第1章 藤崎探偵事務所麻布支店

 効かないクーラーが、グオン、グオンと息も絶え絶えに騒音をあげている。八畳足らずの狭い部屋だというのに、一向に涼しくならない。俺は汗をだらだらと流しながら、昼飯代わりのカップ麺をすすっていた。
 「おい、健二! お茶、入れてくれ」
 向かいのソファーに座って、同じく汗を流しながらカップ麺を食べている健二に、俺は顎で指図した。
 「お茶? お茶くらい、自分で入れろよ」
 健二はソファーにでんと座ったまま動こうとしない。
 「健二、おまえなあ、俺に雇われているくせして、俺の命令がきけねえって言うのか? ああっ?」
 俺は、カップ麺をテーブルの上に置いて、健二を睨みつけた。
 「給料もきちんとくれないくせして、何が雇ってるだよ。お茶くらい、自分で入れなよ。俺だって、飯食うのに忙しいんだ」
 そう言って、健二はズルズルと麺をすすった。
 「きちんとやらなくたって、飯を食わしてやってるだろうが。そのカップ麺だって、俺が金を出したんだぞ。早く、入れろよ」
 「・・・・しかたねえな。入れてやるよ」
 健二は渋々立ち上がって、部屋の隅にある小さなキッチンで、お茶を入れ始めた。
 「ああ、旨かった」
 俺は食い終わったカップ麺の入れ物をテーブルの上にポンと放り出した。
 「旨かったはいいけど、こんなもんばっかりだったら、栄養失調になりそうだよ」
 そう言いながら、健二は俺の前に湯飲みをどんと置く。
 「金がねえんだから、しょうがないだろう?」
 「そりゃそうだけど、なんか、いい話しはないのかねえ」
 「ここんとこ、さっぱりだな」
 俺は、藤崎探偵事務所と言う名前の、いわゆる興信所の麻布支店を任されている。つまり支店長って訳だ。だけど、健二の他に所員は誰もいない。支店は、裏通りにある雑居ビルの4階にあるから、通りがかりに見つけてきたなんて客は皆無に近い。
 本店のおこぼれの仕事が時々回ってくる以外は、ビラ配りをやったり、引っ越しの手伝いなどをやって、何とか食いつないでいる状態だ。支店と言ったって、給料は独立採算性になっているので、本店からは何の援助もない。
 「名義料を取らないだけ、良心的だと思え」
 とは、藤崎の兄貴の有り難いお言葉だ。藤崎の兄貴は、10歳年上の俺の従兄で、12人いる従兄弟の中では最年長の男だ。この世界では結構有名で、かなり稼いでいる。だから、少しくらい回してくれても良さそうなのだけど、親戚だからと言って、甘やかすのはよくないと、俺が三食全部カップ麺で暮らしていても、何の援助もしてくれない。
 健二は、俺の高校の後輩で、あるきっかけで俺と出会い、この事務所に転がり込んできた。是非探偵をやりたいと言うから、手伝って貰っている。

 ルルルーッ、ルルルーッ、ルルルーッ、ルルルーッと電話が鳴った。あ、そうそう。この電話は藤崎の兄貴からの借り物だ。電話代は藤崎の兄貴が支払ってくれている。だから、
 「仕事以外のことに電話を使うなよ!」
 と、いつも怒られている。電話に出なけりゃ。久しぶりに仕事の話しかも。
 「はい。藤崎探偵事務所麻布店です」
 「あのう。白浜ですけど」
 「白浜さん? ・・・・あ、ああ。白浜様ですね」
 「この前のかわい子ちゃん、まだいます?」
 「あ、はい。おりますよ」
 俺は、健二の方をちらりと見ながら返事をした。かわい子ちゃんねえ。確かに健二はかわい子ちゃんかもしれない。
 「また、お願いしたいんだけど、よろしいかしら?」
 「勿論よろしいですよ。で、いつでしょうか?」
 「今からって言うわけには参りませんでしょう?」
 「今から? あ、そうですね。ちょっとお待ちください。あの子も、いろいろとスケジュールがありまして・・・・」
 健二が近寄ってきて、そば耳を立てている。俺は、ノートをぱらぱらとめくる音を受話器へ流したあと、勿体ぶって答えた。
 「ちょっと、予定があるようですが・・・・」
 健二がビックリしたような顔をして、俺から受話器を取り上げようとした。だけど、俺はシイッと人差し指を立てて、健二の抗議をかわす。
 「何とかなりませんの? お手当は、少し色を付けても構いませんけど・・・・」
 「エッとですねえ。そうですねえ・・・・。分かりました。何とかしましょう。午後3時からの分を明日にしていただいて、白浜様にお廻しいたします」
 「助かりますわ」
 「いえ、他ならぬ白浜様のご要望ですから」
 「じゃあ、午後3時。待ってますわ」
 電話を置くと、健二がにやりと笑う。
 「兄貴も上手いな。予定なんてないのに」
 「ほいほい行ったら、足元を見られるさ。報酬が倍とはいわんが、5割り増しくらいは出るだろう」
 「5割り増しかあ」
 「頑張って来いよ」
 「へえい」
 健二は、早速出かける準備を始めた。

