かめられんかもしれんがねえ。先日君が眠っているうちに見せてもらたが、立派な仕上がりだったねえ。そこだけ見たらまるで本物の女じゃないか。区別がまったくつかないよ」
 権藤は、フフと軽蔑にも似た笑いを浮かべた。
 「誰が、誰がこんな手術を」
 「知りたいかね。・・・・そうだな。教えてあげよう。実はね、アメリカ帰りの女房の従弟がこの手術をやりたがってねえ。いい実験材料があるからと誘ったんだよ。うまくいったって喜んでいたよ」
 「何故だ、何故ぼくにこんな・・・・」
 「紗織を侮辱した罰だ。ペニスがなければ、紗織と寝たという証拠がなくなるからな。それに、万が一君に逃げられても、ペニスがなければもう二度と紗織には会えんだろう。どうだ? よかったら今から紗織に会いに行ってみるか? 連れていってやってもいいぞ」
 「くそーっ。殺してやる」
 恵は立ち上がって、権藤に殴りかかろうと思ったが、立ち上がれなくて床に倒れてしまった。
 「立ちあがることも満足にできないくせに、わたしを殺せるかな? やれるものなら、やってみろ。はっ、はっ、はっ」
 「必ず、必ず、殺してやる」
 目の前に権藤がいるのに、恵は何も出来ず、四つん這いのままで涙を流しながら、そう呻くしかなかった。
 「楽しみにしているよ。ところでどうだ? 女になった気分は?」
 恵から距離を置いた位置に壁を背中にして権藤は、聞いた。
 「ぼくは女じゃない。男だ!」
 「馬鹿だねえ、君は。君はもはや男じゃない。分からないのか? 君にはペニスも睾丸もないんだよ。君はもう女を満足させることが出来ない。それに引き換え、君はその持ち物で男を受け入れ男を喜ばすことができるんだ。いまこの病室を出ていったやつらは結構満足していたぞ。それでも君は自分が男だと言い張るのかね」
 恵は反論できなかった。ついさっき看護士に言われたことを、もう一度権藤の口から聞かされて、ただ大声を上げて泣いた。
 「やつらは、君にもっとよがって欲しいと言っていたよ。それに、君は前立腺液やカウパー線液が出て濡れることができるはずなのに、からからで挿入が難しいと言っていたな。早く女に目覚め給え。君自身のためだ。その方がこの先楽しめるよ。彼らとのセックスは今日で終わりじゃないんだ。この先もずっと続くんだからな。君が醜く年老いるまでな」
 権藤はそう言い放つと、笑いながら部屋から出ていった。


 権藤が病室を出て行ってから一時間ほどして、恵は自殺を図った。生きるつもりだったのに、女にされた上に男に犯されたという屈辱に耐えられなかった。病衣の裾を引き裂いて紐を作り、首吊りを図ったのだった。
 窓の鉄格子はガラスと一体だったから紐を通せなかった。ほかには高い所に紐を掛ける場所がなかった。仕方がないので、ベッドの柵に作った紐を括りつけて首に回した。高さが十五センチもあったら首吊りできると恵は聞いたことがあった。
 それが本当だったことがすぐにわかった。体の重みで首がだんだん締められ、初め頭が熱くなったかと思うと、ほわっとなって意識が薄れてきた。孤児院の院長先生、仲間たち、可愛がってくれたホームレスのひとたち、お世話になったのに駆け落ちしてありがとうのお礼も言わなかったコンビニの店長さん。次から次へと恵の脳裏に浮かんだ。愛していると思っていたのに、不思議と紗織の顔は浮かばなかった。
 突然権藤の馬鹿にしたような顔が頭一杯に浮かび、恵は自殺を思い留まった。手足をばたばたさせると結び目が解けたらしく急に首の圧迫がなくなり、恵は弾みで頭をしこたま打った。首から紐をはずして床の上ではあはあと大きな息をして喘いだ。
 (死ねない、生きて権藤に復讐すると心に決めたじゃないか。忘れたのか? 紗織のことは許しても、権藤だけは許せない)
 そのとき、閉じ込められたとき以上に、生への執着と権藤への復讐心が恵の中に燃え上がってきた。
 (どのような姿にされようとも、どのような仕打ちを受けようとも、生きて生きて生き抜いて、必ず権藤を殺してやる)
 恵は堅くそう心に決めた。


