第12章 死んだ彼女に似た女

 タクシーのラジオからクリスマスソングが聞こえる。今日は、クリスマスイブ。市内は若いカップルで溢れていた。最近の若者は、イブにカップルでディナーを摂り、そのままホテルに泊まると聞いた。羨ましいような気がする。
 わたしは、未だ独身だが、そんな気にもならないし相手もいない。相手を見つけようとすれば、すぐにでも立候補してくる女はいるだろう。しかし、わたしの眼鏡に合う女はいない。あの時、美子と結婚できていれば、今頃は小学校へ通う子どももできていたのに・・・・。

 7年前、卒業して2年目の研修医だったわたしは、さる田舎の公立病院への赴任を言い渡された。都会育ちのわたしは、田舎などに行きたくはなかった。けれど、教授命令は絶対で拒否するわけにはいかなかった。
 そこで看護婦をしていた美子と出会った。一目見たときから、わたしは美子の虜になった。美子は、わたしが長い間思い描いていた理想の女性だった。姿だけではなく、性格も控え目で、よく気の付く女性だった。
 誘っても、すぐにうんとは言ってくれなかった。いくら医者の誘いだからと言っても、1年たてば大学に戻ってしまう研修医だ。遊びで誘ったとしか思って貰えなかった。
 赴任して4ヶ月目。美子が虫垂炎になって入院した。わたしは毎日のように見舞いに行って、わたしの気持ちが本気であることを伝えた。
 美子もようやくわたしの気持ちを理解してくれ、退院後、快気祝いという形で初めてのデートに応じてくれた。
 キスのひとつさえもない、ただのデートが3ヶ月続いた。わたしは、拒否されることが怖くて、手さえも握らなかった。
 美子と初めてキスしたのは、クリスマスイブの夜だった。酔った勢いで美子にキスしたのだった。美子はちょっと恥ずかしそうにしていた。その後しばらくして、わたしと美子は結ばれた。美子は処女だった。
 2月になって、4月から大学に戻ることになったわたしは、その前に美子と結婚しておこうと考え、美子を連れて実家へ戻った。
 「看護婦となんか、絶対に結婚は許さん!」
 父は烈火のごとく怒り、わたしたちを家から追い出した。何度説得しても、父は許してくれなかった。挙げ句が、医師会副会長の娘との縁談を進めていった。
 「わたしが身を引くわ。それがあなたのためですもの」
 美子は目に涙を一杯浮かべて、そう言った。
 「美子。できるものなら、君を連れて何処かへ逃げたい。しかし、ぼくにはその勇気がない。不甲斐ないぼくを許してくれ」
 「さよなら。いつまでも愛しているわ」
 駆けだしていく美子の後ろ姿をわたしは呆然として見ていた。それが生きている美子の最後の姿になろうとは思ってもみなかった。

 数日後に控えた転勤の準備をしていたわたしの耳に飛び込んできたのは、美子の自殺の報だった。睡眠薬を飲んで死んだのだった。
 「ばかやろう! おまえなんか死んじまえ!」
 自分の弱さを呪いながら泣いた。
 葬式の場で、わたしと美子が関係があったことを知るものたちの刺すような視線を浴びながら、わたしは読経の声を聞いていた。
 火葬場まで行ったわたしは、美子の真っ白な骨の中に、小さな骨を見つけて愕然となった。
 「知らなかった・・・・」
 わたしは、美子に親族がいるのも構わず床に突っ伏して泣いた。

 それ以来、わたしは女と付き合ったことがない。美子以上の女性が現れなかったし、美子を忘れたくなかったからだ。
 「あの時、許してあげればよかったわね」
 なかなか結婚すると言わないわたしに向かって、母がよく言う。
 「今度は、あなたが気に入った人なら、誰でもいいって、お父さん、言ってるから」
 美子以上の女性は現れない。わたしは結婚するつもりはなかった。

