第20章 俺と本間の初夜

 そして今日、結婚式当日だ。そう言うわけだから、花嫁が俺なんて言ってるんだ。理解してくれたかな?

 結婚式が終わって、目出度し、目出度し。これで終わり、じゃないのは分かるだろう? 解決していない問題がいくつかあるよね。続きを行こう。
 俺は、二次会会場に設定されたホテルのスカイラウンジにいる。友人たちは、新郎新婦を無視して、数人ずつのグループを作って飲んでいる。まるで同窓会だ。俺は祥子と隅の方でこそこそ話しをしていた。
 「ねえ、静香。もうひとつの理由を教えてくれないの?」
 「もうちょっと待ってね。あと二週間くらいはかかると思うの」
 「まだ、二週間も待つの? つわりが出そうよ。待ってる間に妊娠しているのがばれて、病院に連れて行かれそうよ」
 「ここまで来たのよ。もう少し頑張ってよ。わたしとあなたの子供のために」
 「分かったわよ。でも、できるだけ早くね」
 「了解、了解」
 「静香! こんなところで何をこそこそ話しているの。さあ、こっちへ来て! みんな! 静香と旦那さんのために、かんぱあい!!」
 俺の旦那さん、本間彰一は友人たちと水割りをがぶがぶ飲んでいる。嬉しいのは分かるけど、あんなに飲んでもいいのかなあ。今夜は初夜なんだけどなあ。
 いや、今夜絶対したいって訳じゃあないよ。こんな状況の花嫁でなかったら、今夜のことがもの凄く心配だろうけど、俺は違うからね。本間が望めば、俺は今日から本間の妻なんだから仕方がないなと思っている程度だよ。いや、本当だってば。
 と言うわけで、俺と本間は結婚式が行われたホテルの一室にいる。時間は午後十一時ちょっと前。
 俺は、シャワーを浴びたあと、新しい下着を身につけて、可愛いネグリジェを着てベッドの中にいる。
 本間は、トイレの中でゲエゲエやっている。これで三回目だ。二回目までは俺も新婦らしく、本間の背中をさすってやっていたのだが、もう疲れた。何? 何回でもさすってやるべきだって? よけいなお世話だよ。
 本間はうがいをして、歯を磨いてから、ベッドに入ってきた。まだかなりアルコール臭い。本間はその気のようだ。できるんだろうか? 少し心配になる。
 そんな俺の心配は懸念にすぎなかった。本間とは祥子の体を借りてしたことがある。確か五回だったかな。あのときより、随分上達している。愛撫のテクニックもまずまずだし、挿入もスムーズだった。
 あれからかなり経つし、本間も静香、静香と言いながら、結構遊んでいるようだ。看護婦を何人か泣かしているんだろうな。
 それにしても痛かった。本間が腰を動かすたびに、体が引き裂かれるんじゃないかと思うくらい痛かった。本間にはそんなことはおくびにも出せなかったが、こんなに痛いなんて思わなかった。
 静香は処女じゃない。俺が最初の相手だ。それは確かだけど、俺が無理矢理犯したあと、静香はセックスをしたことはない。静香が俺に自分の秘密を告白したとき、俺のことを最初で最後の男だと言っていたからだ。
 静香はあれ以来経験がないのだ。処女同然だったのだ。いつまでこんなに痛いんだろう。感じるなんて、相当先の話になりそうだ。
 本間は横でグウグウ鼾をかいて眠ってしまった。俺はベッドを抜け出してシャワーを浴びた。
 シャワーを浴びながら思った。さっきのさっきまで、俺は今の状況をやむを得ないからと受け身の状態だった。俺が本間と結婚したのは、看護婦をやれないから、寿退職して逃げるため。そして、まだ内緒のもうひとつの理由があるからだ。
 しかし、本間に抱かれているうちに気が変わった。俺は元には戻れない。一生静香として生きるしかないのだ。本間はこの静香を心から愛している。本間は優しく、思いやりのある人間だ。俺の長年の親友だ。静香が静香であったなら、きっと本間のために、本間の誠意に応えるだろう。
 何度も言うが、俺は一生静香として生きるしかない。逃げることはできないのだ。俺は静香になりきって本間のために尽くそう。そう決めた。むかし、俺は本間のためならどんなことでもやろうと心に決めていた。今がその時だ。