両親への手紙

 お父さん、お母さん、お元気ですか。
 2年前、突然大学を辞めて、アメリカに渡ると連絡したまま、今日まで手紙のひとつも書かないで申し訳ありませんでした。ぼくは現在サンフランシスコで元気に暮らしていますので、心配されないでください。
 実は、こちらでイタリア系アメリカ人と結婚しました。まだ22で、しかも国際結婚なんてと驚いているでしょう。でも、ぼくは、その人を心から愛しています。どうかぼくのわがままを許してください。
 今年の春、子どもが生まれました。名前はトーマスと言います。写真を同封しました。ぼくに似た可愛い子でしょう。目元と口元がお母さんに、鼻がお父さんに似ていると思いませんか。

 同封した物語、ちょっと長いけど読んで貰えたでしょうか。この物語は、フィクションではなく、ぼくがこの3年間に経験したことを小説風にまとめたものです。
 文章にするには憚られることも、真実を伝えるために敢えて書いています。この物語は事実です。ぼくの身の上に起こった真実が書かれています。
 ぼくは、この物語の中に書いてあるとおり、女になりました。今のぼくの名前は、中にも書いてありますが、Naomi Swift。日系アメリカ人女性、Johnnie Swiftの妻です。
 トーマスは、ぼくの精子を使って生まれました。だから、お父さんやお母さんの遺伝子を受け継いでいます。お父さん、お母さんの孫であることは間違いありません。

 もう一度言います。物語は事実です。嘘偽りはありません。

 同封したもう一枚の写真をよく見ていただければ、トーマスを抱いた女性がぼくだと分かるはずです。
 姉さんによく似ているでしょう。姉さんは、ぼくよりちょっとグラマーだけど、ぼくの方が美人だと思います。こんなこと書いたら、姉さん、怒るかな。

 ジョニーが無理矢理ぼくを女にしたのは事実ですけれど、ぼくはこうなるように運命づけられていたんだと思っています。
 姉さんは、ぼくが小学校の頃から、姉さんの服をこっそり着ていたことを知っているから、こうなることをあるいは予想していたかもしれませんね。
 お父さん、お母さん。ぼくは女になってとても幸せですから、ジョニーを恨んだりしないでください。どうか、お願いします。
 写真に一緒に写っている男性が、ぼくの愛する夫のジョニーです。玩具会社の社長をしている、とっても優しい人です。
 お父さん。ジョニーは、顔も体格もお父さんとはまったく違いますが、性格はお父さんそっくりです。だから、ぼくはジョニーを好きになったんだと思います。
 それでも信じられない、いつものぼくのジョークだとおっしゃるでしょう。でも本当のことなのです。

 今度のクリスマスに、トーマスを連れてジョニーと一緒に里帰りします。その時、この手紙と同封の物語に書かれていることが真実だと分かるでしょう。
 お父さん、お母さん。クリスマスに会えるのを楽しみにしています。
 直之(ナオミ)

 追伸 お姉さん。下着を何枚か盗んでごめんなさい。シルクのブラとショーツをクリスマスプレゼントに持って帰りますから、どうか許してください。