 「お客さん、着きましたよ。あれ? どうされたんですか?」
 わたしの涙に、タクシーの運転手が探るような目で見た。
 「いや、ちょっとゴミが入ったんだ。いくらだ?」
 支払いを済ませ、ホテルのロビーに入ろうとしたとき、一組のカップルと出会った。その女性を見てビックリした。
 「美子・・・・」
 エッというような目で見たその女性は、ほんとに美子そっくりだった。
 「失礼。人違いです」
 わたしは呆然とそのカップルを見送った。

 カップルなのだろうか? 一緒にいた男は、その女性とよく似ていた。兄妹のように見えた。しかし、雰囲気は恋人同士のようだ。ふたりはフロントでチェックインしたあと、エレベーターに乗って姿を消した。
 「いらっしゃいませ。大沢先生。いつもご贔屓、ありがとうございます」
 「医師会の忘年会は、何階だ?」
 「三階の鳳凰の間でございます。そろそろ医師会長のご挨拶が始まる頃でございますよ」
 「そうか。急いで上がらなければ。ところで、今チェックインしたカップルは、イブの泊まり客か?」
 「ああ、橋谷ご夫妻ですね」
 「橋谷ご夫妻? 結婚しているのか?」
 「はあ、そのようにご記入されております」
 「イブにホテルに泊まるカップルと言ったら、結婚前とばかり思っていたが・・・・」
 「未婚とはお書きになる方はほとんどいませんし、今の若い方には、結婚されてもこうやってイブを過ごす方も多いようで・・・・」
 「そうか・・・・」
 恋人同士なら彼女ともしかしてと思ったが、結婚しているかもしれないのか・・・・。せっかく美子に似た女性に巡り会えたのに、手の届かないところにいる。
 溜息をつきながら、わたしは忘年会の会場へ走り上がっていった。

 それから数カ月が過ぎた。わたしは、美子に似た女性に出会ったことなど忘れていた。病院の増築を考え、資金調達のため東洋シティー銀行の大分支店を訪れた。その時、窓口に座っている女性を見て目を見張った。あの女性だ・・・・。
 支店長と融資の相談をしていると、その女性がお茶を持ってきた。ネームプレートには橋谷の文字が見えた。
 「彼女。美人でしょう?」
 わたしの彼女に対する様子を見て、支店長がにこりと笑ってそう言った。
 「あ、そうだね」
 「大沢先生。独身でしたよね」
 「ああ、そうだが」
 「ご紹介しましょうか?」
 「えっ!?」
 結婚にしているはずなのにと少し首を傾げた。あの後離婚でもしたのだろうか? しかし、名前は変わっていないが・・・・。夫婦と偽ってあのホテルにチェックインしたのだろうか? いやそれなら、女の名前を使うはずはない・・・・。
 「彼女、コンピューターオタクのお兄さんと暮らしているんですけどね。お兄さんの収入が少なくて自活できないから、結婚して見捨てるわけにはいかないって言ってるんですよ。健気な娘ですよ。どうです?」
 兄妹? それなら、彼女の名前が橋谷というのは分かるが、フロントマンは橋谷ご夫妻だと言った。フロントマンの勘違いか?
 「いや・・・・」
 「わたしが一席設けましょう。先生とも長い付き合いになりそうですから」
 結婚している? していない? どっちだ? ともかく、一緒に食事ができるなんて願ってもない。もし、独身であれば、その時には正式に付き合ってみよう。

 その夜、料亭に招かれた。支店長にわたし、そして橋谷幸恵だ。
 「わたし、幸せ。美味しいふぐを食べられるなんて」
 「おいおい、橋谷君。大沢先生にお注ぎするんだ」
 「あら。ごめんなさい。はい、先生。おひとつどうぞ」
 何度見ても、幸恵は美子に見える。これで、独身ならば・・・・。
 「橋谷君、大沢先生は独身なんだ。どうだ?」
 「あら? 今日はお見合いだったんですか? いやだわ。わたしに黙って。もっと着飾ってくればよかったわ」
 「で、どうなんだ?」
 「素敵な方ですわ」
 わたしを見て、幸恵はポッと頬を赤らめた。ほんとに独身なのだろうか? 支店長は独身だと信じて疑わないようだ。何かの理由で結婚していることを隠しているのかもしれないと思って黙っていた。
 「わたしみたいなおジンはだめでしょう」
 そんなわたしの言葉に幸恵は、
 「そんなこと、ないですよ」
 と真顔になって答えた。

