第3章 監禁

 3ヶ月が経過して、ぼくは出所の日を迎えた。これでもう、男たちの相手をしなくてすむ。ホッと安堵の溜息が出た。
 着替えて、3ヶ月間の懲役で得た僅かな給料を手にし、逃げるようにして刑務所の門を出た。門の外に迎えに来ているはずの菊ちゃんの姿がなかった。
 左右をキョロキョロと探していると、黒塗りのベンツが近づいてきた。見覚えのあるベンツだ。ぼくは商売柄、一度見た車の特徴は忘れない。
 ぼくの目の前でベンツが停まった。助手席から降りてきたのは、小林だった。
 「お務め、ご苦労さん」
 「ぼくをはめておいて、よくそんな口が利けるな?」
 ぼくは小林に詰め寄った。
 「はめた? 馬鹿なことを言うなよ。盗人猛々しいとはおまえのことだ」
 「ぼくは何も盗んじゃいない!」
 「日本の裁判所が決めたことだ。おまえは盗人だ」
 「違う!!」
 「おまえが何と言い訳しようとも、前科一犯の盗人に違いないんだ」
 「くそう」
 ぼくは小林の首をつかんだ。
 「乱暴は止せよ」
 顎を殴られて地面に倒された。
 「さて、ちょっと顔を貸して貰おう」
 ぼくはベンツの中に引き釣り込まれた。
 「どうしようって言うんだ」
 「来れば分かる」
 ベンツが発進した。走るベンツの中から、菊ちゃんが人待ち顔で待っているのが見えた。ぼくが出た所じゃないところで待っていたのだ。
 「菊ちゃん!!」
 叫んだけれど、菊ちゃんの耳には届かなかった。

 奥村の屋敷の中にある地下室へ連れて行かれた。
 「ぼくをどうするつもりだ」
 「借金を返して貰う」
 「ぼくに借金なんてない!」
 「ところがあるんだ」
 「何だって?」
 ぼくは驚きに目を見張って小林を見つめた。
 「おまえが盗んだ古伊万里の皿にひびが入っててな」
 「ぼくは盗んでない!!」
 「おまえが盗んだんだ。おまえのアパートから見つかったんだからな」
 「誰かが、ぼくのアパートに持っていったんだ」
 「それは誰だ?」
 「・・・・あんただな」
 「さあな。ともかく、おまえが盗んだことになっている。その皿が一円の価値もなくなってしまったんだ。だから、おまえに返して貰わなければならない」
 「馬鹿言うな」
 「と言っても、おまえは会社を懲戒免職になっているし、貯金もない。さあ、どうする?」
 「そんな金を払う必要なんてない!!」
 「イヤ、何が何でも払って貰う。そうだな。おまえが同棲していた菊子という女をどこかへ売り飛ばすかな?」
 薄笑いを浮かべて、小林がぼくに聞く。
 「き、菊ちゃんに手を出すな!!」
 「じゃあ、どうする? おまえが返すというんだな?」
 「・・・・お金がないのは知ってるじゃないか」
 「そうだな。じゃあ、おまえの体で払って貰おう」
 「ぼ、ぼくの体で払う!?」
 「男の相手ができるようになってるんだろう?」
 この言葉を聞いて、ぼくは理解した。初めから、ぼくに男の相手をさせるために仕組んだことなんだと。
 「イ、イヤだ!!」
 「じゃあ、菊ちゃんとやらに代わりをして貰おう」
 「止めてくれ!」
 「じゃあ、おまえの体で払って貰う。それでいいな」
 どうしようもなかった。あの時、この屋敷の呼び鈴を押したのが運の尽きだった。項垂れたまま頷く以外になかった。
 「契約書を交わしておこうな。そうすりゃ、おまえも安心だろう」
 ぼくの目の前に出された契約書を見て驚いた。古伊万里の皿の代金1200万円也。ぼくが一回男の相手をするたびに3万円を支払うとあった。
 「400回も男の相手をしなければならない」
 ぼくは茫然と契約書を見ていた。
 「さあ、契約して貰おう」
 「い、いやだ!」
 「彼女がどうなってもいいんだな」
 「卑怯者!!」
 「ご託はいい。どうするんだ?」
 菊ちゃんという人質を取られ、やむなくサインをして拇印を押した。
 「これで契約成立だ。よかったな」
 悔し涙が流れた。
 「あ、そうそう。忘れないうちに言っておこう。住居費と食費をきちんといただかないといかんからな。両方合わせて1日1万だ」
 「1日1万円!?」
 「せいぜい頑張って働けよ」
 ばたんとドアを閉めて小林は出ていった。すぐに鍵がかけられた。ぼくはもうどこへも行けない。閉じこめられて、借金が終わるまで男の相手をしなければならない。
 「くそ! くそ! くそ!!」
 壁を叩いた拳から血が流れた。