 翌朝ベッドから起き出すと、恵は迷わずパンティーを手にとって穿き、上に裾の破れたピンク色の病衣を着た。
 朝食が届くと、米粒一粒、汁の一滴も残さず綺麗に平らげた。衰えた筋力を回復させるためにトレーニングをしようと立ち上がった時、看護士たちがぞろぞろやってきた。
 「おっ、全部食べたのか。いいぞ、いいぞ。早く元気になって俺たちを楽しませてくれ。今度はおまえだな」
 昨日の昼間、恵の肩を押さえていた痩せた看護士がズボンを下ろした。緊張しているのか、充分勃起していなかった。恵が男だということで躊躇っているのだろうか、それともこんな不条理なことをしていることで迷っているのだろうかと思っていた。
 「おい、おい。大丈夫か? ふにゃふにゃじゃないか。そんなんじゃ入らないぞ。だらしねえなあ」
 痩せた看護士は、手で自分のペニスをしごき始めたが、一向に固くならない。あれなら、入らないと恵は少し安堵したが、それで諦める奴らではなかった。彼らの辞書には諦めるという言葉はないようだった。
 「上を見るからだ。ちょっと待て、上の方は布団で隠してやるから、下だけ見ながらやれ」
 恵は上半身に布団を被せられその上からのし掛かられて自由を奪われた。それから病衣を捲り上げられ荒々しくパンティーが脱がされた。痩せた男はジェリーを塗りながらしばらく恵の陰部をいじりまわしていた。まるで恵の陰部と本物の女の陰部との違いを調べるように丹念にいじり回していた。
 しばらくしてようやく入ってきた。だが、なかなか終わらず、そばで見ているふたりが卑猥な言葉で冷やかすものだから、とうとう途中で萎えてしまった。それでも諦めず続けようとした。気が遠くなるような時間が過ぎた。彼は結局恵の中に射精することが出来ず、三十分もした頃、とうとう諦めてすごすごと出ていった。


 看護士たちは毎日毎日やってきて恵を犯した。順番はいつも同じだった。午前九時、午後二時、午後八時の一日三回、一分たりとも遅れずに、遅れると罰を受けるかのように、定期便のようにやってきた。射精出来なかった看護士も次の日から、ほかの男たちと同じように恵の中に排出していった。まるで便器に放尿するようだと恵は思った。
 恵は戦時中の従軍慰安婦のことを思った。彼女たちも兵隊に銃で脅かされ、毎日犯されたのであろう。いまの恵は少し違うが似たような状況にある。女はメンスがあったり、妊娠したりする。それに比べて、恵にはメンスもなければ妊娠の心配もない。看護士たちは毎日やりたい放題だった。

 初めのうちは体力がなくて抵抗できなかったけれど、一ヶ月ほどたって体力が戻った頃にはもう抵抗する気力も失せていた。たまに思い出したように抵抗しても、三人とも暴れる患者を押さえつけるのが仕事の男たちだし、まして三人が相手では敵うはずもなかった。あの痩せた看護士でさえ、力だけはやたらに強く、とても敵う相手ではなかった。だから恵は毎日ほとんど無抵抗で、早く終わることだけを心の中で祈りながら耐えていた。
 「おい! 四つんばいになってケツをあげろ!!」
 「えっ?」
 「早くしないか!」
 顎を殴られた。恵は仕方なく、四つんばいになって尻を突き出した。看護士はバックでするつもりのようだった。恵がいつも仰向けで人形のようにじっとしていたから、飽きてきたのだろう。
 次の看護士の時には、恵は看護士の上に跨らせられ下から突き上げられた。そんなことが何日か続いたあと、看護士の一人がセックス教本を持ち込んできて、一から順に48手のすべての体位を取らされた。
 抵抗しても殴られるだけだった。しかも、抵抗するとかえって看護士たちは喜ぶのだ。だから、看護士たちの言うこと聞かざるを得なかった。