 電話をかけてきた白浜というのは、どこかの商社の社長夫人だ。歳は60前くらいらしいと健二が言っていた。
 2週間ほど前、白浜家で働くお手伝いさんが急病で倒れた。藤崎の兄貴から、お手伝いさんの代わりを探しているという依頼を受けて、俺は健二を派遣した。健二は、料理洗濯掃除と、何でもこなせるからだ。
 健二は、社長夫人に殊の外気に入られたらしく、決められた報酬に2割ほど色を付けてくれた。さらに健二は、それから数日は気前がよかった。その中年のおばさんのお相手をしてやって、報酬以外にお手当を貰ったらしい。健二はまだ24だというのに、よくも60に手が届くようなばばあと関係を持てるものだと思う。
 「歳なんて関係ないさ。やれって言うのなら、100歳の婆アとでもやってあげるよ」
 俺は肩を竦めた。健二の奉仕精神には呆れる。
 2週間前、夫が福岡出張でいなかったから、そんなことができたというのだが、今回も何らかの理由で夫がいないのだろう。今日に拘ったのは、その辺りにあると俺は推測している。だから、ちょっと勿体ぶって見せて、報酬をつり上げようというわけだ。
 部屋の隅で、Tシャツにジーンズ姿から余所行きに着替えた健二が、俺の前に姿を現した。
 「おう! 可愛く仕上がったじゃないか。それなら、白浜の婆さんに気に入られるだろう」
 「へへ。じゃあ、稼いでくる」
 「頑張りすぎて、腰を悪くするんじゃねえぞ」
 「分かってるよ」
 健二はドアを開けて颯爽と出ていった。

 健二が出かけたあと、しばらくして再び電話が鳴った。
 「剛、今日は時間があるか?」
 藤崎の兄貴だった。
 「いつだって、暇を持て余してますよ。何です?」
 「こっちじゃ、やれん仕事だ。おまえに廻す」
 こういう仕事は、ろくな仕事がない。要するに探偵業じゃない仕事なのだ。健二が頼まれたお手伝いにしても、お手伝いだけじゃないことが分かっていて、こっちに廻してきたのだ。
 「妙な仕事じゃないでしょうね」
 「選り好みできるのか?」
 「できませんね」
 「じゃあ、四の五の言ってないで、やれ!」
 言われるまでもないのだ。健二の稼ぎだけを宛てにするわけにいかない。俺だって稼いでおかなければ。
 「分かったよ。で、何の仕事?」
 「和泉企画の仕事だ」
 「和泉企画? あ、あの、以前、一度頼まれたことがある、例の・・・・」
 「そうだ。あの和泉企画だ」
 「・・・・まあ、いいか」
 「嬉しいくせして、勿体ぶるんじゃねえぞ。場所は、携帯に電話して聞け。いいな」
 「はい」
 携帯電話の番号をメモして、藤崎の兄貴からの電話が切れたあと、すぐに電話した。
 「藤崎の兄貴から連絡を受けたんですけど・・・・」
 「ああ、あんた、剛とか言う名前だったな」
 「よく覚えてますね」
 「ああ、あんたなら大歓迎だ。すぐに来てくれ」
 「じゃあ、すぐ行きます」
 おんぼろクーラーのスイッチを切って留守電をセットし、ドアに鍵をかけると事務所を飛び出た。