 小林が出ていったあと、ぼくは計算してみた。毎日一回相手をすれば、400日で皿の代金分が終わる。しかし、一日一万円が加算されるから、400万円がまだ残ることになる。それを計算すると、すべての借金が終わるのは600日後になる。
 「600日・・・・、2年あまりも・・・・」
 毎日じゃなくて、二日に一回だったら? 計算上は、1200日かかることになる。3年以上もここにいなければならない。
 「死んだ方がましだ!」
 だけど、菊ちゃんの顔が浮かんだ。
 「死んじゃ駄目だ。生きて菊ちゃんと一緒になるんだ」

 地下室の部屋は10畳ばかりの広さがあった。中央に大きなダブルベッドが設えられてある。ウオシュレット付きの水洗のトイレと全自動のバスもあった。閉じ込められて男の相手をするのでなかったら、こんな快適な住居はないと思った。
 しばらくして、夕食が運ばれてきた。運んできたのは、ぼくを応接室に案内した女性だった。
 「ぼくを助けて」
 「逃げても借金はなくならないわよ。あのひとたちは、どんなことをしてもあなたに借金を支払わせるわ。あなたには彼女がいるんでしょう? 彼女を巻き込みたくなかったら、大人しく言うことをきくことよ」
 そう言い残して去っていった。逃げようはない。諦めるしかない。ぼくは覆いを取って出された夕食を見た。ステーキにスープ、サラダが盆に載っていた。ほかほかの飯も皿につがれていた。
 逃げることができない以上、食べるものは食べて体力を付けておかなければ。ぼくは、出された料理を端から平らげていった。今まで食べたことのない旨い肉だった。
 一時間ほどして、片づけにやってきた。
 「入浴して、体を綺麗にしておきなさい。脱いだ服は、そこのランドリーボックスに入れて、着替えは浴室の向かいにあるクローゼットの中よ。いいわね」
 「分かった」
 「バスの使い方は分かるかしら? メインスイッチを入れて、自動のスイッチを押すと、何もしないでお湯が溜まるわ。ぬるかったら、あつくと書いてあるボタンを押せば、5分間だけ追い炊きされるの。いい?」
 「うん」
 体を綺麗にしておけということは、今日から始まるってことだ。昨日まで、刑務所の中で犯され続けてきた。もう終わりだと思ったのに、まだ続くなんて・・・・。
 覚悟を決めていたのに、涙が出た。

 ぼくは、全自動のバスにスイッチを入れて、お湯が溜まるのっを待った。30分ほどでお湯が溜まったと言う合図の電子音が鳴った。
 ぼくは、服を脱いでランドリーボックスに放り込み、お湯に浸かった。刑務所では、週に3回だけ、それも10分間だけの慌ただしい入浴だった。今日からはゆったりと入浴できる。足を伸ばしてお湯がぬるくなるまで浸かり、そのあと体を洗った。
 もう一度お湯に浸かってバスルームを出て、クローゼットを開けた。バスタオルが何枚か畳めれておかれ、その向こうにタンスがあった。女物の下着でも入っているのではないかと想像していたのに、入っていたのは男物だった。
 ぼくはトランクスを穿いて、上にTシャツを着た。さらにその上にパジャマを着た。
 「こんな格好のぼくに欲情するような男がいるのだろうか?」
 不思議でならなかった。