 48手の体位の繰り返しが三周りした頃、あの大柄な看護士が恵の髪の毛をつかんで命じた。
 「舐めてくれ」
 看護士は恵の目の前に怒脹したペニスを差し出した。
 「フェラチオしろと言ってるのがわからないか?」
 恵は看護士のペニスを見つめたまま体を硬くしていた。
 「やり方を知らないなんて言わせないぞ。院長のお嬢さんにやってもらったことがあるだろう?」
 「い、イヤだ!!」
 「やれ!!」
 髪の毛をつかんで、恵の顔を看護士の股間に押しつけた。恵は歯を食いしばって抵抗した。
 「この野郎! 言うことを聞け!」
 ベッドに頭を打ち付けられ、殴られ、蹴飛ばされた。しかし、恵は今度は言うことを聞かなかった。看護士はとうとう根負けして、恵の中に放出すると部屋を出て行った。
 それだけでは終わらなかった。看護士たちは部屋に来るたびに恵にフェラチオを要求した。
 「イヤだ!」
 恵は決してその要求には応えなかった。すると、動けなくなるまで暴力を振るわれた。その上で、腟の中に射精された。
 「やればこんな痛い目に遭わなくてすむんだ。いいか? やるまで毎日でもおまえを叩きのめすからな。いつまでも強情を張っていろ」
 恵は暴力にとうとう耐えきれなくなった。ただ、ひとつ交換条件を出した。
 「するよ。するから、テレビを見せて。テレビでも見ないと、気が狂いそうだよ」
 「テレビ? テレビか。考えておこう」
 翌日、看護士は小さなラジオを持ってきた。手のひらに入るような小さなものだ。
 「テレビは院長が許してくれなかった。そいつが代わりだ。それで我慢しろ」
 何も与えてくれなくても文句は言えなかった。ラジオだけでも手に入って恵はうれしかった。恵はラジオを手に取った。
 「契約成立だな。じゃあ、やってもらおうか?」
 今更イヤだとは言えなかった。しかし、恵は突き出されたペニスを前にして固まっていた。
 「早くしないか! 殴られたいのか!」
 恵は、顔をペニスに近づけ舌でぺろりと舐めた。
 「ちゃんと両手で持って舐めろ」
 恵はまだ躊躇っていた。頭を殴られた。
 「早くしろ!」
 やるまで殴られ続けることはわかっていた。恵は心を決めて両手で突き出されてペニスを握り、舌を這わせた。恵の目から涙が流れ出た。
 「そうだ。裏筋を舐めろ。おまえだってそこが気持ちいいことを知っているだろう?」
 恵は舐め続けた。止めようとすると、もっとやれと言って止めさせてくれなかった。
 「口の中に入れて吸え」
 ここまで来たら、もうどうでもよかった。恵は口を開いてペニスをくわえ込んだ。
 「歯をたてるな!」
 そう言われたとき、食いちぎってやろうかと思った。しかし、相手は一人じゃない。そんなことをしたら、ひどい仕打ちが待っているに決まっていた。恵はさらに口を開いた。ペニスが恵の喉の奥まで押し込まれ、ひどい吐き気がした。
 「歯をたてるなと言っているだろうが!!」
 恵は涙を流しながらフェラチオを続けた。
 「もういいぞ」
 そう言われたときには、30分が経過していた。
 「初めてだから仕方がないが、もう少し要領よくやれ。おまえが院長のお嬢さんにやってもらったようにな」
 恵は黙って下を向いていた。
 「さあ、今日はバックでやるぞ。向こうを向け」

 ほかの二人も恵にフェラチオを要求した。しないと殴られるので、恵は仕方なくフェラチオをしてやった。
 「もっとうまくできないのか?」
 「ビデオでも持ってこられれば、エロビデオで勉強させてやるんだが」
 「なれるまで待つことにしようぜ。時間はたっぷりあるんだ。しばらくすれば、うまくできるようになるさ」
 「そうだな」
 毎日3人にフェラチオを強制されるのだ。イヤでイヤでたまらなかったが、次第になれて2週間もするとうまくできるようになった。
 「うまいぞ。うまいぞ。おう! たまらんぞ!!」
 あのでかい看護士は、恵の頭を抱いて恵の喉を突き上げた。そうするうちに、恵は異変を感じた。口の中で、大きかった看護士のペニスが一段と大きくなってきたのだ。
 (口の中に射精する気だ!)
 恵は慌てて口を離そうとしたが、押さえつけられていてできなかった。恵の喉の奥でペニスが痙攀した。
 「ぐふぁあ・・・・」
 喉の奥に多量の粘液が押し寄せてきて、恵は呼吸ができなくなった。両手で看護士を突き飛ばした。
 「げふぉっ! げふぉっ!! げふぉっ!」
 咳とともに白濁した液体が吐き出されてきた。その一部が鼻の穴から飛び出てきた。生臭いあの臭いが恵の鼻腔全体に広がった。
 「俺の心を込めた贈り物を吐き出すやつがあるか!」
 殴られて恵は床に這いつくばって泣いた。
 「続けて二度は無理だから、これで我慢しろ」
 そう言って、あの大柄の看護士は、泣き続けている恵の足を開かせて、電導のディルドーを差し込んだ。
 「イヤだ! そんなのイヤだ!!」
 逃げだそうとしたけれど、押さえつけられてディルドーでこね回された。20分ほどたって恵はようやく解放された。
 三人が出て行くと、恵はトイレに行ってうがいをした。鼻をかんで鼻の中に残った粘液を出したが、鼻腔にあの臭いがこびりついて消えなかった。恵は一晩中、うがいをして鼻の中を洗い鼻をかんだ。夜が明けても臭いが残っているような気がした。

 そんな苦痛と屈辱に耐えながらも、恵は恵で食事をきっちり摂り、毎日トレーニングを続けた。生きて権藤に復讐するために。