 タクシーで幸恵を送っていった。幸恵が住んでいるアパートは、減反で作物が作れなくなった畑を埋めて作られた、今流行のアパートだった。
 「先生。ありがとうございました。又、ご一緒できるといいですわね」
 そう言って、幸恵はそのアパートの二階へと上がっていった。幸恵がドアを開けたその部屋の窓際に、髪の長い男の横顔が浮かんでいた。イブの夜、幸恵と一緒にいた男だった。
 幸恵の姿がドアの奥に消えた後、ホントに独身なのかどうか聞きそびれたことを後悔した。

 わたしは、興信所を使ってふたりの関係を調べた。
 「橋谷克也、大分県大野郡生まれの25歳。熊本工学院大学を卒業後、鳳ソフトエンジニアリングに就職。就職と言っても、完全能率給で、仕事は自宅でやっているようです。給料はせいぜい6,7万と言うところ。
 妻の幸恵は、同じく大分県大野郡生まれの24歳。大分女子大学を卒業後、東洋シティー銀行には2年前就職。勤務態度は良好です。
 ふたりは、橋谷克也が高校3年、幸恵が高校1年の春に知り合って、ずっと付き合っています。大学は別々でしたが、橋谷克也が大学を卒業して大分に就職してから同棲を始め、一昨年の秋に入籍しています。ただし、ふたりとも勤務先には独身と偽っているようです」
 「どうしてだ?」
 「夫の稼ぎが少ないことを気にしているようです。妻が夫を養っていると知られたくないのでしょう。同じアパートに住む住人たちもふたりは兄妹だと思っているようです」
 「そうか・・・・」
 「ふたりは仲の良い兄妹として、近所では有名です。結婚していることを知っている同級生たちに聞いても、いつも大変なのろけようだそうです」
 結婚している方が本当だった。わたしは失望した。

 その年の夏が終わった頃、わたしはひとりで飲みに行っていた。午後10時過ぎだったと思うが、ドアが開いてふたりの女性が入ってきた。顔を見て驚いた。ひとりは幸恵だったのだ。
 「あら、先生、お久しぶり」
 幸恵の方から、わたしに声をかけてきた。
 「ああ、えっと・・・・」
 幸恵の名前ははっきりと覚えていた。しかし、覚えていない振りをした。
 「橋谷です。東洋シティー銀行の」
 「ああ、そうだったね」
 「わたしのような美人の名前を忘れてしまうなんてひどいわ」
 「すまん、すまん」
 幸恵はかなり酔っているようだ。
 「久しぶりに親友に会っちゃって、飲み過ぎたわ」
 そう言いながら、その親友がいるのにも関わらず、わたしにしなだれかかってきた。
 「幸恵。ご主人に言うわよ」
 「あんなの、ご主人なんて言って欲しくないわよ。ただのヒモなんだから」
 「これ、これ、幸恵。あんた、いつもはあんなにのろけているのに、今日はどうしたの?」
 「あああ、克也なんかと結婚しなけりゃよかったわ。先生みたいな人と結婚できてたらよかったのに・・・・」
 「そんなこと言っていいの? 幸恵、ほんと、飲み過ぎよ」
 「うるさいわね。ママ、水割り、一杯頂戴」
 それから幸恵は親友という女性が止めるのも聞かずに水割りを三杯飲んで酔いつぶれてしまった。