 指定されたのは、上野の外れにあるラブホテル。汗をかきかきたどり着くと、和泉企画の男が待っていた。
 「もう始まってるぞ。急いで上がれ」
 「はい」
 ホテルの一室では、フラッシュが焚かれ、撮影が進んでいた。俺が雇われたのは、裏ビニ本の男優としてだ。どうやらいつもの男優が夏カゼでダウンしたらしく、ピンチヒッターを頼まれたのだ。
 この仕事は結構難しい。裏ビデオのように、セックスすればいいと言うものじゃないからだ。つまり、写真だから、動かしてぶれるといけないのだ。だから、女の中に入れたまま撮影が終わるまでじっとしていなければならない。それもいろいろの体位を要求される。女は、じっとしていればいいが、男はそのうち萎えてしまう。そうならないようにしなければ、この手の男優はやっていけないのだ。
 以前一度だけ、この仕事をしたことがあった。その時は、ほぼ完璧に仕事をこなしたから、今日、声がかかったというわけだ。
 「シャワーを浴びて、綺麗にしてこい。急げよ」
 「は、はい」
 シャワ−を浴びている間もフラッシュが光っていた。俺は体を拭くと、部屋へ戻った。
 「淳ちゃん。桜井の代役の小川剛だ。よろしくな」
 「小川です」
 「よろしくね」
 「淳ちゃん。フェラから始めよう」
 「はあい」
 今日の女優は、声はいいけどお世辞にも美人とは言えない。ちょっと萎えそうになる。
 「小川! そこに立って!」
 俺は直立不動で、ペニスを突き出した。女優さんが、両手で握って、舌を当てる。
 「淳ちゃん、もうちょっと、右向いて。笑って。そう、そうだ。いくよ」
 パシャ、パシャと写真が撮られた。
 「下から舐めあげるように。そうだ。はい、いくよ」
 再び、シャッターを切る音。俺は、立ったままで、女優さんが、口に含んだり、舌を這わせたりしながら移動して撮影が続く。
 「小川! ベッドの上に寝ろ」
 「はい」
 「淳ちゃん。シックスナイン体勢だ」
 「分かったわ」
 俺の目の前に、淳という女の局部が迫ってくる。前回の女優は、陰毛を完全に剃っていた。今日は、黒々とした陰毛が茂っている。フラッシュが焚かれている間、俺は毛深い茂みを眺めていた。
 「じゃあ、次は、はめ込みにいくぞ。淳ちゃん。まずはバックからだ。ベッドの両手をついて」
 俺は、淳ちゃんという女優が、ベッドの両手をついてケツを突き出すのをじっと見ていた。
 「小川! 入り口にあてがえ」
 「はい」
 ペニスを腟の入り口にあてがった状態で、数枚の写真が撮られた。
 「頭を入れたくらいのを取ろう。小川! 入れていいぞ」
 入れてもいいぞって言ったって、ほとんど濡れてもいないのに、入りそうもない。
 「い、痛いわ」
 「すみません。監督さん、まだ入りそうもないです」
 「ジェリーは興ざめだから、唾つけて入れろ」
 そう言われて、唾液をペッと手のひらに吐き出して、入り口に塗ってから挿入した。唾液の方が興ざめだと思うのだけど、写真にすると、こちらの方がいいらしい。ジェリーは写真に写るからだと。濡れていない膣の中に入れるのは、男の方としても痛いが、何とか我慢した。カメラマンが、方向を変えて何枚も撮りまくった。
 「もう少し入れろ」
 「次ぎ正常位」
 「淳ちゃん、もっと股を広げて」
 「次ぎ、騎上位」
 てな具合で、撮影は進んでいった。

