七月二十日(火)

 美奈子をわたしの両親の元へ行かせることにした。父親が失踪して、美奈子はひとりで暮らしていることになっているから、わたしの両親がそろそろ来そうな予感がしていた。恭子の母はすでに他界していて、父親の方は二十五年前から行方不明だ。わたしの両親に任せるしかない。

 昨日の夕方、美奈子と二人で食事の準備をしていると、心配そうな顔をして両親がやってきた。美奈子はわたしのことを、同級生で一人ぼっちになって寂しくて怖いから泊まってもらっているのと紹介した。同級生にしては老けていると思われないかなと訝りながら両親に挨拶した。
 「明子です。初めまして。よろしくお願いします」
 「済みませんね、明子さん。もう心配ありませんから、お帰りになってよろしいですわ」
 そんなこと言われてもここが私の家だ。追い出されたら、帰るところがない。
 「今晩は泊まる準備をしてきて貰っているから、泊まってもいいでしょう? わたしも明子が居てくれた方が寂しくないから。ねえ、おばあちゃん」
 「そうね。年寄りばかりといるより、若いひとが居た方がいいかもしれないわね。いいわよ」
 そういうわけで、昨夜は放り出されないですんだ。

 今朝、「お邪魔しました」と挨拶して、玄関の鍵を持って先に出た。見つからないように近所の生け垣の陰に隠れて、三人が出て行くのを待った。三人が出て行ったあと、家に戻って、ほっとため息をついた。美奈子もいろいろ助けてくれたが、これで自分だけの心配をすれば良い。

 柳本という研究員が見つかった。酒を飲んで酔いつぶれて警察に保護されていたのだ。いつものことらしい。大々的に扱われてきた大量失踪事件もふたりの人間が相次いで出てきたことで世間の興味が冷めてきたのか、テレビの話題に上ることが少なくなってきた。本田社長も黙って愛人と旅行にでも行っているのではないかと噂され始めていた。

 午後、本田陽一のマンションに行ってみた。マンションの周りにも報道陣はいなくなったようだ。本田陽一は、父親が戻ってこないことを想定し、取締役になったと新聞に書いてあった。しばらくの間、母親が社長代理を務めるらしい。株式会社だが、社長がほとんどの株を持っているからできることだ。本田陽一は、そんなことで忙しいらしく、マンションには戻っていないようだ。駐車場にロードスターの姿が見えない。接触する機会がない。待つしかない。

 帰りに、デパートに寄って買い物した。服はともかく、下着は恭子のものをずっと着るわけにはいかない。