今日の寝起きも最悪。頭を上げようとしているのにまったく言うことを利かない。手足もまるで自分のものではないかのように重い。まだ完全に覚醒していない意識の中で、動け動けと手足に命令を繰り返して、ようやく俺は仰向けになった。
「すぱっと起きられるやつが羨ましいよ」
そう思いながら、体が覚醒するのを待つ。寝起きが悪いのは、低血圧のせいだと言われた。寝る前にワインを飲んで眠るといいと言われて実行してみたけれど、一向によくならない。頭ががんがんするだけだ。飲みすぎ? そうかもしれない。昨日の夜も、かなり飲んだから、こんな風に体が重いのかもしれない。
目覚まし時計がなってから、どれくらいたったのだろうか? 俺は、やっとの事でベッドの上に起きあがった。
「あれ?」
俺はまだぼんやりしていた。しかし、いつもとはちょっと違う、妙な感覚を覚えた。
「おかしいな?」
ベッドの上に胡座を組んで、頭をゆっくり回してみる。こうするといつもは少し頭がすっきりする。
「あれれ・・・・?」
おかしいなと思った原因が分かった。俺の目の前で揺れ動く髪の毛だ。俺はここ3ヶ月散髪に行っていない。散髪屋で長々と待たされるのが嫌いだし、学生にとって散髪代も勿体ないからだ。とは言うものの、ただ単に俺が無精と言うだけかもしれない。
「だけど、こんなに伸びていたかなあ?」
右手を髪の毛にもっていく。額から髪の毛をすくってゆっくりと毛先までずらしていった。俺が手を伸ばしきったところで髪の毛がはらりと胸に落ちてきた。
「な、なんだ!?」
かなり伸びてはいたけれど、こんなに長くはなかったはずだ。意識が一気に覚醒へと向かう。よくよく調べてみると、髪の毛が俺の胸の高さまで伸びていた。しかもその髪の毛は、シャンプーの宣伝に出てくる女優のように、しなやかで艶があった。俺の髪の毛は癖毛で、これくらい伸ばしたら、パーマをかけたようにくるくると捻れているはずだ。
「どうしてこんな髪の毛なんだ?」
さらに、その髪の毛先は綺麗に切りそろえられていて、しかもどうやら髪の毛の分け目が頭の真中にあるようだ。
俺はまだ覚醒しきっていない頭で考えた。昨日の夜、ナンパに失敗して、俺と金城はこの俺の部屋でやけ酒を飲んだ。床に転がったかなりの数のビールの缶がそれを物語っている。午前1時の時報がなった頃、金城が部屋を出ていくのを俺は半分寝ながら見ていた。
「金城のやつが、悪戯心を出して俺にカツラでも被せていったんだな」
俺はフフと笑いながら、髪の毛をぎゅっと引っ張った。
「えっ!?」
髪の毛を引っ張った方に頭が引っ張られた。それと同時に毛根に痛みが走った。俺は、驚きのあまり、口に手を当てた。
目の前に垂れ下がる長い髪の毛。
「一夜にして、こんなに髪の毛が伸びるなんてことがあるものか。何かの間違いに決まっている」
しかし、もう一度両手で髪の毛を引っ張ってみて、その髪の毛が俺の頭に根付いていることを確認させられた。
俺は自分では完全に目覚めていると思っていたけれど、まだはっきりしていなかったようだ。
「やっぱり一夜でここまで伸びたみたいだ。散髪に行けってことかな?」
そんな風にのんびり考えていた。しかし、次の瞬間、髪の毛をいじりながら、俺は別の異変に気づいた。
「・・・・胸が膨らんでいる!?」
寝間着代わりに着ているTシャツの胸の部分が少し押し上げられていた。俺はTシャツの襟を人差し指で前方へ引っ張ってみた。
「・・・・???」
不思議なものが見えた。それは俺の胸にはあってはならないものだった。ゆっくり天井を見上げてから、もう一度Tシャツの中を覗き込んでみた。
「やっぱり膨らんでいる・・・・」
そんなに大きいって訳じゃない。ほんの少し膨らんでいるだけだ。だけど、男の胸としては異常な大きさだ。
Tシャツの上から両手で胸を触ってみた。手のひらにすっぽりと入る、小さな柔らかい膨らみの感触が手から頭へと伝わってきた。胸は胸で、手の暖かさを頭に伝えてきた。
Tシャツの裾を胸の上まであげて膨らんだ胸を眺めた。