 「銀行では独身と聞きましたが、結婚しているんですか?」
 わたしは、知らない振りをして、吉岡という幸恵の親友に聞いた。
 「克也、稼ぎがよくないからねえ。女が養ってるって言われたくないんでしょう?」
 情報通りの答えが返ってきた。
 「旦那さんというのは、幸恵さんによく似たひとですかね?」
 「あら、ご存じなんですか?」
 「いや、一年ほど前、ちょっと見かけたことがあって・・・・。仲のよい兄妹のように見えましたが・・・・」
 「そうでしょう? 幸恵が高校へ入学したとき、同級生からお兄さんがいるんでしょうって言われて、会いに行ったのが付き合い始めたきっかけなのよ」
 「ほう、そうですか」
 「克也に女装させると、きっと幸恵にそっくりになると思うわ」
 イブの夜に見かけた克也の顔を思い出す。あの時、ふたりはよく似ていると感じたが、ちょっと茫洋として思い出せない。

 1時間ほどして真っ青な顔をして幸恵が起き出して、気分が悪いと言ってトイレへ行った。ゲエゲエ吐いていた。
 かなり長い間、便器にへばりついていたが、吉岡という女性が心配して立ち上がろうとしたとき、トイレから出てきた。
 「先生、ごめんなさい。わたし、変なこと言わなかった?」
 幸恵の顔色はかなりよくなっていた。わたしは美子がわたしに語りかけているように錯覚していた。
 「いや、何も」
 「すみません。日頃の鬱憤が溜まってて」
 「いいよ。長い人生には、そう言うこともあるさ」
 「幸恵。わたし、もう帰るけど、ひとりで帰れる?」
 コートを着ながら、吉岡という女性が幸恵に話しかけた。
 「大丈夫よ。もう一休みして帰るわ」
 「じゃあ、お先に」
 吉岡という女性は一足先にスナックを出ていった。
 「彼が午前0時に彼女のアパートに来るの。だから・・・・」
 「あ、なるほどね」
 冷たい氷水を飲んだあと、幸恵は帰ると言って立ち上がった。
 「橋谷さん、送っていこうか?」
 「送りオオカミになりそうね」
 そう言ってにっこり笑った幸恵にくらっと来た。いけない。相手は人妻だ。

 しかし、結局送っていくことになった。スナックを出ていくとき、ママが意味ありげなウインクをわたしに投げてよこした。
 幸恵にその気があったら、ホテルに誘ってみるつもりだった。しかし、幸恵はそんな素振りを見せない。ただ送っていくことになりそうだ。そう思っていた。
 ところが、表通りに向かって歩いているとき、幸恵が突然わたしに抱きつき唇を合わせてきた。驚いたと言ったらなかった。
 「先生。好きよ」
 「だ、だめだよ」
 幸恵はなおもキスしようとした。
 「君にはご主人がいるだろう?」
 「いたら、いけないの?」
 「いけないことはないが・・・・」
 わたしもその気になって、幸恵を抱きしめた。ところが・・・・。
 「・・・・でも、今日はだめね」
 幸恵はそう呟いた。自分から誘うような素振りを見せて、それはないよと思った。
 「先生に抱かれたい。だけど、今日はだめなの」
 「どうしてだ?」
 「主人は嫉妬深いの。わたしが外で飲むと、主人はわたしが浮気していないか調べるの」
 わたしは黙って聞いていた。
 「シャワーも浴びさせないで、わたしの体を鼻で嗅いで廻るのよ。男の臭いがしないかどうか」
 「そうなのか・・・・」
 「先生。もし、お嫌じゃなかったら、明後日の夕方、会ってくださらない?」
 幸恵は本気のようだ。相手は人妻だが、わたしの理想とした女性そっくりだ。わたしも酔っていた。死んだ美子に誘われているような気がしてうんと答えた。