 壁に取り付けられている時計が、午後10時を指したとき、階段を下りてくる足音がした。入り口のドアを見つめていると、入ってきたのは、予想通り奥村源三だった。
 「やあ、久しぶりだな」
 奥村は、ぼくを見てにやりと笑った。
 「ひどいことをするんだね」
 「欲しいと思ったら、どんなことをしても手に入れる」
 「男のぼくのどこがいいんだよ」
 「君は、君が同棲していた菊子のどこがいいと聞かれて、すぐに答えられるかね?」
 ハッと考える。顔も可愛いし、性格もいい。料理だって上手だ。
 「わたしは君が気に入った。最初に門のそばに立っていた君を見たときに、すぐに小林に君を手に入れられるように手配させた」
 あの時、シールを貼られたベンツの中から奥村はぼくを見ていたのだ。
 「顔も美しい。まじめで性格もいい。体も引き締まっていて綺麗だ」
 ゾッとした。
 「さあ、こっちへ来なさい」
 「イ、イヤだ」
 「わたしには人質がいるんだよ。忘れたのか?」
 「菊ちゃんには手を出すな」
 「手を出さない代わりに、大人しく言うことを聞くんだったんだろう?」
 悔しさが沸き起こる。
 「さあ、こっちへ来なさい」
 言う通りにするしかなかった。ぼくは、奥村のそばまで歩いていった。
 「キスしてくれ」
 キスした。
 「もっと感情を込めないか!」
 仕方なく奥村に抱きついて、唇を合わせた。奥村は舌を入れてくる。噛み切ってやろうかと思ったが、そんなことをすれば、どんな報復が待っているか分からなかった。ぼくは、奥村の舌を吸った。
 「フェラチオをしてくれ」
 フェラチオ・・・・。ぼくは奥村を睨む。
 「早くしないか!」
 ぼくは、奥村の着ていたシルクのガウンの前を開き、トランクスを下ろした。赤黒く怒脹したペニスが目に入った。男のぼくが、男のものを口に含むなんて・・・・。
 「早くしろと言っているのがわからんか!」
 ぼくは舌をペニスに当てて這わせ始めた。
 「そのぎこちなさが何ともいえんな。もっと舌を使え」
 菊ちゃんに何度かされたことがある。それを思い出しながら、奥村のペニスに舌を這わせた。
 「うううっ!」
 奥村がうめき声を上げた。同時に奥村のペニスが硬度を増してきた。離れようとしたら、奥村に頭を押さえつけられ、喉の奥までペニスを突っ込まれた。
 ビクビクと奥村のペニスがふるえ、ぼくの喉の奥にほろ苦い液体を送り込んできた。
 「息が詰まる!」
 ぼくは、奥村の両足を手でばちばちと叩いて、怯んだ隙に奥村から離れた。
 「は、はあああ」
 精液のイヤな臭いが口いっぱいに広がっていた。吐き出そうとしたのに、口いっぱいに粘り付いて吐き出せなかった。
 「初めてだろう?」
 「当たり前だ」
 「初めてにしては上出来だ。さあ、ベッドに行け」
 「まだするのか?」
 「夜は長い。楽しませて貰うぞ」
 ベッドの上に仰向けになったぼくに、奥村はまるで女にするように愛撫した。パジャマを脱がされ、Tシャツ、トランクスと脱がされていった。
 そうするうちに、何故かぼくは勃起していた。3ヶ月の間に、ぼくはホントにホモになってしまったのだろうか?
 そのぼくのペニスに奥村は舌を這わせ始めた。強く吸われしごかれて、ぼくは奥村の口の中に射精した。奥村は美味そうに喉を動かした。その奥村の顔は、まるでホラー映画を見るように気持ち悪かった。
 「さあ、最後だ。俯せになれ」
 ぼくは俯せになり、言われなくても腰を上げた。
 「観念したようだな」
 ぼくは黙って尻を突き出していた。ぼくの腰に両手がかかり、ぐりっと入ってきた。痛みは全くない。快感がすぐにやってきた。奥村が腰を動かすたびにそれは倍増する。ぼくは喘ぎ声をあげていた。
 「あっ、あっ、あっ、あああっ」
 「いい仕上がりだ」
 両手で支えられなくなって、ぼくは肩をベッドに付く。
 「はあ、いいぞ」
 もう頂点は過ぎていた。ぼくの意識は朦朧となる。奥村に突かれているのを忘れるほどになった頃、奥村がぼくの中で弾けた。
 「おうっ!!」
 ふうと意識がなくなった。ぼくは完全にいってしまった。

 気がつくと、ぼくは枕に顔を埋めていた。枕にぼくの涎が付いていた。奥村は部屋の中にはいなかった。ぼくが気を失っている間に部屋を出ていったようだ。
 男を受け入れるのになれてしまったぼくの肛門。触ってみると、べっとりと粘液が付いていた。便の臭いじゃない。精液と他に何かが混ざったような臭いだった。ぼくの直腸から分泌された粘液なんだろうなと思った。
 ぼくも射精していた。
 「ぼくはホントにホモになってしまった。もう菊ちゃんとできなくなってしまうんじゃないだろうか?」
 悲しくて、涙が出た。

 翌日、奥村じゃなくて、小林がやってきた。
 「今日は俺の相手をするんだ」
 「あんたもホモなのか?」
 「まあな。どっちかというと女の方が好きだが、男も捨てたもんじゃない。さあ、早く服を脱げ」
 菊ちゃんを人質に取られている以上、相手をせざるを得ない。
 「ちゃんと一回分に計算してやるから心配するな」
 小林は、奥村とは違う。奥村は、ぼくをまるで女のように扱う。しかし、小林は、まるでぼくの中に小便するような態度だ。
 フェラチオをさせて勃起したペニスをぼくの中に入れて、ぼくのペニスをしごきながら、射精する。要するに、マスターベーションするために、ぼくの体を使っているようなものだった。