「ちいせえなあ。せいぜいAカップくらいか?」
自分の胸が膨らんでいるというのに、俺はまるで他人事のようにそう呟いた。確かに小さかった。まるで、小学生のようだ。そう。小学校5年生の従妹がこれくらいの大きさだった。
「あいつは早熟だもんな」
従妹の顔を思い浮かべながらもう一度胸を見た。その小さな胸、乳房の頂上に、ピンク色のこれまた小さな乳首が乗っている。その周りにわずかな褐色を帯びた部分。
「これは処女の胸だ」
そう思いながら、その乳首を触ってみた。
「うん」
妙な快感が生まれた。胸の奥にズンと響き渡るような快感だ。
「気持ちいいぞ」
俺はなおも乳首への刺激を続けた。快感は胸の奥から、頭のてっぺんまで届いてくる。俺はベッドの上にばたりと倒れて、両方の乳首をつまんでさらに刺激を続けた。
「い、いいなあ・・・・」
快感に浸りながら、ふと気づいた。
「どうして、勃起してこないんだ?」
俺は、マスをかくときに、ときどきこうして乳首を刺激してみる。男なのにおかしいと思うかもしれないけれど、これが結構気持ちいい。今朝ほどの快感はいつもはないけれど、乳首を刺激すると勃起してくるはずなのに、今朝はこれほどの快感を覚えながら勃起しない。これはおかしい。
左手は乳首に置いたまま、右手を乳首から離して股間にやってみた。
「!!!」
俺は慌てて左手も股間にやってみた。俺の右手が、何か間違いを犯していると思ったからだ。しかし、左手も同じ信号を返してきた。
「な、ない!!!」
俺は慌てて起き上がり、トランクスの前を前方に引っ張って中を覗いてみた。トランクスの中には、何も見えなかった。イヤ、見えた。恥骨の上のわずかな淡い陰毛が。
「俺の陰毛はこんなに薄くない! それに俺のペニスはどこへ行った? いったい、どうなってるんだ!?」
見たものが信じられず、俺は右手をトランクスの中につっこんでみた。陰毛の中に襞が触れてきた。襞の真ん中を分け入ってみると、一番手前の小さな隆起にぶちあたった。
「おう!」
乳首を触ったときよりもさらに強烈な快感が生まれてきた。
「これはクリトリスだ。襞は小陰唇だ。俺の胸には乳房がある。髪の毛も長い。そう言えば手も小さく指も細い。・・・・俺は女になってしまった」
驚きはあった。しかし、それよりも俺は右手の中指によってもたらされる快感に酔っていた。マスを掻くのと同じように、右手で小さな隆起を刺激し続けた。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
快感が腰から背中、頭へと上ってきた。
「ううう・・・・」
射精したときの数倍の快感が沸いてきて、俺は体を痙攀させていた。
ぼんやりと目を開く。タバコのヤニで汚れた天上が目に入った。視線をずらし、壁にかけてある時計を見た。時計は午前7時を指していた。
「枕もとに置いてある目覚ましは、8時にセットしていたはずだ。目覚ましがなって起きたと思ったけど、あれは夢だったんだ。と言うことは、女になったのも夢だったんだ。妙な夢を見たもんだ」
そう思いながら、起きあがろうとした。起き上がろうとして、それがやっぱり夢ではなかったことに気づいた。胸の上まで捲り上げられたTシャツの向こう側に、小さなふたつの隆起が見えた。その隆起の頂点には乳首らしい小さな隆起があった。
俺の右手は、トランクスの中に突っ込まれたままだ。トランクスの中の右手を動かして調べてみると、やっぱりペニスも睾丸も触れなかった。わずかな茂みと襞が存在するばかりだ。
「夢じゃなかったのか!?」
夢の中で女になってオナニーしたと思っていたのに、現実に俺は女になっていた。
「いやいや、これも夢かもしれない」
俺はほっぺたをぴしぴしと叩いてみた。そうしてから、もう一度確かめた。
「やっぱり俺は女になっている」
しかも、オナニーしたのも現実だったようだ。その証拠に、俺の体から出てきたらしい愛液をべっとりと指先に感じた。股間全体が、凄いことになっていた。陰毛もまるでクリームを塗りたくったようになっていた。トランクスを下げて、ティッシュでそのぬめりを拭き取った。拭き取っても、俺の股間はまだしっとりと濡れていた。
