第4章 うまくいったぞ

 アパートの階段を下りて表通りへと向かって歩いていく。金城は、それとなく辺りを見回している。俺が帰ってきて、二人で歩いているところを見られては困ると言った雰囲気だ。俺が帰ってくるはずはない。
 入れ替わりだとすると、俺がこの女の名前も住所も知らないのと同じで、俺と入れ替わっただろう女もここを知らないから、帰ってくる気遣いはまずない。
 入れ替わりじゃなくて、俺が女になってしまった、女に変身してしまったとしたら、俺が帰ってくることは絶対ないのだ。
 「おまえ、年はいくつだ?」
 歩きながら、金城が聞いてくる。
 「しめしめ、俺に興味を持ったようだ」
 内心ほくそえみながら、俺は答えた。
 「・・・・19」
 実際の年齢は、分からない。19と答えたのには、俺なりの考えがあったからだ。何故かと言うと、今の俺は、金城とセックスすることだけを考えている。高校生相手だと、金城がちょっとためらうと思ったからだ。しかし、どう見ても今の俺は、20以上には見えない。だから、19と答えたのだ。
 「19!? 嘘だろう? 高校生、イヤ、見方によっては中学生に見えるぞ」
 確かにそう見えるんだがなと俺も思う。しかし、もう19と言ったあとだし、今更言い直すわけにもいかない。
 「いつもそう言われるわ」
 と答えた。そう答えるのが最良だろう。
 「そうか。19か。へええ」
 そう言いながら、金城は俺をじっと見つめた。かなり若いと思っていたのに、19だと言う俺の返事を聞いて、その気になってきたようだ。
 「恥ずかしいじゃないの」
 「あ、すまん。ところで、おまえの住んでるところはどこだ?」
 そう聞かれると困ると思っていた。そこで、話しを逸らすことにした。
 「お腹、空いたな」
 「そういやあ、少し早いけど、夕飯の時間だな。なんか食いに行くか?」」
 「財布、持ってないんだ」
 「そうだったな。いいよ。俺がおごってやる」
 「いいの? 服も買って貰ったのに」
 俺は甘えた声を出す。
 「いいさ。大したことないんだから」
 「じゃあ、お言葉に甘えまして」
 俺の思っていた軌道に載り始めた。うきうきしながら、金城の後ろについていった。

 金城が向かったのは、俺と金城がよく行く店じゃなくて、少し離れた学生相手の定食屋だった。金城は俺と出会うことを恐れている。
 「ここのハンバーグ、美味いんだ。それでいいか?」
 暖簾をくぐりながら、金城が言う。
 「いいわ」
 「おばさん! ハンバーグ定食、ふたつね」
 了解と奥の方から声がした。
 「学生だろう?」
 「え、ええ」
 「どこに行ってるんだ?」
 そんなこと知らない。もしかすると高校生かも。困ったときのこの言葉。
 「内緒」
 「そう言わないで、教えてくれよ」
 「だめ」
 「・・・・仕方ねえな。迫村とはどうして知り合った?」
 それも聞かれると思った。
 「それも内緒」
 「ちぇっ、ま、いいか」
 金城は、ポケットからタバコを取りだして火を点けた。その煙が目にしみた。俺もタバコは吸うのだが、この女はタバコを吸わないようだ。俺は煙にむせた。
 「ちょ、ちょっと、煙いわ。タバコ、消して!」
 「あ、すまん、すまん」
 金城がタバコをもみ消していると、トレーを両手に抱えたエプロン姿の太った女性がやってきた。
 「はい、ハンバーグ定食」
 俺たちは、早速食い始めた。いつも二人で行く店より格段に上手かった。横目で壁に貼られた値段表を見てみると、2割ほど高いようだ。女と一緒だから、ちょっと張り込んだというわけだ。

 「ごちそうさま」
