第9章 進行する女性化

 清子は、市原とは別のマンションを与えられていて、そこに住んでいた。市原が要求したときに、週に2、3回、市原のマンションへやってきて、身の回りの世話をしたり、夜の生活をするのだった。
 しかし、市原と滝川の関係を疑い始めてからは、仕事が済むと市原のマンションへやってくるようになった。
 滝川は女ではないが、見た目はそこらにいる女以上に美人で、市原好みの巨乳を持っている。膣こそないが、肛門を使えば市原と関係を持てる。市原を滝川に奪われるのではないかと言う嫉妬心が、清子をそんな行動へ駆り立てていた。
 とは言っても、清子にはスナックのママという夜の仕事がある。定休日の月曜日を除いて、午後5時に出かけて午前2時に帰ってくるまでは、監視の目がまったく行き届かない。何か証拠を見つけて、問いただそうとしているのだが、なかなか尻尾を出さない。
 時には、スナックを早く切り上げて、市原のマンションに駆けつけてみるのだが、どうやらスナックの従業員にスパイがいるらしく、清子が帰ったときは、ふたりしてテレビやビデオを見ながら、酒を飲んだりしている。
 そんな清子の態度を、市原は疎ましく思っているようだが、清子としては、そんな行動をどうしても抑えられない。

 一方、市原の方は、清子のそんな嫉妬心を知って、かえって滝川に入れ込むようになっていた。人間の心理とは妙なものだ。
 清子が出かけていくと、早めに夕食を済ませて入浴した後に、市原は滝川を抱いた。ベッドを汚さないように注意し、コンドームやその空き袋は、清子が帰ってくるまでにトイレに流すなどして処分しておいた。もちろん、それは滝川の役目ではあるが。
 午前2時過ぎに清子が帰ってきてからも、市原は必ず清子を抱いた。つまり一日に、いや数時間の間に、必ず二回セックスをすると言うことなのだ。滝川を抱いていないと言う証拠のつもりだろうが、精力絶倫の市原でなくてはできない芸当だ。

 清子のスナックが休みである月曜に以外は、滝川は毎日市原に抱かれることになってしまった。もちろん好きでやっているわけではない。迫ってくる市原から何とか逃げようとした。
 「いやだ。やめてよ!」
 「生活の面倒を見てやってるんだ。その代償だと思えばいいだろう? なあ」
 そう言われれば、どうしようもないのだ。しかも拒否しつづければ、
 「ここを放り出されてもいいんだな?」
 と脅され、やむなく抱かれることになってしまう。そんな滝川も、最初のうちはいやでいやでならなかったのに、何日かするうちに変化が現れた。
 市原のペニスは、自慢するだけあってでかく、それを挿入されると、滝川の肛門は激しく痛んだ。痛みとともに、内臓を突き上げられるような不快感と言うか違和感と言うか、そんなものを感じていた。逃げ出せない状況にあるから、そんな苦痛に耐えるしかなかった。
 しかし、ほとんど毎日アナルファックをされているうちに、痛みも不快感も遠のき、次第にえもいわれぬ快感のようなものを覚えるようになった。滝川はそのことが自分で信じられず、市原には極力隠そうとしていた。
 しかし、滝川が市原のマンションに住み始めて1ヶ月がたとうとしたとき、その事件が起こった。

