第13章 最後の手術

 このところ暇で、時間をもてあましていた福沢は、リビングでバーボンを飲みながら、巨人広島戦の中継をぼんやりと見ていた。
 「おや? 今ごろ誰だろう?」
 裏のチャイムが鳴ったのだ。福沢は、ゆっくり立ち上がって、裏口へと向かった。裏口のドアを開けると、コートを羽織ったすごい美人が立っていた。
 「どこかで見たことがある女だが、誰だったろう?」
 福沢はそう思いながら、女を中へ招きいれた。
 「ここのことを誰から聞いた?」
 「先生、わたしのこと、覚えてません?」
 そんな女の問いに、福沢は小首を傾げた。
 「見覚えはあるんだが、ちょっと思い出せん」
 「わたし、変わりましたからね」
 「そうか。で、君はいったい誰だったかな?」
 「滝川です」
 「滝川?」
 そう言われても福沢は思い出せない。
 「滝川健次郎です」
 「滝川健次郎!?」
 福沢は、滝川健次郎と名乗った女を頭の天辺から足の先まで何度も見た。そうしてから、驚きに口をぽかんと開け、もう一度女の全身に目を這わしたあと、ようやく言葉を出した。
 「思い出した。たしかにそうだ。ほう、そうか。君か・・・・」
 「あの節は大変お世話になりました」
 滝川が丁寧に頭を下げるのを、福沢は半ば呆然と見ていた。。
 「あ、ああ」
 「おかげさまで、今日までずっと警察に見つからずにすんでいます」
 「そ、そうか。で、今日はどんな用事だ?」
 「実は、お願いがあってやってきました」
 「お願い?」
 「ええ、そうです。わたしがこの病院を逃げ出す前に、先生がやろうとしていたことをやってほしいのです」
 「あの時わたしがやろうとしていたこと?」
 「そうです」
 「わたしが何をやろうとしていたか、君は知っているんだね」
 「はい、先生。先生! わたしを完全な女にしてください。お願いします」
 柳沢と話した予想があたったと福沢はほくそえんだ。

 「柳沢君、来たよ、来たよ」
 滝川を病室へ案内したあと、福沢は、早速柳沢に電話をかけた。
 「来たって、福沢先生、いったい誰が来たんですか?」
 「2年前、手術しそこなった彼がやってきたんだよ」
 「手術しそこなった彼って、もしかして、性転換手術の?」
 「そうだ。さっき、裏口にやってきて、手術して欲しいってな」
 「手術って、まさか性転換手術をですか?」
 「そうなんだよ」
 「ほんとですか?」
 「ああ、今、地下の病室へ案内したところだ」
 「そうですか。いつやります。今からですか?」
 福沢もわくわくしていたが、柳沢も同じ気持ちらしい。その気持ちが受話器から伝わってくる。
 「いや、今日は時間も遅いし、わたしはちょっと飲んでいるから、明日の朝から始めようと思うんだ。都合はどうかね」
 「他に用事があっても、キャンセルして伺います」
 「そうか。助かるよ。じゃあ、午前8時に始めよう。いいかな?」
 「8時ですね。承知しました。7時半には伺います」
 「じゃあ、頼んだよ」
 福沢は、さらに村木容子に電話したあと、それ以上酒を飲むのをやめて、シャワーを浴びるとベッドに入った。
 「長く待った恋人に会ったような気分だ」
 頬がほころぶのを覚えながら、福沢は眠りについた。