 金城が会計を済ませるのを待って、俺は満面の笑顔を向けた。金城はちょっと照れ笑いを浮かべる。女って言うのは、こんな時便利だなと思った。すべてがごちそうさまですむ。男なら、こうはいかない。
 「たいしたことないさ。じゃあ、送ってくよ」
 このままじゃあ、軌道から外れてしまう。俺のほうから誘うことにした。
 「金城さん、あなた、迫村さんに義理立てしているの?」
 「あ、えっ? 何のこと?」
 その気があるくせに、やっぱり俺に遠慮があるようだ。惚けた表情を向けた。
 「わたしって、中学生みたいで、魅力ないんでしょうね」
 俺は、ちょっと拗ねてみせる。
 「そ、そんなことないさ」
 金城は、女と見たら口説く。もう言ったな。穴があったらどこにでも入れる。これも本当だ。
 「やれるんだったら、ニューハーフでも構わない」
 とはいつぞや金城が吐いた言葉。金城は、今の俺が俺の彼女だと思っているから、友人である俺に遠慮している。しかし、今のシチュエーションで、俺の誘いに乗ってこないはずはない。
 「金城さんにお礼をしたいんだけど」
 「お、お礼って?」
 金城は、ごくりとつばを飲んだ。
 「お金のない女が、お礼をする手段はひとつしかないわ」
 俺の言わんとする意味はすぐに分かったようだ。
 「い、いいのか?」
 俺は、にっこり微笑んで頷いた。
 「じゃ、じゃあ。俺のアパートに行くか?」
 「いいわよ」
 「ついて来いよ」
 金城は、目じりを下げて、俺に微笑んだ。
 「遠いの?」
 金城の住んでいるアパートは、この場所から歩いて5分の距離にある。それは分かっていたが、こう聞くのが自然だろう。
 「すぐ近くだよ」
 金城が歩き始め、俺はそれに従う形でついていった。

 途中で気が変わるのではないかと思うのだろう。金城は時々俺の方を振り返る。俺は知らんぷりして歩いていた。
 通りすがりの女が俺の方を振り返って見ていた。そんなにおかしな格好はしていないと思うけどと俺は服装を確かめた。確かめながら、ふと思う。この女の素性を知っている女だったかもと。引き返して確かめてみようと思ったけれどやめた。今はそれどころではない。俺にとってはもっと大事なことが待っているのだ。
 金城のアパートに着いた。アパートの鍵を開けると、金城はバタバタと散らかった部屋を片づけ始めた。
 「汚くてごめんな」
 「男の人の部屋は、みんなこんなものでしょう?」
 「そうだな。そこに座って。コーヒーでも入れるわ」
 「テレビ、点けてもいい?」
 「ああ。まだ何にもやってないだろう?」
 「ニュースを見るの。ニュース見るの、大好きだから」
 「迫村と一緒なんだな」
 そう言われて、どきっとした。
 「唯一の共通点ね」
 と、誤魔化した。

 コーヒーを飲みながら、テレビの画面に見入る。今日も政治家のスキャンダルが流されていた。声を小さくして弁明している。この政治家も、次の選挙で当選すれば、禊ぎが済んだとばかりに声が大きくなるに違いない。厚顔無恥に出馬するのにも呆れるが、それに投票する奴らにも呆れてしまう。
 「ホントにニュースが好きなんだな」
 「あ、いえ」
 「ビデオがあるぜ。見ないか?」
 金城はレンタルらしいビデオカセットを持ち出してきた。
 「なに?」
 「トーマス・クラウン・アフェアって言うタイトルだよ」
 「なに? それ? 面白いの?」
 「面白いらしい」
 「じゃあ、見るわ」
 ビデオなんて持ち出してどうするつもりだろう。金城って男の行動には時々わからないところがある。
 ビデオの画面が流れ始めた。始まりからすると結構いけそうな気がする。女に見せるにはあんまり面白いとは言い難いなと思いながら俺は画面に見入る。こういう映画は俺は好きだ。
 「この人、ジェームスボンドをやってなかった?」