「膣もあるんだろうか?」
俺は、右手の中指を襞に沿って進めていった。ぬるりと中指がくぼみに吸い込まれていった。俺は慌てて指を抜いた。
「完全に女になっている・・・・」
俺は体をじっくり観察した。細い手足、小さな胸。腰はくびれ、下腹はそがれたようにへこんでいた。
「痩せてんだな」
Tシャツもトランクスもだぶだぶだった。
「痩せただけじゃないみたいだ。体全体が小さくなった感じだ」
俺は、両手を表にしたり裏にしたりして観察する。
「何が原因で女になってしまったかは分からないけど、どんな顔になっているんだろうか? 裕美より美人ならいいが・・・・」
裕美は、俺のふたつ下の妹。小学校の頃まで、いつも喧嘩ばかりしていた。しかし、最近は妙に女らしくなって、喧嘩をふっかけても俺を相手にしなくなっていた。
「裕美も格好可愛いんだが、俺が女になったら、もっと可愛くなっているはずだ」
俺は、かなり自惚れ屋だ。Tシャツもトランクスも脱いで素っ裸になると、バスルームへ向かった。
「誰か覗いてやしないか?」
バスルームへ向かいながら、窓の方を振り返った。窓のカーテンはぴっちりと閉まっていた。
「大丈夫だな。まあ、開いてたって、窓の向こうは、隣のアパートの壁だ。誰が覗くというわけじゃない」
俺は、ワンルームの部屋を横切って、バスルームのドアを開けた。
「ええっ!?」
バスルームの壁にある鏡に女になった俺が映っている。裕美を少し美人にした女になっている俺を想像していたのに、鏡に映った女の顔は、裕美とは似ても似つかぬ顔だった。
「おかしいなあ」
俺は首を傾げる。鏡の中の女も俺とは反対方向に首を傾げた。鏡に映った女は間違いなく俺だ。
「ぜんぜん、美人じゃねえ・・・・」
俺はがっかりする。俺の評価としては、ブスではないが、美人じゃない。十人並みと言ったところだ。
「いや、十人並みは可哀想か? 十人並みの上というところか?」
そう思いながら、鏡を見つめた。鏡の中の女になった俺は、かなり痩せていた。痩せているというよりも貧相に見えた。
「ダイエット、しすぎだな。これじゃあ、女としての魅力は、ゼロに等しいな。いったい、何キロなんだろう?」
バスルームの外に置いてある体重計に乗ってみると、36キロしかなかった。俺の体重は67キロだった。
「差し引きの31キロはどこへ行った? 女に変身するときに、エネルギーを消耗したのだろうか?」
こんな風に考えるなんて、理系らしい発想だと思った。
「年令はどれくらいだろうか?」
もう一度鏡を覗いてみた。女の年令なんて分からないけれど、俺の勝手な想像で言えば、10代後半から、せいぜい21くらい。つまり、俺とあんまり変わらない年齢だろうということだ。
窓際に据えてあるベッドの上に戻って考える。
「俺が何らかの原因で女になったんじゃない。それなら、もっと美人になってもいいはずだ。美人じゃなくたって、少なくとも裕美と似ているはずだ。俺の今の顔は俺が女に変身したとは到底考えられない。それに身長も体重もあまりに違いすぎる。じゃあ、どう考える? 俺は見知らぬ女と体が入れ替わってしまった。・・・・そう、それしかない。そう考えるのが妥当だろう。しかし、こういった場合、魂が入れ替わるって言うのなら分かるけど、体の方が入れ替わるなんて聞いたことがない。イヤ、待てよ・・・・」
俺は思い出す。
「昔、『月に願いを』と言うビデオを見たことがある。あの時は、体が入れ替わったんじゃなかったか? そうだったよな。そうだとすると、俺と入れ替わった女は困ってるだろうな」
フフッと笑いがこみ上げてきた。
「まさか、マスかいたりしてないだろうな」
自分はやってしまったことを棚に上げて、俺はちょっとむかつきを覚えた。
「イヤ、きっとマスかいているに違いない。それなら、俺も」
勝手にそう解釈して、俺はもう一度オナニーをやることにした。