 福沢から電話があり、2年前逃げ出した滝川が戻ってきて、性転換手術をすると連絡を受けた村木容子は、本人が望んでいるのかしらと訝った。
 「下剤は飲ませたから、来るのは明日の朝でいいよ」
 そう言われて、村木は午前7時に福沢の家へやってきた。
 「浣腸と剃毛、点滴をやっておいてくれ」
 福沢の指示を受けて、地下の病室へ入っていった。地下の病室に入って、ベッドの横たわっている人物を見て、村木は自分の目を疑った。ベッドの上の人物は、どう見ても女に見えるのだ。
 「おはようございます」
 そう挨拶すると、滝川が目を開いた。
 「ああ、お久しぶりです。また戻ってきました。よろしくお願いいたします」
 あの時、女のような高い声にはなっていたけれど、ものの言い方は完全に男だった。今目の前にいる滝川のものの言い方は、まさに女性のものだった。
 「あなた、ほんとに、あの時の滝川さん?」
 「ええ、そうです」
 村木は唖然とする。しかし、確かに顔は、福沢に整形されたあの顔だった。
 「ほんとに、あの手術を受けるの?」
 「ええ。わたし、完全な女になりたいんです」
 「そうですか・・・・」
 驚きを隠せない村木に向かって、滝川が小首を傾げながら聞く。
 「おかしいですか?」
 「いえ。今のあなたの股間に、男のあれが付いている方がずっとおかしいですわ」
 「村木さんもそう思うでしょう?」
 「ええ。今から浣腸します。それから、剃毛を。それがすんだら、手術のための点滴をしますからね」
 「お願いします」
 物腰といい、ほんとにペニスや睾丸があるのだろうかと疑ってしまう。

 浣腸するときに、陰嚢の一部が見えた。そして、剃毛するとき、今の滝川には似つかわしくないものがその股間にあるのを村木は確認した。
 「これは、取ってあげた方がこの人のためだわ」
 そう思った。

 手術室に入ると、患者は、両手を広げ両足を大きく広げて持ち上げた格好に手術台に固定されていた。剃毛されて羽をむしられた鶏のようになっている股間に、ペニスと睾丸がぶら下がっていた。男だと思われる部分はここだけで、細く滑らかな両足も、丸い殿部も女に見えた。
 横に回ってみると、ウエストは細く、大きな胸があった。柳沢は、ほうとため息をついた。
 それから、シーツの掛けられた顔を覗き見た。整った顔立ちの女がいた。女は、柳沢に軽く会釈をした。柳沢も頭を下げた。
 「お願いいたします」
 柳沢は、その声を可愛い声だと思った。
 「さあ、始めよう。滝川さん、麻酔をかけるよ。いいね」
 「はい。お願いします」

 福沢が、滝川に静脈注射をして眠らせ、のどに管を通して、麻酔器を動作させた。その間に、柳沢は、手洗いをして手術する部分を消毒した。
 手術用のシ−ツを掛け終わった頃、福沢が手洗いを済ませて手術室へ入ってきた。
 「さあ、待ちに待った手術だ。行こう!」
 福沢は、メスを入れる部分に、青い色の印を付けていく。
 「ペニスのカリの部分をクリトリスとして使う」
 「少し大きいんじゃあ?」
 「小さいと修正が利かない。大きすぎれば削ればいい。そうだろう?」
 「あ、そうですね」
 「陰茎海綿体をクリトリスとして使う方法もあるんだが、この方が、神経を確実に残せて、感じることができるんだ」
 「なるほど」
 「ただ今回は、もう少し工夫する」
 「工夫とおっしゃいますと?」
 「陰茎海綿体の根元のほうも残しておいて、両方を縫合したところにこの部分を縫合するんだ」
 「女のクリトリスに、より近い構造になるってことですね」
 「そう言うこと!」
 印の色素に沿って手術が始まった。両方の睾丸が切り取られ、クリトリスとして使う部分を残して陰茎海綿体の大部分が切り取られた。尿道粘膜を残して、尿道海綿体も切り取られた。
 残された陰茎海綿体をひとつにあわせ、その上にペニスのカリの部分から取ってきた部分を縫合していった。
 「さて、クリトリスはこれでよし。尿道粘膜を縫いつけよう」
 縦に切り開かれた尿道粘膜が広げられて縫合され、ちょうど腟前庭のようになった。
 「大陰唇と小陰唇を作るぞ。ペニスの皮膚と陰嚢の余分なところは切り取ってしまおう」
 「先生。ペニスの皮膚は腟を作るのに使うんじゃあ・・・・」
 「よく勉強してるな。しかし、今日はここは切り取ってしまう」
 福沢は、ほとんどの皮膚を切り取ってしまった。
 「腟はどうするおつもりで?」
 「いいから、わたしに任せておきまたえ」
 福沢は、大陰唇と小陰唇を形成していく。