 「そのようだね」
 金城は、俺のすぐそばに座ってチャンスを窺っているようだ。こちらとしてもチャンスがあればと思うのだが、どうも話しの持って行きようがない。
 「そろそろお礼をしましょうか?」
 こんな言葉じゃ、おかしいな。じゃあ、何と言おうか? イヤ、一度女の俺の方から誘っているのだから、もう一度言うのはどうも憚れる。迷っている間に時間は過ぎ去っていった。
 そうしているうちに画面がおかしな雰囲気になっていた。相手役の女優の着ている服と言ったら、黒なんだけどすけすけで、おっぱいは丸見え、パンツ一丁に見える。画面の中の二人が裸でセックスするシーンになったとき、金城が動いた。俺の肩に手を回してキスしてきた。俺も体を委ねた。
 金城の差し入れる舌はヤニ臭い。吐き気を催すが我慢した。キスしながら、金城は俺のTシャツをまくり上げ、小さな乳房を揉み始めた。
 「小せえ、おっぱいだな」
 そう思っているだろうなと想像する。絶対間違いない。ただ金城は乳房の大きさにこだわらない。どんなブスでも構わない。ただやれればいいという男だ。
 「あ、うん」
 金城の舌で乳首を転がされて、オナニーしたときより強い快感がわき上がってきた。金城は執拗に俺の小さな胸を攻める。小さい方が感度がいいって言うのはホントみたいだななんて思いながら金城の愛撫を受けていた。
 そうしながら、金城はスカートをまくり上げ、手を進入させてきた。パンツの上から、尻を撫で回す。
 スカートからいったん抜け出た手が、俺の左の乳房を揉む。それからまたスカートの中へ戻り、今度はパンツの上から俺の女の部分を柔らかくタッチしてきた。
 「金城のやり方は、俺のやり方とよく似ている。まあ、男はみんな同じようなものだろうな」
 なんて思っていた。それから、手がパンツの中へと入ってきた。襞の中から敏感な部分を探り当ててきた。金城の乳首に這わせていた舌が止まった。どうやら、俺の襞の間の状態に驚いたようだ。
 俺は女として男に抱かれようとしていることに興奮していた。だから、金城が俺を押し倒して、キスし始めた頃からそこは愛液で溢れて始めていたのだ。
 「ビチョビチョだぜ」
 俺の顔を見て、にやりと笑った。
 「ば・か!」
 「へへへ」
 金城の指が動き回る。その心地よさに、俺は腰を前後に動かしてもだえる。
 「あうん。あん。あああーーーん。はあん」
 自分でしたときも気持ちよかったけれど、男にして貰っていると思うと、さらに気持ちよかった。
 金城の舌が乳首から離れた。両手がパンツにかかって、ゆっくりと脱がされていった。俺は足を立てて少し開く。すぐに金城の吐息を股間に感じた。柔らかく暖かい軟体動物が俺の敏感な部分をはい回った。
 「ああっ!!!」
 快感が脳天まで突き抜けていった。
 「おまえ、感じやすいんだな」
 返事ができなかった。返事ができるほど俺は冷静でいられなかった。
 「はあん。ああん。ああああ」
 何故か涙がこぼれてきた。快感のせいだろうか? フッと金城の舌が離れた。かちゃかちゃとズボンのベルトを外す音がした。次の瞬間、俺の目の前に金城の顔があった。
 「準備万端だ。いくぜ」
 ぼんやりした意識の中で俺は頷く。すぐにグリッとした感触があった。ほとんど痛みはなかった。この女、やりなれてるなと思う。そのままずるずると押し広げるようにして俺の中に入ってくる。バナナでは感じなかった暖かさを感じた。その暖かさが熱さに変わり、骨盤の中へと広がっていく。そしてさらに体全体へ・・・・。
 「ううん・・・・」
 「た、たまんねえ」
 どうやら俺は金城を締め付けているようだ。はっきりとは分からないが、そんな感触がする。
 「耐えられねえよ。行くぜ!」