 午後5時半。診療を終えて、わたしは約束した場所へ急いだ。そこは、大分港近くの、倉庫を改造した喫茶店だった。
 幸恵はあの時かなり酔っていた。わたしと会おうと言ったのは本気でなかったかもしれない。イヤ、覚えてすらいないかもしれない。来ないかもしれないなあと、コーヒーを飲みながら、ぼんやり考えていた。
 だから、幸恵がホントに姿を現したとき、わたしは嬉しいと言うより驚きの方が大きかった。
 「先生。お待ちになった?」
 「いや、わたしも今来たばかりだ」
 「わたしにもコーヒーください」
 そう言って向かいの席に座った幸恵は、結婚しているとは思えないような格好をしていた。
 「いつもそんな格好をしているのかい?」
 「先生も知ってるでしょう? わたし、銀行では独身って事になってるから、それ相応の格好をしていないとね」
 「なるほど」
 「先生。わたしの愚痴を聞いてくれます?」
 愚痴を聞いてくれか。一昨日、わたしに抱かれたいと言っていたから、期待してきたのに、当て外れになりそうだ。
 「ああ、いいよ」
 「主人は自分勝手でマガママで、わたしがほとんどの生活費を稼いでいるのに、家のことは女の仕事だって言って、何にもしてくれないんです」
 「それはいけないなあ」
 「そうでしょう? 先生もそう思うでしょう?」
 「ああ」
 「夜の生活だって、自分がしたいときには、疲れていると言っても無理矢理だし、やるだけやったら、さっさと寝てしまうんです」
 男なんてものはそんなものかも知れないなと思った。
 「もう疲れちゃって・・・・。別れてしまいたいんだけど、わたしの方から言い出すのはしゃくで」
 「そうだなあ。浮気とかはしてないんだろう?」
 「あのひと、外に殆ど出ないから」
 「暴力は?」
 「今まで一度もない」
 「ギャンブルは?」
 「まったくしない」
 「アル中なんて事は?」
 「あの人、飲めないんです」
 「それなら無理だ」
 「じゃあ、諦めろって言うんですか?」
 「好きで一緒になったんだろう? 稼ぎが少ないとか、セックスするのが身勝手だと言っても、離婚の理由にはならないだろうね」
 「やっぱりそうですか・・・・」
 幸恵はガッカリした顔でコーヒーをすすった。
 「先生。泌尿器科ですよね」
 「内科もやってるが、それがどうしたの?」
 「アメリカでは、インポが離婚の理由になるって聞いたけど、ほんとですか?」
 「ああ、ほんとだ。向こうの人は、セックスがまずありきだからね」
 「日本じゃどうなんですか?」
 真顔で幸恵はそう聞く。
 「最近は認められているようだね」
 「なんとか、主人をインポにできませんか?」
 「・・・・できないこともないが・・・・」
 「インポになって、わたしを満足させられないのなら、きっと別れてくれると思うんです」
 幸恵が離婚すれば、あるいはわたしと一緒になってくれるかもしれない。悪魔がわたしに囁いた。殺すわけではない。インポにするだけだ。
 「協力しよう」
 「わあ、嬉しいわ」
 「で、どうするんですか?」
 「ご主人の食事か飲み物の中に女性ホルモンを混ぜるんだ。半年もすれば、勃起しなくなる」
 「女性ホルモンを・・・・。なるほど分かったわ。先生からいただけるんでしょう?」
 「病院に来てくれ。生理不順とか病名を付けて、合法的に処方してあげよう」
 「助かります」
 「ひとつだけ約束してくれ」
 「なんでしょう?」
 「インポは、男にとって重大事項だ」
 「だから?」
 「中にはインポになったことを悲観して自殺する人間もいるんだ」
 「皆は言わなくても分かるわ。主人が自殺しないようにすればいいんですね」
 「そう言うことだ」
 「任しておいてください。絶対そんなことはさせませんから」
 「ことろで、今日は時間があるんだろう?」
 わたしは、幸恵を見た。幸恵も察したようだ。
 「今日は酔ってないから、わたしを調べたりしません。8時までにアパートに帰り着けばいいわ」