 30分ほどで形成が終わった。
 「どうだ?」
 「すごい! まるで本物のようだ」
 「そうだろう? 村木君、君はどう思うかね?」
 村木容子が、股間を覗き込んだ。
 「先生。すごいですわ。まるで自分のものを見ているみたいです」
 「君のがモデルだ」
 「まあ、先生ったら・・・・」
 村木は顔を赤らめた。柳沢が、ちらりと村木を見た。
 「先生。ほんとに腟は作らないんですか? それともどこかの皮膚を移植でもするつもりですか?」
 「違うんだ。村木君。例のものを出したまえ」
 村木が、手術テーブルの上に大きなビンを取り出した。そのビンには、ピンクとオレンジの中間のような色の液体が入っていた。
 「培養液みたいですけど、中に何か入っているんですか?」
 「村木君。中を出しなさい」
 「はい」
 村木が、ビンをあけて中身を取り出した。それは直径が4、5センチの丸い筒だった。
 「これはいったいなんです?」
 「その筒の中を覗いてみたまえ」
 柳沢は、筒を覗いてみた。
 「こ、これは腟壁じゃないですか」
 「そうだ」
 「こんなものどうしたんですか? まさか、死体から取り出したとか・・・・」
 「違うよ」
 「じゃあ、生きてる女から?」
 「そう言う意味じゃない。柳沢君、君は、ES細胞というのを知ってるかい?」
 「ES細胞ですか?」
 「そうだ」
 「ES細胞と言えば、なんにでも分化する、万能細胞のことですよね」
 「そのとおりだ。ES細胞を使って、皮膚を作ったと言う話しは聞いたことがないかね?」
 「あります。・・・・まさかこれが?」
 「そうだ。腟壁は、重層扁平上皮といって皮膚と似た組織だ。ES細胞を使って、腟壁を作ったのだよ」
 「信じられない」
 「他人の腟壁を使うと、拒絶反応が起こってしまうが、ES細胞は、抗原性がないから、拒絶反応が起こらないんだ」
 「なるほど」
 「見たまえ。よくできているだろう? 腟の横皺も綺麗に再現されている」
 「まるで本物ですね」
 「そうだ。これが、今回の手術の重要なアイテムのひとつだ」
 「女性ホルモン入りのシリコンバッグに次ぐアイテムなんですね」
 「そのとおり!」
 「どこからこんなものを?」
 「アメリカの、あるジェンダークリニックからだ。いまや、このクリニックは大流行だと聞いている」
 「そうでしょうね」
 「さあ、腟の移植を始めよう」
 「はい」
 福沢は、肛門と尿道の間に腟壁を移植する穴をあけ始めた。
 「奥行きは、15センチもあればいいな」
 柳沢は、そんなことは知らないので黙っていた。
 「出血はほとんどないな。村木君、腟壁をくれ」
 手渡された腟壁の前後を確認してあけられた穴の中へ挿入して、入り口を縫合していった。
 「さあ、圧迫止血と固定のために抗生剤入りのタンポンを入れて終了だ」
 外の傷も消毒され、ガーゼが当てられた。福沢は満足そうにうんうんと頷いていた。

 麻酔から目覚めた滝川は、早速痛いと言い出した。
 「すぐに注射しましょう」
 村木が、ペンタジンを肩に注射した。
 「前のときより痛いでしょうね」
 「どうでしょう? 前も痛かった覚えがあるけど、もう忘れてしまったわ。とにかく、痛いわ」
 「男の人って、急所って言うくらいだからね。そろそろ効いてくるから。また痛くなったら、言ってね」
 「はい」
 滝川はベッドの中でうとうとし始めた。