 この手の女優は、ペニスを受け入れるのを商売と思っているから、そうそう感じたりはしない。しかし、何度も入れたり出したりすれば、やはり少しは感じてしまうようだ。前回の女優は、結構濡れてきて、かなり強く締め付けられて、危うく中出ししてしまうところだった。もし、中出ししようものなら、報酬どころか、罰金を取られてしまうこともある。まあ、こんな撮影では、ちょっと萎え気味なので、出そうにも出せないと言うところだけれど・・・・。
 しかし、今日の淳という女優は、プロというか不感症というか、ほとんど濡れない。まるで、ただの穴の中に入れているようなものだ。
 「小川! 最後だ。胸の上に出せ」
 ベッドの上に仰向けになった女優さんの目の前でペニスをしごいて射精する。その瞬間が、バシャバシャと連続撮影された。
 「いい絵が撮れたぞ。二人ともお疲れさん」
 スタッフの一人が、缶コーヒーを手渡してくれる。俺はそれを一気に飲み干した。
 「小川。もう一回出るか?」
 「すぐにですか?」
 「ああ」
 「もう少し休めば、出ないこともないですけど」
 「じゃあ、淳ちゃんが出てきたら、もう一度頼む」
 「初めからですか?」
 「いや、最後のシーンだけだ。今度は顔射で頼む」
 「顔射ですね」
 しばらくすると、淳ちゃんという女優がシャワー質から戻ってきた。
 「淳ちゃん、もう一仕事だ。胸の上より、顔射の方がいいんじゃないかと思ってな」
 「ええっ! せっかくシャワーしたのに」
 「頼むよ。すぐにすむから」
 今度は、顔の上で射精した。続けて二回も出るものだと、自分でも感心する。
 「淳ちゃん、美味そうに舐めて。そう、そうだ」
 俺が発射した精液を、女優は指につけて舐めている。仕事とは言え、今日初めて会った男の精液を舐めるなんて、どんな気持ちなんだろうなと、ちょっと不思議に思う。こんな事を商売にする女の気が知れない。
 「よし、よし。これで終わりだ。淳ちゃん、お疲れ」
 「ホント、疲れたわ」
 ちょっと不機嫌そうに、淳ちゃんという女優は、シャワー室へ消えていった。シャワー室の中から、ゲエゲエと吐き出す音がしていた。そうだろうなと思った。
 「小川。今日の報酬だ。また頼むよ」
 「すんません」
 封筒に入った現金を受け取って、服を着てホテルを出た。ホテルの外で封筒の中身を調べてみると、一万円札が二枚入っていた。二時間で二万円。いい仕事だ。だけど、女優の方は、少なくとも10万くらい貰うと聞いていた。若くて美人なら、50万も貰う女がいるとも。女の方がいいよな。女だったら、もっと稼げるのにと思いながら帰りの電車に乗った。

 事務所の中は、西日が入って蒸しかえっていた。窓を開けて、しばらく換気してから、クーラーのスイッチを押した。なかなか涼しくならない。
 「健二は、遅くならないと帰ってこないだろうな」
 そう独り言を言う。健二は、おそらく豪華な夕食をごちそうになって、その後、白浜という社長夫人に可愛がって貰うはずだ。早くて9時。まあ、11時くらいだろうなと思う。近くのファミレスへ夕食を食いに出かけることにした。
 今日の撮影のことを思い出す。あんなブスでも、裏ビニ本となると、買う人間もいる。一冊5,6千円で裏のルートで売られている。純益は、3,4百万になるという。濡れ手に粟だ。
 今日の撮影は、ちょっとおかしかった。俺が部屋に入ったとき、女優はキャミソールにミニスカート姿だったのだが、部屋の隅にセーラー服も脱ぎ捨てられていた。俺がいく前にセーラー服姿での撮影をしたに違いない。俺に顔と胸に射精させたことを考え合わせると、出来上がった写真を構成して、二冊の写真集を作るつもりだろう。経費が半分で、二倍の儲けになるってことだ。気がついていれば、色を付けて貰うところだったが、もう手遅れだ。

 いつもは健二と二人で飯を食うのだけど、今日は一人。久しぶりに食うステーキセットも美味いと思わなかった。
 ファミレスからの帰り、コンビニでビールとつまみを買った。事務所の隅に据えられている14インチのぼろテレビで、野球を見ながらビールを飲んだ。これまた久しぶりのビールだったので、いっぺんに廻ってそのままソファーで眠り込んでしまった。