 金城は突然狂ったように腰を動かし始めた。上り始めた。もうすぐいけそうだ。ところがいけなかった。金城が先に行ってしまったのだ。
 「うううふぁっ!!」
 がっくりと力を抜いて、金城が俺に覆い被さってきた。ヤニ臭い吐息が俺の顔にかかった。俺は心の中でクソッと舌打ちをした。マスかいてて、射精の直前で止めたような感じだった。
 「すんげえ、良かったぜ」
 俺は返事をしなかった。
 「良くなかったのか?」
 俺は肩を竦めた。
 「何でだよ」
 「もう少しだったの。もう少しで行くところだったのに。・・・・もう少し我慢して欲しかったわ」
 「・・・・そうか。それはすまなかった。だけどさあ。おまえ、すごいんもんな。あんなに締められたら、誰だって行っちゃうよ」
 頭を掻きながら言う。
 「元気良すぎるのね」
 「そ、そう。少し休んで、もう一度やってみよう。そしたら、行かしてやれるよ」
 「ホントに?」
 「ああ。ジュースでも飲むか?」
 「ええ」
 下半身丸出しで金城は立ち上がって冷蔵庫へ向かった。俺の中から金城が放出した精液が溢れ出てくるのを感じた。
 「このままにしていていいんだろうか?」
 そうは思ったけれど、倦怠感でなにもする気にはならなかった。
 「ええい! どうにでもなれ! どうせ、金城の部屋のカーペットが汚れるだけだ」
 俺はカーペットの敷かれた床にじっと寝ていた。金城が冷蔵庫からCCレモンを取りだして、リングプルを引いて一口飲んでから、俺に手渡してきた。
 「ありがとう」
 俺は上体を起こして、CCレモンをゴクゴクと飲んだ。そんな俺を金城はニヤニヤして見ている。その視線が、ちょっとおかしなところを見ていた。
 「何見てんのよ」
 「俺の出したのがおまえの中から出てる」
 「・・・・ったく、もう・・・・」
 「さあ、もう一度やろうか?」
 おれがのこりのCCレモンを飲み終えると、早速言い出した。
 「もう大丈夫なの?」
 「へへ。それが俺の自慢」
 にやりと笑う。
 「そう。・・・・フェラしてあげようか?」
 「してくれるか?」
 「いいわよ」
 もちろん、フェラチオなんてしたことはない。ノーマルな男は、そんな経験があるはずはない。だから、やってみたかった。
 俺は、俺が出した愛液と金城の精液にまみれたペニスを口の中にくわえた。セックスするのに、汚いも気持ち悪いもない。べとべとしたペニスが綺麗になるまで嘗めあげてやった。半立ちだった金城のペニスが復活してくるのに時間はかからなかった。
 「もうやれそうだぜ」
 「今度は行かせてね」
 「任しとけ」
 再び金城が入ってきた。初めの時も感じたけれど、女としては男を受け入れるってこと、それだけで体に快感が走る。その快感が、男のピストン運動によってさらに増幅されていく。
 「あう、あう、あう」
 「はあ、はあ、はあ、はあ」
 「はうん。あああん。ああ、いいわあ」
 「まだか?」
 「もう少し。もう少しよ」
 「また行きそうだぜ」
 「い、行きそう・・・・。行くわ」
 「うううううっ、い、いくぜ」
 「来てえ」
 今度は、ぴったりだった。俺の中で金城がはねた瞬間、俺は行ってしまった。俺の意識とは無関係に体がガクガクと痙攣した。
 「い、いいい・・・・」
 俺の上にのしかかってきた金城の背中を力の限り抱きしめた。俺の耳元で金城が荒い息をするのが聞こえた。
 「おおう」
 「どうしたの?」
 「また締め付けられた」
 「そう?」
 「ほら、まただ」
 そう言われたとき、確かに下半身から頭に向かって快感が走ってくるのを感じた。寄せては返す波のような快感を覚えながら、引きずり込まれるように俺は眠りに落ちていった。