今年も体育祭の季節がやってきた。一年前の実績を買われ、俺は二年だというのに実行委員長に抜擢された。生徒会の副会長の静香が副実行委員長だった。毎日浮き浮きしながら、準備に追われた。
体育祭本番の前日、ほとんどの準備が終わり、『実行委員が塾だ、ピアノのお稽古だ』と言って、ひとりふたりと帰っていった。気がつくと俺と静香のふたりだけが教室の中に取り残されていた。
薄暗くなりかけた教室で静香の横顔を見ているうちに、俺は自分を押さえきれなくて、静香に抱きついた。そして、激しく抵抗する静香を押さえつけて無理矢理犯してしまった。
しばらく泣いていた静香は、急に泣きやむと服装を整えて俺の方を向いた。その顔は俺に対する増悪で、まるで夜叉のようだった。俺は猫に睨まれたネズミのようにその場に立ちつくした。静香は俺につかつかと歩み寄ってくると俺の頬を思い切りぶった。そして、ひと言も言わずに教室を出ていった。
ひとり取り残された俺は、自分のしたことが急に怖くなった。これは犯罪だ。静香が俺のことを訴えれば、俺は絶対退学になってしまうだろう。それだけじゃあない。少年院に入れられてしまうだろう。そんな恐怖に怯え、俺は教室の隅で膝を抱えて小さくなっていた。
家に帰り着いても、玄関のドアが開くたびに警察が来たのではないかとビクビクした。その夜は、結局一睡もできなかった。
明けて体育祭の日。静香は学校に来なかった。体育祭は散々だった。俺は全校生徒のブーイングを浴びた。祥子が心配そうな顔をして慰めてくれたが、事実を言うわけにはいかなかった。実行委員長の重圧に勝てなかったんだと誤魔化した。
十日ほどして、静香が出てきた。少し顔色が青白かったが、あの日以前の静香と変わりがなかった。俺は静香の顔をまともに見ることができずに、ゴキブリのようにこそこそと逃げ回った。
俺は罪の意識にさいなまれ、勉強が手に着かなくなった。祥子がいなかったら、俺は立ち直れなかったかもしれない。いつか懺悔しなければならない。土下座してでも許しを請おうと心に決めながらも、静香のそばに寄ることもできなかった。