 いつものように夕食を済ませ、その日は市原と一緒に入浴した。
 「ナオコ。体を洗わせろ」
 「いやよ」
 「遠慮するな」
 それ以上抵抗してもだめなことは滝川には分かっていた。拗ねたような顔をして、ボディーシャンプーのついたタオルを市原に手渡した。
 市原は、滝川の体をニヤニヤしながら洗う。滝川のデカパイは特に丁寧に洗った。
 「乳首が大きくなったんじゃないか?」
 「あんたが毎日吸うから・・・・」
 滝川は、清子がいるときには、市原のことをお兄ちゃんと呼んでいたが、ふたりの時には、あんたと呼んでいた。そう呼べと市原が強要したからだ。
 「おまえにペニスがあるなんて、ほんと、信じられないよ」
 「ばか!」
 市原が、滝川のペニスを愛撫する。しかし、滝川のペニスは反応しない。滝川のペニスは、このところほとんど勃起したことがない。マスを掻く時のように擦ったとしても少し固くはなるくらいで、勃起することはなかった。市原は滝川にフェラチオなどほとんどしたことはなかったが、興が載ってフェラチオをしたときには勃起することもあった。しかし、それはまれなことだった。
 滝川はどうしてだろうと不思議に思っていたが、ネコ役をやっているから勃起しないんだろうと考えていた。
 「洗ってくれ」
 市原の持っていたスポンジを受け取り、市原の体を洗ってやった。背中を流し、股間を洗ってやると、市原の自慢の一物は、雄々しくせり上がっていた。
 お湯でセッケンを流し、滝川はそのままフェラチオをする。言われなくても、市原がそれを要求してくることが分かっていたからだ。
 「ずいぶん上手くなったな」
 「ほとんど毎日ですもの」
 「ああ、蕩けるようだ。その舌遣いがなんともいえん・・・・」
 緊満にして青黒くそそり立つ市原のペニス。今にも出そうだが、市原は決して漏らすことはない。接して漏らさず。性豪を気取る、市原の自慢でもあった。
 「さあ、行こうか?」
 「ここで?」
 「ああ、ベッドまでは待てそうにない」
 「分かったわ」
 「バックでいこうか? 向こうを向け」
 「はい」
 滝川は、市原に背中を向けて尻を上げた。
 「コンドームはしないの?」
 「今日はこのまま行くぞ」
 「いいの?」
 「余計なことは言うな!」
 コンドームをしないでするのは、市原が警察の目をごまかすために滝川の肛門を冒して以来初めてだった。滝川はそこで少し興奮気味になっていた。
 市原は、滝川の肛門を指でなぞるように刺激する。そうすると、滝川の肛門は受け入れの準備ができるようになっていた。
 「行くぞ」
 市原が入ってくる。力を抜いて滝川は受け入れる。それと同時に、脈動させるように肛門を締める。こうすると、市原が喜ぶのが分かっているのだ。
 「いいぞ。いいぞ。ナオコ、おまえは最高だ」
 市原が激しく滝川を突き始めた。滝川は、快感が沸いてくるのを覚えていた。しかし、いつものようにそれを市原に悟られないようにしていた。
 いつもなら、あるところで快感は留まるところだった。しかし、その日は快感がどんどん激しくなっていった。射精する瞬間の、あの快感が押し寄せてきたのだ。
 声を出さないように抑えていたのに、滝川はいつしか喘ぎ声を上げていた。
 「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 ほとんど勃起しない滝川のペニスが勃起してきた。
 「ナオコ。どうした?」
 市原が、いつもとは違う滝川の様子に腰の動きを止めて滝川に尋ねた。
 「あなた、止めないで。もっと、もっと激しく突いて」
 「そ、そうか」
 滝川を抱き始めて、初めて滝川の方からそう言われて嬉しくなり、市原は再び突き始める。
 「ああ・・・・、い、いいっ!」
 激しい快感が滝川を襲った。それと同時に滝川は射精していた。あの時、忍び込んだ家で、女を冒して以来の射精だった。
 滝川の射精とほぼ同時に、市原も滝川の中に射精した。
 「うおおう・・・・。いいぞ・・・・」
 バスマットの上に重なり合って、倒れこんだ。滝川は、かつてないほどの快感を覚えていた。それは射精の瞬間の快感と同じなのだが、それがずっと続いていた。
 (気が狂いそう・・・・)
 快感の中で滝川はぼんやりと、そう考えていた。冷め掛けたとき、市原が少し腰を動かすと、再び快感が襲ってきた。15分? いや20分以上そうしていただろうか? 去らない快感に酔いしれていると市原が抜け出ていった。
 (まだよ)
 と言いかけたが、滝川は言うのを止めた。つい先ほど、止めないでと叫んでしまったことを恥ずかしく思っていたのに、この上、まだわたしの中にいて欲しいなどと言えなかった。
 「ナオコ?」
 「・・・・はい」
 「行ったのか?」
 「・・・・そうみたい」
 「そうか」
 市原は嬉しそうな顔をして、滝川の頬にキスした。
 「俺もすごくよかった。おまえはほんとに最高だ。女よりずっといい」
 「わたし、女です」
 「そうだったな。疲れた。先に上がるぞ」
 「・・・・はい」
 滝川は、市原が出て行ったあとも、小一時間バスルームの中に倒れていた。

 滝川が市原とのアナルファックに応じていたのは、市原のマンションを追い出されないために他ならなかった。しかし、アナルファックの本当の快感を知ってからと言うものは、市原の元を出て行く気は、まったくなくなった。
 まれに市原が、滝川を求めない日などは、滝川の方から要求するようになっていった。

 「ナオコちゃん、もうそろそろ、外に出られない? サツも、もう張っていないみたいだし」
 市原のマンションで暮らし始めて3ヶ月ほどがたったころ、そう言って清子が滝川を外出に誘った。
 「そうね。もう大丈夫だと思うわ」
 「じゃあ、髪を切りに行って、服を買いに行きましょう。いつも同じ服じゃあ、あなたもいやでしょう?」
 「そうね」
 「それに下着も新しいものが欲しいでしょう?」
 「ええ」
 相談がまとまり、ふたりは連れ立って外出した。