素っ裸のままベッドの上に仰向けになって、左手で乳首をつまみながら、右手でクリトリスを刺激する。
「ああ、気持ちいいなあ」
またまた股間が濡れてきた。俺は、さらに続ける。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あああ・・・・」
また、行ってしまった。
「結構いいぞ。女は」
ぼんやりとしながら、俺は快感に浸っていた。快感に浸りながら、次のアイデアを考える。
「何かないかな?」
俺はベッドから起き上がって部屋の中を見回す。俺は、腟に中に入れるものを探していた。
「クリトリスだけで、これほど気持ちよくなるんだ。膣の中に入れたら、もっと気持ちよくなるだろう」
そんな気がしたのだ。
「ディルドーなんて持っていない。代わりのものを探さなければ・・・・」
俺は部屋の中を探し回った。ボールペン。駄目。マジックインク。まだ細すぎる。・・・・合成糊の入れ物。手にとって眺めた。
「これくらいなら、まずまずか・・・・」
合成糊の入れ物は、直径が2センチあまり。ペニスよりはかなり細いけれど、他に適当なものがないから仕方がない。俺は、丸いキャップの付いた方を入り口にあてがった。
「このままだと痛いかな?」
思い直して、立ち上がって財布の中からコンドームを取りだした。
「これ、これ。これなら、ジェリーも付いてるし、傷つくこともないだろう」
袋からコンドームを取りだして、合成糊の入れ物に被せ、もう一度腟の入り口にあてがった。力を抜いて押し込むと、するりと入って、そのまま入れ物全体が膣の中に入り込んでしまった。
「あちゃあ、チッと短すぎた」
コンドームの端を引っ張って外に取り出す。
「もう少し長いものか・・・・。できれば、もう少し太さもあるといいが・・・・。何かないかな?」
もう一度部屋の中を探してみたけれど、適当なものは何もない。諦めかけてふと思い出した。
「冷蔵庫の中にあれがあったかな?」
キッチンに行って、冷蔵庫のドアを開けてみた。
「あったぞ」
冷蔵庫の一番下の棚に食べ頃になったバナナが二本載っていた。俺は、にやりと笑って一本を取りだしてコンドームを被せた。
「これなら、太さも長さも完璧」
ベッドに戻って膝を立て、コンドームを被せたバナナを膣の中に入れてみた。
「こんなものかな?」
入れたり出したりしてみる。ゆっくりだけど上ってくるのが分かる。思いついて、バナナを動かしながら左手でクリトリスを刺激してみた。
「ううっ! い、いいいっ」
クリトリスだけの時よりもさらに強い快感が沸いてきて、体が反張するようになって痙攀した。
「ううーーーん」
俺はまた気を失ってしまった。
ジリジリと目覚まし時計がけたたましく鳴り始めた。俺は、もやのかかった意識の中で目覚ましのベルを止めた。
女になったのがもはや夢ではないことが分かっていた。俺の股間には、コンドームに覆われたバナナが突き立っていた。ゆっくり引き抜くと、バナナは真ん中が潰れて、縦に裂けた部分から、バナナの黄色い実が飛び出していた。
「行ったときに、腟が締まってバナナを潰したみたいだな」
俺は感慨深げにバナナを眺めた。
「若く見えるのに、結構経験があるみたいだ。この女としたら、気持ちがいいんだろうな」
そうは思ったけれど、俺は今はその女だ。それは絶対にできない相談だ。
8時に目覚ましをかけていたけれど、今日は敢えて講義に出なくてもいい。俺は、女の体を楽しむことにした。
女とセックスしたことはある。しかし、女のそこは、じっくり見たことがない。いつも薄暗いし、懐中電灯で見せてくれなんてことを言えるような女には巡り合っていない。
股間を覗いただけでは、わずかに陰毛が見えるだけで、そこがどうなっているか、まったく分からない。俺は鏡を探す。
「あった。あった」
普段は使わない小さな鏡を取りだして、俺は今や自分のものである女の股間を指で広げて覗き込んだ。
「これがクリトリス。これが小陰唇。これが腟の入り口か・・・・」
感慨深く、俺はいつまでも眺めていた。