 「先生、どうです?」
 福沢が滝川の傷の消毒をしていると、不安そうに聞いた。
 「大丈夫。いい仕上がりだ」
 「見せてもらっていいですか?」
 「まだ見ないほうが」
 「前のときもそうおっしゃいましたね」
 「ああ、言ったな」
 「是非見たいんです」
 「そう言うのなら」
 福沢は、手鏡を滝川に手渡した。滝川は、早速鏡で覗き込んだ。覗き込みながら、滝川はポロリと涙を流した。
 「どうだ?」
 「腫れが引いたら、綺麗になるんでしょう?」
 「ああ、そうだ」
 「きっと本物と同じになるでしょう?」
 「ああ、間違いない」
 「こんな綺麗な顔にしてくれたんですもの。先生を信じてます」
 「そう言ってくれると嬉しいよ。来週になれば、かなり見られるようになるだろう」
 「期待して待ってます」
 「どうして涙を流した?」
 「もう隠す必要がなくなったなって、嬉しくなって」
 「そうか。なくなった悲しみじゃないんだな」
 「ええ、早くやってもらえばよかったと思ってます」
 「そうか。それはよかった」
 無理やり女に仕立て上げようとしたのに、ここまで女らしくなるとは思わなかったと福沢は内心驚いていた。

 滝川の傷は順調に回復していった。
 「腟拡張は一日3回やってくれ。それにもう一つ大事なことがある」
 「なんでしょうか?」
 「骨盤底の筋肉を鍛えるために、ストレッチが必要だ」
 「ストレッチ?」
 「もともとないところに穴を開けているから、鍛えておかないと尿が漏れたり、腟壁が外に飛び出したりするんだ」
 「そんなの困ります」
 「そのためのストレッチだ」
 「分かりました」
 「このストレッチは、腟を締める練習にもなる」
 「腟を締める・・・・」
 「君は、今まで肛門を使って男を喜ばせてきただろう?」
 「え、ええ」
 滝川は顔を赤らめ下を向いた。
 「今度からは腟を使わなければならないが、君の腟は、女のようには締まらないんだ」
 「そうですか・・・・」
 「ストレッチによって、少しは締められるようになるんだ。だから、頑張ってストレッチをするんだよ」
 「分かりました。先生?」
 「何だ?」
 「わたし、いつから、女性ホルモンを飲むんですか?」
 「女性ホルモン?」
 「ええ。わたしには、女性ホルモンを分泌するところがないから、女性ホルモンを飲まないといけないんでしょう?」
 「飲まなくてもいいよ」
 「えっ!? どうして?」
 「君には内緒にしていたんだが、君の胸に入れたシリコンバッグには、女性ホルモンがたっぷり染み込ませてあってね」
 滝川は目を丸くした。
 「必要な分だけ染み出てくるようになっているんだ。だから、飲まなくても大丈夫だ」
 「じゃあ、わたしの体が女性化したのは、この胸のシリコンバッグのせいなんですね」
 「その通りだ」
 「そうだったんですか。おかしいと思っていました」
 「黙っててすまんな」
 「いいんです。毎日薬を飲むわずらわしさがないんですもの」
 滝川は、福沢に向かってにっこりと微笑んだ。

 傷は順調に治癒していった。滝川は、福沢に言われたとおりに、腟拡張をして、ストレッチに励んだ。
 福沢も村木もいなくなった夜の時間、滝川は手鏡を取り出して、股間を覗いてみた。
 「綺麗・・・・」
 腫れが引いた滝川の股間は、すっかり女のものになっていた。福沢から、渡された本物の女のポラロイド写真と比べて見ても、まったく遜色がなかった。
 「この写真の主は、きっと村木さんね」
 福沢と村木の関係を知らない滝川は、福沢が村木をどうやって説得して、こんな写真を撮らせてもらったか想像して、くすりと笑った。
 それから、滝川は腟拡張をしたばかりの腟の中へ指を入れてみた。
 「この感触、覚えている本物の女と変わらないみたい・・・・」
 腟壁には襞が存在した。その感触は、間違いなく女のもののように感じた。
 「福沢先生って、すごい人だわ」
 滝川は、感心すると言うより呆れていた。