 電車で新宿まで出て、清子の行きつけと言う美容院で髪をカットしてもらい、レーヤーを入れてもらった。
 「へえ、あの市原さんの従妹? ぜんぜん似てないわね」
 美容室の店長と言う女性が清子の話しにそう反応した。
 「従妹と言っても、市原の叔父さんの娘だからね。あまり似てなくて当然よ」
 「そうなんですか。でも清子さんに負けず劣らず美人ですね」
 その言葉は、お世辞ではないようだ。
 「ナオコが市原の従妹じゃなかったら、市原を奪われそうだわ」
 そう言って清子は笑ったが、その目を見ると、滝川が市原と関係しいていることを暗に言っているようだった。
 (疑ってはいても、確信はないわよね)
 滝川は、目を伏せた。

 それからふたりは、東武デパートへ買い物に行った。まずは下着売り場へと足を運んだ。男だったころは、女物の下着売り場など、横目で見るか、見ない振りをしていた滝川だったけれど、女の格好をしているからか、全然恥ずかしがる様子もなく下着を選んでいった。滝川は、少しセクシーで派手な下着を選んだ。
 清子がじろりと滝川を睨むのが分かったが、滝川は無視した。
 「さあてと、次は服を買いましょうね」
 ふたりは婦人服売り場へと向かった。下着売り場では、清子と滝川は別々に選んだのだが、今度は清子が見立てた。
 「あら? ずいぶんウエストが細くなったのね。えっ? なに? 61なの?」
 「ええ」
 滝川は、ちょっと自慢気に答えた。
 「ヒップも大きくなったんじゃない?」
 「89だって言ってたわね」
 「そう・・・・。じゃあ、これなんか、いいかもね」
 「試着してみるわ」
 清子に手渡された黒をベースに幾何学模様の入ったミニのワンピースを試着した。鏡に映った自分の姿を見て、滝川はひょうっと口笛を吹きたくなった。
 (ほんとにこれは俺なのか?)
 滝川は心の中でそう思う。美容室で髪の毛をあたっているから、余計に女っぽくなっていたのだ。
 「ナオコ、ずいぶん女らしくなったじゃない。ホルモンでも飲んでるの?」
 ワンピースを脱いで下着姿になった滝川を見て、清子が小さな声で滝川に耳打ちした。
 「飲んでないわよ。あの人がそんなもの買うお金をくれないもの」
 「そうか。それもそうね」
 清子は、どうも合点が行かないと言うような顔をしている。滝川にしても思いは同じなのだ。鏡に写った滝川のセミヌード姿は、どう見ても女に見えるのだ。
 以前は、腕や足の筋肉などはその形が分かるくらい発達していたのに、今ではまるで筋肉の存在がないように丸くなっていた。筋肉の代わりに脂肪がついたという感じなのだ。筋力もかなり落ちていた。
 ガードルで押さえつけてはいても、正面から見れば、少しおかしいのが分かってしまうけれど、その部分さえ見なければ、滝川はまったく女だと言ってよかった。
 つい最近、市原にもその事を言われたことがあった。
 「ほとんど運動していないから筋肉が落ちちゃって、代わりに脂肪がついたんじゃないの?」
 そう滝川は答えたけれど、そう答えた滝川自身がどうもそうではないように感じていた。しかし、それがどうしてなのかはまったく分からなかった。
 「ネコ役やってると、女らしくなるのかな?」
 清子のそんな問いに、そうかもしれないなと思ったが、それを肯定することは、市原と寝ていることを白状することになるから、肯定するわけにも行かず、滝川は曖昧に肩を竦めた。

 その次の夜、清子が仕事に出かけたあと、滝川は新しい下着を身に着けて、市原の前に立った。
 「どう? 似合う?」
 「いよう。いいぞ」
 市原は舌なめずりをして、いつもより興奮して、清子が帰ってくる直前まで滝川を攻めた。滝川は、男を繰る手管をまたひとつ覚えた。

 この外出で自信をつけた滝川は、その後はひとりでも出歩くようになった。ハイヒールを履くと170以上あって少し目立つけれど、福沢が自信を持って整形した滝川の顔はまったく女性に見えたから、男だとは絶対に思われなかった。
 それでも、派手な格好やお水風の服を着ると、ニューハーフだと疑われそうで、普段はそんなに目立たない服装をしていた。しかし、市原を喜ばせるために、マンションの中では、かなり短いスカートをはいたり、胸元の開いた服を着ていた。特に下着は、かなりセクシーなものを選ぶようになった。