 人の気配で目が覚めると、俺の目の前に健二の顔があった。
 「今、何時だ?」
 「11時半」
 疲れたような声で健二が答えた。
 「遅かったな」
 「なかなか帰してくれなくて」
 健二は余所行きを普段着に着替えている。普段着は寝間着でもある。
 「楽しんだのか?」
 「俺が?」
 「ああ」
 「楽しめるはずがないじゃないか。楽しましてやっただけだよ」
 「そうか」
 健二は俺の寝ているソファに腰を下ろして話しを続けた。
 「1時間も舐めさせられたよ」
 「そりゃ、よう頑張った」
 「自分だけいって、俺は不完全燃焼さ」
 「そりゃお気の毒。で、いくら貰った?」
 「10万」
 「10万!! すっげえ! 食費と家賃を入れろよ」
 「食費はともかく、家賃はないだろう?」
 「・・・・そうだな。食費だけでいい」
 ここの家賃も藤崎の兄貴が出してくれている。健二の言うとおり、家賃までは要求できない。
 「兄貴は、ずっとここにいたのか?」
 「あ、ああ」
 健二の仕事も人に言える仕事じゃないが、俺の仕事だって人には言えない。稼ぎがあったことを健二に知られたくもなかった。
 「そう? 夕方電話したとき、留守電になってたけど」
 「あれ? おかしいな。ヤニ買いに行ってた時かな?」
 「ふうん。まあ、いいや」
 健二は信用できないなと言うような顔をした。
 「兄貴。ところで、そう言うわけだから、ちょっと、さあ」
 「なんだよ。いったい」
 「不完全燃焼だって言っただろう? 相手、してくれよ」
 健二が俺の太股を指でなぞる。
 「もう眠い」
 「頼むよ」
 「食費、1万プラス」
 人差し指を立てて、健二の目の前に出した。
 「そんなのひどいよ」
 「なら、寝る」
 俺は健二に背を向けた。健二が俺の要求を飲むことは分かっていた。
 「・・・・じゃあ、払うからさあ。お願いだよ」
 「分かった。相手してやる」
 健二は喜んで、俺の唇を吸った。そうしながら、俺のズボンのベルトを緩め、俺の一物を取りだしてむしゃぶりついてきた。
 「女と寝ただろう?」
 顔を上げて、健二が聞いてきた。表情がちょっと険しくなっていた。
 「あ、イヤ」
 「嘘付くな。臭いが付いてるじゃないか!」
 「鼻がいいんだな」
 「どこの女だよ!」
 健二の目は、嫉妬に狂った女のような目だ。
 「例の和泉企画の仕事さ。裏ビニ本の」
 アッという間に、健二の目から嫉妬の光が消えた。
 「なんだ。あれか? 兄貴も、よくやるね」
 「他に稼ぐ手段がないからな」
 「ま、いいや。あれなら、浮気したんじゃないから」
 「俺が誰と寝ようとおまえには関係ないだろう?」
 「そんなこと言わないでくれよ。俺は兄貴が好きなんだから」
 「俺は好きじゃない」
 「もう・・・・。兄貴なんて嫌いだ」
 「嫌いで結構。もう止めるのか?」
 「・・・・止めないよ。最後まで行かないと、このままじゃ眠れないよ」
 「じゃあ、さっさとやれよ」
 「少しは気持ちを込めてやってくれよな」
 「気持ちがなくてもやれるのが男のいいところだ」
 健二は少しむくれて黙り込むと、再び舌を使い始めた。しばらくしてから、健二は全裸になって、俺の上に馬乗りになり、俺を健二の中に導いた。
 「兄貴! 愛してるよ」
 「分かった。分かったから、早くいけ」
 「まだ、まだだよ。兄貴、もっと突いてくれ」
 俺は、健二を突き上げる。健二は、俺の上でぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
 「いく、いく。ああっ!!」
 健二が俺を締め付け、俺も健二の中に射精した。健二は俺の上に倒れ込んできた。健二を抱きながら、今日三度目の射精だなと思っていた。
 「兄貴。よかったよ。俺、ホントに兄貴を愛しているんだよ。ホントだよ」
 「分かった、分かった。分かったから、もう寝ろ」
 「うん」
 俺と健二は結合したまま、ソファーの上で眠りこけた。