 奥村、小林、休みのサイクルがずっと続いた。このままのペースで進めば、借金を返すまでには、計算上は800日かかることになる。もっと早く解放されるように、毎日してくれとは言えなかった。

 半年ほどした頃、ぼくは奥村の寝室へ連れて行かれた。
 「簡単には逃げだせんぞ。それに人質のことも考えておけ」
 そう釘を差された。
 「それを着ろ」
 ベッドの上に置かれていたのは、シルクのパンティーと、白のネグリジェだった。ぼくは、着ていたものを脱いで、小さなパンティを穿き、ネグリジェを着た。
 「よく似合う」
 奥村はそう言ったけれど、鏡に映ったぼくは姿はとても見られたものじゃなかった。その夜の奥村は、かなり興奮していた。ぼくに女物の寝着を着せたのは、マンネリ解消のためだろうと思った。

 それから二ヶ月もすると、奥村はぼくに完全な女装をするように命令した。あの女性が手伝って、ウイッグに化粧までされて、女装させられた。
 奥村はぼくとキスしながら、ワンピースのファスナーを下ろして脱がせた。それからスリップの肩紐を外して床に落とす。ブラジャーも手慣れた手つきで外された。ガターベルトに繋がったホックを外してストッキングを抜かれ、最後にパンティーを下ろしていく。
 こんなことをするのなら、女を抱けと言いたいところだ。
 「わたしは男でないと勃起しない」
 そんなぼくの気持ちが分かったのか、奥村は少し言い訳がましくそう言った。奥村は完全なホモなのだ。

 ぼくを完全女装させるのにも飽きた頃、今度は、あの和服の女性がプレーに加わった。ぼくが彼女の服を脱がせる様子を、奥村はじっと見ていた。細い体に似合わぬ大きな乳房が付いていた。
 「キスをしろ」
 そう命令されて、ぼくは彼女にキスをした。女性にキスしたのは、菊ちゃん以外では初めてだった
 「久しぶりの男をやって見ろ」
 ぼくは、女をベッドに運び、首筋や乳房に舌を這わせた。気持ちよさそうにしていた。
 「坊や、上手いわよ」
 ぼくに向かってそう囁く。長襦袢を取って、ぼくは絶句した。彼女の股間にぼくと同じものがあったからだ。
 「お、男なの?」
 「そうよ」
 にっこり笑って答えた。
 「どうして?」
 「あなたに奥村を取られた、ただそれだけよ」
 奥村を見た。奥村はにやにやしながら、ぼくたちを見ていた。
 「真希に入れろ」
 彼女の名前が真希だと初めて知った。イヤ、女じゃないんだ。
 「イ、イヤだ」
 「そうか。それなら、真希、おまえが入れてやれ」
 「はい」
 他の部分は完全に女なのに、そこだけが天を向いていた。それも、ぼくよりかなり立派なものが。
 「や、止めてよ」
 「あの人の命令は絶対よ。わたしがあなたに入れるか、あなたがわたしに入れるしかないのよ。どうするの?」
 「ぼくはできないよ」
 「じゃあ、わたしが入れるしかないわね」
 躊躇いもなく、真希がぼくの中に入れる。女の姿の真希に、男の姿のぼくが入れられている。端から見たら、奇妙な光景だろうなと思った。
 そんな光景を見ながら、奥村はマスをかいていた。
 「奥村の変態が!!」
 奥村に突かれながら、真希の大きなペニスに舌を這わせたり、その逆もやらされた。ぼくのペニスを二人のどちらかに入れるなんてことはしなかった。ぼくにはどうしてもそんなことはできなかった。

 なかなか行かなくなった。上ってくるのに、最後まで行かないのだ。奥村もそのことに気づいたようだ。しかし、ある日を境に再び激しい絶頂を覚えるようになった。その原因がなんなのか、ぼくには分からなかった。
 その原因に気がついたのは、ぼくが地下室に連れてこられて1年目が近づいた頃だった。奥村は、覚醒剤を使っていたのだ。ペニスに覚醒剤を塗ってぼくに舐めさせ、さらに肛門に入れるときにも塗り直していたのだ。直腸は吸収のいいところだから、あっと言う間にぼくはいい気持ちになり、絶頂を覚えるようになったのだった。