 手術後4週間がたって手術の傷が完全に癒え、滝川は退院することになった。身の回りのものを片付けていると、福沢がやってきた。
 「退院、おめでとう」
 「先生ありがとうございました。なんとお礼を言っていいものやら」
 「礼などいらない。退院前の最後の検査をしよう」
 「分かりました」
 「服を脱いで、全裸になりなさい」
 「えっ!? 全部脱ぐんですか?」
 「ああ、君の全身を見てみたいんだ」
 「それじゃあ・・・・」
 滝川は、病衣を脱いで下着も取った。
 「ベッドの上に仰向けに休みなさい」
 「はい」
 「膝を立てて、少し開いて」
 言われたとおりに、滝川は膝を立てた。福沢がベッドの横座りになって、右手で滝川の股間を撫で始めた。
 「先生、なにするつもりですか?」
 「黙っていたまえ。これはどうだ? 感じるかね?」
 福沢の指が、隆起に触れた。滝川の体にびりっとした刺激が走った。
 「はい。すごく感じます」
 「よしよし、神経もよくつながっている。ここの麻痺はないかな?」
 福沢が、指を後方へずらし襞を触った。
 「ええ、よく感じます」
 「麻痺はないんだな」
 「はい」
 福沢は、クリトリスと分け入った襞の間を、指の腹で上下させ始めた。
 「先生!」
 「黙ってなさい。これも検査だ」
 検査と言われれば、断るわけにはいかない。福沢は、クリトリスを中心に襞をゆっくりと撫でた。
 「あ、うん。せ・ん・せ・い・・・・、そんな・・こと・・・しちゃ、だめ・・・・」
 「うん、よく感じるようだ」
 よくどころではなく、滝川はかなり感じていた。福沢の指と滝川の股間との間の摩擦が急に減少したように感じた。
 (わたし、濡れてる)
 滝川は、それをはっきり自覚できた。
 「せんせい・・・・」
 滝川の新たな器官にぬるりと福沢の指が入ってくる感触がした。滝川は、思わず腰を浮かせた。
 「人造腟のできもいい。アメリカから輸入して正解だった。ここは感じるだろう?」
 「・・・・はい」
 福沢の指が、滝川の腟の奥深い壁を刺激していた。そこは前立腺がある位置だ。女性でいれば、Gスポットの位置。ここへの刺激は、男にとってかなりの快感がある。
 福沢が、指を出し入れする。そのたびに快感が沸いてきて、滝川は腰を動かし、声をあげ始めた。
 「い、いいっ! 先生、とっても、いいわ。すごく感じる」
 福沢は、指を一本から二本に増やし、親指でクリトリスを刺激し始めた。
 「あ、あっ、あ、ああ・・・、あうん」
 「締まり具合は今一歩だが、思った以上にいい。よく頑張ったな」
 滝川は返事が出来なかった。福沢の指が引き抜かれた。滝川はもっとしていて欲しいと思った。しかし、これは手術の仕上がりをみるための検査で、そんなことは頼めなかった。
 ところが、滝川の耳にかちゃかちゃと言う男が届いてきた。目を上げてみると、福沢がズボンを下ろしていた。滝川と目が合うと、ニヤリと笑って言った。
 「検査は、まだこれからだ」
 「早く検査して」
 「ああ、充分検査してあげるよ」
 福沢がベッドの上に乗ってきて、滝川に身体を合わせた。
 「いくよ」
 「はい」
 福沢がゆっくりと腰を沈めてきた。
 「さあ、どうかな?」
 「温かいです」
 「そうか。肛門を締めてみて、そうすれば腟も締まる。そうだ。うん、まずまずだ。動かすぞ」
 福沢が腰を動かし始めた。
 「あ、ああ、い、いいっ!! せん・せ・い、いい!」
 滝川は、市原とのアナルファックで初めていったときのことを思い出していた。もうすぐいくのが分かった。
 「先生。いきそう。いくわ。いく、いく・・・・」
 その瞬間、福沢が滝川の中で弾けた。
 「うぐっ!!」
 「ああっ、いいいっ!!!」
 滝川の体は、滝川の意思とは無関係に痙攀した。頭の中が真っ白になって、滝川はふうっと意識をなくした。

 滝川の意識が戻ったとき、福沢は既にズボンをはいて服装を整えていた。
 「先生・・・・」
 福沢が滝川の方を向いた。
 「検査は合格だ。君は女として、立派にやっていける」
 「ありがとう、先生。こんなにすばらしい身体にしていただいたのに、ホントに何もお礼ができなくて・・・・」
 「君の処女をいただいたんだ。それで充分だ」
 福沢は、そういい残して病室を出て行った。

 階段を上ってリビングへ行くと、村木容子が福沢を待っていた。後ろめたさで、福沢は目を伏せた。
 「福沢先生。退院検査はいかがでした?」
 容子は、他人行儀にそう尋ねる。
 「あ、まあ。いいようだ」
 「外観の出来がいいのは、わたしも知っていますわ。機能検査もされたんでしょう?」
 こほんと咳をして、福沢は容子に背を向け、ブランデーをグラスに注いだ。横目でテレビを見ると、地下の病室が映っていた。
 (見られたみたいだな)
 福沢は、舌を出す。
 「いかがでした?」
 「まずまずのできだ」
 「そうですか。わたしを100としたら、何点になるかしら?」
 福沢が容子に目を向けると、容子はするすると白衣を脱ぎ始めた。
 「おい、おい」
 「福沢先生。わたしと比較して、彼女の出来を客観的に評価しましょうよ。それが医師としての役割でしょう?」
 洋子が滝川に嫉妬しているのが分かった。抱かざるを得ない。福沢は、ブランデーをぐっと飲み干し、容子の腰を抱いた。
 「乳房は、おまえのほうが小さいな」
 「あなた。大きいのがお好みでしたっけ?」
 「いや。おまえの大きさが一番だ」
 「ふふ。ほんとかな?」
 「あれは、女性ホルモンを染み込ませているからな。そうでなかったら、わたしの好みの大きさにしている」
 「そう・・・・」
 「おまえ、ウエストが少し太くなったんじゃないか?」
 「少しダイエットしなくちゃ」
 「スタイルは、五分五分と言うところだな」
 「負けちゃいないのね」
 「まあな。ソファーに横になれ」
 「はい」
 「これから先は条件を同じにしないとな。キスはなし。乳房への愛撫もなし。ここの刺激だけで、どこまで準備ができるかだ」
 「ムードも何もないのね」
 「それでも彼女は、ちゃんと準備ができたぞ」
 「負けられないわね」
 福沢は、滝川にやった手順を思い出しながら、容子を愛撫していった。
 「彼女に負けてるぞ」
 「ばか! もっと優しく丁寧にやってよ」
 「分かった。分かった」
 福沢は、ひとつのことに集中し始めると、容子を放りっぱなしにして、ほとんど手を出さない。滝川の処置を始めたから、ここ一ヶ月、容子には手も触れていなかった。だから容子は欲求不満になっていた。だから、すぐに感じ始めて、濡れてきたのを自覚していた。
 「やはり締まり具合はおまえの勝ちだな」
 「そりゃそうでしょうね」
 「彼女は処女だったからな。おまえだって、初めの頃は、これほど締まらなかったぞ」
 「彼女、あの頃のわたし並だって事?」
 「ま、そんなところだな」
 「今はわたしの勝ちね」
 「比べるのは可哀想だが、ま、そう言うことになるかな」
 「指だけの検査で済ましたわけじゃないんでしょう?」
 「あれで見てたんじゃないのか?」
 福沢は顎でテレビを指す。
 「どんな検査をしたのか、よく見えなかったわ」
 「分かった、分かった。やってやるよ」
 「気が入ってないんじゃないの?」
 「久しぶりだ。充分気を入れてやってあげるよ」
 福沢と洋子の影が重なった。